● 専門職大学院設置基準及び学位規則の一部を改正する省令の公布等について(教職大学院制度) 平成19年3月1日 18文科高680号



18文科高680号 平成19年3月1日
各国公私立大学長、独立行政法人大学評価・学位授与機構長、
大学を設置する各地方公共団体の長、大学を設置する各学校法人の理事長、
大学を設置する各学校設置会社の代表取締役、放送大学学園理事長、
各都道府県・指定都市教育委員会、各都道府県知事 宛
文部科学省初等中等教育局長(銭谷眞美)
文部科学省高等教育局長(清水潔)


  専門職大学院設置基準及び学位規則の一部を改正する省令の公布等について(通知)


 このたび、別添1から別添3(略)のとおり、「専門職大学院設置基準及び学位規則の一部を改正する省令(平成19年文部科学省令第2号)」が平成19年3月1日に公布され、これに関連し、「専門職大学院に関し必要な事項について定める件(平成15年文部科学省告示第53号)の一部を改正する件(平成19年文部科学省告示第31号)」及び「学位の種類及び分野の変更等に関する基準(平成15年文部科学省告示第39号)の一部を改正する件(平成19年文部科学省告示第32号)」が同日公布され、これらについて、平成19年4月1日から施行されることになりました。
 この改正は、中央教育審議会答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」(平成18年7月11日)(以下「答申」という。)において制度の創設が提言された「教職大学院」制度の創設等に係るものです。
 今回の改正の概要及び留意点は下記のとおりですので、十分御了知の上、その運用に当たって遺漏のないようお取り計らいください。
 なお、各都道府県知事及び各都道府県教育委員会におかれては、域内の各市町村に対し周知いただくようお願いいたします。

                   記

第一 専門職大学院設置基準の改正(専門職大学院設置基準及び学位規則の一部を改正する省令(平成19年文部科学省令第2号))

一 教職大学院関係
(1) 教職大学院の課程
 専門職学位課程のうち、専ら小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校及び幼稚園(以下「小学校等」という。)の高度の専門的な能力及び優れた資質を有する教員の養成のための教育を行うことを目的とし、本基準に定められた一定の要件に基づくものを置く専門職大学院は、教職大学院とすること。教職大学院の標準修業年限は二年とすること。教育上の必要があると認められる場合には、学生の履修区分等に応じ、標準修業年限を一年以上二年未満又は二年を超える期間とすることができることとすること。標準修業年限を一年以上二年未満の期間とすることができるのは、主として実務の経験を有する者に対して教育を行う場合であって、かつ、昼間と併せて夜間その他特定の時間又は時期において授業を行う等の適切な方法により教育上支障を生じない場合に限ることとすること。(第26条関係)
(2) 他の大学院における授業科目の履修等
 単位互換による他の大学院における修得単位、外国の大学院等における修得単位、入学前における既修得単位について、小学校等の教員としての実務の経験を有する者について免除する実習の単位数とあわせて、修了要件として定める45単位以上の単位数の二分の一を超えない範囲で、当該教職大学院における単位とみなすことができることとすること。(第27条及び第28条関係)
(3) 教職大学院の課程の修了要件
 教職大学院の課程の修了要件は、二年(二年以外の標準修業年限を定める研究科等にあっては、当該標準修業年限)以上在学し、45単位以上を修得することとすること。45単位のうち10単位以上は、高度の専門的な能力及び優れた資質を有する教員に係る実践的な能力を培うことを目的として小学校等その他関係機関で行う実習の履修により修得することとすること。また、小学校等の教員としての実務の経験を有する者については、10単位を超えない範囲で実習により修得する単位の全部又は一部を免除することができることとすること。(第29条関係)
(4) 連携協力校
 教職大学院は、実習その他教職大学院の教育上の目的を達成するために必要な連携協力を行う小学校等を適切に確保するものとすること。(第31条関係)

二 法科大学院に係る他の大学院における授業科目の履修等
 法科大学院が、他の大学院における授業科目の履修等と合わせて30単位を超えない範囲で授業科目の履修により修得したものとみなすことができることについて、いわゆる外国大学日本校(大学院の課程)において履修した授業科目について準用すること。(第21条第2項関係)

三 その他
 所要の規定の整備を行ったこと。


第二 学位規則の改正(専門職大学院設置基準及び学位規則の一部を改正する省令(平成19年文部科学省令第2号))
 教職大学院の課程を修了した者に授与する学位は、教職修士(専門職)とすること。


