● 高等学校学習指導要領の全部を改正する告示等の公示及び移行措置について 平成21年3月9日 20文科初第1312号
20文科初第1312号 平成21年3月9日
各都道府県教育委員会、各指定都市教育委員会
各都道府県知事、各指定都市市長
附属学校を置く各国立大学長
構造改革特別区域法第12条第1項の
認定を受けた地方公共団体の長 宛
文部科学事務次官(銭谷眞美)
高等学校学習指導要領の全部を改正する告示等の公示
及び移行措置について(通知)
このたび、平成21年3月9日文部科学省令第3号をもって、別添1のとおり学校教育法施行規則の一部を改正する省令(以下「改正省令」という。)が制定され、また、文部科学省告示第34号をもって、別添2のとおり、高等学校学習指導要領の全部を改正する告示(以下「新学習指導要領」という。)が公示されました。
また、現行の高等学校学習指導要領(平成11年文部省告示第58号)(以下「現行学習指導要領」という。)から新学習指導要領に移行するために必要な措置(以下「移行措置」という。)について、平成21年3月9日文部科学省告示第38号をもって、別添3のとおり、平成21年4月1日から新高等学校学習指導要領が適用されるまでの間における現行高等学校学習指導要領の特例を定める件(以下「特例告示」という。)が定められました。
今回の改正は、教育基本法及び学校教育法の改正を受け、これらにおいて明確にされた教育の目的及び目標に基づき、平成20年1月17日の中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」(以下「答申」という。)を踏まえ、高等学校の教育課程の基準の改善を図ったものです。本改正の概要並びに移行措置の概要及び留意事項は下記のとおりですので、十分に御了知いただき、これらに基づく適切な教育課程の編成・実施及びこれらに伴い必要となる教育条件の整備を行うようお願いします。
また、各都道府県教育委員会におかれては、所管の高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。以下同じ。)、域内の高等学校を所管する指定都市を除く市町村教育委員会及びその他の教育機関に対して、各指定都市教育委員会におかれては、所管の高等学校に対して、各都道府県知事及び構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長におかれては、所轄の高等学校及び学校法人等に対して、国立大学長におかれては、その管下の高等学校に対して、本改正の概要並びに移行措置の概要及び留意事項について周知を図るとともに、必要な指導等をお願いします。
なお、本通知については、関係資料と併せて文部科学省のホームページに掲載しておりますので、御参照ください。
別途、国公私立大学長及び独立行政法人大学入試センター理事長に対し、大学入学者選抜について新学習指導要領の趣旨を踏まえ適切に実施されるよう、別添4のとおり通知を発出しておりますので御了知ください。
記
1.改正の概要
(1)高等学校の教育課程の基準の改善の基本的な考え方
今回の教育課程の基準の改善は、教育基本法及び学校教育法の改正を受け、これらにおいて明確となった教育の目的及び目標に基づき、答申を踏まえ、次の方針に基づき行ったものであること。
@ 教育基本法改正等で明確となった教育の理念を踏まえ、「生きる力」を育成すること
・「知識基盤社会」の時代においてますます重要となる「生きる力」という理念を継承し、また、「生きる力」を支える「確かな学力」、「豊かな心」、「健やかな体」の調和を重視したこと。
・教育基本法及び学校教育法の改正により明確となった教育の理念を踏まえ、学校教育においては、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し、公共の精神を尊び、他国を尊重し、国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献する主体性ある日本人を育成することを明確にしたこと。これを踏まえ、伝統や文化に関する教育や道徳教育、体験活動、環境教育等を充実したこと。
A 知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視すること
・各教科、総合的な学習の時間及び特別活動(以下「各教科等」という。)において、基礎的・基本的な知識・技能の習得を重視した上で、観察・実験やレポートの作成、論述など知識・技能の活用を図る学習活動を充実し、思考力・判断力・表現力等の育成を重視したこと。
