● 義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律等の施行及び関連諸制度の見直し等について(学級編制の一層の弾力化等) 平成15年4月1日 14文科初第1316号
14文科初第一三一六号 平成一五年四月一日
各都道府県教育委員会あて
文部科学省初等中等教育局長通知
義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を
改正する法律等の施行及び関連諸制度の見直し等について
このたび、地方分権改革推進会議の「事務・事業の在り方に関する意見」(平成一四年一〇月三〇日)、内閣においてとりまとめた「国と地方に係る経済財政運営と構造改革に関する基本方針」(平成一四年一二月二四日)等を踏まえ、地方の権限と責任を拡大する観点から、義務教育費国庫負担制度等の見直しを行ったところです。具体的には、国と地方の適切な役割分担及び費用負担の在り方を見直すとともに、地方の自主性を高める観点から、義務教育費国庫負担金について負担対象経費を限定するとともに、その算定にかかる事務手続きの簡素化を図り、また、公立学校の教職員定数の特例加算にかかる規定の大括り化、へき地手当の支給割合の弾力化、学級編制の一層の弾力化等の措置を講じたところです。
このため、別添のとおり、「義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律」をはじめとする関係法令等の公布・施行等がなされました。各法令等の公布期日及び施行期日等は次のとおりです。
(一) 「義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律」(法律第一二号・平成一五年三月三一日公布・四月一日施行)
(二) 「義務教育費国庫負担法第二条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費等の国庫負担額の最高限度を定める政令等の一部を改正する政令」(政令第一八八号・平成一五年四月一日公布・施行)
(三) 「義務教育費国庫負担法第二条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費等の国庫負担額の最高限度を定める政令施行規則及び公立養護学校整備特別措置法施行規則の一部を改正する省令」(文部科学省令第二五号・平成一五年四月一日公布・施行)
(四) 「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律施行令の一部を改正する政令」(政令第一〇四号・平成一五年三月二八日公布・四月一日施行)
(五) 「公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律施行令の一部を改正する政令」(政令第一〇六号・平成一五年三月二八日公布・四月一日施行)
(六) 「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令」(政令第一〇五号・平成一五年三月二八日公布・四月一日施行)
(七) 「公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令」(政令第一〇七号・平成一五年三月二八日公布・四月一日施行)
(八) 「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等に基づく文部科学大臣の定めについての一部改正について」(平成一五年三月三一日)
(九) 公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律等に基づく文部科学大臣の定めについての一部改正について」(平成一五年三月三一日)
(一〇) 「へき地教育振興法施行規則の一部を改正する省令」(文部科学省令第一四号・平成一五年三月三一日公布・平成一五年四月一日施行)
改正法令等の概要は左記第一〜第三のとおりですので、各都道府県教育委員会においては、今後、これらの改正法令等の趣旨に沿って、地方の特色や工夫を生かした学校教育の充実に努めるよう願います。
また、公立の義務教育諸学校等の学級編制の標準については、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和三三年法律第一一六号。以下「義務標準法」という。)等に定めるところにより行われているところでありますが、このたび、現行の義務標準法の範囲内で左記第四のとおり一層の弾力的取扱いを行うことができることといたしました。
おって、各都道府県教育委員会におかれましては、域内の各市町村教育委員会に対してこれらのことを周知し、改正法令等の趣旨を徹底されるよう御配慮願います。
記
第一 義務教育費国庫負担制度の見直しに係る改正関係
