● 小学校設置基準及び中学校設置基準の制定等について(学校自己評価、説明責任関係) 平成14年3月29日 13文科初1157



                            13文科初第1157号
                            平成14年3月29日
各都道府県教育委員会
各都道府県知事
各指定都市教育委員会    殿
各指定都市市長
附属学校を置く各国立大学長
国立久里浜養護学校長
                         文部科学事務次官
                               小 野 元 之


      小学校設置基準及び中学校設置基準の制定等について(通知)


 このたび,別添1から別添4までのとおり,「小学校設置基準」(平成14年文部科学省令第14号),「中学校設置基準」(平成14年文部科学省令第15号),「高等学校設置基準の一部を改正する省令」(平成14年文部科学省令第16号)及び「幼稚園設置基準の一部を改正する省令」(平成14年文部科学省令第17号)が平成14年3月29日に公布され,いずれも総則に係るものについては平成14年4月1日から,編制並びに施設及び設備に係るものについては平成15年4月1日から施行されることとなりました。
 今回の小学校設置基準及び中学校設置基準の制定等は,「教育改革国民合議報告−教育を変える17の提案−」(平成12年12月),文部科学省「21世紀教育新生プラン」(平成13年1月),総合規制改革会議「規制改革の推進に関する第1次答申」(平成13年12月)等を踏まえ,私立学校を含め多様な小学校及び中学校の設置を促進する観点から,小学校及び中学校を設置するために必要な最低の基準としてそれぞれの設置基準を定めるとともに,小学校等における自己評価等及び情報の積極的な提供に関する規定等を設けるものです。
 これらの省令の概要及び留意事項等は下記のとおりですので,その運用に当たって遺漏のないようお取り計らいください。
 また,都道府県教育委員会及び都道府県知事におかれては,域内の市区町村教育委員会,所管又は所轄の学校及び学校法人に対し,これらの省令の制定等について周知していただくとともに,必要な指導等をお願いします。
 また,小学校設置基準及び中学校設置基準の制定等の趣旨を踏まえ,都道府県の私立学校設置認可に係る審査基準及び学校法人の設立認可に係る審査基準等について必要な見直しを行うなど,設置に係る認可事務の適切な実施をお願いします。


                   記


第1 小学校設置基準(平成14年文部科学省令第14号)及び中学校設置基準(平成14年文部科学省令第15号)の制定について

1 制定等の趣旨
(1)小学校設置基準及び中学校設置基準を制定する趣旨
 現在,学校教育法(昭和22年法律第26号)第3条に基づく設置基準として,小学校及び中学校 (以下「小学校等」という。)については,それぞれ独立した省令はなく、学校教育法施行規則 (昭和22年文部省令第11号)に,設備編制の基本的事項についてのみ定められている。今回,私立学校を含め多様を学校の設置を促進する観点から,設置基準を小学校等を設置するのに必要な最低の基準として明確化するとともに,地域の実態に応じた適切な対応が可能となるよう,弾力的,大綱的に規定することを基本方針として,小学校設置基準及び中学校設置基準を制定するものであること。
(2)小学校設置基準及び中学校設置基準に自己評価等及び情報の積極的な提供に関する規定を設ける趣旨
 平成14年度からの新学習指導要領の全面実施や完全学校週五日制の実施等を踏まえ,小学校等が保護者や地域住民等の信頼に応え,家庭や地域と連携協力して一体となって児童生徒の健やかな成長を図っていくためには,教育活動その他の学校運営の状況について自己評価を実施しその結果を公表するとともに,それに基づいて改善を図っていくことが求められる。また,開かれた学校づくりを推進し,学校としての説明責任を果たしていく上で,小学校等が保護者等に対して積極的に情報を提供することが必要である。このため,こうしたことを一層推進していく 観点から,小学校設置基準及び中学校設置基準に,自己評価等及び情報の積極的な提供に関する規定を設けるものであること。

