● 海外修学旅行の安全確保について 平成15年6月25日 15初国教第25号
15初国教第二五号 平成一五年六月二五日
各都道府県教育委員会教育長・各都道府県知事・附属学校を置く各国立大学長あて
文部科学省初等中等教育局国際教育課長通知
海外修学旅行の安全確保について
海外修学旅行における安全確保については、平成元年二月九日付け文初高第七五号により通知しておりますが、今般、外務省より、事前の情報提供等についての依頼書の提出に当たり、注意喚起がありました。
事前の情報提供等の依頼書の提出は、都道府県教育委員会教育長や都道府県知事等を通じ、外務省大臣官房領事移住部長宛に提出することとされていますが、中には関係業者に任せただけのものもあるやに聞き及んでおります。
海外修学旅行の実施には、細心かつ周到な準備が必要であり、生徒の安全と健康保持には万全を期すことが極めて重要であることは申すまでもありません。
ついては、別添の周知依頼に御留意の上、適正に運用いただきますよう特段の御配慮をお願いします。
併せて、貴域内の市町村教育委員会及び所管の学校に対し、周知徹底をお願いします。
(参考)
海外修学旅行の安全確保について(通知)
(文初高第七五号)
(平成元年二月九日)
(初等中等教育局長から都道府県教育委員会教育長、知事、附属学校を置く国立大学長あて)
海外修学旅行における安全確保の徹底については昭和六三年三月三一日付け文初高第一三九号をもって通達したところでありますが、今般、事前の情報提供等について外務省と協議の結果、今後は下記のような取扱いが可能となりました。ついては、主体性をもって海外修学旅行の安全確保に万全を期するため、このような手続きを活用するなど、一層の御配慮をお願いいたします。
おって、貴管下の市町村教育委員会及び学校に対し周知徹底方をお願いいたします。
記
一 情報提供に関する依頼書の提出について
海外修学旅行の実施校が目的地の安全等に関する情報を事前に入手し、計画段階における準備の万全を期すとともに、万一事故が発生した場合の大使館等関係在外公館における迅速かつ適切な対応を可能とするため、事前に別添様式にかかる情報提供に関する依頼書を各都道府県教育委員会教育長、都道府県知事又は国立大学長より、外務大臣官房領事移住部長あて提出することができること。
これにより、外務省より関係在外公館への事前連絡が行われ、実施校は、必要な情報を可能な範囲で在外公館又は外務省より入手することが期待でき、また、必要に応じて旅行期間中に関係在外公館に連絡をとり新たな情報を入手することができる。加えて、関係在外公館が当該修学旅行について事前の基礎的な情報を入手していることになるから、万一事故が発生した場合にも、現地での情報収集をはじめとする諸活動や本邦への連絡がより円滑に行うことができる。
なお、この依頼書の提出後、実施校より外務大臣官房領事移住部領事第二課に連絡をとり、希望する情報を求めることになる。(依頼書例:様式参照)
二 計画段階での事前相談について
上記依頼書の提出の有無にかかわらず、外務大臣官房領事移住部領事第二課内「海外安全相談センター」に対し海外修学旅行の計画段階における事前相談を行うことができること。
様式 (略)
領保第六一五七号
平成一五年六月九日
文部科学省初等中等教育局国際教育課長 殿
外務省大臣官房 領事移住部邦人保護課長
海外修学旅行等安全対策(周知依頼)
平成一二年八月一〇日付領保第七〇号に関し、海外修学旅行に関しては、貴信平成元年文初等第五三号、及び往信平成元年領二第一九号に基づき、当省としてもその安全確保のため下記一のとおり措置を講じていますが、当方に対する依頼(本年は六月三日現在一六九件受領)に関し、下記二の点につき関係機関に対し周知を図っていただきたく、ご協力願います。
記
一
(一) 依頼書の提出があった場合、当方で旅行計画を事前点検の上、関係公館への通報を行い、万一、事故が発生した際に在外公館において、迅速且つ適切な対応が出来るよう準備すると共に、在外公館に対し、旅行実施上の留意点があれば回報するよう指示を行っています。
(二) 各実施校に対しては、旅行出発前に緊急連絡体制を始めとする安全対策の留意事項(別添一)、海外旅行傷害保険加入のポイント(別添二)等の安全対策関連情報の提供を個別に行っています。
二