一 「義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律」(法律第一二号)について
(一) 義務教育費国庫負担法第二条に規定する義務教育費国庫負担金及び公立養護学校整備特別措置法第五条に規定する公立養護学校教育費国庫負担金の対象経費のうち、共済費長期給付及び公務災害補償(非常勤講師に係る労災保険料を含む。)に要する経費を平成一五年度から国庫負担の対象外とすること。
(二) 前記(一)に伴い、地方財政法及び地方公務員等共済組合法の改正のほか、所要の規定の整備を行ったこと。
二 「義務教育費国庫負担法第二条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費等の国庫負担額の最高限度を定める政令等の一部を改正する政令」(政令第一八八号)について
(一) 前記一の法改正に伴い、義務教育費国庫負担法第二条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費等の国庫負担額の最高限度を定める政令(以下「限度政令」という。)及び公立養護学校整備特別措置法施行令(以下「養護令」という。)について、国庫負担金の算定方法に係る規定のうち、共済費長期給付及び公務災害補償(非常勤講師に係る労災保険料を含む。)に要する経費に係る規定を削除するとともに、所要の規定の整備を行ったこと。
(二) 前記一の法改正に伴い、地方公務員等共済組合法施行令、地方公務員災害補償法施行令、児童手当法施行令及び財政構造改革の推進に関する特別措置法施行令について、所要の規定の整備を行ったこと。
(三) (一)のほか、限度政令について、次のとおり改正したこと。
ア 義務教育費国庫負担金の交付に係る事務手続きの簡素化を図るため、国庫負担額の最高限度額の算定の基礎となる教職員の標準定数相当実数及び標準定数について、これまで毎月算定することとしていたものを四月から六月まで、九月、一二月及び三月(これらの月を「比較月」という。なお、四月から六月までについては、従来どおり三ケ月平均の標準定数相当実数と五月一日現在の標準定数を比較。)において算定することとしたこと。
イ 一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律(平成一四年法律第一〇六号。以下「給与法一部改正」という。)により、平成一五年度から三月期の期末手当が支給されないことになったことから、国庫負担金の算定方法に係る規定のうち、三月期の期末手当に係る規定を削除したこと。
ウ 給与法一部改正等により、平成一四年度から特例一時金が支給されないことになったことから、国庫負担金の算定方法に係る規定のうち、特例一時金に係る規定を削除したこと。
(四) この政令は、公布の日から施行し、改正後の限度政令及び養護令については、平成一五年度分の教職員給与費等の国庫負担金から適用することとしたこと。ただし、前記(三)ウについては、平成一四年度分の教職員給与費等の国庫負担金から適用することとしたこと。
三 「義務教育費国庫負担法第二条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費等の国庫負担額の最高限度を定める政令施行規則及び公立養護学校整備特別措置法施行規則の一部を改正する省令」(文部科学省令第二五号)について
(一) 前記二(三)アの改正に伴い、毎月の標準定数相当実数及び標準定数の算定に係る規定を、比較月の標準定数相当実数及び標準定数の算定に係る規定に改めたこと。
(二) 限度政令第三条第一項第二号イ及びロ(養護令第九条において準用する場合を含む。)に規定する基準給料超過額の算定について、過去の昇給期間短縮措置の対象者の昇給等を勘案し、別表の改正を行ったこと。
第二 公立義務教育諸学校及び公立高等学校の教職員定数に係る改正
一 「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律施行令の一部を改正する政令」(政令第一〇四号)について
(一) 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律施行令(以下「義務標準法施行令」という。)第五条第一項に規定する、地域の社会的条件について教育上特別の配慮を必要とする事情に係る特例加算のうち、産炭地域(同条同項第一号)、生活困窮者等密集地域(同条同項第二号)、外国人児童生徒多数在籍校(同条同項第三号)についての加算を廃止したこと。
本改正は、これらの特定の地域に着目した特例加算を廃止したものであり、今後は、これらの特定の地域についても、児童生徒の状況に着目した上で、各都道府県の判断に基づき、児童生徒支援加算(改正後の第五条第二項第二号)により対応するものであること。
