● 学校保健法施行規則の一部改正等について(色覚検査等) 平成14年3月29日 13文科ス第489号
13文科ス第四八九号 平成一四年三月二九日
附属学校を置く各国立大学長・国立久里浜養護学校長・各都道府県知事・各都道府県教育委員会教育長あて
文部科学省スポーツ・青少年局長通知
学校保健法施行規則の一部改正等について
このたび、別添のとおり、学校保健法施行規則の一部を改正する省令(平成一四年三月二九日文部科学省令第一二号)が制定され、平成一四年四月一日から施行されることとなりました。
これに伴い、「就学時の健康診断の実施について」(平成一一年五月三一日付け文体学第一八九号文部省体育局長通知)を廃止し、新たに別紙一のとおりとし、平成一四年四月一日から実施するとともに、別紙二のとおり「児童、生徒、学生、幼児及び職員の健康診断の方法及び技術的基準の補足的事項について」(平成六年一二月八日付け文体学第一六八号文部省体育局長通知別紙)の一部を改正し、平成一五年四月一日から実施することとしました。
今回の改正の概要および留意事項等は左記のとおりですので、改正の目的に照らし健康診断の適正な実施を図られるようお願いします。
また、各都道府県教育委員会におかれては域内の市町村教育委員会等に対し、各都道府県知事におかれては、所管の私立学校等に対してこの趣旨を周知徹底されるよう併せてお願いします。
記
第一 学校保健法施行規則の一部改正について
一 就学時の健康診断の方法及び技術的基準
知能については、これまで、標準化された知能検査法によって知的障害の発見に努めることとしていたが、標準化された知能検査法以外の方法によることも可能であることから、検査法を限定せずに、適切な方法であればよいこととしたこと。
なお、適切な方法としては、医師等の専門家による面接や行動観察等が考えられること。
二 児童、生徒、学生及び幼児の健康診断
(一) 色覚異常についての知見の蓄積により、色覚検査において異常と判別される者であっても、大半は支障なく学校生活を送ることが可能であることが明らかになってきていること、これまで、色覚異常を有する児童生徒への配慮を指導してきていることを考慮し、色覚の検査を必須の項目から削除したこと。
(二) 色覚の検査の必須項目からの削除に伴い、色覚検査の実施学年に関する記述を削除する等の改正を行ったこと。
三 就学時健康診断票の様式(第一号様式)
(一) 「主な既往症」、「予防接種」欄に記載する内容については、保護者から提供された情報を記載するものであり、医師の診察結果の記入欄と分けて、記入しやすくしたこと。また、就学前に済ませるべき予防接種については、名称を欄中に記載し、記入もれのないようにしたこと。
(二) 「事後措置」の欄については、就学時の健康診断は確定診断ではないため、再検査もしくは詳細な検査が必要な場合には、「その他」の欄にその旨を記載することとし、「就学義務の猶予又は免除」、「盲学校、聾学校又は養護学校への就学」の欄を削除したこと。
(三) 「その他の疾病及び異常」の欄については、その他の疾病及び異常に関する検査は知能だけをみるものではないため、「(知能)」を削除したこと。
(四) 様式の(注)に記載された「脊柱」の欄の記入方法については、幼児の脊柱の疾病や異常を区別することは困難であり、細かな記入の際の区分を廃止したこと。
(五) 様式の(注)に記載された「聴力」の欄の記入方法については、一、〇〇〇ヘルツにおいて三〇デシベル又は四、〇〇〇ヘルツにおいて二五デシベルを聴取できない者について、就学時健康診断において、更に聴力レベルを検査する必要はないと考えられるため、その旨の記載を削除したこと。
なお、一、〇〇〇ヘルツにおいて三〇デシベル又は四、〇〇〇ヘルツにおいて二五デシベルを聴取できない者について、更に聴力レベルを検査し、聴覚障害を診断するのは、医師、看護師、言語聴覚士等の医療従事者であることを理解しておく必要があること。
(六) 様式の(注)に記載された「歯」及び「その他の歯の疾病及び異常」の欄の記入方法については、歯科分野の医療技術の進歩にあわせて表現を改めたこと。また、就学時の健康診断において受診勧告を行うべき不正咬合や歯周疾患について、その対象を明確にしたこと。
