● 「いじめの問題に関する児童生徒の実態把握並びに教育委員会及び学校の取組状況に係る緊急調査」を踏まえた取組の徹底について 平成24年11月27日 24文科初第936号



24文科初第936号 平成24年11月27日
各都道府県教育委員会教育長、各政令指定都市教育委員会教育長、各都道府県知事、附属学校を置く各国立大学法人学長、小中高等学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長 宛
文部科学省大臣官房長(子ども安全対策支援室長)(前川喜平)、文部科学省初等中等教育局長(布村幸彦)


    「いじめの問題に関する児童生徒の実態把握並びに教育委員会及び
    学校の取組状況に係る緊急調査」を踏まえた取組の徹底について(通知)


 標記の調査について、このたび、調査結果を別添のとおり取りまとめましたので、送付します。
 当該調査においては、いじめの認知件数が約14万件にのぼり、いじめの実態把握に関するアンケート調査や、いじめの問題に関する研修の実施、学校と警察の連携等について、教育委員会及び学校の更なる取組の充実が求められる状況が見られました。また、いじめの問題への更なる取組の充実を図るに当たっては、いじめの問題を隠さず、適切な実態把握や対応がなされることが必要であり、学校評価や教員評価の実施に際しても留意する必要があります。
 貴職におかれては、下記の点に御留意の上、都道府県教育委員会及び政令指定都市教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等に対し、都道府県知事にあっては所轄の私立学校等に対し、国立大学法人学長にあっては附属学校に対し、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長にあっては認可した学校に対し、調査結果等を連絡するとともに、下記の事項に御留意の上、児童生徒の生命又は身体の安全がおびやかされるような重大な事態に至るおそれがあると考える事案を含め、当該調査により認知された事案への継続的な対応と、いじめの問題への取組の更なる徹底を図るようお願いいたします。
 なお、当該調査のうち、いじめの問題に関する教育委員会及び学校の取組状況に係る緊急調査については、教育委員会及び国公立学校を対象として行ったものですが、いじめの問題への取組の重要性を踏まえ、都道府県知事にあっても、所轄の私立学校に対し、学校の取組について周知が図られるよう、お願いいたします。


                    記


1.いじめの問題に関する児童生徒の実態把握に係る緊急調査を踏まえた取組の徹底について
(1)当該調査において認知された事案について継続して十分な注意を払い、いじめられる子どもを守り通すとともに、いじめる子どもに対しては、毅然とした対応と粘り強い指導を行う必要がある。
 この際、学級担任等の特定の教員で抱え込むことなく、学校全体で組織的に対応するとともに、学校のみで解決することに固執せず、保護者及び教育委員会と適切な連携を図る必要がある。

(2)引き続き、児童生徒等が発する危険信号を見逃さないようにして、いじめの早期発見に努めるとともに、いじめの問題が生じたときには、その問題を隠さず、早期に適切な対応がなされることが重要である。
 また、「いじめは人間として絶対に許されない」との意識の徹底や、子ども自身の主体的な参画によるいじめの問題への取組促進などにより、いじめを許さない学校づくりを進めることが重要である。

2.いじめの問題に関する教育委員会及び学校の取組状況に係る緊急調査を踏まえた取組の徹底について

(1)教育委員会の取組について

1) 各教育委員会は、管下の学校に対し、いじめの問題への取組について、それぞれの実情に応じた適切な点検項目に基づく定期的な点検を求め、取組の充実を促す必要がある。
2) 各教育委員会は、管下の学校におけるいじめの実態把握の取組状況を点検し、全ての学校に対して「アンケート調査」の確実な実施を求めるとともに、これに加えて、各学校の実情に応じて、「個別面談」、「個人ノートや生活ノート」など教職員と児童生徒との間で日常行われている日記等の活用など、更に必要な取組を行うよう指導・助言に努める必要がある。
3) 各教育委員会は、管下の学校においていじめが把握された場合には、速やかに報告を受け、適切な連携を図ることが重要である。また、各教育委員会においては、学校からいじめの訴えがあった場合には、当該学校への支援に万全を期せるよう、日頃から、学校の実情把握に努める必要がある。
4) 各教育委員会は、いじめの問題について指導上困難な課題を抱える学校がある場合には、指導主事や教育センタ−の専門家の派遣などによる重点的な指導、助言、援助を行っていくことが重要である。
5) 各市区町村教育委員会は、出席停止の手続きに関し必要な事項を教育委員会規則で定める必要がある。出席停止に関する規則を整備していない市区町村教育委員会においては、迅速に、教育委員会規則において、出席停止の手続に関する規則を整備しなければならない。
6) 各市区町村教育委員会においては、いじめを原因とする就学校の指定の変更や区域外就学を認められるように、規則等において、必要な事項を定める必要がある。
7) 各教育委員会は、研修の実施や教師用手引書の作成等により、教職員一人一人や学校の取組の充実を促す必要がある。
8) 各教育委員会は、教育相談が広く利用されるよう、相談窓口について、児童生徒、保護者等に対し、周知徹底を図る必要がある。また、教育委員会における教育相談の実施に当たって、相談の内容に応じ、医療機関など専門機関との連携が求められる。
9) 各教育委員会は、学校とPTA、地域の関係団体等がいじめの問題について協議する機会を設け、いじめの根絶に向けて地域ぐるみの対策を推進したり、いじめの問題に関する家庭や地域の取組を推進するための啓発・広報活動を行うなど、いじめの問題の解決のために、家庭や地域、関係機関と適切な連携協力を図る必要がある。
10) 各教育委員会は、いじめの問題への取組について、それぞれの実情に応じた適切な点検項目に基づく定期的な点検を行い、点検結果を踏まえて取組の充実を図る必要がある。
11) いじめの問題解決のため、警察等の関係機関との連携が重要であり、各教育委員会は、犯罪として取り扱われるべきと認められる、いじめや暴力行為等に関して、各教育委員会や学校と警察との円滑な連携や情報共有を行うことができるようにすることが重要である。