(二) 義務標準法施行令第五条第二項に規定する、教育上特別の配慮を必要とする児童又は生徒に対する特別の指導に係る特例加算のうち、外国人児童生徒等日本語指導加算(同条同項第二号)を児童生徒支援加配に統合したこと。
本改正は、外国人児童生徒や帰国児童生徒に対して求められる特別の指導の多様化などに対応するため、外国人児童生徒等日本語指導加算を児童生徒支援加算に統合したものであり、今後は、当該児童生徒に対し、各都道府県の判断により、従来の日本語指導に加え、学習指導上、生徒指導上又は進路指導上の諸課題について様々な指導を行う場合を含め、各都道府県の判断に基づき、児童生徒支援加算により対応するものであること。
二 「公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律施行令の一部を改正する政令」(政令第一〇六号)について
(一) 公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律施行令第三条第二項に規定する政令で定める学科に係る特例加算について、情報に関する専門教育を主とする学科に係る特例加算を定めたこと。
(二) 公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律施行令第三条第三項に規定する、教育上特別の配慮を必要とする生徒に対する特別の指導に係る特例加算のうち、中途退学対応加算(同条同項表一の項)及び外国人生徒等日本語指導加算(同条同項表二の項)を、新たに設けた生徒支援加算(改正後の第三条第三項表一の項)に統合したこと。
本改正は、前記一(二)と同様の趣旨により、中途退学対応加算と外国人生徒等日本語指導加算を新たに設けた生徒支援加算に統合し、従来の二つの加算事由にとどまらず、学習指導上、生徒指導上又は進路指導上の諸課題について様々な指導を行う場合を広く加算の事由とするものであり、外国人生徒や帰国生徒に対しても、今後は、各都道府県の判断に基づき、従来の日本語指導に加え、学習指導上、生徒指導上又は進路指導上の諸課題について様々な指導を行う場合を広く含むものであること。
三 「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令」(政令第一〇五号)について
「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律」(平成一三年法律第二二号。以下「改正法」という。)附則第二項に基づき、平成一五年度における教職員定数の標準については、改正法による改正前の公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律に基づく定数に対する、改正法による改正後の公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の基準に関する法律に基づく定数の改善割合について、教頭教諭等、養護教諭等及び学校栄養職員並びに特殊教育諸学校に係る教職員は五分の三に相当する教職員の数を充足することとしたこと。
四 「公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令」(政令第一〇七号)について
改正法附則第三項に基づき、平成一五年度における教職員定数の標準については、改正法による改正前の公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律に基づく定数に対する、改正法による改正後の公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準に関する法律に基づく定数の改善割合について、全日制・定時制課程及び特殊教育諸学校高等部は五分の三に相当する教職員の数を充足することとしたこと。
五 「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等に基づく文部科学大臣の定めについての一部改正について」(平成一五年三月三一日文部科学大臣裁定)について
(一) 前記一(一)の改正に伴い、所要の改正を行ったこと。
(二) 平成一五年度における義務標準法施行令第五条第四項の文部科学大臣が定める研究に関し、「新しい教員の人事管理の在り方に関する調査研究実施要項」に基づく研究を廃止し、新たに「教員の評価に関する調査研究実施要綱」に基づく研究を追加したこと。
六 「公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律等に基づく文部科学大臣の定めについての一部改正について」(平成一五年三月三一日文部科学大臣裁定)について
(一) 前記二(二)の改正に伴い、所要の改正を行ったこと。
(二) 平成一五年度における高校標準法施行令第三条第五項の文部科学大臣が定める研究に関し、「新しい教員の人事管理の在り方に関する調査研究実施要項」に基づく研究を廃止し、新たに「教員の評価に関する調査研究実施要綱」に基づく研究及び「学力向上フロンティアハイスクール事業実施要項」に基づく研究を追加したこと。
