● 運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインの策定及び運動部活動の適切な運営等に係る取組の徹底について(依頼) 平成30年3月19日 29ス庁第649号
29ス庁第649号 平成30年3月19日
各都道府県教育委員会教育長、各指定都市教育委員会教育長、各都道府県知事、附属中学校,附属高等学校,附属中等教育学校又は附属特別支援学校を置く各国立大学法人学長附属中学校,附属高等学校又は附属特別支援学校を置く各公立大学法人の理事長、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長 宛
スポーツ庁次長(今里讓)、文部科学省初等中等教育局長(橋道和)、文化庁次長(中岡司)
運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインの策定及び
運動部活動の適切な運営等に係る取組の徹底について(依頼)
スポーツ庁では,この度,生徒にとって望ましいスポーツ環境を構築するという観点に立ち,地域や学校の実態に応じて,運動部活動が多様な形で最適に実施されるよう,標記ガイドライン(別添1)を策定しました。
中学校及び高等学校(義務教育学校後期課程,中等教育学校並びに特別支援学校中学部及び高等部を含む。以下「中学校等」という。)における運動部活動については,これまでも適切な指導をお願いしてきたところですが,中学校等における運動部活動が,生徒がスポーツに親しむ基盤として,今後も持続可能なものとなるよう,特に下記の事項に十分留意の上,本ガイドラインに則り,適切な対応をお願いします。
このことについて,都道府県教育委員会及び指定都市教育委員会におかれては,域内の指定都市を除く市町村教育委員会及び所管の中学校等に対して,都道府県知事におかれては,所轄の学校法人及び当該法人が設置する中学校等に対して,国立大学法人及び公立大学法人におかれては,附属の中学校等に対して,構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長におかれては,域内の学校設置会社及び当該会社が設置した中学校等に対して,速やかに周知の上,必要に応じて支援,指導及び助言くださるよう,また,各都道府県教育委員会におかれては,域内の市町村教育委員会が設置する学校に対して周知が図られるよう配慮をお願いします。
記
1 運動部活動の方針の策定等について
都道府県にあっては,「運動部活動の在り方に関する方針」を,学校の設置者にあっては,「設置する学校に係る運動部活動の方針」を,校長にあっては,「学校の運動部活動に係る活動方針」を速やかに策定願います。
なお,既にこうした運動部活動の方針等がある場合には,本ガイドラインに則ったものとなるよう改めて検討いただき,必要に応じて改訂願います。
2 運動部活動に係る活動計画等の作成及び公表について
中学校等においては,学校の運動部活動に係る活動方針並びに年間及び月間の活動計画等について,学校のホームページに掲載等により公表願います。
3 本ガイドラインの適用状況に関するフォローアップについて
スポーツ庁では,本ガイドラインの適用状況を把握するため,特に上記1及び2に関し,定期的にフォローアップ調査を実施することとしていますので,御協力くださるようお願いします。
4 教師の運動部活動への関与について
「学校における働き方改革に関する緊急対策の策定並びに学校における業務改善及び勤務時間管理等に係る取組の徹底について(平成30年2月9日付け29文科初第1437号)」(別添2)を踏まえ,適切に対応するようお願いします。
5 公立の義務教育諸学校に係る教師に支給される部活動指導手当の支給基準について
公立の義務教育諸学校に係る教師に支給される部活動指導手当については,地方公務員法第24条第5項及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律第42条に定めるところにより,各都道府県又は指定都市の条例等において支給要件や手当額を定めるものです。部活動指導手当に係る義務教育費国庫負担金の特殊勤務手当の算定基準は,土日4時間程度の勤務を前提に3,600円と示していますが,これは,国庫負担金算定にあたり土日4時間以上行わないと部活動指導手当を支給しないという趣旨ではなく,現在でも,各自治体の実態に応じて,「土日2時間以上4時間未満」や「土日3時間程度」など,「土日4時間程度」以外にも様々な基準を設定しているところです。都道府県教育委員会及び指定都市教育委員会におかれては,今後策定する「運動部活動の在り方に関する方針」等も踏まえて部活動指導手当の支給基準の時間の区分も見直すなど,柔軟に対応願います。