(一) 当方に送付されてくる緊急連絡体制の関係資料の中には留守中の連絡責任者氏名及び夜間・休日連絡先、旅行中の住所及び電話番号、保険会社連絡先等の記載漏れが多く、緊急時の対応に支障をきたす恐れがあります。貴方より、都道府県を通じて、各学校に対し、周知を図っていただくとともに、各学校から送付された資料に対し、都道府県が「当方へ必ず連絡していただきたい点」(別添三)と照らし合わせ確認した上で当方へ送付頂くよう、ご指導願います。また、地域の学生・児童の安全に関わる内容ですので、当該修学旅行が各自治体から見て問題がないかどうかの判断も行って頂くようお願いします。
(二) 送付時期については、在外公館と連絡を取る上で遅くとも修学旅行出発日の一ケ月前までに当方が各学校の計画書を受け取ることが必要ですので併せて周知願います。
別添一
海外修学旅行における安全対策(緊急連絡体制について)
平成元年六月
外務省 領事移住部邦人保護課 海外安全相談センター
一 事件、事故が発生した場合に備え、事前に緊急連絡方法が検討されるべきであり、連絡体制表には、次の連絡先等が必要である。(旅行計画書には、同連絡体制表の記載は不可欠)
(一) 学校連絡先
(イ) 住所、電話番号
(ロ) 留守校の連絡責任者氏名及び夜間連絡先(自宅)
(二) 旅行会社及び現地エージェント連絡先
(イ) 住所、電話番号、夜間連絡先
(ロ) 旅行中の担当者氏名
(三) 旅行先宿泊先
(イ) 住所、電話番号
(ロ) 旅行団責任者氏名
(ハ) (ホームステイを実施する場合)、代表者氏名及び連絡先(現地到着後でも良いが、必ず緊急連絡網を作成すること。但し、代表連絡先だけは、事前に了知しておくこと。)
二 事件、事故が発生した場合、すぐに関係者と連絡が取れるよう、旅行引率教員及び参加生徒全員が次の連絡先を知っているべきであり、更に、現地での電話の掛け方も参加者全員が知っていることが必要である。
(一) 現地在外公館連絡先
(イ) 旅行先の最寄り日本側在外公館の住所及び電話番号
(ロ) (夜間及び休日等在外公館の閉館時に連絡を取る必要がある場合、東京の外務本省経由で現地在外公館の領事事務担当者に連絡を取るので、)外務本省、邦人保護課:電話番号(Tel・五八〇―三三一一ex・二三〇六他)及び、夜間連絡先となるオペレーションルーム:電話番号(Tel・五八〇―三三一一ex・二二六四他)
(二) 宿泊先の住所及び電話番号
三 その他の留意事項
(一) 事件、事故が発生した場合、引率教員は、学校へ連絡すると同時に、必要に応じて現地エージェント及び最寄り在外公館へ連絡する。
(二) 重要な事件、事故に関しては、必ず、現地では最寄り在外公館へ、また同時に、学校経由で外務本省邦人保護課(夜間はオペレーションルーム)へ連絡する。
注)外務省の現在(二〇〇三年六月現在)の連絡先は以下の通り。
邦人保護課
電話番号:〇三 六四〇二 二六三五
ファックス:〇三 六四〇二 二六三六
夜間連絡先(オペレーションルーム)
電話番号:〇三 六四〇二 二〇一二
(内線:二二六四、三一二一)
別添二
海外旅行傷害保険加入のポイント
[はじめに]
本資料は、昭和六三年三月に上海において発生した、修学旅行団を巻き込んだ列車事故の事後処理をふまえて平成元年三月に作成した資料の改訂版です。そのため、同列車事故と同程度の事故が発生する可能性があることを想定してまとめられています。幸いなことに、同列車事故の発生以降同程度の事故に巻き込まれた修学旅行団はありませんが、事故の発生する可能性は常時存在しています。資料中に明示している金額は一般的に高額ですが、この金額が必要となる可能性もあるのだということで、御参考としてください。
一 保険加入のポイント
(一) 外国における邦人の安全については、旅行の形態を問わず、第一義的には渡航者各人がその確保に努力すべきものであり、更に、当該国の治安維持に責任を持つ現地関係当局が保護に当たるべきである。また、外務省・在外公館は、邦人の求めにより、あるいは、個々人の努力の限度を越えるケースについて、事故現場での対応、関係当局との連絡等、邦人の安全確保・保護のために最大限の努力を行っている。従って、「教育目的の旅行だから、事故の際は、現地日本大使館・総領事館が医療施設の確保、負傷者の移送等全て面倒を見る筈だから、その経費まで修学旅行の主催者が用意する必要はない」との考えは誤りであり、「第一義的には、主催者が処理を行い、経費(下記四)の全てを取りあえず負担し、しかる後に加害者へ経費の請求をする」との姿勢が強く望まれる。