第三 専門職大学院に関し必要な事項について定める件の改正(専門職大学院に関し必要な事項について定める件(平成15年文部科学省告示第53号)の一部を改正する件(平成19年文部科学省告示第31号))

一 教職大学院の実務家教員
 必要専任教員のうち概ね4割以上は、専攻分野における実務の経験を有し、かつ、高度の実務の能力を有する者とすること。この実務家教員は、小学校等の教員としての実務経験を有する者を中心として構成されるものとすること。(第2条第5項及び第6項関係)

二 教職大学院の教育課程
 教職大学院は、実習のほか、教職課程の編成及び実施に関する領域、教科等の実践的な指導方法に関する領域、生徒指導及び教育相談に関する領域、学級経営及び学校経営に関する領域、学校教育と教員の在り方に関する領域について、授業科目を開設するものとすること。教職大学院は、この全ての領域において科目を開設するほか、実習による科目及びその他の開設科目を含め体系的に教育課程を編成するものとすること。学生の授業科目の履修が、いずれかに過度に偏らないよう配慮するものとすること。(第8条関係)


第四 学位の種類及び分野の変更等に関する基準の改正(学位の種類及び分野の変更等に関する基準(平成15年文部科学省告示第39号)の一部を改正する件(平成19年文部科学省告示第32号))
 大学の大学院の研究科等の設置等に際し、学位の種類及び分野の変更を伴わないものとして文部科学大臣への事前の届出で足る学位の種類及び範囲に関し、教職大学院とそれ以外の教員養成を行う専門職学位課程を区分すること。(第1条第1項別表第一関係)


第五 留意事項

一 実習により修得する単位の免除に当たっては、学生の教職経験を適切に評価した上で、実習により修得させようとする内容との相関性等を踏まえ、免除の可否及び免除する単位数を適切に判断する必要があること。

二 連携協力校は、実習や現地調査等学校現場を重視した実践的な教育の場として重要であり、開設科目及びその教育内容等に対応して適切な学校種及び数等である必要があること。
 連携協力校の確保に当たっては、教育委員会等学校設置者及び各学校等と十分調整を行った上で行う必要があること。なお、大学と学校設置者等との調整に当たっては、学生の進路選択を制約することのないよう留意すること。
 また、いわゆる教員養成目的大学・学部に置かれる教職大学院については、附属学校についても適切に活用する必要があること。

三 専任教員の配置基準の算定に当たっては、「大学院に専攻ごとに置くものとする教員の数について定める件(平成11年文部科学省告示第175号)」における「学校教育専攻」の例を基礎として算定するものとすること。

四 実務家教員について、その具体の割合に関しては、学校教育法施行規則等の一部を改正する省令(平成18年(平成19年4月1日施行)文部科学省令第11号)による改正後の大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)第8条第1項及び第2項から、開設科目等に対応し適正なものである必要があること。具体的には、理論と実務を架橋する専門職大学院においてもその教育の展開上学術研究は重要であることから、極端に実務家教員に偏した教員組織となることのないよう一定程度以上のいわゆる研究者教員も配置させるなど、教員組織全体としてのバランスを確保すること。
 また、実務家教員の具体の範囲等については、専門職大学院設置基準等に規定しているが、その判断の観点について別添4「教職大学院における『実務家教員』の在り方について」(中央教育審議会「今後の教員養成・免許制度の在り方について」(平成18年7月11日)参考資料)のとおり取りまとめられており、これを参考にすること。

五 教職大学院の教育課程について、全体として体系的に編成されるものとされていることから、5つの領域において共通的に開設される授業科目の単位数の合計は、一定程度(最低必要修得単位数全体から実習の最低必要修得単位数を引いたもののうちの半数)以上となることが目安となること。

六 教職大学院における授業は、講義のほか、グループ討議、実技指導・模擬授業、ワークショップ、フィールドワークなど、従来とは異なる新しい教育方法を中心に展開される必要があること。このため、専門職大学院設置基準(以下「令」という。)第8条及び第9条により多様なメディアを高度に利用する方法による授業を実施する場合は、教育課程の編成について、この趣旨を踏まえる必要があること。特に、全ての授業科目の全ての授業が通信により行われる課程は想定されないこと。

七 施設設備については、令第17条の規定により、その目的に照らし十分な教育効果をあげることができると認められるものであること。このため、例えば教科等の実践的な指導に関する教育を行う場合には、当該教科内容に照らし必要な施設・設備(例えば実験室や実験教材、楽器等)が確保・充実される必要があること。
 また、新しい教育方法により展開される授業の実践に当たっては、収容定員に見合った十分な数の講義室・演習室等を確保するとともに、教育活動に支障のない十分なスペースを確保すること。
 更に、教育課程や教員の研究内容に対応した図書・学術雑誌等を系統的に備えるとともに、教育活動に支障のない十分な冊数を整備すること。