なお,平成31年度義務教育費国庫負担金の特殊勤務手当の算定基準については,今後,本ガイドラインを踏まえて検討してまいります。
6 文化部活動について
本ガイドラインの趣旨の他,本ガイドライン中の「適切な運営のための体制整備」及び「適切な休養日等の設定」については,当面,文化部活動に関しても,文化部活動の特性を踏まえつつ,本ガイドラインに準じた取扱いをしていただきますようお願いします。
なお,文化庁において,平成30年度に「文化部活動の在り方に関する有識者会議」を設置し,文化部活動の在り方に関して議論し,「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(仮称)」の策定を進める予定です。
別添1 運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(平成30年3月スポーツ庁)
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/hakusho/nc/__icsFiles/afieldfile/2018/03/23/1402808_1.pdf
別添2 学校における働き方改革に関する緊急対策の策定並びに学校における業務改善及び勤務時間管理等に係る取組の徹底について(平成30年2月9日付け29文科初第1437号)
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/hakusho/nc/__icsFiles/afieldfile/2018/03/23/1402808_2.pdf
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運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン
平成30年3月 スポーツ庁
目次
前文
本ガイドライン策定の趣旨等
1 適切な運営のための体制整備
(1)運動部活動の方針の策定等
(2)指導・運営に係る体制の構築
2 合理的でかつ効率的・効果的な活動の推進のための取組
(1)適切な指導の実施
(2)運動部活動用指導手引の普及・活用
3 適切な休養日等の設定
4 生徒のニーズを踏まえたスポーツ環境の整備
(1)生徒のニーズを踏まえた運動部の設置
(2)地域との連携等
5 学校単位で参加する大会等の見直し
終わりに
○ 運動部活動での指導のガイドライン(平成25年5月文部科学省)
○ 参考
・中学校学習指導要領平成29年3月(抜粋)
・中学校学習指導要領解説保健体育編平成29年7月(抜粋)
・安全確保のための取組に関する参考資料掲載ウェブサイト
・部活動指導員に対する研修内容(例)
前文
○ 学校の運動部活動は、スポーツに興味・関心のある同好の生徒が参加し、各運動部
の責任者(以下「運動部顧問」という。)の指導の下、学校教育の一環として行われ、
我が国のスポーツ振興を大きく支えてきた。
○ また、体力や技能の向上を図る目的以外にも、異年齢との交流の中で、生徒同士や
生徒と教師等との好ましい人間関係の構築を図ったり、学習意欲の向上や自己肯定感、
責任感、連帯感の涵養に資するなど、生徒の多様な学びの場として、教育的意義が大かん
きい。
○ しかしながら、今日においては、社会・経済の変化等により、教育等に関わる課題
が複雑化・多様化し、学校や教師だけでは解決することができない課題が増えている。
とりわけ、少子化が進展する中、運動部活動においては、従前と同様の運営体制では
維持は難しくなってきており、学校や地域によっては存続の危機にある。
○ 将来においても、全国の生徒が生涯にわたって豊かなスポーツライフを実現する資
質・能力を育む基盤として、運動部活動を持続可能なものとするためには、各自のニ
ーズに応じた運動・スポーツを行うことができるよう、速やかに、運動部活動の在り
方に関し、抜本的な改革に取り組む必要がある。
