● 登下校時における幼児児童生徒の安全確保について 平成17年12月6日 17文科ス第333号



17文科ス第333号 平成17年12月6日
附属学校を置く各国立大学法人学長、各都道府県知事、
各都道府県・指定都市教育委員会教育長 宛
文部科学省生涯学習政策局長(田中壮一郎)
初等中等教育局長(銭谷眞美)
スポーツ・青少年局長(素川富司)


    登下校時における幼児児童生徒の安全確保について


 この度,11月22日に広島市立矢野西小学校1年生の児童が,12月1日にも栃木県今市市立大沢小学校1年生の児童が,下校中に事件に遭遇し殺害されるという決してあってはならない事件が発生いたしました。
 各学校では,これまでも「幼児児童生徒の安全確保及び学校の安全管理についての点検項目(例)の改訂について」(平成13年8月31日13文科初第576号),「学校への不審者侵入時の危機管理マニュアル」(平成14年12月文部科学省)等を参考にして,登下校中の安全も含め対応に努めてきていただいたところですが,この度,登下校時における安全確保対策について別紙のように「登下校時における幼児児童生徒の安全確保について」としてとりまとめました。
 その概要は下記のとおりですので,別紙を踏まえ,学校や地域の実状に応じた安全確保対策を講じていただくようお願いいたします。
 本件については、警察庁とも協議し、都道府県教育委員会と都道府県警察との連携の強化について要請し、同庁においても、本日付けで、別添「通学路等における子どもの犯罪被害を防止するための諸対策の徹底について」を各都道府県警察の長等に対して発出していますので申し添えます。
 また,都道府県におかれては,所管の学校や,域内の市町村及び所轄の私立学校に対して周知していただくとともに,適切な対応がなされるよう御指導をお願いします。


                   記


1.通学路の安全点検の徹底と要注意箇所の周知徹底
 登下校時において幼児児童生徒の安全を確保するために,通学路の安全点検を教職員や保護者が定期的に実施し,要注意箇所の把握・周知徹底を行うこと。

2.登下校時の幼児児童生徒の安全管理の徹底
 登下校時において幼児児童生徒の安全を確保するためには,幼児児童生徒を極力一人にしないという観点から,集団登下校や保護者等の同伴等による安全な登下校方策の策定,幼児児童生徒の登下校を地域全体で見守る体制の整備等の対策を実施すること。

3.幼児児童生徒に危険予測・回避能力を身に付けさせるための安全教育の推進
 幼児児童生徒が犯罪に巻き込まれないようにするためには,幼児児童生徒に危険予測能力や危険回避能力を身につけさせることが必要であることから,通学安全マップの作成,防犯教室の実施等の取組を通じて,幼児児童生徒の発達段階に応じた実践的な防犯教育を推進すること。

4.不審者等に関する情報の共有
 日頃から,不審者の出没に関する情報等について,警察と連携をとりながら,学校と保護者,地域の関係団体等との間で,情報を迅速かつ確実に共有するための取組を進めていくこと。

5.警察との連携
 登下校時における安全確保対策を進めるに当たっては,警察との連携が不可欠であることから,学校警察連絡協議会の場等を通じた平常時の情報交換や防犯教室・防犯訓練への参加,不審者に関する情報の共有等様々な機会をとらえて,警察との意見交換等を実施すること。




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(別紙)

    登下校時における幼児児童生徒の安全確保について

                              17文科ス第333号
                              平成17年12月6日

第1 通学路の安全点検の徹底と要注意箇所の周知徹底
 登下校時の幼児児童生徒の安全を確保するためには、まず可能な限り安全な通学路を設定することが重要であり、それでも排除できない要注意箇所については、しっかりと把握し、関係者が共通認識を得ておくことが求められる。

@ 安全な通学路の設定と定期的な点検の実施
・教職員、保護者が実際に歩き、防犯の観点や交通事情等を配慮し、関係者が議論して可能な限り安全な通学路を設定する必要がある。
・通学路周辺の状況は変化することから、例えば、定期的に、毎学期点検を実施したり、必要に応じて随時実施することが望まれる。
・点検等により、障害物の放置、落書き、トンネル状通路等の電灯切れなど防犯上好ましくない状況が発見された場合は、関係機関とも連携をとり、通学路の環境整備を行う必要がある。

