● 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の公布について 令和3年6月18日 3文科初第499号
府子本第742号、3文科初第499号、医発0618第1号、子発0618第1号、障発0618第1号、令和3年6月18日
各都道府県知事、各指定都市市長、各中核市市長、各都道府県教育委員会長、各指定都市教育委員会長、各国公私立大学長、各国公私立高等専門学校長、小中高等学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長 宛
内閣府子ども・子育て本部統括官、文部科学省初等中等教育局長、厚生労働省医政局長、厚生労働省子ども家庭局長、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長
医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の公布について
「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(令和3年法律第81号)」
(以下「法」という。)は令和3年6月18日に公布され、令和3年9月18日(公
布の日から起算して3月が経過した日)から施行されるところである。
法の目的及び概要は下記のとおりであるので、管内区市町村・教育委員会・関係
団体等にその周知徹底を図るとともに、必要な指導、助言又は援助を行い、法の運
用に遺憾のないようにご配意願いたい。
記
第1 法の目的
この法律は、医療技術の進歩に伴い医療的ケア児が増加するとともにその実
態が多様化し、医療的ケア児及びその家族が個々の医療的ケア児の心身の状況
等に応じた適切な支援を受けられるようにすることが重要な課題となっている
ことに鑑み、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関し、基本理念を定め、
国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、保育及び教育の拡充に係
る施策その他必要な施策並びに医療的ケア児支援センターの指定等について定
めることにより、医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、その家族の離
職の防止に資し、もって安心して子どもを生み、育てることができる社会の実
現に寄与することを目的としたこと。
第2 法の概要
一 総則
1 定義について(第2条関係)
(1) 「医療的ケア」の定義を、人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の
医療行為としたこと。
(2) 「医療的ケア児」の定義を、日常生活及び社会生活を営むために恒常的に
医療的ケアを受けることが不可欠である児童(18歳未満の者及び18歳以上
の者であって高等学校等(学校教育法に規定する高等学校、中等教育学校の
後期課程及び特別支援学校の高等部をいう。以下同じ。)に在籍するものを
いう。二の1(2)において同じ。)としたこと。
二 基本理念
1 基本理念について(第3条関係)
(1) 医療的ケア児及びその家族に対する支援は、医療的ケア児の日常生活及
び社会生活を社会全体で支えることを旨として行われなければならないも
のとしたこと。
(2) 医療的ケア児及びその家族に対する支援は、医療的ケア児が医療的ケア
児でない児童と共に教育を受けられるよう最大限に配慮しつつ適切に教育
に係る支援が行われる等、個々の医療的ケア児の年齢、必要とする医療的ケ
アの種類及び生活の実態に応じて、かつ、医療、保健、福祉、教育、労働等
に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に、切れ
目なく行われなければならないものとしたこと。
(3) 医療的ケア児及びその家族に対する支援は、医療的ケア児が18歳に達し、
又は高等学校等を卒業した後も適切な保健医療サービス及び福祉サービス
を受けながら日常生活及び社会生活を営むことができるようにすることに
も配慮して行われなければならないものとしたこと。
(4) 医療的ケア児及びその家族に対する支援に係る施策を講ずるに当たって
は、医療的ケア児及びその保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者
で、医療的ケア児を現に監護するものをいう。三の2(2)において同じ。)の
意思を最大限に尊重しなければならないものとしたこと。
(5) 医療的ケア児及びその家族に対する支援に係る施策を講ずるに当たって
は、医療的ケア児及びその家族がその居住する地域にかかわらず等しく適
切な支援を受けられるようにすることを旨としなければならないものとし
たこと。
2 国の責務について(第4条関係)
国は、1の基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、医療的
ケア児及びその家族に対する支援に係る施策を総合的に実施する責務を有す
るものとしたこと。