(2)学校の取組について

1) 各学校は、いじめの問題への取組について、それぞれの実情に応じた適切な点検項目に基づく定期的な点検を行い、点検結果を踏まえて取組の充実を図る必要がある。
2) 点検は、管理職や生徒指導主事等の一部の教職員にのみ関係する点検項目を除き、基本的には全教職員で行い、点検結果やこれに基づく課題については、全教職員で共有した上で、取組の改善につなげる必要がある。
3) 各学校は、定期的に児童生徒から直接状況を聞く手法として、「アンケート調査」を実施した上で、これに加えて、各学校の実情に応じて、「個別面談」、「個人ノートや生活ノート」など教職員と児童生徒との間で日常行われている日記等の活用など、更に必要な取組を推進する必要がある。
4) 各学校は、いじめが生じた際には、学級担任等の特定の教員が抱え込むことなく、学校全体で組織的に対応することが重要である。学校内においては、校長のリーダーシップの下、教職員間の緊密な情報交換や共通理解を図り、一致協力して対応する体制で臨む必要がある。また、各学校は、いじめを把握した場合には、速やかに保護者及び教育委員会に報告し、適切な連携を図る必要がある。
5) 各学校は、いじめの問題に関する校内研修等を通じて、いじめの問題の重大性を全教職員が認識し、いじめの態様や特質、原因や背景、具体的ないじめの認知や指導上の留意点などについて教職員間の共通理解を図り、校長を中心に一致協力体制を確立して実践に当たる必要がある。
6) 各学校は、指導上配慮を要する児童生徒の進学や転学等に際しては、教員間の適切な引き継ぎを行う必要がある。また、学校におけるいじめへの対処方針や指導計画等を公表し、保護者や地域住民の理解を得るよう努める必要がある。
7) いじめの問題解決のため、警察等の関係機関との連携が重要であり、各学校は、犯罪として取り扱われるべきと認められる、いじめや暴力行為等に関して、学校と警察との円滑な連携や情報共有を行うことができるようにすることが重要である。

3.学校評価及び教員評価における留意点について

 いじめの問題に関しては、上記の事項に加え、学校評価及び教員評価の実施に際し、下記の点にも留意する必要がある。

(1)各教育委員会等の取組

1) 各教育委員会等は、いじめの問題に関する学校評価について必要な指導・助言を行うに際し、学校評価の目的を踏まえ、いじめの有無やその多寡のみを評価するのではなく、問題を隠さず、適切な実態把握や対応が促されるよう、児童生徒や地域の状況を十分踏まえて目標を立て、目標に対する具体的な取組状況や達成状況を評価し、評価結果を踏まえその改善に取り組まれるよう留意する必要がある。
2) 各教育委員会は、いじめの問題に関する教員評価について、実施要領の策定や評価記録書の作成、各学校における教員評価への指導・助言に際し、いじめの有無やその多寡のみを評価するのではなく、日頃からの児童生徒理解、未然防止や早期発見、いじめが発生した際の、問題を隠さず、迅速かつ適切な対応、組織的な取組等が評価されるよう留意する必要がある。

(2)各学校の取組

1) 各学校は、いじめの問題に関する学校評価の実施に際し、学校評価の目的を踏まえ、いじめの有無やその多寡のみを評価するのではなく、問題を隠さず、適切な実態把握や対応が促されるよう、以下の評価項目・観点の例を参考に、児童生徒や地域の状況を十分踏まえて目標を立て、目標に対する具体的な取組状況や達成状況を評価し、評価結果を踏まえその改善に取り組む必要がある。

・学校におけるいじめへの対処方針や指導計画を明確にしているか。
・日頃より、いじめの実態把握に努め、児童生徒が発する危険信号等を見逃さないようにしていじめの早期発見に努めているか。それら各学級の状況を学校組織として共有できているか。
・これらの方針や取組について、保護者や地域と共有し、理解や協力を得ているか。
・いじめが生じた際に、学校全体で組織的に迅速に対応する体制が整備され機能しているか。

2) 各学校は、いじめの問題に関する教員評価について、いじめの問題に関する目標設定や目標への対応状況の評価に際し、いじめの有無やその多寡のみを評価するのではなく、日頃からの児童生徒理解、未然防止や早期発見、いじめが発生した際の、問題を隠さず、迅速かつ適切な対応、組織的な取組等が評価されるよう留意する必要がある。








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