● 成年年齢に達した生徒に係る在学中の手続等に関する留意事項について(事務連絡) 令和元年12月17日 事務連絡



事務連絡 令和元年12月17日
各都道府県教育委員会担当課、各指定都市教育委員会担当課、各都道府県私立学校主管課、附属学校を置く各国立大学法人担当課、附属学校を置く各公立大学法人担当課、高等学校を設置する学校設置会社を所轄、する構造改革特別区域法第12条第1項、の認定を受けた各地方公共団体の担当課 宛
文部科学省初等中等教育局参事官(高等学校担当)付、文部科学省初等中等教育局教育課程課、文部科学省初等中等教育局児童生徒課、文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課


    成年年齢に達した生徒に係る在学中の手続等に関する留意事項について


 昨年6月、民法の一部を改正する法律(平成30年法律第59号。以下「改正法」という。)が公布され、令和4年4月1日に施行されることとなりました。改正法は、民法(明治29年法律第89号)第4条に規定する成年年齢を20歳から18歳に引き下げるものであり、平成16年4月2日以降に生まれた者は、施行日以降満18歳で成年に達することから、平成16年4月2日以降に生まれた者で令和2年度以降に高等学校、中等教育学校の後期課程及び特別支援学校高等部(以下「高等学校等」という。)に入学した者に関し、在学中に成年に達すること等については、平成30年7月23日付け文科生第315号「成年年齢引下げ等を見据えた環境整備について(通知)」(以下「通知」という。)において通知したとおりです。
 通知では、成年年齢に達した生徒に係る在学中の手続等に当たり留意すべき事項については、関係団体との意見交換も踏まえ、必要に応じて情報提供を行っていくとしていたところですが、今般、関係団体との意見交換の結果も踏まえ、下記のとおり留意事項を整理しましたので、各位におかれては、参考にしていただき、改正法の施行に向けた環境整備の推進を図っていただくようお願いします。
 また、このことについて、都道府県教育委員会にあっては所管の高等学校等及び域内の市区町村教育委員会(指定都市教育委員会を除く。)に対して、指定都市教育委員会にあっては所管の高等学校等に対して、都道府県にあっては所轄の学校法人及び高等学校等に対して、附属学校を置く国立大学法人及び公立大学法人にあっては附属の高等学校等に対して、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長にあっては認可した高等学校等及びそれを設置する学校設置会社に対して、御周知くださるようお願いします。


    記


1.改正法の内容・趣旨及び成年年齢に達した生徒に対する支援の必要性について

 成年年齢に達した生徒に係る在学中の手続等については、改正法の内容・趣旨及び当該生徒に対する支援の必要性を踏まえる必要があること。

(1)改正法の内容・趣旨
 改正法の施行後は、年齢満18歳以上の生徒は単独で有効な契約を行うことができ、また、民法第818条に規定する親権に服することがなくなるため、その父母等は民法第820条に規定する子の監護及び教育をする権利を有さず、また監護及び教育をする義務を負わないこととなる。さらに、満18歳以上の生徒は、民法第821条の親権者による居所の指定や民法第823条の親権者による職業の許可の規定の適用を受けないこととなる。
 これは、若年者の自己決定権を尊重するものであり、その積極的な社会参加を促し、社会を活力あるものにする意義を有するものである。

(2)成年年齢に達した生徒に対する支援の必要性
 改正法の施行後も、若年者については、成年年齢に達したとしてもいまだ成長の過程にあり、その社会的自立に対して支援をする必要がなくなるということを意味するものではない。
 若年者の社会的自立に向けた支援については、これまでも子ども・若者育成支援推進法(平成21年法律第71号)等に基づき、成年年齢に達しているか否かにかかわらず、若年者が健やかに成長し、社会とのかかわりを自覚しつつ、自立した個人としての自己を確立し、他者とともに次代の社会を担うことができるよう、支援に取り組んできたところであり、今後も同様に支援の観点から取組を進める必要があること。

2.成年年齢に達した生徒に係る在学中の手続等について

 学校教育法(昭和22年法律第26号)第16条においては保護者の定義を「子に対して親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人をいう。以下同じ。)」としているが、民法第818条第1項では「成年に達しない子は、父母の親権に服する」と規定しており、改正法の施行後は年齢満18歳以上の生徒は親権に服することがなくなるため、当該生徒の父母等は学校教育法上の保護者に該当しなくなる。
 このため、成年年齢に達した生徒に係る在学中の手続等については、以下の事項に留意する必要がある。

(1)成年年齢に達した生徒の指導要録の取扱い
 高等学校等の指導要録については、平成22年5月11日付け22文科初第1号「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」及び平成31年3月29日付け30文科初第1845号「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」の別紙3「高等学校及び特別支援学校高等部の指導要録に記載する事項等」により、「保護者の氏名」を記入することとしている。
 そのため、高等学校等の設置者が、高等学校等において使用する指導要録の様式を今後定める際に、従来「保護者」としていた部分を「保護者等」や「父母等」などに改めるなどの対応をとることが考えられること。
 なお、既存の指導要録の様式において「保護者」としている場合においては、成年年齢に達したことを理由に「保護者の氏名」に関する記載を削除する等の対応をとる必要はないこと。