2 設置基準の概要
(1)設置基準の位置付け(第1条)
 @ 小学校等は,学校教育法その他の法令の規定によるほか、この省令の定めるところにより設置するものとしたこと(第1項)。
 A この設置基準は,小学校等を設置するのに必要な最低の基準であり,したがって小学校等の設置者は,小学校等の編制,施設,設備等がこの基準より低下した状態にならないようにすることはもとより,これらの水準の向上を図ることに努めなければならないとしたこと(第2項及び第3項)。
(2)自己評価等(第2条)
 @ 小学校等は,その教育水準の向上を図り,当該小学校等の目的を実現するため,当該小学校等の教育活動その他の学校運営の状況について自ら点検及び評価を行い,その結果を公表するよう努めるものとしたこと(第1項)。
 A @の点検及び評価を行うに当たっては,適切な項目を設定して行うものとしたこと(第2項)。
(3)情報の積極的な提供(第3条)
 小学校等は,当該小学校等の教育活動その他の学校運営の状況について,保護者等に対して積極的に情報を提供するものとしたこと。
(4)1学級の児童(生徒)数(第4条)
 1学級の児童(生徒)数は,法令に特別の定めがある場合を除き,40人以下とするとしたこと。ただし,特別の事情があり,かつ,教育上支障がない場合は,この限りでないとしたこと。
(5)学級の編制(第5条)
 小学校等の学級は,同学年の児童(生徒)で編制するものとしたこと。ただし,特別の事情があるときは,数学年の児童(生徒)を1学級に編制することができるとしたこと。
(6)教諭の数等(第6条)
 @ 小学校等に置く教諭の数は,1学級当たり1人以上とするとしたこと(第1項)。これらの教諭は,特別の事情があり,かつ,教育上支障がない場合は,校長若しくは教頭が兼ね,又は助教諭若しくは講師をもってこれに代えることができるとしたこと(第2項)。
 A 小学校等に置く教員等は,教育上必要と認められる場合は,他の学校の教員等と兼ねることができるとしたこと(第3項)。
(7)施設及び設備の一般的基準(第7条)
 小学校等の施設及び設備は,指導上,保健衛生上,安全上及び管理上適切なものでなければならないとしたこと。
(8)校舎及び運動場の面積等(第8条)
 @ 校舎及び運動場の面積は,法令に特別の定めがある場合を除き,別表に定める面積以上とするとしたこと。ただし,地域の実態その他により特別の事情があり,かつ,教育上支障がない場合は、この限りでないとしたこと(第1項)。
 A 校舎及び運動場は,同一の敷地内又は隣接する位置に設けるものとしたこと。ただし,地域の実態その他により特別の事情があり,かつ,教育上及び安全上支障がない場合は,その他の適当な位置にこれを設けることができるとしたこと(第2項)。
(9)校舎に備えるべき施設(第9条)
 @ 校舎には,少なくとも教室(普通教室,特別教室等とする。),図書室,保健室,及び職員室を備えるものとしたこと(第1項)。
 A 校舎には,前項に掲げる施設のほか,必要に応じて,特殊学級のための教室を備えるものとしたこと(第2項)。
(10)その他の施設(第10条)
 小学校等には,校舎及び運動場のほか,体育館を備えるものとしたこと。ただし,地域の実態その他により特別の事情があり,かつ,教育上支障がない場合は,この限りでないとしたこと。
(11)校具及び教具(第11条)
 @ 小学校等には,学級数及び児童(生徒)数に応じ,指導上保健衛生上及び安全上必要な種類及び数の校具及び教具を備えなければならないとしたこと(第1項)。
 A @の校具及び教具は,常に改善し,補充しなければならないとしたこと(第2項)。
(12)他の学校等の施設及び設備の使用(第12条)
 小学校等は,特別の事情があり,かつ,教育上及び安全上支障がない場合は,他の学校等の施設及び設備を使用することができるとしたこと(第12条)。
(13)その他(附則)
 @ これらの省令は,平成14年4月1日から施行するとしたこと。ただし,編制並びに施設及び設備に係る規定については平成15年4月1日から施行するとしたこと(第1項)。
 A 編制並びに施設及び設備に係る規定の施行の際,現に有する小学校等の編制並びに施設及び設備については,当分の間,なお従前の例によることができるものとしたこと(第2項)。
 B 学校教育法施行規則について,小学校設置基準又は中学校設置基準と重複する事項の規定の削除,これに伴う盲学校,聾学校及び養護学校の編制に係る規定の追加,中学校設置基準の中等教育学校の前期課程への準用規定の追加等所要の改正を行ったこと(第3項)。