八 教職大学院を修了した者に対する処遇(職務、給与、採用等)については、都道府県教育委員会等において、修了者の実績等を踏まえ、採用の公平性等に留意しつつ対応するものであること。
 なお、教職大学院修了者の採用・処遇における公平性の確保に関して、「規制改革・民間開放推進3か年計画(再改定)」(平成18年3月31日閣議決定)において、別添5のとおりとしていることを了知いただきたいこと。



別添1から別添3(略)

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別添4


    1.教職大学院における「実務家教員」の在り方について

 専門職大学院においては、理論と実務の架橋を図り、実践的な教育を行う観点から、専任教員のうち3割以上を実務家教員とすることを義務付けている。特に、教職大学院においては、学校教育に関する理論と実践の融合を図るため、専任教員のうち4割以上を教職等としての実践経験を有する実務家教員とすることとされている。
 実務家教員の範囲等については、既に専門職大学院設置基準等により規定されているが、教職大学院における教育がその制度創設の趣旨からも充実したものとなるためには、その適切な運用が不可欠である。このため、教職大学院制度の在り方を検討した専門職大学院ワーキンググループとして、教職大学院における実務家教員の在り方について、とりまとめたものである。

1.実務家教員の在り方・役割

○ 教職大学院におけるカリキュラムにおいては、学校教育に関する理論と実践との融合を意識した指導方法・内容である必要があり、このため、実務経験を通じた具体的事例等を基とした内容を展開することのできる、実務家教員の役割が重要となる。
○ しかしながら、このような実務家教員に求められる役割は、単に事例についての知識の豊富さだけではない。教職大学院における指導内容が、実践の構造化、臨床的な実証研究の構築であることから、実務家教員には、事例や事例知識等をコーディネートしていく役割とともに、理論と実践の架橋を体現する者として、研究的省察を行い、リードする役割が求められる。
○ また、教職大学院におけるカリキュラム全体から鑑みた場合、特定の科目のみにおいて実践事例が扱われ実践性が意識されるものではない。このため、教職大学院においては、実践的な内容は実務家教員のみにより分担・分業されるべきものとの考えをとるべきではない。実務経験を有する実務家教員といわゆる研究者教員とがともに協働しつつ、全体として実践的内容を意識した教育が展開される必要がある。

2.実務家教員の範囲

 専任教員に含まれるべき実務家教員の範囲については、専門職大学院設置基準等により、担当する専攻分野に関する(1)高度の実務能力、(2)高度の教育上の指導能力、(3)実務の経験、の3つの観点から定められている。

(1) 専攻分野に関する高度の実務能力
○ 高度の実務能力に関しては、専門職大学院設置基準等上、「専攻分野における、高度の実務の能力を有する者」、「専攻分野について、高度の技術・技能を有する者」等と定められている。
○ この高度の実務能力の範囲については、教員等学校教育関係者の場合のほか、学校教育関係者以外の者であっても幅広く想定され得るが、いずれの場合であっても、担当科目に対応した内容について評価する必要がある。

(2) 担当する専門分野に関する高度の教育上の指導能力
○ 高度の教育上の指導能力に関しては、専門職大学院設置基準等上、「その担当する専門分野に関し高度の教育上の指導能力があると認められる」者と定められている。

◇ 教員等学校教育関係者の場合について
 ○ 実務家教員においては、実務経験から来る実務の経験知・識見を単に有するのではなく、知見を理論化し一般化した上で適切に教授できるなど、担当する専門分野に関し、高度の教育上の指導能力を有する者である必要がある。
 ○ この評価方法として、従来のいわゆる研究者教員の場合と同様の研究論文を求められるものではないが、例えば、大学や教員研修センター等での指導や研究会等での研究発表等、校内研修での実践発表等などの実践的・実証的研究成果の発表記録や著作等から、担当する専門分野に関する高度の教育上の指導能力を有すると認められる者であることが適当である。
 ○ また、特に、理論と実践の融合を目指す教職大学院における授業においては、実務家教員には、実践知と理論との架橋や、実践経験の研究的省察をリードすることが求められる。このため、上記研究成果の指導や発表等に係る記録や著作等においては、理論や実践の一般化に係る内容が包含されている必要がある。
 ○ なお、教職大学院における授業では、教育現場における課題を中心に据え、こうした課題について教員・学生がともに調査・検討を行い、その解決を図る条件・方法を探る実践研究(ワークショップ、事例研究、模擬授業等)や、実際にその仮説をもとに実地に調査試行を行い、その成果等を発表・討議すること(フィールドワーク等)などが中心となることから、実務家教員には従来とは異なるこれら新しい指導方法への資質がより期待される。