(2)成年年齢に達した生徒の退学、転学、留学及び休学に係る手続
 高等学校等における退学、転学、留学及び休学(以下「退学等」という。)について、成年年齢に達した生徒は、父母等の同意を必要とすることなく単独で校長の許可を得ることが改正法により、可能となる場合があること。このため、退学等に係る手続の際に生徒と父母等が連署した書類の提出を求めている事例もあるが、改正法施行後は、この場合において、成年年齢に達した生徒の退学等に係る手続においては、父母等が連署した書類の提出は不要であること。
 もっとも、成年年齢に達した生徒はいまだ成長の過程にあり、引き続き支援が必要な存在であることから、成年年齢に達した生徒の退学等に係る手続を行う際には、事前に学校、生徒及び父母等との間で話し合いの場を設けるなど、その父母等の理解を得ることが重要であること。

(3)成年年齢に達した生徒に関する授業料その他の費用の徴収
 高等学校等における授業料その他の費用(以下「授業料等」という。)の徴収については、教育委員会が設置する高等学校等においては条例等により、国立大学法人、公立大学法人又は学校法人等が設置する高等学校等においては入学時にする契約等により定められ、また、授業料等の徴収に係る入学手続書類等において保護者の氏名等を記載させることにより、授業料等を負担する者を決めていることが多いと考えられる。このとき、各規定や書類の様式等において「保護者」の語を使用していること等により、成年年齢に達した生徒の授業料等の徴収に当たりこれまでの取扱いと異なることとなる等の誤解が生じると考えられる場合には、例えば「保護者」の語に代えて「保護者等」や「父母等」、「生計維持者」などの語を用いるなどの見直しを行うことが考えられること。
 その上で、入学手続書類等において、授業料等を負担する者について明確にするなど、授業料等の徴収に支障が生じないよう対応することが考えられること。
 なお、入学手続等の機会や、学用品の購入等により父母等に対して経済的負担を求める際には、授業料等の徴収について父母等の十分な理解を得ることが引き続き重要であること。

(4)成年年齢に達した生徒に対する生徒指導及び進路指導
 高等学校等における生徒指導については、上記1を踏まえ、生徒が成年年齢に達しているか否かにかかわらず、一人一人の生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して行うことが必要である。また、生徒は家庭の中で育ち、様々な集団に属しながら地域社会とかかわり、社会性を身に付け、成長していくものであり、家庭・地域と連携しながら生徒指導を行うことは重要である。特に家庭は生徒が人格を形成するうえで大きな影響力を有しており、生徒が成年年齢に達しているか否かにかかわらず、父母等との連携の下で生徒指導を行うことが必要である。また、働くことに対する父母等の考え方や態度が生徒のキャリア発達に大きな影響を与えるものであることから、進路指導についても、生徒が成年年齢に達しているか否かにかかわらず、引き続き父母等との連携の下で行うことが重要である。
 このため、生徒が成年年齢に達しているか否かにかかわらず、生徒指導及び進路指導について父母等の協力が得られるよう、各高等学校等においては、日頃から父母等の理解を得ることが重要であること。なお、従前から学校によっては、入学手続等において、生徒指導及び進路指導への父母等の協力が得られるよう、説明資料を配布したり、誓約書の記入を依頼する等の取組が行われているところであり、必要に応じてこのような取組を参考にすることも考えられること。
 なお、いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)第2条第4項においては、保護者の定義を「親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人)」としていることから、改正法施行後は満18歳に達した生徒の父母等は同法上の保護者には該当しないこととなるが、高等学校等が同法に基づきいじめ対策に取り組むに当たっては、引き続き、同法上の保護者に準じて取り扱うべきこと。

(5)成年年齢に達した生徒に対する保健指導及び健康診断結果の通知
 高等学校等における生徒に対する保健指導については、学校保健安全法(昭和33年法律第56号)第9条において、養護教諭その他の職員は、健康上の問題があると認めるときは、生徒に対して必要な指導を行うとともに、必要に応じ、その保護者に対して必要な助言を行うとされており、同法第13条第1項の健康診断(以下「健康診断」という。)については、学校保健安全法施行規則(昭和33年文部省令第18号)第9条において、健康診断を実施したときは、生徒にあっては当人及びその保護者にその結果を通知することとされている。
 近年、生徒の健康課題が多様化、深刻化している中、生徒の心身の保持増進を図るためには、学校、家庭、地域の医療機関等が適切に連携することが重要であり、生徒の健やかな成長を支援する観点から、成年年齢に達した生徒においても、上記1の趣旨を踏まえ、引き続き父母等と連携することが重要である。
 改正法施行後は満18歳に達した生徒の父母等は同法上の保護者には該当しないことになるが、高等学校等が同法に基づき保健指導等を行うに当たっては、引き続き、同法上の保護者に準じて取り扱うべきこと。






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