● 児童生徒の問題行動対策重点プログラム(最終まとめ) 平成16年10月 文部科学省

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児童生徒の問題行動対策重点プログラム
(最終まとめ)


平成16年10月
文部科学省

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はじめに

 本年6月1日に、長崎県佐世保市において、小学校6年生の女子児童による同級生殺害事件が発生した。また、7月6日には、新潟県三条市において、小学校6年生の男子児童が同学年の男子児童から包丁で切りつけられるという事件が発生した。さらに、7月22日には、富山県福光町において、女子高校生2人組による殺人未遂事件が発生するなど子どもによる重大事件の相次ぐ発生は、社会全体に大きな衝撃を与え、学校教育においては教育の原点に立ち返った早急かつ根本的な対応が求められている状況にある。
 これまでも、学校教育においては、命の大切さを教える教育や情報社会におけるモラル教育などについて各種の取組を行ってきたところである。しかしながら、多くの子どもたちが命の大切さを実感し、他人を思いやって生きている一方で、こうしたことを十分に理解できず、他人を身体的、精神的に傷つける子どもがいることも事実である。
 文部科学省においては、長崎県佐世保市における事件発生後、省内に「児童生徒の問題行動に関するプロジェクトチーム」を設置し、現地調査や長崎県教育委員会からの報告の聴取を実施して今回の事件の背景等を整理するとともに、同種の事件の再発防止について検討を行ってきた。
 これらを踏まえ、本事件においては、
@ 同級生の女子児童をカッターナイフで切りつけ殺害した後すぐ後悔をしている状況であることから、命の大切さを頭では知っているようでも、一時の衝動的な感情に抑制が働かなくなってしまう状態であった
A 学校では、事件1週間前にカッターナイフを振り上げて男子の同級生を威嚇したことが事件後に報告されるなど、加害児童の変化についての状況が把握できておらず、前兆行動の把握が十分ではなかった
B インターネット上の掲示板への書き込みが、被害児童に対する「怒り」や「憎しみ」を抱く大きな要因の一つとの指摘があり、インターネットを通じたやり取りには日常会話とは異なる側面があることについて、情報モラル、マナーという観点からの学校などにおける指導が十分とはいえなかった
といった課題が明らかになった。
 このような点を踏まえ、プロジェクトチームにおいては、再発防止に向けた取組として、学校と家庭、地域、関係機関等とが一層連携を緊密にして、
@ 命を大切にする教育
A 学校で安心して学習できる環境作り
B 情報社会の中でのモラルやマナーについての指導の在り方
に重点を置いた施策を講ずることが必要であると考え、本プログラムを策定したものである。
 今後は、子どもたち誰もが、命の大切さや他人を思いやる心を身に付けるとともに、情報社会の進展を踏まえながら、安心して日々の生活を生き生きと送れるようにするため、本プログラムに示された方向に沿って施策の実現を図っていく必要がある。このため、文部科学省としては、本プログラムに例示された施策のうち、現場の取組で実施可能な事項については、早急にその推進を図っていくとともに、その他の施策や事業については、これまでの事業の効果に対する検証も踏まえながら、今後、実施方法や実施体制の在り方等について、関係省庁との間で所要の協議・検討を進めることとする。
 また、教育委員会等にあっては、このような事件が再び起こることのないように、関係機関と緊密な連携を図りながら、子どもの問題行動対策を緊急かつ重点的に進めていただきたい。
 さらに、地域住民、保護者、情報関連産業等の方々にあっては、子どもが健やかに育つことができる社会環境の確立に向けた取組に対して、積極的に協力していただきたい。

