● いじめの問題への取組の徹底について 平成18年10月19日 18文科初第711号



18文科初第711号 平成18年10月19日
各都道府県教育委員会教育長、各指定都市教育委員会教育長、
各都道府県知事、附属学校を置く各国立大学法人学長 宛
文部科学省初等中等教育局長(銭谷眞美)


        いじめの問題への取組の徹底について(通知)


 いじめにより児童生徒が自らその命を絶つという痛ましい事件が相次いで発生していることは、極めて遺憾であります。児童生徒が自らの命を絶つということは、理由の如何を問わずあってはならず、深刻に受け止めているところであります。
 これらの事件では、子どもを守るべき学校・教職員の認識や対応に問題がある例や、自殺という最悪の事態に至った後の教育委員会の対応が不適切であった例が見られ、保護者をはじめ国民の信頼を著しく損なっています。
 いじめは、決して許されないことであり、また、どの子どもにも、どの学校でも起こり得るものでもあります。現にいま、いじめに苦しんでいる子どもたちのため、また、今回のような事件を二度と繰り返さないためにも、学校教育に携わるすべての関係者一人ひとりが、改めてこの問題の重大性を認識し、いじめの兆候をいち早く把握して、迅速に対応する必要があります。また、いじめの問題が生じたときは、その問題を隠さず、学校・教育委員会と家庭・地域が連携して、対処していくべきものと考えます。
 ついては、各学校及び教育委員会におかれては、別添「いじめの問題への取組についてのチェックポイント」等も参考としつつ、いま一度総点検を実施するとともに、下記の事項に特にご留意の上、いじめへの取組について、更なる徹底を図るようお願いします。
 なお、都道府県・指定都市教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等に対して、都道府県知事にあっては所轄の私立学校に対して、この趣旨について周知を図るとともに、適切な対応がなされるよう御指導をお願いします。

                   記


1  いじめの早期発見・早期対応について

(1) いじめは、「どの学校でも、どの子にも起こり得る」問題であることを十分認識すること。
 日頃から、児童生徒等が発する危険信号を見逃さないようにして、いじめの早期発見に努めること。
 スクールカウンセラーの活用などにより、学校等における相談機能を充実し、児童生徒の悩みを積極的に受け止めることができるような体制を整備すること。

(2) いじめが生じた際には、学級担任等の特定の教員が抱え込むことなく、学校全体で組織的に対応することが重要であること。学校内においては、校長のリーダーシップの下、教職員間の緊密な情報交換や共通理解を図り、一致協力して対応する体制で臨むこと。

(3) 事実関係の究明に当たっては、当事者だけでなく、保護者や友人関係等からの情報収集等を通じ、事実関係の把握を正確かつ迅速に行う必要があること。
 なお、把握した児童生徒等の個人情報については、その取扱いに十分留意すること。

(4) いじめの問題については、学校のみで解決することに固執してはならないこと。学校においていじめを把握した場合には、速やかに保護者及び教育委員会に報告し、適切な連携を図ること。保護者等からの訴えを受けた場合には、まず謙虚に耳を傾け、その上で、関係者全員で取組む姿勢が重要であること。

(5) 学校におけるいじめへの対処方針、指導計画等の情報については、日頃より、家庭や地域へ積極的に公表し、保護者や地域住民の理解を得るよう努めること。
 実際にいじめが生じた際には、個人情報の取扱いに留意しつつ、正確な情報提供を行うことにより、保護者や地域住民の信頼を確保することが重要であり、事実を隠蔽するような対応は許されないこと。


2 いじめを許さない学校づくりについて

(1) 「いじめは人間として絶対に許されない」との意識を、学校教育全体を通じて、児童生徒一人一人に徹底すること。特に、いじめる児童生徒に対しては、出席停止等の措置も含め、毅然とした指導が必要であること。
 また、いじめられている児童生徒については、学校が徹底して守り通すという姿勢を日頃から示すことが重要であること。

