● 国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行について(教特法、給特法、人材確保法等) 平成15年8月25日 15文科初第592号
15文科初第592号 平成15年8月25日
各都道府県知事,各都道府県教育委員会,各都道府県人事委員会あて
文部科学省初等中等教育局長 近藤信司
国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行について(通知)
このたび,別添のとおり,「国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「法」という。)」が平成15年7月16日に法律第117号をもって公布され,平成16年4月1日から施行されることとなりました。
今回の改正は,国立大学等の法人化を行うことを目的とする
「国立大学法人法」(平成15年7月16日法律第112号)
「独立行政法人国立高等専門学校機構法」(平成15年7月16日法律第113号)
「独立行政法人大学評価・学位授与機構法」(平成15年7月16日法律第114号)
「独立行政法人国立大学財務・経営センター法」(平成15年7月16日法律第115号)
「独立行政法人メディア教育開発センター法」(平成15年7月16日法律第116号)
の5法律の施行に伴い,関連する法律の規定の整備等を行うものであります。公立学校については,国立大学の法人化に伴い国立大学附属学校の教員が国立大学法人の職員となり,「国家公務員法」(昭和22年法律第120号)や「一般職の職員の給与に関する法律」(昭和25年法律第95号)の適用を受けなくなることを受け,これまで国立学校の教員の給与を基準としていた公立学校の教員の給与について,各地方公共団体が地域ごとの実態を踏まえて給料や諸手当の額を主体的に定めることができるようにするとともに,条例で定めるところにより各地方公共団体が教員の職務と責任の特殊性に基づき,現行と同様の給与を支給することができるようにするため,関係規定を整備したものであります。あわせて,公立学校の教員等の身分取扱い等については,引き続き現行と同様の制度とすることができるよう,関係法律を整備しております。
本法のうち,公立の義務教育諸学校等に係る事項の概要は下記のとおりですので,各都道府県においては,今後,本法の趣旨に沿って,条例の見直し等につき適切に措置されるようにお願いします。
各都道府県におかれましては,域内の各市町村に対してこれらのことを周知し,本法の趣旨を徹底するとともに,条例の見直し等につき適切に措置するよう促していただくよう御配慮願います。
なお,関係政令及び省令の改正については,追ってこれを行い,別途通知する予定ですので御承知おき下さい。
記
第1 教育公務員特例法の改正(法第6条)
1 公立学校教員の給与制度の見直しに係る改正
(1)公立学校の教育公務員の給与の種類及びその額を国立学校の教育公務員の給与の種類及びその額を基準として定めるものとしている「教育公務員特例法」(昭和24年法律第1号,以下「教特法」という。)第25条の5の規定を削除したこと。
(2)公立の小学校等の校長及び教員の給与については,これらの者の職務と責任の特殊性に基づき条例で定めることを規定したこと(改正後の教特法第13条第1項)。これにより,国立大学の法人化後も,これまでと同様に,
@ 公立学校の校長及び教員の給料については,行政職等他の職の給料表とは別個に教員に特有の給料表を定め,校長,教頭や教諭など職務と責任に応じた級に分類すること
A 教員に特有の職務や勤務等に対しては,行政職等他の職の公務員に支給される手当とは別個に,若しくは別の支給要件に基づいて,その職務や勤務の複雑性・困難性に見合う手当が支給されること
を踏まえ,条例で定めること。
(3)公立学校の教育公務員に係る義務教育等教員特別手当については,国立学校の教育公務員に係る義務教育等教員特別手当を基準として定めていたところ,今回の改正により教特法第25条の5を削除することから,新たに教特法に公立学校の校長及び教員に対する同手当の支給に関する規定を設け,同手当については,これまでと同様に,
@ 公立の小学校,中学校,中等教育学校の前期課程又は盲学校,聾学校若しくは養護学校の小学部若しくは中学部に勤務する校長及び教員
A これらの校長及び教員との権衡上必要があると認められる公立の高等学校,中等教育学校の後期課程,盲学校,聾学校若しくは養護学校の高等部若しくは幼稚部又は幼稚園に勤務する校長及び教員を対象とするものとし,その内容は条例で定めることとしたこと(改正後の教特法第13条第2項)。
2 公立学校教員の身分取扱いに関する改正
(1)国立大学の法人化に伴い「国立学校の教育公務員の例」がなくなることから,公立学校の教育公務員の職階制について国立学校の例に準拠することとした規定(教特法第21条の3)を削除したこと。
(2)国立学校の法人化に伴い「国立学校の教育公務員の例」がなくなるが,公立学校の教育公務員について,その職務の特殊性に基づく政治的行為の制限の要領は変わらないことから,これを引き続き維持することとし,国家公務員の例によることとしたこと(改正後の教特法第18条)。