1. 命を大切にする教育の充実

 「命を大切にする教育」については、平成9年の神戸市須磨区における連続児童殺傷事件以降、全国各地において積極的な取組が行われてきた。しかしながら、昨年の沖縄県や長崎県において発生した中学生等による殺人事件に続き、本年に入ってからも長崎県佐世保市の小学校において6年生の女子児童が同級生に殺害されるという事件(以下、本事件という)や、新潟県三条市の小学校において、同じく小学校6年生の男子児童が同学年の男子児童から包丁で切りつけられるという類似の事件が発生している状況にある。こうした事件の原因・背景は様々であると考えられるが、自他の生命のかけがえのなさなどについての実感が育まれていなかったり、自分の感情を適切にコントロールができないなど自己抑制力が培われていないことがうかがえる。これまでも「命を大切にする教育」の重要性が言われてきたが、十分な成果を挙げていないと言わざるを得ない。
 とりわけ、こうした事件によって、子どもたちのかけがえのない命が奪われたり、身体が傷つけられるという重大な結果につながったことを思うとき、改めて家庭、学校、社会のすべての大人たちが、次の世代の子どもたちに対して「命を大切にする教育」をさらに充実し、実効あるものとして進めていくことが必要である。具体的には、子どもたちが@かけがえのない命を大切にする心を育み、A伝え合う力を高め、望ましい人間関係をつくる力を身につけ、B生きることの素晴らしさを体験活動を通じて実感できるようにすることが重要である。

(1) 命を大切にする心を育む教育の充実
 本事件の加害児童は、命の大切さについて頭では知っているようでも、行動規範として身についていない状況にあったと考えられる。そこで、子どもが自他の生命の大切さを実感し、「他人を傷つけない」、「自分を傷つけない」といった基本的な倫理観を踏まえて生命を尊重した行動がとれるよう、命を大切にする心を育むため、次の施策を推進する。

○ 生命を尊重する教育の推進
 道徳の指導をはじめ教育課程全体を通じて、自他の生命のかけがえのなさ、誕生の喜び、死の重さ、生きることの尊さ、自信や夢をもって生きることの大切さなどを積極的に取り上げる場や機会を増やし、子どもの心に響く教材(「心のノート」を含む)の開発・活用や外部人材の活用等を含め、命を大切にする心を育むための教育の在り方について実践研究するモデル事業を実施し、その成果を取りまとめ、教育委員会や学校に普及させる。

○ 家庭における命の教育に対する支援
 子どもに命の大切さを実感させることや基本的な生活習慣を身につけさせることなどについて盛り込んだ新家庭教育手帳を小学生等を持つ保護者に配布するとともに、子育て支援団体のリーダーなどの指導者が子育て講座等を効果的に行うための手引きを作成・配布する。
 また、命を大切にする子どもを育てることなどに関するビデオ資料を作成し、教育委員会等へ配布することによって、子育て講座等での学習の充実を図る。

(2) 伝え合う力と望ましい人間関係の指導の推進
 本事件のように子どもたち相互の間で生じたトラブルの解決を暴力に訴えることのないようにするため、自分の気持ちや考えを適切に相手に伝え、生活上の問題を言葉で解決する力を育てるとともに、他者を認め互いに尊重し合い、望ましい人間関係を構築するための指導を推進する。

○ 伝え合う力を高め、望ましい人間関係を構築するための実践的なプログラムの開発・実施
 学校の様々な教育活動の特質を生かし、お互いの考えや気持ちを伝え合う力を高め、生活上の問題を言葉で解決する力を育てるとともに、児童生徒が相互理解や望ましい人間関係づくりを進めるためのモデル事業を実施し、その成果を取りまとめ、教育委員会や学校に普及する。

○ 衝動的な行動抑制のためのプログラム等の活用の促進
 子どもの社会性を育成し、自制心や自立心、ストレスへの対応力を含む自己指導力やモラルを高めるため、多様で効果的なプログラムなどを広く収集し、その情報を学校や教育委員会等に提供し、その活用を促進する。

(3) 社会性を育む体験活動の充実
 本事件では、生や死に関して現実とヴァーチャルな世界との区別についての理解が未熟であることに加え、仲の良かった同級生を殺害していることから、他者への献身、奉仕の心、思いやりの心等が十分に育っていないと考えられる。
 そこで、効果的な体験活動を通じて、心の絆づくりと望ましい人間関係の形成を目指すために、次の施策を推進する。

○ 他人を思いやる心を育むこと等を目的とした体験活動の推進
 子どもの社会性や豊かな人間性を育むため、学校における自然体験活動や社会奉仕体験活動などの体験活動を着実に実施し、子どもの体験活動を充実させる。また、地域間交流や長期宿泊体験を通じて、実際に顔を合わせてコミュニケーションをとる機会の充実を図るとともに、「命の教育」を取り入れた体験活動に関する調査研究を実施し、心の葛藤を衝動的な行動に変えない力を身に付けさせ、他人を思いやる心を育むようにする。こうしたモデル事業の成果を取りまとめ、その取組を全国に普及する。