本ガイドライン策定の趣旨等
○ 本ガイドラインは、義務教育である中学校(義務教育学校後期課程、中等教育学校
前期課程、特別支援学校中学部を含む。以下同じ。)段階の運動部活動を主な対象と
し、生徒にとって望ましいスポーツ環境を構築するという観点に立ち、運動部活動が
以下の点を重視して、地域、学校、競技種目等に応じた多様な形で最適に実施される
ことを目指す。
・知・徳・体のバランスのとれた「生きる力」を育む、「日本型学校教育」の意義
を踏まえ、生徒がスポーツを楽しむことで運動習慣の確立等を図り、生涯にわたっ
て心身の健康を保持増進し、豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力の
育成を図るとともに、バランスのとれた心身の成長と学校生活を送ることができる
ようにすること
・生徒の自主的、自発的な参加により行われ、学校教育の一環として教育課程との
関連を図り、合理的でかつ効率的・効果的に取り組むこと
・学校全体として運動部活動の指導・運営に係る体制を構築すること
○ 市区町村教育委員会や学校法人等の学校の設置者及び学校は、本ガイドラインに則
り、持続可能な運動部活動の在り方について検討し、速やかに改革に取り組む。都道
府県においては、学校の設置者が行う改革に必要な支援等に取り組む。
○ 本ガイドラインの基本的な考え方は、学校の種類や学校の設置者の違いに関わらず
該当するものであることから、高等学校段階の運動部活動についても本ガイドライン
を原則として適用し、速やかに改革に取り組む。その際、高等学校段階では、各学校
において中学校教育の基礎の上に多様な教育が行われている点に留意する。
○ スポーツ庁は、本ガイドラインに基づく全国の運動部活動改革の取組状況について、
定期的にフォローアップを行う。
1 適切な運営のための体制整備
(1)運動部活動の方針の策定等
ア 都道府県は、本ガイドラインに則り、運動部活動の活動時間及び休養日の設定その
他適切な運動部活動の取組に関する「運動部活動の在り方に関する方針」を策定する。
イ 市区町村教育委員会や学校法人等の学校の設置者は、本ガイドラインに則り、都道
府県の「運動部活動の在り方に関する方針」を参考に、「設置する学校に係る運動部
活動の方針」を策定する。
ウ 校長は、学校の設置者の「設置する学校に係る運動部活動の方針」に則り、毎年度、
「学校の運動部活動に係る活動方針」を策定する。
運動部顧問は、年間の活動計画(活動日、休養日及び参加予定大会日程等)並びに
毎月の活動計画及び活動実績(活動日時・場所、休養日及び大会参加日等)を作成し、
校長に提出する。
エ 校長は、上記ウの活動方針及び活動計画等を学校のホームページへの掲載等により
公表する。
オ 学校の設置者は、上記ウに関し、各学校において運動部活動の活動方針・計画の策
定等が効率的に行えるよう、簡素で活用しやすい様式の作成等を行う。なお、このこ
とについて、都道府県は、必要に応じて学校の設置者の支援を行う。
(2)指導・運営に係る体制の構築
ア 校長は、生徒や教師の数、部活動指導員1の配置状況を踏まえ、指導内容の充実、
生徒の安全の確保、教師の長時間勤務の解消等の観点から円滑に運動部活動を実施で
きるよう、適正な数の運動部を設置する。
イ 学校の設置者は、各学校の生徒や教師の数、部活動指導員の配置状況や校務分担の
実態等を踏まえ、部活動指導員を積極的に任用し、学校に配置する。
なお、部活動指導員の任用・配置に当たっては、学校教育について理解し、適切な
指導を行うために、部活動の位置付け、教育的意義、生徒の発達の段階に応じた科学
的な指導、安全の確保や事故発生後の対応を適切に行うこと、生徒の人格を傷つける
言動や、体罰は、いかなる場合も許されないこと、服務(校長の監督を受けることや
生徒、保護者等の信頼を損ねるような行為の禁止等)を遵守すること等に関し、任用
前及び任用後の定期において研修2を行う。
ウ 校長は、運動部顧問の決定に当たっては、校務全体の効率的・効果的な実施に鑑み、
教師の他の校務分掌や、部活動指導員の配置状況を勘案した上で行うなど、適切な校
務分掌となるよう留意するとともに、学校全体としての適切な指導、運営及び管理に
係る体制の構築を図る。
エ 校長は、毎月の活動計画及び活動実績の確認等により、各運動部の活動内容を把握
