● 発達障害のある児童生徒等への支援について 平成17年4月1日 17文科初第211号
17文科初第211号 平成17年4月1日
各都道府県知事、各都道府県教育委員会教育長
各指定都市教育委員会教育長、各国公私立大学長
各国公私立高等専門学校長
独立行政法人国立特殊教育総合研究所理事長 宛
文部科学省初等中等教育局長(銭谷眞美)
文部科学省高等教育局長(石川明)
文部科学省スポーツ・青少年局長(素川富司)
発達障害のある児童生徒等への支援について(通知)
「発達障害者支援法」(平成16年法律第167号)、「発達障害者支援法施行令」(平成17年政令第150号)及び「発達障害者支援法施行規則」(平成17年厚生労働省令第81号)の趣旨及び概要については、「発達障害者支援法の施行について」(平成17年4月1日付け文科初第16号・厚生労働省発障第0401008号)をもってお知らせしました。
本法の施行に伴い、教育の部分について、留意すべき事項については下記のとおりですので、十分に御了知の上、適切に対処下さるようお願いします。
また、都道府県知事及び都道府県教育委員会におかれては、域内の区市町村教育委員会、所管の学校への周知に努めていただきますようお願いいたします。
記
第1 発達障害について
1 対象となる障害
本法における発達障害とは、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)における「心理的発達の障害(F80-89)」及び「小児〈児童〉期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F90-98)」に含まれる障害であるが、これらは、基本的に、従来から、盲・聾・養護学校、特殊学級若しくは通級による指導の対象となっているもの、又は小学校及び中学校(以下「小学校等」という。)の通常の学級に在籍する学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、高機能自閉症及びアスペルガー症候群(以下「LD等」という。)の児童生徒に対する支援体制整備の対象とされているものであること。
2 発達障害の早期発見
市町村教育委員会は、学校保健法(昭和33年法律第56号)第4条に規定する健康診断を行うに当たり、発達障害の早期発見に十分留意するとともに、発達障害の疑いのある者に対し、継続的に相談を行い、必要に応じ、早期に医学的又は心理的判断がなされるよう、また、就学後に適切な教育的支援を受けられるよう必要な措置をとること。
なお、その際には、関係部局や関係機関との緊密な連携の下、必要に応じ、専門家等の協力を得ること。
第2 発達障害のある児童生徒等への支援について
1 学校における発達障害のある幼児児童生徒への支援
(1) 文部科学省としては、平成19年度までを目途に、全ての小学校等の通常の学級に在籍するLD等を含む障害のある児童生徒に対する適切な教育的支援のための支援体制を整備することを目指し、各都道府県への委嘱事業を通じ、次のような取組を進めることとしていること。 また、平成17年度においては、幼稚園及び高等学校についても、一貫した支援体制の整備を推進するため、同様の取組を進めていること。
なお、教育委員会及び学校において支援体制を整備する際には、平成16年1月に文部科学省が作成した「小・中学校におけるLD(学習障害),ADHD(注意欠陥/多動性障害),高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」を参考にされたい。
@ 教育委員会における専門家チームの設置及び巡回相談の実施
都道府県及び指定都市教育委員会において、LD等か否かの判断や望ましい教育的対応について、専門的な意見等を小学校等に提示する専門家チームを設置すること。また、小学校等を巡回して教員等に指導内容や方法に関する指導や助言を行う巡回相談を実施すること。
A 小学校等における校内の体制整備
小学校等においては、校長のリーダーシップの下、全校的な支援体制を確立するため、LD等の実態把握や支援方策の検討等を行う校内委員会を設置するとともに、関係機関との連絡調整や保護者の連絡窓口、校内委員会の推進役としてのコーディネーター的な役割を担う教員(以下「特別支援教育コーディネーター」という。)を指名し、これらを校務分掌に明確に位置付けること。
B 小学校等における「個別の指導計画」及び「個別の教育支援計画」の作成