(二) 事故の際の賠償責任は加害者が負うべきであるが、多くの場合は、加害者の特定が困難であるか、加害者に十分な支払能力がないかのどちらかである。これは、先進国、開発途上国を問わない。すなわち、先進国であっても、加害者が保険に加入していない場合は補償を期待し得ない。政府に対して賠償責任を追及することは、たとえ加害者が国営企業であっても困難である。海外旅行は右現実を念頭に実施すべきものであり、万が一を考えた場合、保険加入(支払金額は十分高額なもの)は不可欠であり、主催者側も右を自覚して、最悪の場合を想定して旅行計画を策定すべきである。
(三) 上記(一)及び(二)を考慮すれば、旅行参加者全てが、十分に保険でカバーされるべきであることは明白であり、保険加入を希望しないものについては、「自己の意志により保険には加入しない」旨文書で意志表明をさせる等の措置は講じておくべきである。
二 一般的海外旅行傷害保険の担保保険
海外旅行傷害保険は、傷害による死亡・後遺傷害担保保険と、傷害治療費用、疾病治療費用、疾病死亡、賠償責任、携行品、救援者費用、自動車運転者賠償責任等の担保保険とで構成されている。
三 どの担保保険に着目するか
死亡・後遺傷害担保保険の支払限度額は通常数千万円単位であることから「海外旅行傷害保険はかなりの高額まで補償するものだ」と思いがちであるが、高額なのは、「死亡・後遺傷害」についてだけであることを忘れてはならない。海外で被災し、死亡及び重度の後遺傷害の犠牲者となる確率は極めて低いが、外国で疾病又は負傷する頻度は比較的高いので、傷害治療費用及び疾病治療費用の担保保険支払限度額にこそ注目すべきである。例えば、重傷者の治療に必要となる血小板の交換経費が一晩で二〇〇万円程度を要する地域もあり、同地域でこの治療を数日継続しただけでも数千万円を要する。従って、傷害治療費用及び疾病治療費用の担保保険支払限度額については、可能な限り高額としておくべきである。
四 大事故処理関連経費
修学旅行中に大事故に遭遇した場合の出費として、主催者は最低限次の経費負担の必要がある。
[事故直後]救援チーム派遣費用
(移送用航空機(チャーター機)運航費 数千万円)
(移送のための医療チーム派遣経費 数百万円)
[事故後]死亡者に対する補償金(新ホフマン方式で計算すると、高校生で一人当たり約二、三〇〇万円となるが、海外旅行傷害保険会社によれば、家族が納得するには通常五、〇〇〇万〜六、〇〇〇万円程度の額が必要となる。)
負傷者に対する補償金
五 保険加入の留意点
(一) 上記四の経費等金額の出費が保険でカバーされるようにする。
(二) 本邦の海外旅行傷害保険会社は全て、世界的な海外緊急援助サービスの会社(アシスタンス会社)と提携しているので、実際の救援活動は可能な限りアシスタンス会社が実施するが、右救援活動経費は、海外旅行傷害保険の傷害治療費用あるいは救援者費用経費担保保険で支払われる。換言すれば、救援活動経費を支出した分だけ、傷害治療費用担保特約の本来の治療費用への支払限度額が低くなる。
(三) 世界的な海外緊急援助サービスの会社(アシスタンス会社)は、世界中をカバーしているというとはいうものの、各社それぞれ強い地域と弱い地域があるので、旅行先の地域に一番強い海外緊急援助サービスの会社(アシスタンス会社)と提携した保険会社と契約するのが望ましい。
(四) 保険契約の際は、事故の際に海外緊急援助サービスの会社(アシスタンス会社)が迅速に救援チームを派遣できるように、旅行の日程・行程、参加者の血液型リストを、保険会社を通じてアシスタンス会社に渡しておくべきである。
別添三
「当方へ必ず連絡していただきたい点」
一 日程表(フライト便名、時刻)
二 学校連絡先(住所、郵便番号、電話番号)
三 留守校(連絡責任者氏名、夜間・休日連絡先)
四 旅行中の宿泊先(住所、電話番号)
五 旅行会社(住所、電話番号)
六 保険会社(住所、電話番号)
七 参加者名簿(年齢、性別、合計参加者数)
なお、本件依頼書はファックスにて在外公館へ送付するため用紙はA四判片面クリップ止めにて送付方お願いします。
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