A 通学路における要注意箇所等の把握と周知徹底
・通学路に関し、保護者や警察、自治会などの関係者の間で共通認識を得ておくべき事項としては次のようなものが考えられる。
 + 危険・要注意箇所
  (道路が狭い、見通しが悪い、人通りが少ない、やぶや路地、倉庫、空家など人が身を隠しやすい場所が近い、大型車が頻繁に通る 等)
 + 公園や空地など不特定の人が容易に入りやすい場所
 + 交番や「子ども110番の家」など万一の際に幼児児童生徒が駆け込める場所
・把握した情報はPTAや保護者会で配布し、説明して共通認識を得る必要がある。また、最寄りの交番や警察、自治会などにも資料を配布することが望まれる。
・児童生徒に対しても「通学路安全マップ」の作成などを通して周知することが有効である。その際、次のような点に配慮することが望ましい。
 + 「通学路安全マップ」作成に当たっては、学級活動や生活科、総合的な学習の時間、児童会・生徒会活動など様々な機会を活用して、児童生徒自身の参加により作成を進めることが効果的と考えられること
 + 様々な学年を組み合わせたグループを作ったり、保護者とともに作成するなど狙いと発達段階を考慮して作成すること
 + 場合によっては、防犯についての専門的な助言を得るため、警察官の協力を得ることも考えられること
 + 児童生徒が実感をもって理解できるように、児童生徒自身による写真やイラスト、書き込みなども積極的に活用すること
 + 作成過程において、「子ども110番の家」を含む住民へのインタビューを行うなど地域住民と触れ合うことも有効であること


第2 登下校時の幼児児童生徒の安全管理の徹底

 学校や地域の実情に応じ、安全な登下校方策を策定し、地域全体で見守る体制を整備するとともに、登下校のルートや時間などに関して警察と情報を共有しておくことは、通学路に不審者を近づけない、あるいは犯行に及ばせないための重要な要素であると考えられる。

@ 安全な登下校方策の策定・実施
 幼児児童生徒を極力一人にしないという観点から、保護者や地域の協力を得ながら安全な登下校方策を策定し、実施していくことがまず第一に求められることであり、次のような点が重要である。

・教職員、保護者の間で登下校方策について議論し、共通認識を得ておくことが必要である。
・特に、小学校低学年の児童については、その安全がしっかりと確保できるよう、それぞれの学校の置かれている状況に応じて取組を進めることが重要である。
 + 例えば、小学校低学年の児童が登下校時に一人にならないよう、上級学年とともに集団登下校することも一つの方法であり、円滑に進めるため、登下校の順路を工夫したり、学年ごとに異なる下校時間をそろえることも効果的と考えられる。
 + 保護者や地域の方々の協力を得て、交代で同伴することなども一つの方法であると考えられる。
・様々な学校行事等のため、登下校の時間が不規則になる場合も考えられるが、このような場合には、十分な時間的余裕をもって保護者にしっかりと周知するとともに、警察や地域の関係団体等にも連絡して対策を講じておくことが必要である。
・特に冬期においては、日没が早くなることもあり、部活動等で遅くなるような場合には、保護者に事前に連絡しておいたり、場合によっては保護者の迎えを依頼するなどきめ細かな対策が求められる。
・遅刻、早退する幼児児童生徒については、時間、登下校方法について、保護者と確認することが重要である。

A 幼児児童生徒の登下校を地域全体で見守る体制の整備
 幼児児童生徒の安全な登下校を地域全体で見守る体制の整備は重要である。具体的には、ボランティアの方々の協力を得て、「あいさつ」や「声がけ」をしながら幼児児童生徒の登下校を見守ることや、看板の設置等により地域全体が幼児児童生徒の安全を見守っているという雰囲気を醸成することも重要である。

・ボランティアとして保護者や地域の方々の協力を得て、幼児児童生徒の登下校の見守りや通学路のパトロールを実施することも有効である。なお、保護者の協力を得る場合などは、例えば交代で数ヶ月に1回通学路に立てばすむようにするなど個々人の負担を少なくする配慮も必要である。
・保護者や地域の方々の理解を得るためには、PTAだけでなく、自治会など地域の様々な団体に協力を求めることが適当であると考えられる。
・パトロール等に参加する方々へ配布する腕章や共通ユニフォーム、ステッカーなどを活用し、目立つ形で幼児児童生徒を見守る体制を示すことも犯罪抑制効果が期待できる。
・地域の境界や地域内の様々な場所に幼児児童生徒の安全を守る取組についての看板等を設置したり、協力の得られる店舗や住宅にステッカーを貼るといった方策により、幼児児童生徒の安全が地域全体で守られているという環境を醸成することも有効である。

