● 高等学校における生徒への懲戒の適切な運用の徹底について 平成22年2月1日 21初児生第30号



21初児生第30号 平成22年2月1日
各都道府県教育委員会指導事務主管部課長、各指定都市教育委員会指導事務主管部課長、各都道府県私立学校主管部課長、附属高等学校を置く国立大学法人の長 宛
文部科学省初等中等教育局児童生徒課長


    高等学校における生徒への懲戒の適切な運用の徹底について(通知)


 標記のことについては、「高等学校における生徒への懲戒の適切な運用について」(平成20年3月10日付け文部科学省初等中等教育局児童生徒課長通知)において、その適切な運用を図るようお願いしているところですが、このたび、公立高等学校を対象に運用の実態について調査したところ、別添調査結果のとおり、生徒への懲戒の基準を定めていない学校の割合が11.6%、基準を生徒や保護者などに対して周知していない学校が34.9%に上るなど、取組の不十分な状況が見られるところです。
 高等学校(中等教育学校後期課程を含む。以下同じ。)における生徒への懲戒については、その内容及び運用に関して、社会通念上の妥当性の確保を図ることが求められており、各教育委員会及び各高等学校は、下記事項に留意の上、適切な運用を具体的かつ迅速に行うようお願いします。
 都道府県教育委員会にあっては所管の高等学校及び高等学校を所管する域内の市区町村教育委員会(指定都市教育委員会を除く。)に対し、指定都市教育委員会にあっては所管の高等学校に対し、都道府県にあっては所轄の私立高等学校に対し、国立大学法人にあっては附属高等学校に対し、この趣旨について徹底するとともに、適切な対応がなされるよう指導くださるようお願いします。


                   記


1.高等学校における取組について

(1)指導の透明性・公平性を確保し、学校全体としての一貫した指導を進める観点から、生徒への懲戒に関する内容及び運用に関する基準について、あらかじめ明確化し、これを生徒や保護者等に周知すること。

(2)懲戒に関する基準等の適用及び具体的指導について、その運用の状況や効果等について、絶えず点検・評価を行い、より効果的な運用の観点から、必要な場合には、その見直しについても適宜検討すること。

(3)懲戒に関する基準等に基づく懲戒・指導等の実施に当たっては、その必要性を判断の上、十分な事実関係の調査、保護者を含めた必要な連絡や指導など、適正な手続きを経ること。

2.高等学校を所管する教育委員会における取組について

(1)各学校における懲戒に関する基準等に基づく懲戒・指導等の実施が、社会通念上妥当性を欠くものとならないようにするため、事実行為としての懲戒の意義の理解とその適正な運用を含め、参考事例等の情報を積極的に提供し、留意点等を示すことにより、これらの適正な運用のための条件整備等を一層推進すること。

(2)各学校における懲戒の適切な運用についての取組が不十分な学校に対して、期限を定めて改善状況の報告を求めるなどの方法により、適切な運用を図るよう指導すること。


(別添1)高等学校における生徒への懲戒の適切な運用についての調査結果について(概要)
(別添2)高等学校における生徒への懲戒の適切な運用についての調査結果について−略−




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(別添1)高等学校における生徒への懲戒の適切な運用についての調査結果について(概要)

平成22年2月1日
文部科学省児童生徒課

1.趣旨

 高等等学校における生徒への懲戒の適切な運用については、「高等学校における生徒への懲戒の適切な運用について」(平成20年3月10日付け通知)において教育委員会に周知したところである。この通知を踏まえた対応が学校や教育現場においてとられているか調査すべきであるとの指摘がなされているところであり(「規制改革推進のための第3次答申」参照)、各都道府県教育委員会、各指定都市教育委員会及び各高等学校の取組状況を把握するため、本調査を実施した。

2.調査内容・方法

(1)調査対象
 1. 公立高等学校(中等教育学校後期課程を含む)
 2. 都道府県教育委員会、指定都市教育委員会

(2)調査内容概要
 1. 高等学校
・学校が学校教育法及び学校教育法施行規則に基づく退学、停学及び訓告の処分の他、事実行為としての懲戒を行うことを定めているか否か。
・学校が生徒への懲戒に関する基準を定めているか否か。
・学校が生徒への懲戒に関する基準を生徒や保護者等に対して周知しているか否か。 

 2. 都道府県・指定都市教育委員会
・「高等学校における生徒への懲戒の適切な運用について」(平成20年3月10日付け通知)を踏まえ、教育委員会において、どのような取組を行ったか。
・所管の高等学校の回答結果を踏まえて、教育委員会で今後どのような取組を行う予定であるか。

(3)調査時期
平成21年9月7日〜9月30日
※ 一部の項目については、平成21年7月末時点の状況を調査。(平成21年8月以降に状況が変更されている場合もある。)