小学校等においては、必要に応じ、児童生徒一人一人のニーズに応じた指導目標や内容、方法等を示した「個別の指導計画」及び関係機関の連携による乳幼児期から学校卒業後まで一貫した支援を行うための教育的支援の目標や内容等を盛り込んだ「個別の教育支援計画」の作成を進めること。
(2) 盲・聾・養護学校、小学校等の特殊学級及び通級による指導においては、自閉症の幼児児童生徒に対する適切な指導の推進を図ること。その際には、「個別の指導計画」及び「個別の教育支援計画」の作成を進めること。
2 就労の支援
都道府県及び教育委員会は、必要に応じ、発達障害者が就労のための準備を適切に行えるようにするための支援が学校において行われるよう必要な措置を講じること。
3 発達障害のある児童生徒等の権利擁護
教育委員会及び学校においては、個人情報が漏洩したり差別的な取り扱いがなされたりすることがないよう発達障害のある児童生徒等の権利擁護に十分配慮して、適切な教育的支援、支援体制の整備等を行うとともに、保護者及び児童生徒等に対して、発達障害に関する理解を深めるため、必要な普及啓発を行うこと。
4 関係部局の連携
LD等の幼児児童生徒の支援体制の整備に当たっては、都道府県及び教育委員会においては、学校と地域の関係機関との連携協力による支援体制の整備を推進するため、広域又は地域の特別支援連携協議会の設置を通じ、医療、保健、福祉、労働等の関係部局とのネットワークを構築すること。
5 大学及び高等専門学校における教育上の配慮
発達障害のある学生に対し、障害の状態に応じて、例えば、試験を受ける環境等についての配慮や、これらの学生の学生生活や進路等についての相談に適切に対応する等の配慮を行うこと。
第3 発達障害に関する専門性の向上について
1 教員の専門性の向上
(1) 大学における教員養成について、盲・聾・養護学校、小学校等並びに幼稚園及び高等学校の教員養成課程において、発達障害に関する内容も含めて取扱うこととするよう、その充実に努めること。
(2) 各都道府県教育委員会においては、平成19年度までを目途に、すべての小学校等において特別支援教育コーディネーターの指名がなされるよう、研修を計画的に実施する必要があること。併せて、小学校等の教員に対して、発達障害に関する普及啓発を行うとともに、指導力の向上を図るための研修を実施すること。
その際、独立行政法人国立特殊教育総合研究所においては、各都道府県において特別支援教育コーディネーター養成又はLD等の指導について指導的な役割を果たす教育委員会の指導主事や教員を養成するための研修を実施していること、また、平成17年度からは、新たに各都道府県における自閉症の幼児児童生徒の教育に指導的な役割を果たす教育委員会の指導主事や教員を対象に「自閉症教育推進指導者講習会」を実施することとしていることに留意されたい。
2 発達障害に関する調査研究
独立行政法人国立特殊教育総合研究所においては、発達障害に関する主な研究として、次に掲げる研究を実施しており、その成果をまとめているため、活用されたいこと。
(1) 「小・中学校に在籍する特別な配慮を必要とする児童生徒の指導に関する研究」(平成15年度〜17年度)
小・中学校に在籍するLD等の特別な支援を必要とする児童生徒に対する指導内容や方法の在り方について研究を実施していること。その成果として「LD・ADHD・高機能自閉症の子どもの指導ガイド」が平成17年3月に作成されたこと。
(2) 「養護学校における自閉症を併せ有する幼児児童生徒の特性に応じた教育的支援に関する研究」(平成15年度〜17年度)
知的障害養護学校における自閉症を併せ有する幼児児童生徒の増加に伴い、自閉症を併せ有する幼児児童生徒の特性に応じた指導内容や指導法について研究を実施していること。その成果として「自閉症教育実践ガイドブック」が平成16年6月に作成されたこと。
(3) 「軽度知的障害学生に対する高等教育機関等における支援体制に関する研究」(平成14年度〜16年度)
高等教育機関における、知的障害や学習障害等のある学生の学習困難の状態や実際の支援内容・方法について、その状況を明らかにするとともに、適切な支援内容・方法の在り方について検討したこと。その成果として「発達障害のある学生支援ガイドブック」が平成17年3月に作成されたこと。
(初等中等教育局特別支援教育課)
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