◇ 教員等以外の者の場合について
 ○ 教員等学校教育関係者以外の者の場合、多様な経歴を有する者が想定されるため、一概に考え方を示すことが難しいが、学校教育関係者の場合と同様に、実践的・実証的研究成果の発表記録や著作等から、担当する専門分野に関する高度の教育上の指導能力を有すると認められる者であることが適当である。

(3) 専攻分野における実務の経験
○ 実務経験に関しては、専門職大学院設置基準等上、「専攻分野におけるおおむね5年以上の実務の経験を有する」者と定められている。

◇ 教員等学校教育関係者の場合について
 ○ 教職大学院における教育は、特に現職教員学生に関しては、一定の実務経験のある者を対象に学校教育において広く見通しのとれるスクールリーダーに必要な知識・技能を修得させるものである。この観点から鑑みれば、指導にあたる大学教員は実務家として学生に対し適切な指導を行い得る、一定の幅の広さを持つ経験を有する者である必要がある。
 ○ この観点からいえば、例えば教諭の場合、標準的な勤務経験(担任サイクル、主任等の経験)を考えれば、概ね20年程度の経験が必要である。
 ○ 他方、教諭としての経験の後、校長・教頭等の管理職、指導主事の経験を有する場合等、その職務の性質の相違を勘案しつつ、教諭としての経験期間よりも長く評価することにより、全体として同等以上と評価し得る期間である必要がある。
 ○ 上記の期間に関しては、学校内での教員以外の勤務経験や、幅広い教育関連行政における勤務経験、教育関連業務への従事経験等はこれに含めることができるものとすることが適当である。
 ○ 現在、大学の専任教員等となっているいわゆる「元実務家」の場合、実務家教員として認定するためには、実務経験の期間と実務から離れてからの期間とを勘案して評価することが必要である。概ねの目安としては、実務を離れてから5〜10年以内であることが標準である。この場合、実務を離れる前の実務経験の長さやその後の現場との関わり等を考慮する必要がある。

◇ 教員等学校教育関係者以外の者の場合について
 ○ 教員等学校教育関係者以外の者の場合、担当科目と実務の経験との関連が認められる限り、専攻分野における実務経験として評価され得る。
 ○ 教員等学校教育関係者以外の者の場合、多様な経歴を有する者が想定されるため、一概に考え方を示すことが難しいが、それぞれの分野における特性に鑑みつつ、学校教育関係者の場合と同等以上と評価し得る経験を有する者であることが適当である。
 ○ いわゆる「元実務家」の場合の考え方についても、一律な基準を示すことは難しいが、それぞれの分野の特性を考慮に入れつつ、教員等学校教育関係者と同様の観点から評価されることが適当である。

3.実務家教員の構成について

○ 実務家教員については、担当科目との関連が認められる限り、その実務経験は幅広く評価し得るが、全体としては、学校教育に関する実務経験者を中心として構成されることが適当である。
 このため、必要専任教員数の3割以上は、教員等学校教育関係者とすることが適当である。


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別添5


「規制改革・民間開放推進3ヶ年計画(再改定)」(平成18年3月31日閣議決定)(抄)

II 17年度重点計画事項
(個別重点検討分野の改革)
2.教育分野
1 教員の質の向上を目指した免許・採用制度及び教員評価制度の改革
(1)免許・採用制度改革〜社会人経験者を含む多様な人材の確保・活用に向けて〜
(略)
 なお、制度の創設が検討されている教職大学院の修了者の採用・処遇については、その修了者が教員としての一定の資質を備えているとの先験的な前提に立って、制度的に大学学部卒業者や一般大学修了者等と異なる措置を講じることは適当ではなく、修了者の実績等を踏まえ、都道府県教育委員会等において選考の公平性に留意しつつ対応する。

III 措置事項
8 教育研究関係
22 教職大学院修了者の採用・処遇における公平性の確保
 制度の創設が検討されている教職大学院の修了者の採用・処遇については、その修了者が教員としての一定の資質を備えているとの先験的な前提に立って、制度的に大学学部卒業者や一般大学修了者等と異なる措置を講じることは適当ではなく、修了者の実績等を踏まえ、都道府県教育委員会等において選考の公平性に留意しつつ対応する。





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