(2) いじめを許さない学校づくり、学級(ホームルーム)づくりを進める上では、児童生徒一人一人を大切にする教職員の意識や、日常的な態度が重要であること。
 特に、教職員の言動が児童生徒に大きな影響力を持つことを十分認識し、いやしくも、教職員自身が児童生徒を傷つけたり、他の児童生徒によるいじめを助長したりすることがないようにすること。

(3) いじめが解決したと見られる場合でも、教職員の気づかないところで陰湿ないじめが続いていることも少なくないことを認識し、そのときの指導により解決したと即断することなく、継続して十分な注意を払い、折に触れて必要な指導を行うこと。


3 教育委員会による支援について

 教育委員会において、日頃から、学校の実情把握に努め、学校や保護者からいじめの訴えがあった場合には、当該学校への支援や当該保護者への対応に万全を期すこと。

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別添

      「いじめの問題への取組についてのチェックポイント」

〈趣旨〉

 このチェックポイントは、いじめの問題に関する学校及び教育委員会の取組の充実のために、具体的に点検すべき項目を参考例として示したものである。
 各学校・教育委員会においては、このチェックポイントを参照しつつ、それぞれの実情に応じて適切な点検項目を作成して、点検・評価を行うことが望ましい。
 なお、「いじめ」の定義については、一般的には、「自分より弱いものに対して一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの」とされているが、個々の行為がいじめに当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うことに留意する必要がある。

〈チェックポイント〉

I 学校

(指導体制)
(1) いじめの問題の重大性を全教職員が認識し、校長を中心に一致協力体制を確立して実践に当たっているか。
(2) いじめの態様や特質、原因・背景、具体的な指導上の留意点などについて職員会議などの場で取り上げ、教職員間の共通理解を図っているか。
(3) いじめの問題について、特定の教員が抱え込んだり、事実を隠したりすることなく、学校全体で対応する体制が確立しているか。

(教育指導)
(4) お互いを思いやり、尊重し、生命や人権を大切にする指導等の充実に努めているか。特に、「いじめは人間として許されない」との強い認識に立って指導に当たっているか。
(5) 学校全体として、校長をはじめ各教師がそれぞれの指導場面においていじめの問題に関する指導の機会を設け、積極的に指導を行うよう努めているか。
(6) 道徳や学級(ホームルーム)活動の時間にいじめにかかわる問題を取り上げ、指導が行われているか。
(7) 学級活動や児童生徒会活動などにおいて、いじめの問題とのかかわりで適切な指導助言が行われているか。
(8) 児童生徒に幅広い生活体験を積ませたり、社会性のかん養や豊かな情操を培う活動の積極的な推進を図っているか。
(9) 教職員の言動が、児童生徒を傷つけたり、他の児童生徒によるいじめを助長したりすることのないよう、細心の注意を払っているか。
(10) いじめを行う児童生徒に対しては、特別の指導計画による指導のほか、さらに出席停止や警察との連携による措置も含め、毅然とした対応を行うこととしているか。
(11) いじめられる児童生徒に対し、心のケアやさまざまな弾力的措置など、いじめから守り通すための対応を行っているか。
(12) いじめが解決したと見られる場合でも、継続して十分な注意を払い、折に触れ必要な指導を行っているか。

(早期発見・早期対応)
(13) 教師は、日常の教育活動を通じ、教師と児童生徒、児童生徒間の好ましい人間関係の醸成に努めているか。
(14) 児童生徒の生活実態について、たとえば聞取り調査や質問紙調査を行うなど、きめ細かく把握に努めているか。
(15) いじめの把握に当たっては、スクールカウンセラーや養護教諭など学校内の専門家との連携に努めているか。
(16) 児童生徒が発する危険信号を見逃さず、その一つ一つに的確に対応しているか。
(17) いじめについて訴えなどがあったときは、問題を軽視することなく、保護者や友人関係等からの情報収集等を通じて事実関係の把握を正確かつ迅速に行い、事実を隠蔽することなく、的確に対応しているか。
(18) いじめの問題解決のため、教育委員会との連絡を密にするとともに、必要に応じ、教育センター、児童相談所、警察等の地域の関係機関と連携協力を行っているか。
(19) 校内に児童生徒の悩みや要望を積極的に受け止めることができるような教育相談の体制が整備されているか。また、それは、適切に機能しているか。
(20) 学校における教育相談について、保護者にも十分理解され、保護者の悩みに応えることができる体制になっているか。
(21) 教育相談の実施に当たっては、必要に応じて教育センターなどの専門機関との連携が図られているか。教育センター、人権相談所、児童相談所等学校以外の相談窓口について、周知や広報の徹底が行われているか。
(22) 児童生徒等の個人情報の取扱いについて、ガイドライン等に基づき適切に取り扱われているか。