(3)国立大学の法人化に伴い「国立学校の職員の例」がなくなることから,公立学校の職員に係る「管理職員等の範囲」について国立学校の例に準拠することとした規定(教特法第21条の5第3項)を削除したこと。
3 その他の改正
国立大学の法人化に伴い国立学校の教員は国立大学法人の職員となり,国家公務員法等の適用を受けなくなることから,これを受け,国家公務員である国立学校の教員の退職手当に関する大学院修学休業の期間の取扱いについて定めた教特法第20条の8の規定を削除したこと。
なお,今回の措置は地方公務員である公立学校の教員の退職手当に関する大学院修学休業の期間の取扱いを変更するものではないことから,各地方公共団体においては,引き続き現行と同様の取扱いとすることが適切であること。
第2 高等学校の定時制教育及び通信教育振興法の改正(法第17条)
(1)国立大学の法人化に伴い国立学校の教員は国立大学法人の職員となり,国家公務員法等の適用を受けなくなることから,これを受け,「高等学校の定時制教育及び通信教育振興法」(昭和28年法律第238号,以下「定通振興法」という。)について,国立の高等学校の校長及び教員に対する定時制通信教育手当の支給に関する規定(第5条及び第6条)を削除するとともに,所要の規定の整備を行ったこと。
(2)公立の高等学校の校長等に対する定時制通信教育手当てについては,これまでと同様に,
@ 公立の高等学校で,定時制の課程又は通信制の課程を置くものの校長,教頭及び教員
A これらの学校の実習助手であって,その技術が優秀と認められるものとして政令で定める者
を対象とするものとし,その内容は条例で定めることとしたこと(改正後の定通振興法第5条)。
第3 女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律の改正(法第20条関係)
(1)国立大学の法人化に伴い国立学校の教員は国立大学法人の職員となり,国家公務員法等の適用を受けなくなることから,これを受け,「女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律」(昭和30年法律第125号)について,国立の義務教育諸学校等に勤務する女子教職員の出産に際しての補助教職員の臨時的任用に関する規定を削除するとともに,所要の規定の整備を行ったこと。
(2)公立の義務教育諸学校等に勤務する女子職員が出産する場合については,これまでと同様に,当該学校の教職員の職務を補助させるための教職員を臨時的に任用するものとされていること。
第4 国立及び公立の学校の事務職員の休職の特例に関する法律の改正(法第24条関係)
(1)国立大学の法人化に伴い国立学校の教員は国立大学法人の職員となり,国家公務員法等の適用を受けなくなることから,これを受け,「国立及び公立の学校の事務職員の休職の特例に関する法律」(昭和32年法律第117号)について,法律名を「公立の学校の事務職員の休職の特例に関する法律」に改めるとともに,国立学校(大学を除く)に勤務する事務職員が結核性疾患のため休職した場合の給与について定めた規定を削除するなど,所要の規定の整備を行ったこと。
(2)公立学校(大学を除く)に勤務する事務職員が結核性疾患のため休職した場合については,これまでと同様に,教特法第14条を準用し,休職の期間中の給与の全額を支給することとすること。
第5 農業,水産,工業又は商船に係る産業教育に従事する国立及び公立の高等学校の教員及び実習助手に対する産業教育手当の支給に関する法律の改正(法第25条関係)
(1)国立大学の法人化に伴い国立学校の教員は国立大学法人の職員となり,国家公務員法等の適用を受けなくなることから,これを受け,「農業,水産,工業又は商船に係る産業教育に従事する国立及び公立の高等学校の教員及び実習助手に対する産業教育手当の支給に関する法律」(昭和32年法律第145号,以下「産業教育手当法」という。)について,国立の高等学校の教員及び実習助手に対する産業教育手当の支給についての規定(第3条)を削除するなど,所要の規定の整備を行ったこと。
(2)公立の高等学校の教員等に対する産業教育手当てについては,これまでと同様に,
@ 農業,水産,工業,電波又は商船に関する課程を置く公立の高等学校の教員のうち高等学校の農業若しくは農業実習,水産若しくは水産実習,工業若しくは工業実習又は商船若しくは商船実習の教諭又は助教諭の免許状を有する者であって,実習を伴う農業,水産,工業,電波又は商船に関する科目を主として担任するもの
A これらの学校の実習助手のうちその技術が優秀と認められるものとして政令で定める者であって,実習を伴う農業,水産,工業,電波又は商船に関する科目を主として担任するものを対象とするものとし,その内容は条例で定めることとしたこと(改正後の産業教育手当法第3条)。
第6 国立及び公立の義務教育諸学校の教育職員の給与等に関する特別措置法の改正(法第33条関係)