○ 学校における奉仕活動の実施についての指導の徹底
 学習指導要領の趣旨を踏まえ、心の絆や人間関係を広げる奉仕活動等を、各学校の設置者が地域の実情に応じて、一定時間を設定して実施することについて指導を徹底する。

○ 青少年教育施設等における体験活動の充実
 青少年教育施設において、自然体験活動など様々な体験活動の機会の提供や、悩みを抱える青少年を支援するための教育プログラムなどの先導的・モデル的な教育プログラムの開発を推進する。
 また、子どもたちが主体的に考え、子ども同士で協力しながら解決策を見い出す過程を重視した体験活動を実施することにより、子どもたちの主体性、問題解決能力などを育む機会を提供するためのモデル事業を実施し、その成果を取りまとめ、当該指導手法を全国に普及する。

○ 人間性の向上を図るためのスポーツ振興の充実
 子ども達がスポーツ活動を通じて自然や仲間との交流、スポーツマンシップにのっとった行動、目標に向けての練習とその達成のための努力などの様々な体験を積み重ねることにより、共生感や協調性、ルールを守り公正さを重んじる精神、克己心などの社会性や人間性を培うことができるよう、体育・運動部活動の活性化や総合型地域スポーツクラブの育成などスポーツ振興の一層の充実を図る。


2. 学校で安心して学習できる環境づくりの一層の推進

 学校は子どもたちにとって安心して学べる場でなければならず、学校の安全に対する信頼が揺らぐようなことがあってはならない。本事件においては、子どもの性格や行動の変化おらず、5年生の時の担任との引継ぎや学校として組織的な対応が十分ではなかった点がある。
 これらのことから、複数の視点からについて学校が把握できて子どもの変化に対応できる体制の確立等に努めること、組織的な対応を行うために生徒指導体制を強化すること、犯罪抑止教育を推進すること、関係機関等と連携を強化することが重要である。

(1) 複数の視点から子どもの変化に対応できる体制の確立等
 本事件の加害児童は事件の1週間前にカッターナイフを振り上げ、男子の同級生を威嚇するといった行動をしていたが、こうした変化を学校関係者は把握できていなかった。これは前期思春期の子どもの微妙な心や行動の変化に気付くのが難しい側面があった可能性が高い。
 そこで、子どもが自分を追い込む前にその変化を発見できる多角的な児童生徒理解や相談に関する体制を一層整備するために、次の施策を推進する。

○ 複数の視点から子どもの変化に対応できる相談体制の整備
 学校においては、複数の視点から子どもの変化に適切に対応できるように相談体制の充実を図る。具体的には、スクールカウンセラーや子どもと親の相談員の配置を拡充して、子どもの心の変化の早期把握に努めるほか、小学校高学年・中学校の校内での生活実態をより効果的に把握するため、男性教師と女性教師が共同で生徒指導に当たるようにする。

○ 幼児期からの相談体制の充実
 幼児期からの心の育ちに関し、保護者に対するカウンセリングを実施するため、市町村教育委員会の幼児教育支援課室等に、乳幼児に関する教育相談について専門的知識・経験を有する者を「保育カウンセラー」として配置した上で、管内の公私立幼稚園等に派遣し、教員や親の相談に応じるような体制を整備するなど、幼児期からの相談体制を充実する。

○ 第三者相談機関の利用の促進
 子どもは親や教師や友人にも言えない悩みを抱える場合もあることから、例えばNPO法人チャイルドライン支援センターが実施している「チャイルドライン」などの第三者による相談機関の電話番号の周知をするなど、子どもが早期に安心して利用できる相談機関の、子どもや保護者への啓発及びその利用の促進を図る。

(2) 生徒指導体制の強化
 本事件では、生徒指導上の問題点(学級経営案に「安全に対する判断・注意力、また、活動や決まりに対する責任感が十分でない。」などの実態があげられている)について、実際の指導を担任に任せており、学校として組織的な対応が十分ではなかったといえる。そこで、学校として十分な生徒指導が行えるよう体制を強化するために、次の施策を推進する。