第三 へき地手当の支給割合の弾力化
「へき地教育振興法施行規則の一部を改正する省令」(文部科学省令第一四号)について
(一) 一級から五級を付して指定されたへき地学校に勤務する教職員に支給するへき地手当の月額について、各都道府県がその額をより主体的に定めることができるようにする観点から、これまで定めていた級別ごとの具体の支給割合の基準を廃止し、給料及び扶養手当の月額の合計額に一〇〇分の二五を超えない範囲内で級別ごとに条例で定める支給割合を乗じて得た額としたこと。あわせて、へき地学校に準ずる学校に勤務する教職員に支給するへき地手当の月額について、一級を付して指定されたへき地学校に勤務する教職員に支給するへき地手当の月額について定められた支給割合に満たない範囲内で条例で定める支給割合を乗じて得た額としたこと(第八条関係)。
(二) へき地手当に準ずる手当の月額について、額の基準を削除したこと(第一一条第二項関係)。
(三) へき地手当及びへき地手当に準ずる手当の月額の基準を改めたことに伴い、所要の改正を行ったこと(第一三条第二項及び第三項関係)。
第四 学級編制の一層の弾力化について
義務標準法に基づき都道府県教育委員会が定める一学級の児童又は生徒の数の基準及び同法に基づき市町村等の教育委員会が行う学級編制について、地方の自主性を高める観点から、現行法の範囲内で、今後次のとおり一層の弾力的取扱いを行うものとすること。
(一) 都道府県教育委員会が定める学級編制基準
ア 義務標準法第三条第二項表及び第三項本文に定める学級編制の標準は、都道府県教育委員会が一般的な学級編制基準を定める場合によるべき規範としての性格を有し、各都道府県教育委員会はこれを尊重する義務を負うものであること。
イ この学級編制の標準については、その解釈上一定の弾力性が認められ、各都道府県における児童生徒の状況、教育条件向上の必要性等の事情に応じ、各都道府県教育委員会の判断により、標準の範囲内で、義務標準法第三条第二項表及び第三項本文に定める数を下回る数の基準を定めることが可能であること。
ウ なお、各都道府県教育委員会の判断により、一般的な基準として標準を下回る数の基準を定めた場合においても、義務標準法第三条第二項ただし書及び第三項ただし書に基づき当該一般的な基準として定めた数を下回る数を特例的な基準として定めることは可能であること。
(二) 個別の学校の実情に応じた学級編制の弾力的運用
ア 個別の学校における学級編制の弾力的運用については、昭和六〇年一二月二三日付け文部省教育助成局長通知及び平成五年四月一日付け文部省教育助成局長通知により通知しているところであるが、今後、個別の学校ごとの事情に応じて、児童生徒に対する教育的配慮の観点から、市町村別の教職員定数の範囲内で、各市町村教育委員会の判断により、例えば、以下のように一層の弾力的運用を行うことが可能であること。
(学級編制の弾力的運用の例)
@ 中学校二年時に生徒数が八一人で三学級としていたところ、進級時に一人が転出してしまうため二学級となるところを、教育的配慮から三学級を維持する場合
A 小学校五年時に児童数が八〇人で二学級としていたところ、進級時に一人が転入してきたことにより三学級となるところを、卒業を控えていることへの教育的配慮から二学級のまま据え置き、教員一人を少人数指導等に活用する場合
B 小学校二学年の児童数が八一人で三学級で、一学年の児童数が八〇人で二学級のところ、新入学児童の状況に配慮して、一学年も三学級とする場合
イ ただし、このような学級編制の弾力的運用を行う場合においても、市町村教育委員会は義務標準法第五条に基づき都道府県教育委員会に協議し、その同意を得る必要があること。
ウ なお、都道府県教育委員会においては、特例加算分を含め、市町村別の学校の種類ごとの定数を定めるに当たって、できる限り客観的な基準を設けることが求められることに留意すること。
(三) その他
ア 前記(一)により都道府県教育委員会が標準を下回る学級編制基準を定めた場合や、前記(二)により市町村教育委員会が学級編制の弾力的運用を行う場合においても、義務教育費国庫負担金の限度額の算定に係る教職員定数は、これまでどおり、義務標準法に定める学級編制の標準を基礎として算定するものであり、現行の限度額の算定の仕組みを変更するものではないこと。
イ 公立の高等学校については、公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律の規定に従い学級編制を行うこととされているが、高等学校を設置する都道府県又は市町村の判断により、前記(一)及び(二)に準じた弾力的取扱いを行うことが可能であること。
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