● 誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策について(通知) 令和5年3月31日 4文科初第2817号



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不登校児童生徒が増加する中、文部科学省では「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)を取りまとめました。関係各位におかれては、本プランも踏まえ、不登校対策の速やかな推進をお願いいたします。


4文科初第2817号 令和5年3月31日
各都道府県教育委員会教育長、各指定都市教育委員会教育長、各都道府県知事、各指定都市長、附属学校を置く各国立大学法人学長、附属学校を置く各公立大学法人学長、各文部科学大臣所轄学校法人理事長、小中高等学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長 宛
文部科学省初等中等教育局長 藤原章夫


    誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策について(通知)


 不登校児童生徒への支援につきましては、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律等に基づき、関係者において様々な努力がなされ、児童生徒の社会的自立に向けた支援が行われてきておりますが、近年、不登校児童生徒数が増加し続け、令和3年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、小学校及び中学校で約24.5万人、高等学校を合わせると約30万人に上り過去最高となるなど、生徒指導上の喫緊の課題となっております。また、同調査からは、90日以上の不登校であるにもかかわらず、学校内外の専門機関等で相談・指導等を受けていない小・中学生が約4.6万人に上ることも明らかとなっています。

 こうした状況を受けて、文部科学省では、このたび永岡文部科学大臣の下、別添のとおり、「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)を取りまとめました。

 文部科学省としては、本プランも踏まえ、今後順次、不登校対策の一層の充実に取り組むこととしておりますが、貴職におかれても、関係部局、地域社会、各家庭、NPOやフリースクール関係者等とも連携しながら、本プランも踏まえ、取組の一層の充実に努められるようお願いします。

 また、本プランに係る取組のうち、とりわけ下記の取組については、速やかに推進していくことが重要と考えておりますので、貴職におかれましても、下記の取組の速やかな推進に努めていただきますようお願いします。

 さらに、文部科学省では、今後、文部科学大臣を本部長とする「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策推進本部」を設置し、本プランの進捗状況を管理するとともに、取組の不断の改善を図っていく予定です。

 なお、本プランは、「不登校児童生徒への支援の在り方について」(令和元年10月25日付け文部科学省初等中等教育局長通知)等において示されている不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方を変更するものではないことを申し添えます。

 本件については、都道府県・指定都市教育委員会担当課におかれては所管の学校等及び域内の市(指定都市を除く。)区町村教育委員会に対して、都道府県私立学校主管部課におかれては所轄の学校法人等を通じてその設置する学校に対して、国公立大学法人附属学校事務主管課におかれてはその設置する附属学校に対して、各文部科学大臣所轄学校法人理事長におかれてはその設置する学校に対して、構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)第 12 条第1項の認定を受けた地方公共団体の学校設置会社担当課におかれては所轄の学校設置会社及び学校に対して、周知を図るとともに、適切な対応がなされるよう御指導をお願いいたします。


                    記


1.不登校児童生徒が学びたいと思った時に学べる環境の整備

 児童生徒が不登校になった場合でも、小・中・高等学校等を通じて、学びたいと思った際に多様な学びにつながることができるよう、不登校児童生徒の個々のニーズに応じた受け皿を整備するとともに、教育支援センターが地域の拠点となって、児童生徒や保護者に必要な支援を行うことが重要であること。

(1)不登校特例校の設置
 不登校児童生徒を受け入れる不登校特例校については、令和5年3月現在、全国で21校の設置に留まっているが、文部科学省では今後早期に全ての都道府県・政令指定都市に設置されることを目指すとともに、将来的には希望する児童生徒が居住地によらず通えるよう、分教室型も含め全国300校の設置がなされることを目指しており、各設置者においても、分教室型を含めた設置に向けた取組が期待されること。

 各都道府県においては、自ら不登校特例校を設置するほか、域内の市町村において不登校特例校の設置に向けた意向があった場合の相談・支援や、市町村間の連絡・調整など域内全体の不登校児童生徒を支援できるよう、広域の地方公共団体として積極的な役割を果たすことが求められること。

 さらに、不登校特例校の運営にあたっては、不登校児童生徒への支援の知見や実績を有するNPOやフリースクール等の民間施設との人事交流等を通して、必要な体制の構築やノウハウの共有を行うとともに、他の学校に対しても、不登校児童生徒への支援に関する助言やノウハウの普及を行うことが望まれること。

 なお、文部科学省では、不登校特例校の設置促進に係る補助事業について、近日中にその再公募を開始する予定であり、詳細については追って通知する。

 また、今後文部科学省においては、設置事例や支援内容等について全国に示すとともに、不登校特例校設置に当たり様々な課題について相談や助言が受けられるよう、実際に不登校特例校の設置や運営・教育活動に関わった実績を有する者を、不登校特例校の設置を希望する地方公共団体や学校法人の要請に応じて派遣することを検討しており、詳細については追って通知する。

(2)校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)の設置
 自分の学級に入りづらい児童生徒については、学校内に、落ち着いた空間の中で自分に合ったペースで学習・生活できる環境があれば、学習の遅れやそれに基づく不安も解消され、早期に学習や進学に関する意欲を回復しやすい効果が期待される。

 このため、各学校において、支援スタッフ等の活用や学校ボランティア等の協力も得つつ、空き教室や空いているスペースを利用する等して、こうした機能を有する校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)を設置することが望まれること。