3 留意事項
(1)設置基準の位置付け(第1条)
 「学校教育法その他の法令」には,私立学校法,学校保健法等が含まれるものであること。また,小学校等の設置とは,小学校等の新たな設置と設置後の小学校等の維持運営を併せ意味するものであること。したがって,この設置基準は,小学校等を新たに設置する場合の基準であるとともに,設置後もこれに従って維持管理されるべきであること。
(2)自己評価等(第2条)
 @ 小学校等においては,それぞれの学校や地域の状況等に応じて,親切な方法により教育活動その他の学校運営の状況について自ら点検及び評価(以下「自己評価」という。)を行い,その結果を公表するよう努めること。この場合,学校の状況に応じて適切な校内体制を整えるなど,校長のリーダーシップの下,全教職員が参加して学校全体として評価を行い,教育活動その他の学校運営の改善を図ることが重要であること。
 A 自己評価を行う対象としては,例えば,学校の教育目標,教育課程,学習指導,生徒指導,進路指導等の教育活動の状況及び成果,校務分掌等の組織運営等が考えられること。
 B 自己評価を行うに当たっては,学校の教育目標等を踏まえ,適切な項目を設定し,それに応じて評価を行うこと。
 C 自己評価を行うに当たっては,その評価結果を教育活動その他の学校運営の改善に活用できるよう,年間を通じて計画的に行うことが望ましいこと。
 D 評価結果の公表方法については,各学校において,例えば,学校便りの活用や説明会の開催,インターネットの利用など,多くの保護者や地域住民等に公表することができるような適切な方法を工夫すること。
 E 学校や地域の状況等に応じて,自己評価だけではなく,保護者や地域住民等を加えて評価を行ったりする工夫も考えられること。その際,学校評議員制度を導入している場合には,その適切な活用も考えられること。
 F 小学校等の設置者や都道府県の教育研究所,教育センター等の関係機関においては,各学校で適切な評価が行われるよう,その内容,方法,公表の在り方等について,不断に研究開発を行うことが望ましいこと。
(3)情報の積極的な提供(第3条)
 @ 小学校等においては,その説明責任を果たす観点から,それぞれの学校や地域の状況等に応じて,教育活動その他の学校運営の状況について,保護者や地域住民等に対し積極的に情報を提供するようにすること。
 A 提供すべき情報としては,例えば,学校の概要,教育目標,教育課程,教育活動の状況などが考えられること。
 B 情報を提供する方法については,各学校において,例えば,学校便りの活用や説明会の開催,インターネットの利用など,多くの保護者や地域住民等に提供することができるような適切な方法を工夫すること。
(4)1学級の児童(生徒)数(第4条)
 @ 「法令に特別の定めがある場合」には,公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和33年法律第116号)第3条第2項の規定が含まれるものであること。
 A 私立学校等において,入学者選抜に伴う特別の配慮が必要である場合その他特別な事情のある場合で,教育上支障がない場合は,40人を超える学級の編制が認められるものであること。
(5)教諭の数等(第6条)
 @ 第1項は,小学校等に置くべき教諭の最小限の数について規定したものであること。したがって,学校教育法,学校保健法(昭和33年法律第56号)その他の法令により必要とされる職員については,それぞれの法令の規定に従い,置くものであること(第1項)。
 A 第3項は,小学校及び中学校間等学校間の連携の推進等教育上必要と認められる場合に,他の学校の教員等と兼ねることができることを明らかにするものであること(第3項)。
(6)校舎及び運動場の面積等(第8条)
 @ 「法令に特別の定めがある場合」には,義務教育諸学校施設費国庫負担法(昭和33年法律第81号)第6条の規定が含まれるものであること(第1項)。
 A 小学校等においては,原則として別表に定める校舎及び運動場の面積を確保するものとし,立地条件及び周囲の環境によりこれらが困難であるなどやむを得ない特別の事情がある場合で,教育上支障がない場合には,別表に定める校舎又は運動場の面積を下回ることができること(第1項)。
 B 小学校等においては,原則として校舎及び運動場を同一の敷地内又は隣接する位置に設けるものとし,立地条件及び周囲の環境によりこれらが困難であるなどやむを得ない特別の事情がある場合で,教育上及び安全上支障がない場合には,適当な位置にこれを設けることができること(第2項)。
(7)校舎に備えるべき施設(第9条)
 教室については,普通教室及び特別教室の組合せによる形態のほか,教科教室型その他の形態についても認められるものであること。
(8)その他の施設(第10条)
 小学校等においては,原則として体育館を備えるものとし,立地条件及び周囲の環境によりこれらが困難であるなどやむを得ない特別の事情がある場合で,教育上支障がない場合には,例外が認められること。
(9)他の学校等の施設及び設備の使用(第12条)
 @ 小学校等においては,施設及び設備を専用かつ自己所有とすることが原則であること。
 A 「特別な事情」には,学校間の連携を推進するため,当該小学校等が同一設置者が設置する他の学校種の学校と併設される場合が含まれること。
 B 「他の学校等の施設及び設備」には,公民館,運動場,体育館等の施設及び設備が含まれること。
 C 地方公共団体等の施設を長期にわたり安定して使用する条件を取得している場合等教育上及び安全上支障がない場合には,これを使用(共用又は借用)することができること。