(1)国立大学の法人化に伴い国立学校の教員は国立大学法人の職員となり,国家公務員法等の適用を受けなくなることから,これを受け,「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(昭和46年法律第77号,以下「給特法」という。)について,法律名を「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」に改めるとともに,国立の義務教育諸学校等の教育職員に対する教職調整額の支給その他の措置について定めた規定(第3条から第7条)を削除するなど,所要の規定の整備を行ったこと。
(2)国立大学の法人化後も,公立の義務教育諸学校等の教育職員に対する教職調整額について,これまでと同様の取扱いとするため,
@ 公立の義務教育諸学校等の教育職員には給料月額の100分の4に相当する額を基準として,条例で定めるところにより,教職調整額を支給しなければならないこと
A 公立の義務教育諸学校等の教育職員については,時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給しないこと
B 教職調整額の支給を受ける者の給与に関し,給料をその算定の基礎とする手当を算定する場合等において,給料に教職調整額の額を加えた額を算定の基礎とするなどの措置を講じること
を規定したこと(改正後の給特法第3条及び第4条)。
これにより,国立大学の法人化後も,引き続き給料月額の100分の4に相当する額を基準として教職調整額を支給することが必要であること。
(3)公立学校の教育職員については,国立大学の法人化後も時間外勤務手当制度は適用せず教職調整額を支給することから,これまでと同様に,時間外勤務を命じる場合には健康及び福祉を害しないように考慮しなければならないこと,時間外勤務手当の支払いを義務づけた労働基準法第37条の規定を適用除外することなど,地方公務員法第58条第3項の読替えを引き続き規定することとしたこと(改正後の給特法第5条)
(4)これまで公立学校の教育職員に時間外勤務を命ずる場合は,国立学校の教育職員の例を基準として条例で定める場合としてきたが,国立大学の法人化に伴い国立学校の教育職員に係る規定が削除されることから,公立学校の教育職員の時間外勤務が引き続き適切に命ぜられるよう,
@ 公立学校の教育職員に時間外勤務を命ずる場合については政令で定める基準に従い条例で定めること
A 政令で定める場合には教育職員の健康と福祉を害することとならないよう勤務の実情について十分な配慮がなされなければならないこと
を規定したこと(改正後の給特法第6条)。
なお,政令の内容については,現行の「教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合に関する規程」(昭和46年7月5日文部省訓令第28号)と基本的に同じ内容(ただし,第4条に掲げる事項については,第3号の学生の教育実習の指導に関する業務を除く。)を規定することを予定していること。
第7 学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する法律(法第34条関係)
(1)国立大学の法人化に伴い国立学校の教員は国立大学法人の職員となり,国家公務員法等の適用を受けなくなることから,これを受け,「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する法律」(昭和49年法律第2号,以下「人材確保法」という。)について,人事院が国会及び内閣に対し国立の義務教育諸学校の教育職員の給与について,第3条の規定の趣旨に則り必要な勧告を行うべきことを定めた第4条の規定を削除するとともに,所要の規定の整備を行ったこと。
(2)義務教育諸学校の教員の給与について一般の公務員よりも優遇することを定めた第3条の規定は引き続き維持されることから,公立の義務教育諸学校の教員の給与については,これまでと同様に一般の公務員に比較して優遇措置が請じられなければならないこと。
第8 留意事項
今回の改正は,国立大学の法人化に伴い国立学校の教員は国立大学法人の職員となり,国家公務員法等の適用を受けなくなることから,これを受け,国立学校準拠制を廃止し,各地方公共団体が地域ごとの実態を踏まえて,公立学校の教員の給料や諸手当の額をより主体的に条例で定めることができるようにするものであるが,国立大学の法人化後も,
@ 引き続き人材確保法第3条の規定により義務教育諸学校等の教員の給与については一般の公務員に比較して必要な優遇措置が講じられなければならないこと
A 改正後の教特法第13条第1項の規定により公立学校の小学校等の校長及び教員の給与はその職務と責任の特殊性に基づき定めるものとすること
B 地方公務員一般の原則として,職員の給与は,生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員の給与並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定めなければならないこと(「地方公務員法」(昭和25年法律第261号)第24条第3項)とされており,現行の教員給与体系の基本は維持されるので,公立学校教員の給与について引き続き必要な水準が保たれるよう留意すること。
別添 略
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