○ 「生徒指導推進協力員」の配置
 学校における生徒指導を地域の人材を活用することによって効果的に推進していくために、「生徒指導推進協力員」を問題行動の多い小学校を中心に派遣し、子どもの行動等の変化の早期把握に努める。

○ 生徒指導を担当する教員への支援体制づくりの推進
 小学校において生徒指導を担当する教員については、例えば校務分掌の見直しや担当授業時間数の軽減などにより、生徒指導により専念できる体制づくりを推進する。また、生徒指導主事を中心として、学年間(・学校間)における個別指導記録による引継ぎや定期的な子どもや保護者との個別面談や家庭訪問等の実施等に係わる連絡調整、助言等が効果的に行われるようにする。

○ 小学校における生徒指導の在り方についての指導資料の作成・配布
 小学校における生徒指導の現状や課題について幅広くデータを収集し、その分析・検討を通して生徒指導体制の改善や今後の生徒指導の在り方を提言として平成16年度中にまとめ、生徒指導資料集として全国に普及する。

(3) 犯罪抑止教育の推進
 本事件の加害児童は、明確な殺意を抱いた上で計画的に被害児童を殺害しているにもかかわらず、自分の行為の違法性、重大性を十分に認識していないと考えられる。これは、犯行を躊躇し、思いとどまらせるために必要な自己抑制力が身についていなかったことを示している。そこで、犯罪の抑止に重点を置いた教育を推進するために、次の施策を推進する。

○ 非行防止教室プログラム事例集(仮称)の作成・配布
 犯罪被害者の体験談を取り入れた学習を含め、社会のルールや自分の行為に責任を持つということを学ぶ一環として、小学校高学年から、非行、犯罪の防止等を目的とした学習を推進する。そのための教材として、警察官等関係機関職員等と共同して非行防止教室を実施するためのプログラム事例集を平成16年度中に警察庁と共同で作成した上で、教育委員会等に配布する。

(4) 関係機関との連携の強化
 問題行動の未然防止・対応については、学校だけでの対応では限界があり、特に重大事件等の際には警察や児童福祉施設等の関係機関と連携を取って対応することが不可欠である。そのため、学校と警察との相互連絡制度の実施など関係機関との連携の強化を推進するとともに、問題行動発生時にはサポートチームの形成など早期に関係機関等と連携して対応していく体制の確立が必要であることから、以下の施策を推進する。

○ 学校警察連絡制度の推進
 一般的な情報交換にとどまらず、都道府県及び市町村レベルにおいて、学校と警察が相互に問題行動や非行に関する情報の連絡を行い、協力して対策を講ずる学校警察連絡制度の普及・充実を図る。

○ 地域における支援システムづくりの推進
 問題行動を起こす個々の子どもに着目して的確な対応を行うため、学校、教育委員会、関係機関等からなるサポートチームの組織化など、地域における支援システムづくりを推進するためのモデル事業を実施し、その成果を取りまとめ、全国に普及する。


3.情報社会の中でのモラルやマナーについての指導の在り方の確立

 近年の我が国における急速な情報化の進展は、子どもを取り巻く環境にも大きな影響を及ぼしている。特に、子どもが日常生活において接する各種メディアが提供する情報等には有益なものも多い反面、行き過ぎた暴力・残虐表現を含む情報や性描写等が子どもの人格形成に悪影響を及ぼすおそれがあることが指摘されている。このような状況下、子どもがインターネットを利用する際のモラルやマナーについての教育は必ずしも十分ではなく、また利用状況を常時把握することは困難である。
 また、本事件を含め、メディア上の暴力表現等の有害な情報が子どもに与える影響は多大であるとの指摘もある。
 これらのことから、@子どもに対する情報モラル教育の充実、A家庭における情報モラル教育や有害情報対策への支援、B有害環境対策の更なる推進が重要である。

(1) 子どもに対する情報モラル教育の充実
 本事件では、インターネット上の掲示板への書き込みが、被害児童に対する「怒り」や「憎しみ」を抱く大きな要因の一つとなったとの指摘がある。このことから、インターネットを使う上でのモラルやマナーが子どもに十分に身に付いていない状況が考えられる。そこで、学校等における情報モラル等を含むIT教育の一層の推進を図るために、情報モラル等指導サポート事業を実施する。