・あらゆる学習の基盤となる言語に関する能力について、国語科のみならず、各教科等においてその育成を重視したこと。
・これらの学習や勤労観・職業観を育てるためのキャリア教育などを通じ、学習意欲を向上するとともに、学習習慣の確立を図るものとしたこと。
B 道徳教育や体育などの充実により、豊かな心や健やかな体を育成すること
・体験活動を活用しながら、道徳教育や体力の向上についての指導、安全教育や食育などを発達の段階に応じ充実し、豊かな心や健やかな体の育成を図るものとしたこと。
(2)主な改善事項
@共通性と多様性のバランスの重視
・高等学校教育における共通性と多様性のバランスを重視し、国語、数学及び外国語の各教科について共通必履修科目を設定するとともに、理科について必履修科目の履修の柔軟性を向上させたこと。(別紙1参照)
A義務教育段階の学習内容の確実な定着を図るための学習機会を設けることを促進
・中学校と高等学校の円滑な接続の観点から、必要に応じて義務教育段階の学習内容の確実な定着を図るための指導を行うことにより、高等学校段階の学習に円滑に移行することを重視したこと。
B言語活動の充実
・言語は、知的活動やコミュニケーション、感性・情緒の基盤であることから、国語科において適切に表現し的確に理解する能力や伝え合う力を育成し、我が国の言語文化への関心を深めるとともに、各教科等における批評、論述、討論といった学習活動を充実したこと。
C理数教育の充実
・科学技術の土台である理数教育の充実を図るため、近年の新しい科学的知見に関する内容を充実するとともに、数学科において統計に関する内容を必修化したり、指導内容と日常生活や社会との関連を重視する科目を新設したりするなどの改善を図ったこと。
D伝統や文化に関する教育の充実
・国際社会で活躍する日本人の育成を図るため、各教科等において、我が国や郷土の伝統や文化を受け止め、それを継承・発展させるための教育を充実したこと。
・具体的には、国語科での古典、地理歴史科及び公民科での歴史や宗教に関する学習、保健体育科での武道、芸術科での伝統音楽や我が国の美術文化などに関する指導を充実したこと。
E道徳教育の充実
・学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育について、全教師が協力して効果的に展開できるようにするため、その全体計画を作成することとしたこと。
・公民科、特別活動などにおいて、人間としての在り方生き方に関する学習を充実したこと。
F体験活動の充実
・ボランティア活動などの社会奉仕体験に関する活動や就業体験に関する活動の充実を図ったこと。
・職業教育において、産業現場等における長期間の実習を取り入れるなどの就業体験の機会を積極的に設けることを明記したこと。
G外国語教育の充実
・外国語科に属する科目のうちコミュニケーション英語U及びVにおいて、指導する語数の充実を図ったこと。
・生徒が英語に触れる機会を充実するとともに、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、授業は英語で行うことを基本とすることとしたこと。その際、生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮するものとしたこと。
H職業に関する教科・科目の改善
・職業人としての規範意識や倫理観、技術の進展や環境、エネルギーへの配慮、地域産業を担う人材の育成等、各種産業で求められる知識と技術、資質を育成する観点から科目の構成や内容を改善したこと。
(3)施行及び適用の時期
新学習指導要領は、平成25年4月1日に施行し、同日以降高等学校に入学した生徒に係る教育課程から適用すること(学校教育法施行規則第91条(同令第113条第1項で準用する場合を含む。)の規定により入学した生徒で同日前に入学した生徒に係る教育課程により履修するものを除く。以下同じ。)。
2.移行措置の概要及び留意事項
(1)移行措置の概要
平成21年度から新学習指導要領が適用されるまでの間における移行措置の概要は、以下のとおりであるが、改正省令附則及び特例告示に従い、適切に教育課程の編成・実施を行うこと。(別紙2参照)
@平成21年度以降に入学した生徒に係る教育課程の移行措置
福祉科については、各学校の判断により、その全部又は一部を新学習指導要領によることができること。
A平成22年度からの移行措置
ア 総則については、現行学習指導要領第1章第2款「各教科・科目及び単位数等」及び第3款「各教科・科目の履修等」に規定するものを除き、原則として、新学習指導要領によること。
イ 総合的な学習の時間については、その単位数の扱いを含め、新学習指導要領によること。