(3)教育支援センターの支援機能等の強化
 教育支援センターには、不登校児童生徒本人への支援に留まらず、その保護者が必要とする相談場所や保護者の会等の情報提供や、域内の様々な学びの場や居場所につながることができるようにするための支援等を行うことが期待されること。

 また、不登校児童生徒への支援の知見や実績を有するNPOやフリースクール等の民間施設のノウハウを取り入れた支援が行えるよう、業務委託や人事交流等を通したNPOやフリースクール等との連携を強化することも効果的であると考えられること。

(4)教室以外の学習等の成果の適切な評価の実施
 不登校により自分の教室で授業を受けられない場合であっても、自宅等で1人1台端末等を用いて配信された教室の授業を受講する等の支援により、学習の遅れを取り戻すことが期待される。

 この場合、我が国の義務教育制度を前提としつつ、不登校児童生徒が一定の要件(注1)を満たした上で、自宅等においてICT等を活用した学習活動については、可能な限り、指導要録上出席扱いとするとともに、本人の進学等の意向等を考慮し、学習評価を行い、その結果を評定などの成績評価に反映することが望ましいこと。

(5)柔軟な学級替えや転校等の対応
 いじめや教員による体罰や暴言等の不適切な言動や指導が不登校の原因となっている場合、こうした問題の解決に真剣に取り組んだ上で、適切な教育的配慮の下に学級替えや転校の措置を活用することも可能であり、児童生徒又はその保護者が希望する場合には丁寧な相談を行うことが求められること。

(6)高等学校等の生徒を含めた支援
 高等学校等の段階においても、不登校の生徒が多数に及ぶこと等を踏まえ、切れ目のない不登校対策を行っていくことが重要であること。

 中学校卒業後に高等学校等に進学した生徒が悩みを抱える場合に、小・中学校のように学校でスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーに相談ができず支援が途切れてしまう場合があり、このため、各都道府県においては、従前から措置している電話・SNS等を活用した相談事業や令和5年度より新たに措置されるスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーのオンラインを活用した支援のための配置を活用して、小・中学校の児童生徒のみならず、高等学校等の生徒等への支援を行うことが求められること。

 また、各学校及びその設置者においては、児童生徒の進学や転校等にあたっては「児童生徒理解・支援シート」等を活用し、必要な支援の内容等が個人情報の保護に留意しつつ適切に進学先等に引き継がれるようにすることが求められるとともに、高等学校等を含め、引き継がれた進学先等においては、当該シートを活用して、適切な支援や配慮を行う必要があること。

(7)改めて中学校等で学び直すことを希望する者への支援
 不登校等によって実質的に義務教育を十分に受けられないまま中学校等を卒業した者のうち、改めて中学校等で学び直すことを希望する者については、「義務教育修了者が中学校夜間学級への再入学を希望した場合の対応に関する考え方について」(平成27年7月30日付け文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課長通知)に基づき、一定の要件の下、夜間中学での受入れを可能とすることが適当であることから、夜間中学が設置されている地域においては、卒業時に夜間中学の意義や入学要件等について生徒及び保護者に説明しておくことが考えられること。

2.不登校児童生徒の保護者への支援

 不登校児童生徒の早期支援のためには、その保護者が悩みを抱えて孤立せず、適切な情報や支援を得られるようにすることが重要である。

 このため、教育委員会等において域内の教育支援センターや相談機関、保護者の会、フリースクール等の民間施設や多様な居場所等に関する相談窓口を設け、必要な情報を整理し提供することが求められること。

 また、学校と地域・関係機関の連携・協働や平素からの保護者間の関係づくりを促すため、コミュニティ・スクールの仕組みや家庭教育支援チーム等を活用するとともに、保護者の不安を和らげられるよう、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが関係機関等と連携して保護者を重層的に支援することが望ましいこと。

 なお、文部科学省において、教育委員会等が域内の教育・相談機関等の情報をまとめて提示するための様式例を示すことを予定しており、詳細については追って通知する。

3.早期発見・早期支援のための福祉部局と教育委員会との連携強化

 児童生徒の心身の状態の変化の早期発見や、児童生徒や保護者の包括的な早期からの支援のため、地方公共団体の福祉部局と教育委員会との連携を強化することが求められること。その際、教育委員会と福祉部局が協働し、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを含めた教職員向けの研修会を実施したり、保護者向けの学習会等を開催したりすることも考えられること。
 また、福祉部局と教育委員会との人事交流や併任発令等を通じた連携強化も効果的であると考えられること。

4.学校の風土の「見える化」

 学校の風土と欠席日数の関連を示す調査研究があり、学校評価の仕組みを活用して、児童生徒の授業への満足度や教職員への信頼感、学校生活への安心感等の学校の風土や雰囲気を把握し、関係者が共通認識を持って取り組むことにより、安心して学べる学校づくりを進めることが期待されること。

 なお、文部科学省において、学校の風土等を把握するためのツールを整理し、示すことを検討しており、詳細については追って通知する。


注1 「不登校児童生徒への支援の在り方について」(令和元年10月25日付け文部科学省初等中等教育局長通知)別記2参照 https://www.mext.go.jp/content/1422155_001.pdf

別添 誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)





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