3 地方公共団体の責務について(第5条関係)
地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、自主的かつ
主体的に、医療的ケア児及びその家族に対する支援に係る施策を実施する責
務を有するものとしたこと。
4 保育所の設置者等の責務について(第6条関係)
保育所の設置者、認定こども園(保育所又は幼稚園であるものを除く。以下
同じ。)の設置者及び家庭的保育事業等(家庭的保育事業、小規模保育事業及
び事業所内保育事業をいう。以下同じ。)を営む者は、基本理念にのっとり、
その設置する保育所若しくは認定こども園に在籍し、又は当該家庭的保育事
業等を利用している医療的ケア児に対し、適切な支援を行う責務を有するも
のとしたこと。
また、放課後児童健全育成事業を行う者は、基本理念にのっとり、当該放課
後児童健全育成事業を利用している医療的ケア児に対し、適切な支援を行う
責務を有するものとしたこと。
5 学校の設置者の責務について(第7条関係)
学校(幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及
び特別支援学校をいう。以下同じ。)の設置者は、基本理念にのっとり、その
設置する学校に在籍する医療的ケア児に対し、適切な支援を行う責務を有す
るものとしたこと。
6 法制上の措置等について(第8条関係)
政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上又は財政上の措置そ
の他の措置を講じなければならないものとしたこと。
三 医療的ケア児及びその家族に対する支援に係る施策
1 保育を行う体制の拡充等について(第9条関係)
(1) 国及び地方公共団体は、医療的ケア児に対して保育を行う体制の拡充が
図られるよう、子ども・子育て支援法の仕事・子育て両立支援事業における
医療的ケア児に対する支援についての検討、医療的ケア児が在籍する保育
所、認定こども園等に対する支援その他の必要な措置を講ずるもの
としたこと。
(2) 保育所の設置者、認定こども園の設置者及び家庭的保育事業等を営む者
は、その設置する保育所若しくは認定こども園に在籍し、又は当該家庭的保
育事業等を利用している医療的ケア児が適切な医療的ケアその他の支援を
受けられるようにするため、保健師、助産師、看護師若しくは准看護師(以
下「看護師等」という。)又は喀痰吸引等(社会福祉士及び介護福祉士法第
2条第2項に規定する喀痰吸引等をいう。三の2(3)において同じ。)を行う
ことができる保育士若しくは保育教諭の配置その他の必要な措置を講ずる
ものとしたこと。
(3) 放課後児童健全育成事業を行う者は、当該放課後児童健全育成事業を利
用している医療的ケア児が適切な医療的ケアその他の支援を受けられるよ
うにするため、看護師等の配置その他の必要な措置を講ずるものとしたこ
と。
2 教育を行う体制の拡充等について(第10条関係)
(1) 国及び地方公共団体は、医療的ケア児に対して教育を行う体制の拡充が
図られるよう、医療的ケア児が在籍する学校に対する支援その他の必要な
措置を講ずるものとしたこと。
(2) 学校の設置者は、その設置する学校に在籍する医療的ケア児が保護者の
付添いがなくても適切な医療的ケアその他の支援を受けられるようにする
ため、看護師等の配置その他の必要な措置を講ずるものとしたこと。
(3) 国及び地方公共団体は、看護師等のほかに学校において医療的ケアを行
う人材の確保を図るため、介護福祉士その他の喀痰吸引等を行うことがで
きる者を学校に配置するための環境の整備その他の必要な措置を講ずるも
のとしたこと。
3 日常生活における支援について(第11条関係)
国及び地方公共団体は、医療的ケア児及びその家族が、個々の医療的ケア児
の年齢、必要とする医療的ケアの種類及び生活の実態に応じて、医療的ケアの
実施その他の日常生活において必要な支援を受けられるようにするため必要
な措置を講ずるものとしたこと。
4 相談体制の整備について(第12条関係)
国及び地方公共団体は、医療的ケア児及びその家族その他の関係者からの
各種の相談に対し、個々の医療的ケア児の特性に配慮しつつ総合的に応ずる
ことができるようにするため、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務
を行う関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に必要な相談体制の整備
を行うものとしたこと。
5 情報の共有の促進について(第13条関係)
国及び地方公共団体は、個人情報の保護に十分配慮しつつ、医療、保健、福
祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体が行う医療的ケア
児に対する支援に資する情報の共有を促進するため必要な措置を講ずるもの
としたこと。
四 医療的ケア児支援センター等
1 医療的ケア児支援センター等について(第14条関係)
(1) 都道府県知事は、次に掲げる業務を、社会福祉法人その他の法人であって