ウ 特別活動については、新学習指導要領によること。
エ 保健体育、芸術、体育、音楽及び美術の各教科については、各学校の判断により、その全部又は一部を新学習指導要領によることができること。
B平成24年度以降に入学した生徒に係る教育課程の移行措置
数学、理科及び理数の各教科については、新学習指導要領によること。
(2)留意事項
@平成21年度以降に入学した生徒に係る教育課程の移行措置の留意事項
福祉科の指導に当たっては、平成21年度の入学生に係る教育課程から、新学習指導要領による指導も可能となっているが、これは、平成24年度に予定される介護福祉士の受験資格要件の変更に対応したものであることを踏まえ、生徒の進路等に応じて適切な履修が可能となるよう配慮すること。
A平成22年度からの移行措置の留意事項
ア 平成22年度から平成24年度までの間の教育課程の編成・実施に当たっては、新学習指導要領第1章第1款「教育課程編成の一般方針」及び第5款「教育課程の編成・実施に当たって配慮すべき事項」の規定を踏まえ、その趣旨の実現を図ること。
イ 総合的な学習の時間及び特別活動については、新学習指導要領の規定に従い、適切な指導が行われるようにすること。
ウ 総合的な学習の時間の単位数について、特に必要がある場合には2単位とすることができると規定しているが、これは、今回の改訂では各教科・科目において知識・技能の活用を図る学習活動の充実が図られることを踏まえ、各学校の教育課程の中で各教科及び当該教科に属する科目(学校設定科目及び学校設定教科を含む。)において知識・技能の活用を図る学習活動や探究的な学習活動等の充実が十分に図られている場合など、総合的な学習の時間を標準単位数で実施したときと同様にその目標が達成できると見込まれる場合に限って認められるものであることに留意すること。
B平成24年度以降に入学した生徒に係る教育課程の移行措置の留意事項
数学、理科及び理数の各教科の指導については、新学習指導要領の規定に従い、適切な指導が行われるようにすること。
Cその他
平成22年度以降に高等学校に入学する生徒には、中学校を卒業する年度の違いにより、中学校学習指導要領(平成10年文部省告示第175号)により学習した生徒や、平成21年4月1日から平成24年3月31日までの間における中学校学習指導要領の特例を定める件(平成20年文部科学省告示第99号)で定める特例により学習した生徒がいることを踏まえ、高等学校に入学する生徒が中学校の各学年で履修した各教科の内容を踏まえた適切な指導が行われるよう、指導計画等の作成に当たって十分配慮すること。
3.関連事項
(1)新学習指導要領の周知・徹底
新学習指導要領の理念が各学校において実現するためには、各高等学校の教職員が新学習指導要領の理念や内容についての理解を深める必要がある。このため、文部科学省としては平成21年度に集中的に周知・徹底を図ることとしており、各教育委員会等においても、新学習指導要領に関する説明会や研修会を開催するなど、教職員に対して周知・徹底を図ること。
また、学習指導要領は大綱的な基準であることから、その記述の意味や解釈などの詳細については、文部科学省が作成・公表する学習指導要領解説において説明することを予定している。このため、学習指導要領解説を活用して、教職員が学習指導要領についての理解を深められるよう周知・徹底を図ること。
(2)新学習指導要領への円滑な移行等
平成24年度の入学生に係る教育課程は、数学、理科及び理数の各教科の必履修科目の構成やその標準単位数に変更がある。このことを踏まえ、各学校においては、必要に応じ、他教科も含めた教育課程全体を見通して教育課程の見直しを行うなどの配慮をすること。
また、各高等学校及び教育委員会等においては、平成24年度及び平成25年度からの新学習指導要領に基づく各教科の指導を円滑に実施できるよう、各学校や生徒の状況に応じた指導計画の作成、教員研修の充実などの準備を計画的に進めること。さらに、指導体制、教材、学校図書、学校施設・設備、ICT環境などの整備や、外部人材の活用、学校の事務負担の軽減を図ることにも留意すること。
〔参考〕文部科学省ホームページアドレス
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm
(ホーム>教育>小学校、中学校、高等学校>新しい学習指導要領)
(別紙1)高等学校の各学科に共通する教科・科目等及び標準単位数 略
(別紙2)移行措置 略
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