B 登下校のルートや時間などに関する警察との情報の共有
・幼児児童生徒の登下校のルートや時間などについては、最寄りの交番や警察署等にも連絡しておくことが重要であり、必要に応じ、登下校時のパトロールなどについて協力を依頼することも必要である。
・警察では、既に「学校周辺、通学路、児童公園等の子どもに対する犯罪が発生しやすい場所において、通学時間帯などを中心として、制服警察官による警ら・警戒活動を強化する」(「子どもを犯罪から守るための対策の推進要領」(平成17年5月19日付、警察庁))こととしており、学校と警察との連携を深め、登下校に関する情報を共有することは、犯罪を防止する上でも重要である。
・また、警察では、@地域での子どもが被害者となる事案の全般的な発生状況、A性犯罪、誘拐、子どもに対する声かけ事案、不審者の出没等子どもが被害者となる事案の発生場所、時間帯、手口等に関する情報、B子どもが被害者となる事案の発生が予想される場所についての情報などを収集し、提供することとしている(前掲推進要領)ところであり、教育委員会や各学校など様々な段階での密接な情報交換が望まれる。
・なお、登下校時における幼児児童生徒の安全確保のための警察との意見交換、情報の共有のためには、既に平成17年3月31日付「学校安全のための方策の再点検等について」でも示しているように、学校警察連絡協議会などの活用も有効と考えられる。


第3 幼児児童生徒に危険予測・回避能力を身につけさせるための安全教育の推進

 幼児児童生徒が犯罪に巻き込まれないようにするためには、様々な機会を通じて、危険予測能力や危険回避能力を身につけさせることが必要である。
 特に、小学校低学年の児童については、登下校時にも様々な危険があり、知らない人に声をかけられたり、定められた通学路以外の道を通ると犯罪に巻き込まれる可能性があること、通学路の近くにも危険な箇所があり近づいてはいけないといったことについて、しっかりと理解させることが必要である。

@ 通学安全マップの作成等を通じた指導
・通学安全マップの作成等に児童生徒を参加させることにより、児童生徒が自ら実感を持って危険箇所を認識することが期待できる。その際、小学校低学年の児童だけでは困難な面もあるため、上級生とグループを組ませる、保護者や警察官と一緒に実際の通学路をまわるといった取組も有効であると考えられる。

A 防犯教室等の活用
・防犯教室等の実施にあたって、警察官や防犯の専門家の協力を得て、具体的な場面を設定し、ロールプレイング等の手法を活用するなどの手法をとりながら実践的な対処方法を身につけさせることが重要である。

B 万一の場合に対応するための指導
・登下校時に万一の事態が起こった場合の具体的対処方法(大声を上げる、交番や「子ども110番の家」に駆け込む 等)について幼児児童生徒に対し、日頃から訓練しておくことが必要である。
・防犯ブザー等については、すぐに活用できるような携帯の方法、万一の場合の使用方法等についても十分指導しておくことが重要である。


第4 不審者等に関する情報の共有

 日頃から、不審者の出没に関する情報や幼児児童生徒への声かけ事案をはじめとする情報などについて、警察と連携をとりながら、学校と保護者、地域の関係団体等との間で、情報を迅速かつ確実に共有するための取組を進めていくことが重要である。

・関係者の間で共有することが望まれる情報としては、不審者の出没等に関する情報、事件・事故の発生に関する情報、通学路における工事等の情報など様々であり、事前に、収集する情報についての共通理解を図っておく必要がある。
・何らかの情報を共有する必要性が生じた場合のルール(第一報はどこにいれるのか、どのような手段(電話、携帯電話、ファックス、メール等)で情報を誰が流すのか等)については、特に関係者間で共通理解を図っておくことが不可欠である。
・情報の収集・共有化を進める場合には、迅速性が求められるが、一方で、確実性等にも配慮する必要があり、この点についても一定のルールを定める必要があると考えられる。
・第2でも述べたように、警察では、@地域での子どもが被害者となる事案の全般的な発生状況、A性犯罪、誘拐、子どもに対する声かけ事案、不審者の出没等子どもが被害者となる事案の発生場所、時間帯、手口等に関する情報、B子どもが被害者となる事案の発生が予想される場所についての情報などを収集することとしており、収集された情報については、地域住民へ積極的に提供することとなっている。
・教育委員会や学校等と警察との間では、学校警察連絡協議会などの場を通じて情報の交換に努めるとともに、特に不審者情報については、迅速、的確に行われるよう警察との協力を進める必要がある。


第5 警察との連携

 既に第1〜第4で述べたように、登下校時の幼児児童生徒の安全を確保するうえでは、警察との連携が不可欠であると考えられる。
 学校警察連絡協議会の場等を通じた平常時の情報交換や防犯教室・防犯訓練への参加、不審者に関する情報の共有等様々な場面と様々な段階で意見交換を進めていくことが必要である。



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