し、生徒が安全にスポーツ活動を行い、教師の負担が過度とならないよう、適宜、指
導・是正を行う。
オ 都道府県及び学校の設置者は、運動部顧問を対象とするスポーツ指導に係る知識及
び実技の質の向上並びに学校の管理職を対象とする運動部活動の適切な運営に係る実
効性の確保を図るための研修等の取組を行う。
カ 都道府県、学校の設置者及び校長は、教師の運動部活動への関与について、「学校
における働き方改革に関する緊急対策(平成29年12月26日文部科学大臣決定)」及び
「学校における働き方改革に関する緊急対策の策定並びに学校における業務改善及び
勤務時間管理等に係る取組の徹底について(平成30年2月9日付け29文科初第1437
号)」3を踏まえ、法令に則り、業務改善及び勤務時間管理等を行う。
2 合理的でかつ効率的・効果的な活動の推進のための取組
(1)適切な指導の実施
ア 校長及び運動部顧問は、運動部活動の実施に当たっては、文部科学省が平成25年
5月に作成した「運動部活動での指導のガイドライン」に則り、生徒の心身の健康管
理(スポ―ツ障害・外傷の予防やバランスのとれた学校生活への配慮等を含む)、事
故防止(活動場所における施設・設備の点検や活動における安全対策等)及び体罰・
ハラスメントの根絶を徹底する。都道府県及び学校の設置者は、学校におけるこれら
の取組が徹底されるよう、学校保健安全法等も踏まえ、適宜、支援及び指導・是正を
行う。
イ 運動部顧問は、スポーツ医・科学の見地からは、トレーニング効果を得るために休
養を適切に取ることが必要であること、また、過度の練習がスポーツ障害・外傷のリ
スクを高め、必ずしも体力・運動能力の向上につながらないこと等を正しく理解する
とともに、生徒の体力の向上や、生涯を通じてスポーツに親しむ基礎を培うことがで
きるよう、生徒とコミュニケーションを十分に図り、生徒がバーンアウトすることな
く、技能や記録の向上等それぞれの目標を達成できるよう、競技種目の特性等を踏ま
えた科学的トレーニングの積極的な導入等により、休養を適切に取りつつ、短時間で
効果が得られる指導を行う。
また、専門的知見を有する保健体育担当の教師や養護教諭等と連携・協力し、発達
の個人差や女子の成長期における体と心の状態等に関する正しい知識を得た上で指導
を行う。
(2)運動部活動用指導手引の普及・活用
ア 中央競技団体4は、競技の普及の役割に鑑み、運動部活動における合理的でかつ効
率的・効果的な活動のための指導手引(競技レベルに応じた1日2時間程度の練習メ
ニュー例と週間、月間、年間での活動スケジュールや、効果的な練習方法、指導上の
留意点、安全面の注意事項等から構成、運動部顧問や生徒の活用の利便性に留意した
分かりやすいもの)を作成する。
イ 中央競技団体は、上記アの指導手引をホームページに掲載・公開するとともに、公
益財団法人日本中学校体育連盟や都道府県等と連携して、全国の学校における活用を
依頼し、普及を図る。
ウ 運動部顧問は、上記アの指導手引を活用して、2(1)に基づく指導を行う。
3 適切な休養日等の設定
ア 運動部活動における休養日及び活動時間については、成長期にある生徒が、運動、
食事、休養及び睡眠のバランスのとれた生活を送ることができるよう、スポーツ医・
科学の観点からのジュニア期におけるスポーツ活動時間に関する研究5も踏まえ、
以下を基準とする。
○ 学期中は、週当たり2日以上の休養日を設ける。(平日は少なくとも1日、土曜
日及び日曜日(以下「週末」という。)は少なくとも1日以上を休養日とする。週
末に大会参加等で活動した場合は、休養日を他の日に振り替える。)
○ 長期休業中の休養日の設定は、学期中に準じた扱いを行う。また、生徒が十分な
休養を取ることができるとともに、運動部活動以外にも多様な活動を行うことがで
きるよう、ある程度長期の休養期間(オフシーズン)を設ける。
○ 1日の活動時間は、長くとも平日では2時間程度、学校の休業日(学期中の週末
を含む)は3時間程度とし、できるだけ短時間に、合理的でかつ効率的・効果的な
活動を行う。
イ 都道府県は、1(1)に掲げる「運動部活動の在り方に関する方針」の策定に当た
っては、上記の基準を踏まえて休養日及び活動時間等を設定し、明記する。
ウ 学校の設置者は、1(1)に掲げる「設置する学校に係る運動部活動の方針」の策
定に当たっては、上記の基準を踏まえるとともに、都道府県が策定した方針を参考に、