3.結果概要

 以下は、「高等学校における生徒への懲戒の適切な運用について」(平成20年3月10日付け通知)において示された方針と、それに対応する取組状況についての調査結果を取りまとめたものである

(1)高等学校の取組状況

 1. 懲戒の内容及び運用について

<求められる取組>
生徒への懲戒に関する内容及び運用に関する基準について、あらかじめ明確化すること。

<調査結果>
・学校教育法及び学校教育法施行規則に基づく処分の他、事実行為としての懲戒を行うことを定めている学校は約82%であった。また、事実行為として行う懲戒として定めている項目としては、校長による説諭等(約90%)、学校内謹慎、別室指導(約81%)、期限を定めないで行う自宅謹慎(約44%)等が多かった(複数回答可)。
・平成21年7月末現在の時点において、生徒への懲戒(事実行為としての懲戒を含む。)に関する基準を定めていない学校は約12%であった。基準を定めていない学校において、平成21年度中に基準を定める予定があるかという設問に対しては、約96%が現時点において未定か、その予定はないと回答した。その理由としては、「状況に応じた対応を優先する」「前例を参考にする」「一律の基準の設定、明文化が困難」等の回答があった。
・上記の回答からは、基準を定めない意図として、事案ごとの背景の違いを考慮し、懲戒が形式的、機械的処置となることを防ぐことが考えられる。しかし、処分の客観性や統一的処理を確保し、公平さを保つ上では、懲戒の基準は明確でなければならない。

<求められる取組>
懲戒に関する内容及び運用に関する基準について、生徒や保護者等に周知することを徹底すること。

<調査結果>
・懲戒に関する基準を生徒や保護者に対して周知していない学校は約35%であった。周知していない学校において、平成21年度中に周知する予定があるかという設問に対しては、約98%が現時点において未定かその予定はないと回答した。その理由としては、「基準の周知によって指導の柔軟性を欠く恐れがある」「個々に説明している」「教育効果の観点から周知しない方が良い」等の回答があった。
・基準の明確化とともに、それを周知することは、指導の透明性を高め、生徒の規範意識の育成し、家庭の協力を得ることにつながるという認識を持つ必要がある。

 2. 懲戒の運用の点検・評価、適正な手続きの確保について

<求められる取組>
 懲戒に関する基準等の適用及び具体的指導について、その運用の状況や効果等について、絶えず点検・評価を行うよう努めること。また、必要な場合には、その見直しについても適宜検討すること。

<調査結果>
・生徒への懲戒に関する基準を定めている学校において、基準の内容や運用について、運用の状況や効果等について点検・評価を行うとともに、必要に応じて見直しを検討することに努めている学校は約98%であった。

<求められる取組>
 懲戒に関する基準等に基づく懲戒・指導等の実施に当たっては、その必要性を判断の上、十分な事実関係の調査、保護者を含めた必要な連絡や指導など、適正な手続きを経るよう努めること。

<調査結果>
・生徒への懲戒に関する基準を定めている学校において、基準に基づく懲戒・指導等の実施に当たっては、事実関係の調査や保護者を含めた必要な連絡や指導など、適正な手続きを経るよう努めている学校は100%であった。

(2)都道府県・指定都市教育委員会の取組状況

 1. 平成20年3月10日付け通知を踏まえた取組について

<求められる取組>
・各学校における懲戒・指導等の実態について把握に努め、適切な運用を図るよう指導していくこと。

<調査結果>
・平成20年3月10日付け通知を踏まえ、所管の高等学校の取り組みについて、状況把握を行うなどして、取組の不十分な学校に対して指導・助言を行った教育委員会は約32%であった。また、高等学校からの回答結果を踏まえて、今後所管の高等学校の取り組みについて、状況把握を行うなどして、取組の不十分な学校に対して指導・助言を行うと回答した教育委員会は約71%であった。
・域内の学校の生徒指導体制の実態を把握し、その問題点や課題を把握した上で、指導助言をしていくことが求められる。

<求められる取組>
 事実行為としての懲戒の意義の理解とそれらの適正な運用を含め、参考事例等の情報を提供し、留意点等を示すことにより、これらの適正な運用のための条件 整備等を推進する。

<調査結果>
・所管の高等学校に対して、参考事例等を提供したり留意点を示したりするなどにより、適切な運用のための条件整備等の推進を図った教育委員会は23%であった。また、高等学校からの回答を踏まえ、今後所管の高等学校に対して、参考事例等を提供したり留意点を示したりするなどにより、適切な運用のための条件整備等の推進を図ると回答した教育委員会は約42%であった。
・各学校間の生徒指導の方針や指導方針の調整を行うなど、域内の各学校が高い透明性をもった公平で公正な指導方針のもとに、一致した生徒指導を推進するため、懲戒の適正な運用のための条件整備等を教育委員会が積極的に推進していくことが必要である。







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