第2 高等学校設置基準(昭和23年文部省令第1号)の一部改正について

1 改正の趣旨
 上記第1の1(2)と同様の趣旨から,高等学校設置基準に自己評価等及び情報の積極的な提供に関する規定を設けるものであること。

2 改正省令の概要
(1)自己評価等(第4条)
 @ 高等学校は,その教育水準の向上を図り,当該高等学校の目的を実現するため,当該高等学校の教育活動その他の学校運営の状況について自ら点検及び評価を行い,その結果を公表するよう努めるものとしたこと(第1項)。
 A @の点検及び評価を行うに当たっては,適切な項目を設定して行うものとしたこと(第2項)。
(2)情報の積極的な提供(第4条の2)
 高等学校は,当該高等学校の教育活動その他の学校運営の状況について,保護者等に対して積極的に情報を提供するものとしたこと。
(3)その他(附則)
 @ この省令は,平成14年4月1日から施行するとしたこと(第1項)。
 A 学校教育法施行規則について,所要の改正を行ったこと(第2項)。
3 留意事項
(1)自己評価等(第4条)
 上記第1の3(2)と同様であること。
(2)情報の積極的な提供(第4条の2)
 上記第1の3(3)と同様であること。


第3 幼稚園設置基準(昭和31年文部省令第32号)の一部改正について

1 改正の趣旨
 上記第1の1(2)と同様の趣旨から,幼稚園設置基準に自己評価等及び情報の積極的な提供に関する規定を設けるとともに,併せて所要の改正を行うものであること。

2 改正省令の概要
(1)自己評価等(第2条の2)
 @ 幼稚園は,その教育水準の向上を図り,当該幼稚園の目的を実現するため,当該幼稚園の教育活動その他の学校運営の状況について自ら点検及び評価を行い,その結果を公表するよう努めるものとしたこと(第1項)。
 A @の点検及び評価を行うに当たっては,適切な項目を設定して行うものとしたこと(第2項)。
(2)情報の積極的な提供(第2条の3)
 幼稚園は,当該幼稚園の教育活動その他の学校運営の状況について,保護者等に対して積極的に情報を提供するものとしたこと。
(3)教員等の兼任(第5条第4項)
 幼稚園に置く教員等は,教育上必要と認められる場合は,他の学校の教員等と兼ねることができることを明らかにしたこと。
(4)施設・設備等の安全性等(第7条及び第10条)
 幼稚園の施設及び設備,幼稚園に置かれる園具及び教具に関して,安全性等を考慮することについて明らかにしたこと。
(5)園舎及び運動場の位置(第8条第2項)
 園舎及び運動場は,同一の敷地内に加えて,隣接する位置に設けることも原則として可能であることを明らかにしたこと。
(6)他の施設及び設備等の使用(第12条)
 幼稚園は,特別の事情があり,かつ,教育上及び安全上支障がない場合は,他の学校等の施設及び設備を使用することができるとしたこと。
(7)その他(附則)
 @ この省令は,平成14年4月1日から施行するとしたこと。ただし,編制並びに施設及び設備に係る規定については,平成15年4月1日から施行するとしたこと(第1項)。
 A 学校教育法施行規則について,所要の改正を行ったこと(第2項)。

3 留意事項
(1)自己評価等(第2条の2)
 上記第1の3(2)と同様であること。
(2)情報の積極的な提供(第2条の3)
 上記第1の3(3)と同様であること。
(3)教員等の兼任(第5条)
 上記第1の3(5〉Aと同様であること。
(4)他の施設及び設備等の使用(第12条)
 上記第1の3(9)と同様であること。


第4 その他留意事項

1 中等教育学校における中学校設置基準の準用等
(1)中学校設置基準の準用
 中学校設置基準の制定に伴い,中等教育学校の前期課程の設備,編制その他設置に関する事項については,中学校設置基準を準用することとした(改正後の学校教育法施行規則第65条の3第1項)ことから,中等教育学校の前期課程においても,上記第1と同様であること。
(2)高等学校設置基準の準用
 中等教育学枚の後期課程の設備,編制,学科の種類その他設置に関する事項については,高等学校設置基準を準用する(改正後の学校教育法施行規則第65条の3第2項)ことから,中等教育学校の後期課程においても,高等学校と同様に自己評価の実施及びその結果の公表に努めるとともに,情報の積極的な提供を行うことが必要であること。

2 盲学校,聾学校及び養護学校における自己評価等及び情報の積極的な提供
 小学校等について,学校の自己評価等及び情報の積極的な提供に関する規定が設けられたことを踏まえ,盲学校,聾学校及び養護学校においても,自己評価の実施及びその結果の公表並びに情報の積極的な提供に努めることが適当であること。



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