(七) 様式の(注)に記載された「その他の疾病及び異常」の欄の記入方法については、これまで、知能の程度についてその区分を記載することとなっていたが、就学時の健康診断は確定診断ではないため、知的障害の疑いがあり検査等が必要と認められる者については、その旨を記載するよう改めたこと。
(八) 様式の(注)に記載された「備考」の欄の記入方法については、栄養状態や全身の状態等から判断して児童虐待等が疑われ事後措置に緊急を要する所見があれば、具体的に記入するよう説明を追加したこと。
四 適用時期
(一) 就学時の健康診断に関する改正規定については、平成一五年度からの就学を予定している者に対する健康診断から適用されること。
(二) 児童、生徒等の健康診断の必須項目のうち、色覚の検査の削除については、平成一五年度の健康診断から適用されるので、平成一四年度に小学校の第四学年に在学する者に対する同年度の検査については、なお、従前の例によること。
第二 「就学時の健康診断の実施について」について
新たに定めた「就学時の健康診断の実施について」(別紙一)は、今回の学校保健法施行規則の改正に伴って内容を整理したものであり、主な改正点は次のとおりであること。
一 知能の検査
検査法を限定せずに、適切な検査であればよいこととしたことに伴い、留意事項のうち、不要となった内容を削除したこと(別紙一 三(三)関係)。
二 健康診断票
就学時健康診断票は、事後措置を行う場合の基本となるものであるので、同票の(注)によって的確な記入をすることが必要であるとしたこと(別紙一 三(四)関係)。
三 事後措置
(一) 疾病又は異常を有しない者についての就学時の健康診断の結果の通知に関する記述の趣旨を明確にしたこと(別紙一 四(一)関係)。
(二) この時期に早急に治療が必要な疾患(不同視等)などが疑われる場合には、特にその旨を保護者への通知に記載して、医療機関において受診するよう指導することが必要であるとしたこと(別紙一 四(二)関係)。
(三) 発育が順調でない者や、栄養要注意の者で、全身の状況や保護者と幼児との様子から、児童虐待などが疑われる場合には、速やかに、児童相談所等に連絡を取る必要があるとしたこと(別紙一 四(二)関係)。
(四) 就学時の健康診断の結果、盲者、聾者又は知的障害者、肢体不自由者若しくは病弱者の疑いがある場合には、適切な就学相談・就学指導が行われるよう、市町村教育委員会において、就学時の健康診断を担当する部局と就学相談・就学指導を担当する部局との間で十分な連携を図る必要があるとしたこと(別紙一 四(三)関係)。
第三 「児童、生徒、学生、幼児及び職員の健康診断の方法及び技術的基準の補足的事項について」の一部改正について
今回の学校保健法施行規則の改正により、色覚の検査が必須項目から削除されたことに伴い、八(色覚の検査)を削除したこと。
第四 色覚の検査の必須項目からの削除に伴う留意事項について
一 色覚の検査
(一) 今後も、学校医による健康相談において、色覚に不安を覚える児童生徒及び保護者に対し、事前の同意を得て個別に検査、指導を行うなど、必要に応じ、適切な対応ができる体制を整えること。
(二) 定期の健康診断の際に、必須項目に加えて色覚の検査を実施する場合には、児童生徒及び保護者の事前の同意を必要とすること。
(三) 色覚の検査の実施にあたっては、以下の事項に留意すること。
ア 検査場は、色覚異常検査表の面が自然昼光色等で三〇〇ルクスから七〇〇ルクスの照度を確保できる場所が望ましいこと。
イ 色覚異常検査表は、色覚異常の有無を検査し得るものでなければならないこと。また、その検査表に規定された検査距離と読み取り時間が守られなければならないこと。なお、裸眼視力の低下している者については、矯正眼鏡を使用させて、検査を行うこと。
ウ 色覚異常検査表は、汚れをさけるため、検査表を指でなぞらせないこと。また、光による変色をさけるため、使用時以外は暗所に置くこと等、特にその保管に留意するとともに、少なくとも五年程度で更新することが望ましいこと。