休養日及び活動時間等を設定し、明記する。また、下記エに関し、適宜、支援及び指
導・是正を行う。
エ 校長は、1(1)に掲げる「学校の運動部活動に係る活動方針」の策定に当たって
は、上記の基準を踏まえるとともに、学校の設置者が策定した方針に則り、各運動部
の休養日及び活動時間等を設定し、公表する。また、各運動部の活動内容を把握し、
適宜、指導・是正を行う等、その運用を徹底する。
オ なお、休養日及び活動時間等の設定については、地域や学校の実態を踏まえた工夫
として、定期試験前後の一定期間等、運動部共通、学校全体、市区町村共通の部活動
休養日を設けることや、週間、月間、年間単位での活動頻度・時間の目安を定めるこ
とも考えられる。
4 生徒のニーズを踏まえたスポーツ環境の整備
(1)生徒のニーズを踏まえた運動部の設置
ア 校長は、生徒の1週間の総運動時間が男女ともに二極化の状況にあり、特に、中学
生女子の約2割が60分未満であること6、また、生徒の運動・スポーツに関するニ
ーズは、競技力の向上以外にも、友達と楽しめる、適度な頻度で行える等多様である
7中で、現在の運動部活動が、女子や障害のある生徒等も含めて生徒の潜在的なスポ
ーツニーズに必ずしも応えられていないことを踏まえ、生徒の多様なニーズに応じた
活動を行うことができる運動部を設置する。
具体的な例としては、より多くの生徒の運動機会の創出が図られるよう、季節ごと
に異なるスポーツを行う活動、競技志向でなくレクリエーション志向で行う活動、体
力つくりを目的とした活動等、生徒が楽しく体を動かす習慣の形成に向けた動機付け
となるものが考えられる。
イ 地方公共団体は、少子化に伴い、単一の学校では特定の競技の運動部を設けること
ができない場合には、生徒のスポーツ活動の機会が損なわれることがないよう、複数
校の生徒が拠点校の運動部活動に参加する等、合同部活動等の取組を推進する。
(2)地域との連携等
ア 都道府県、学校の設置者及び校長は、生徒のスポーツ環境の充実の観点から、学校
や地域の実態に応じて、地域のスポーツ団体との連携、保護者の理解と協力、民間事
業者の活用等による、学校と地域が共に子供を育てるという視点に立った、学校と地
域が協働・融合した形での地域におけるスポーツ環境整備を進める。
イ 公益財団法人日本体育協会8、地域の体育協会、競技団体及びその他のスポーツ団
体は、総合型地域スポーツクラブやスポーツ少年団等の生徒が所属する地域のスポー
ツ団体に関する事業等について、都道府県もしくは学校の設置者等と連携し、学校と
地域が協働・融合した形での地域のスポーツ環境の充実を推進する。
また、学校の設置者等が実施する部活動指導員の任用・配置や、運動部顧問等に対
する研修等、スポーツ指導者の質の向上に関する取組に協力する。
ウ 地方公共団体は、学校管理下ではない社会教育に位置付けられる活動については、
各種保険への加入や、学校の負担が増加しないこと等に留意しつつ、生徒がスポーツ
に親しめる場所が確保できるよう、学校体育施設開放事業を推進する。
エ 都道府県、学校の設置者及び校長は、学校と地域・保護者が共に子供の健全な成長
のための教育、スポーツ環境の充実を支援するパートナーという考え方の下で、こう
した取組を推進することについて、保護者の理解と協力を促す。
5 学校単位で参加する大会等の見直し
ア 公益財団法人日本中学校体育連盟は、主催する学校体育大会について、4を踏まえ、
単一の学校からの複数チームの参加、複数校合同チームの全国大会等への参加、学校
と連携した地域スポーツクラブの参加などの参加資格の在り方、参加生徒のスポーツ
障害・外傷の予防の観点から、大会の規模もしくは日程等の在り方、スポーツボラン
ティア等の外部人材の活用などの運営の在り方に関する見直しを速やかに行う。
また、都道府県中学校体育連盟が主催する大会においても、同様の見直しが行われ
るよう、必要な協力や支援を行う。
イ 都道府県中学校体育連盟及び学校の設置者は、学校の運動部が参加する大会・試合
の全体像を把握し、週末等に開催される様々な大会・試合に参加することが、生徒や
運動部顧問の過度な負担とならないよう、大会等の統廃合等を主催者に要請するとと
もに、各学校の運動部が参加する大会数の上限の目安等を定める。
ウ 校長は、都道府県中学校体育連盟及び学校の設置者が定める上記イの目安等を踏ま