(家庭・地域社会との連携)
(23) 学校におけるいじめへの対処方針や指導計画等を公表し、保護者や地域住民の理解を得るよう努めているか。
(24) 家庭や地域に対して、いじめの問題の重要性の認識を広めるとともに、家庭訪問や学校通信などを通じて、家庭との緊密な連携協力を図っているか。。
(25) いじめが起きた場合、学校として、家庭との連携を密にし、一致協力してその解決に当たっているか。いじめの問題について、学校のみで解決することに固執しているような状況はないか。
(26) PTAや地域の関係団体等とともに、いじめの問題について協議する機会を設け、いじめの根絶に向けて地域ぐるみの対策を進めているか。

II 教育委員会

(学校の取組の支援等・点検)
(1) 管下の学校等に対し、いじめの問題に関する教育委員会の指導の方針などを明らかにし、積極的な指導を行っているか。
(2) 管下の学校におけるいじめの問題の状況について、学校訪問や調査の実施などを通じて実態の的確な把握に努めているか。
(3) 学校や保護者等からいじめの報告があったときは、その実情の把握を迅速に行うとともに、事実を隠蔽することなく、学校への支援や保護者等への対応を適切に行っているか。
(4) 各学校のニーズに応じ、研修講師やスクールカウンセラー等の派遣など、適切な支援を行っているか。
(5) いじめの問題について指導上困難な課題を抱える学校に対して、指導主事や教育センターの専門家の派遣などによる重点的な指導、助言、援助を行っているか。
(6) 深刻ないじめを行う児童生徒に対しては、出席停止を命ずることもできるよう、必要な体制の整備が図られているか。
(7) いじめられる児童生徒については、必要があれば、就学校の指定の変更や区域外就学など弾力的な措置を講じることとしているか。
(8) 関連の通知などの資料がどう活用されたか、その趣旨がどう周知・徹底されたのかなど、学校の取組状況を点検し、必要な指導、助言を行っているか。

(教員研修)
(9) 教育委員会として、いじめの問題に留意した教員の研修を積極的に実施しているか。
(10) 研修内容・方法について、様々な分野から講師を招いたり、講義形式のみに偏らないようにするなどの工夫を行っているか。
(11) いじめの問題に関する指導の充実のための教師用手引書などを作成・配付しているか。

(組織体制・教育相談)
(12) 教育委員会に、学校からの相談はもとより、保護者からの相談も直接受けとめることのできるような教育相談体制が整備されているか。また、それは、利用しやすいものとするため、相談担当者に適切な人材を配置するなど運用に配慮がなされ、適切に機能しているか。
(13) 教育相談の利用について関係者に広く周知を図っているか。また、教育センター、人権相談所、児童相談所等学校以外の相談窓口について、児童生徒、保護者、教師に対し周知徹底が図られているか。
(14) 教育相談の内容に応じ、学校とも連絡・協力して指導に当たるなど、継続的な事後指導を適切に行っているか。
(15) 教育相談の実施に当たっては、必要に応じて、医療機関などの専門機関との連携が図られているか。

(家庭・地域との連携)
(16) 学校とPTA、地域の関係団体等がいじめの問題について協議する機会を設け、いじめの根絶に向けて地域ぐるみの対策を推進しているか。
(17) いじめの問題への取組の重要性の認識を広め、家庭や地域の取組を推進するための啓発・広報活動を積極的に行っているか。
(18) 教育委員会は、いじめの問題の解決のために、関係部局・機関と適切な連携協力を図っているか。







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