エ 色覚の検査に当たっては、被検査者のプライバシーを守るため、個別検査が実施できる会場を設営し、検査者や被検査者の声が他の児童生徒に聞こえないよう留意すること。
(四) 今後も、色覚異常検査表など検査に必要な備品を学校に備えておく必要があること。
二 学校における色覚異常を有する児童生徒への配慮
(一) 教職員は、色覚異常について正確な知識を持ち、常に色覚異常を有する児童生徒がいることを意識して、色による識別に頼った表示方法をしないなど、学習指導、生徒指導、進路指導等において、色覚異常について配慮を行うとともに、適切な指導を行う必要があること。
(二) 文部科学省においては、平成一四年度中に、学校における色覚異常を有する児童生徒への配慮についてまとめた手引書を新たに作成し配布する予定であること。
別添 〔略〕
別紙一
就学時の健康診断の実施について
学校保健法(昭和三三年法律第五六号。以下「法」という。)第四条の規定に基づく就学時の健康診断の実施について留意すべき事項は、以下のとおりとする。
一 就学時の健康診断を行う趣旨
就学時の健康診断は、市町村の教育委員会が、就学予定者に対し、あらかじめ健康診断を行うことにより、就学予定者の状況を把握し、保健上必要な助言や適切な就学についての指導等を行い、もって、義務教育の円滑な実施に資するものであり、当該市町村の教育委員会が行う就学事務と関連があること。
二 対象者及び保護者への通知
(一) 対象者
対象者は、学校教育法(昭和二二年法律第二六号)第二二条第一項の規定により翌学年の初めから同項に規定する学校に就学させるべき者で当該市町村の区域内に住所を有するものである(法第四条)が、具体的には学校教育法施行令(昭和二八年政令第三四〇号)第二条の規定によりあらかじめ作成された学齢簿に記載された就学予定者であること。
(二) 保護者への通知
市町村の教育委員会が就学時の健康診断を行うに当たって保護者への通知(法第一〇条第二項、学校保健法施行令(昭和三三年政令第一七四号。以下「令」という。)第三条)については、別記を参考の上、当該市町村の教育委員会において定め、通知すること。
三 時期、検査の項目、方法及び技術的基準、健康診断票
(一) 時期
就学時の健康診断は、学校教育法施行令第二条の規定により当該市町村の教育委員会において学齢簿が作成された後翌学年の初めから四月前までの間に行うものであること(法第一〇条第二項、令第一条)。
(二) 検査の項目
就学時の健康診断における検査の項目は、法第一〇条第二項の規定に基づき令第二条に定められているが、特に、学習に際して特別な対応を取ることが必要となる疾病等の発見に努めるなど法第五条の事後措置に関連して必要な検査の項目が定められているものであること。
(三) 方法及び技術的基準
就学時の健康診断の方法及び技術的基準は、(二)の検査の項目ごとに、法第一〇条第二項の規定に基づき学校保健法施行規則(昭和三三年文部省令第一八号。以下「規則」という。)第一条に定められているが、このほか「児童、生徒、学生、幼児及び職員の健康診断の方法及び技術的基準の補足的事項について」(平成六年一二月八日付け文体学第一六八号文部省体育局長通知別紙)を参照すること。
また、知能については、次の点に留意して実施すること。
@ 就学時の健康診断における知能の検査は、知的障害の発見のために行うものである。
A 就学時の健康診断における知能の検査は、@の目的に合致するよう簡便でしかも就学予定者の年齢層に適合した方法によること。
B 検査は、プライバシーの保護に十分配慮し行うこと。
なお、就学時の健康診断は、幼児を対象として行われることなどから、室内の保温等を適切に行い、換気、採光に留意し、清潔を保つ等健康診断実施場所の環境衛生に配慮すること。
(四) 健康診断票
市町村の教育委員会は、就学時の健康診断を行ったときは、規則の第一号様式により、就学時健康診断票を作成しなければならないこと(法第一〇条第二項、令第四条第一項、規則第二条)。就学時健康診断票の作成は、法第五条の事後措置を適切に行う等のためにも、同票の(注)によって的確な記入をすることが必要であること。