え、生徒の教育上の意義や、生徒や運動部顧問の負担が過度とならないことを考慮し
て、参加する大会等を精査する。
終わりに
○ 本ガイドラインは、生徒の視点に立った、学校の運動部活動改革に向けた具体の取
組について示すものであるが、今後、少子化がさらに進むことを踏まえれば、ジュニ
ア期におけるスポーツ環境の整備については、長期的には、従来の学校単位での活動
から一定規模の地域単位での活動も視野に入れた体制の構築が求められる。
○ このため、地方公共団体は、本ガイドラインを踏まえた運動部活動改革の取組を進
めるとともに、地域の実情に応じて、長期的に、地域全体で、これまでの学校単位の
運動部活動に代わりうる生徒のスポーツ活動の機会の確保・充実方策を検討する必要
がある。
○ また、競技団体は、競技の普及の観点から、運動部活動やジュニア期におけるスポ
ーツ活動が適切に行われるために必要な協力を積極的に行うとともに、競技力向上の
観点から、地方公共団体や公益財団法人日本体育協会8、地域の体育協会等とも連携
し、各地の将来有望なアスリートとして優れた素質を有する生徒を、本格的な育成・
強化コースへ導くことができるよう、発掘・育成の仕組みの確立に向けて取り組む必
要がある。
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1 部活動指導員は、学校教育法施行規則第78条の2に基づき、「中学校におけるスポー
ツ、文化、科学等に関する教育活動(学校の教育課程として行われるものを除く。)に係
る技術的な指導に従事する」学校の職員(義務教育学校後期課程、高等学校、中等教育学
校並びに特別支援学校の中学部及び高等部については当該規定を準用)。学校の教育計画
に基づき、校長の監督を受け、部活動の実技指導、大会・練習試合等の引率等を行う。校
長は、部活動指導員に部活動の顧問を命じることができる。
2 「学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行について(平成29年3月14日付け2
8ス庁第704号)」において、部活動指導員を制度化した概要、留意事項として部活動指導
員の職務、規則等の整備、任用、研修、生徒の事故への対応、適切な練習時間や休養日の
設定、生徒、保護者及び地域に対する理解の促進等について示されている。
3 当該通知において、「部活動や放課後から夜間などにおける見回り等,「超勤4項
目」以外の業務については,校長は,時間外勤務を命ずることはできないことを踏まえ,
早朝や夜間等,通常の勤務時間以外の時間帯にこうした業務を命ずる場合,服務監督権者
は,正規の勤務時間の割り振りを適正に行うなどの措置を講ずるよう徹底すること。」等
について示されている。
4 スポーツ競技の国内統括団体
5 「スポーツ医・科学の観点からのジュニア期におけるスポーツ活動時間について」
(平成29年12月18日公益財団法人日本体育協会)において、研究等が競技レベルや活動場
所を限定しているものではないことを踏まえた上で、「休養日を少なくとも1週間に1〜
2日設けること、さらに、週当たりの活動時間における上限は、16時間未満とすることが
望ましい」ことが示されている。
6 スポーツ庁「平成29年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(平成30年2月公
表)では、保健体育の授業を除く1週間の総運動時間が60分未満である中学校2年生女子
の割合は19.4%で、このうち、0分の割合は13.6%であった。
7 スポーツ庁「平成29年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(平成30年2月公
表)では、運動部や地域のスポーツクラブに所属していない、又は、文化部に所属してい
ると答えた中学校2年生が運動部活動に参加する条件は、「好きな、興味のある運動やス
ポーツを行うことができる(男子42.9%・女子59.1%)」、「友達と楽しめる(男子42.7
%・女子60.4%)」、「自分のペースで行うことができる(男子44.4%・女子53.8%)」
が上位であった。
8 団体名称を「公益財団法人日本スポーツ協会」に変更予定(2018年4月1日)。
Copyright© 執筆者,大阪教育法研究会