当該業務を適正かつ確実に行うことができると認めて指定した者(以下「医
療的ケア児支援センター」という。)に行わせ、又は自ら行うことができる
ものとしたこと。
@ 医療的ケア児(18歳に達し、又は高等学校等を卒業したことにより医
療的ケア児でなくなった後も医療的ケアを受ける者のうち引き続き雇用
又は障害福祉サービスの利用に係る相談支援を必要とする者を含む。以
下1及び六の2(2)において同じ。)及びその家族その他の関係者に対し、
専門的に、その相談に応じ、又は情報の提供若しくは助言その他の支援を
行うこと。
A 医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間
団体並びにこれに従事する者に対し医療的ケアについての情報の提供及
び研修を行うこと。
B 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関して、医療、保健、福祉、
教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体との連絡調整を
行うこと。
C @からBまでに掲げる業務に附帯する業務
(2) (1)による指定は、当該指定を受けようとする者の申請により行うものと
したこと。
(3) 都道府県知事は、1の業務を医療的ケア児支援センターに行わせ、又は自
ら行うに当たっては、地域の実情を踏まえつつ、医療的ケア児及びその家族
その他の関係者がその身近な場所において必要な支援を受けられるよう適
切な配慮をするものとしたこと。
2 秘密保持義務について(第15条関係)
医療的ケア児支援センターの役員若しくは職員又はこれらの職にあった者
は、職務上知ることのできた個人の秘密を漏らしてはならないものとしたこ
と。
3 報告の徴収等について(第16条関係)
都道府県知事は、医療的ケア児支援センターの業務の適正な運営を確保す
るため必要があると認めるときは、当該医療的ケア児支援センターに対し、そ
の業務の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、当該医療的ケア児支
援センターの事業所若しくは事務所に立ち入らせ、その業務の状況に関し必
要な調査若しくは質問をさせることができるものとしたこと。
4 改善命令について(第17条関係)
都道府県知事は、医療的ケア児支援センターの業務の適正な運営を確保す
るため必要があると認めるときは、当該医療的ケア児支援センターに対し、そ
の改善のために必要な措置をとるべきことを命ずることができるものとした
こと。
5 指定の取消しについて(第18条関係)
都道府県知事は、医療的ケア児支援センターが3による報告をせず、若しく
は虚偽の報告をし、若しくは3による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、
若しくは質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした場合において、
その業務の状況の把握に著しい支障が生じたとき又は医療的ケア児支援セン
ターが4による命令に違反したときは、その指定を取り消すことができるも
のとしたこと。
五 補則
1 広報啓発について(第19条関係)
国及び地方公共団体は、医療的ケア児及びその家族に対する支援の重要性
等について国民の理解を深めるため、学校、地域、家庭、職域その他の様々な
場を通じて、必要な広報その他の啓発活動を行うものとしたこと。
2 人材の確保について(第20条関係)
国及び地方公共団体は、医療的ケア児及びその家族がその居住する地域に
かかわらず等しく適切な支援を受けられるよう、医療的ケア児に対し医療的
ケアその他の支援を行うことができる人材を確保するため必要な措置を講ず
るものとしたこと。
3 研究開発等の推進について(第21条関係)
国及び地方公共団体は、医療的ケアを行うために用いられる医療機器の研
究開発その他医療的ケア児の支援のために必要な調査研究が推進されるよう
必要な措置を講ずるものとしたこと。
六 施行期日等
1 施行期日について(附則第1条関係)
この法律は、公布の日から起算して3月を経過した日から施行するものと
したこと。
2 検討について(附則第2条関係)
(1) この法律の規定については、この法律の施行後3年を目途として、この法
律の実施状況等を勘案して検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措
置が講ぜられるものとしたこと。
(2) 政府は、医療的ケア児の実態を把握するための具体的な方策について検
討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとしたこと。
(3) 政府は、災害時においても医療的ケア児が適切な医療的ケアを受けるこ
とができるようにするため、災害時における医療的ケア児に対する支援の
在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるもの
としたこと。
Copyright© 執筆者,大阪教育法研究会