また、市町村の教育委員会は、翌学年の初めから一五日前までに、就学時健康診断票を就学時の健康診断を受けた者の入学する学校の校長に送付しなければならないこと(法第一〇条第二項、令第四条第二項)。
四 事後措置
市町村の教育委員会は、就学時の健康診断の結果に基づき、担当医師及び担当歯科医師の所見に照らして、治療を勧告し、保健上必要な助言を行い、及び学校教育法第二二条第一項に規定する義務の猶予若しくは免除又は盲学校、聾学校若しくは養護学校への就学に関し指導を行う等適切な措置をとらなければならないものであること(法第五条)。
事後措置は、就学時の健康診断の結果を保護者に通知し、その通知においてあわせて所要事項を記載して行うのが適当である。もとより必要に応じて、保護者と直接、面会して指導、助言を行うことが必要となる場合もあること。
当該事後措置の留意事項は次のとおりであること。
(一) 疾病又は異常を有しない者
発育も順調であり、就学時の健康診断においては、心身に疾病又は異常もみられず、健康と認められる者については、事後措置の必要はないようにも思えるが、やはり就学時の健康診断の結果(栄養状態が良好及び疾病又は異常は認められなかった旨)を通知し、その旨を保護者に知らせるべきであり、今後も健康に留意し生活を規則正しくして、元気で入学するように附言することが適当である。
(二) 疾病又は異常を有する者等
疾病又は異常を有する者については、速やかに治療のために必要な医療を受けるよう勧告し、又は、必要に応じて更に必要な検査を受けるよう指導する。また、予防接種を受けていない者には予防接種を受けるよう指導し、発育が順調でない者、栄養要注意の者等には、その発育、健康状態等に応じて保健上必要な助言を行う。
この時期に早急に治療が必要な疾患(不同視等)などが疑われる場合には、特にその旨を保護者への通知に記載して、医療機関において受診するよう指導することが必要である。
また、発育が順調でない者や、栄養要注意の者で、全身の状況や保護者と幼児との様子から、児童虐待などが疑われる場合には、速やかに、児童相談所等に連絡を取る必要がある。
(三) 盲者、聾者又は知的障害者、肢体不自由者若しくは病弱者の疑いがある場合
市町村の教育委員会は、盲者、聾者又は知的障害者、肢体不自由者若しくは病弱者で盲学校、聾学校又は養護学校へ就学することが適当であると認められる者については、都道府県の教育委員会に対し学校教育法施行令第一一条の規定による通知等を翌学年の初めから三月前(一二月三一日)までにしなければならないこととなっている。
就学時の健康診断の結果、盲者、聾者又は知的障害者、肢体不自由者若しくは病弱者の疑いがある場合には、市町村の教育委員会において、就学時の健康診断を担当する部局と就学相談・就学指導を担当する部局との間で十分な連携を図り、適切な就学相談・就学指導を行う必要がある。
更に必要な検査、精密検査を受ける必要があると認められる場合はその旨を指導するとともに、市町村の教育委員会はその検査結果を踏まえて適切な就学相談・就学指導等を行うことが適当である。
なお、治療又は生命・健康の維持のため療養に専念することを必要とし、教育を受けることが困難又は不可能な者については、保護者の願出により学校教育法第二二条第一項に規定する義務(以下「就学義務」という。)の猶予又は免除の措置を行うため、就学時の健康診断の結果、就学義務の猶予又は免除を受けることが適当ではないかと疑われる者については、まず、更に必要な検査、精密検査を受ける必要があることを保護者に対し指導するとともに、教育委員会はその検査結果を踏まえて就学義務の猶予又は免除が適当と認められる場合には保護者にその旨を指導する必要がある。
別記 就学時の健康診断を行うに当たっての保護者への通知文(参考例) (略)
別紙2
「児童、生徒、学生、幼児及び職員の健康診断の方法及び技術的基準の補足的事項について」の一部改正
8を削除する。
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