○ 情報モラル等についての効果的な指導手法の調査研究等
 有識者等からなる研究会を設置して、学校教育における情報モラル等の効果的な指導手法を検討し、複数の学校におけるモデル事業の形で実践し、その成果を取りまとめる。また、当該指導手法等を普及するため、教員向け指導資料を作成し全国に配布する。

○ 情報モラル等指導サポートヘルプデスクの開設
 学校教育において、教員が情報モラル等の指導を行う過程で生じた質問に、情報モラル等の教育に係る専門家が答えるヘルプデスクを開設する。

○ 教員、子ども等を対象とした情報モラル等の普及啓発事業
 情報モラル等の普及啓発を図るため、情報モラル等に係る専門家による、学校の教員、子ども等を対象とした普及啓発事業を実施する。

(2) 家庭における情報モラル教育や有害情報対策への支援
 インターネット上でのやり取りについては、保護者が常時その内容を把握することは困難であることから、インターネットを利用する際の家庭における情報モラルに関するしつけや、フィルタリングソフト等の活用など家庭における有害情報対策が極めて重要になる。そこで、保護者に対して家庭における情報モラル教育や有害情報対策に関する学習機会や情報の提供などを行うため、次の施策を推進する。

○ 新家庭教育手帳等を活用した学習の推進
 インターネットは、使い方一つで子どもの身を危険にさらす道具にもなり、その使い方について親子で話し合うことなどについて盛り込んだ、新家庭教育手帳を小学生等を持つ保護者に配布するとともに、新家庭教育手帳等を活用して子育て支援団体のリーダーなどの指導者が子育て講座等を効果的に行うための手引きを作成・配布し、学習を推進する。
 また、深刻化する青少年の問題行動などに対処するため、情報社会におけるモラルやマナーの涵養等に関するビデオ資料を作成し、教育委員会等へ配布することによって、子育て講座等での学習の充実を図る

○ フィルタリングソフト等の活用の促進・普及
 出会い系サイト等の有害サイトから心理的に大きな影響を受けやすい子どもに安心して利用させられるインターネット環境を家庭において整備するために、PTA等の協力を得つつ、子どもが家庭においてインターネットを利用する際のフィルタリングソフト等の活用についての理解とその利用の普及を図る。

(3) 有害環境対策の推進
 本事件において、メディア上の暴力表現が加害女児の心に影響を与えたことが十分考えられるように、近年の我が国における急速な情報化の進展は、子どもを取り巻く環境にも大きな影響を及ぼしている。特に、子どもが日常生活において接する各種メディア等が提供する情報等には有益なものも多い反面、行き過ぎた暴力・残虐表現を含む情報や性描写等が子どもの人格形成に悪影響を及ぼしたおそれがあることが指摘されている。
 この子どもを取り巻く有害情報の問題は、大人社会にその責任があることを踏まえ、社会全体で対策を講じる必要があるとともに、子どもが身近に接する情報等を提供する各関係業界においては、それぞれ子どもに大きな影響を与えることを自覚し、有害情報について実効性ある自主規制を確実に行うことが必要である。このために次の施策を推進する。

○ 青少年を取り巻く有害環境対策の推進
 メディア上の有害情報については、青少年に対する更なる適切な対応が急務であることから、有害な図書などの区分陳列やビデオレンタル店等での年齢確認の徹底の申し入れなど、地域で大人たちが有害情報から青少年を守る取組や、青少年とその保護者を対象としたメディア対応能力の育成等を行う事業を実施するとともに、全国的な啓発を推進するためのフォーラムを開催する。

○ 啓発事業等の支援
 社団法人日本PTA全国協議会が実施しているテレビ番組の全国モニタリング調査等やNPOが実施している子どもとメディアの実態調査等を支援する。

○ 関係団体への要請
 インターネット関係団体、民放連等に対して、有害な情報の発信等について自粛を働きかけるなど、青少年の健全な育成に有害な情報への適切な配慮を平成16年中に文部科学省として要請する。





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