● 高等学校入学者選抜等における配慮等について(通知)(高校入試の定員内不合格) 令和6年6月25日 6文科初第779号
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6文科初第779号 令和6年6月25日
各都道府県教育委員会教育長、各指定都市教育委員会教育長、各都道府県知事、附属学校を置く各国公立大学法人の長、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長、厚生労働省社会・援護局長 宛
文部科学省初等中等教育局長、文部科学省総合教育政策局長
高等学校入学者選抜等における配慮等について(通知)
この度、高等学校入学者選抜等に関する配慮事項等について、改めて整理しました。
高等学校入学者選抜等を実施する各教育委員会等(以下「実施者」という。)におかれては、入学志願者一人ひとりが安心して受検に臨めるよう、下記について十分に御配意の上、高等学校入学者選抜等を実施していただきますようお願いします。なお、「今後の高等学校入学者選抜等における新型コロナウイルス感染症の影響等を踏まえた令和5年度以降の高等学校入学者選抜等における配慮等について」(令和5年6月16日付け5文科初第594号文部科学省初等中等教育局長、総合教育政策局長通知)は本通知をもって廃止します。
本件につきまして、都道府県教育委員会にあっては所管の学校(専修学校高等課程を含む。以下同じ。)及び域内の市区町村教育委員会に対して、指定都市教育委員会にあっては所管の学校に対して、都道府県にあっては所轄の学校法人及び私立学校に対して、附属学校を置く国公立大学法人にあっては附属学校に対して、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体にあっては認可した学校設置会社及び学校に対して、厚生労働省社会・援護局にあっては所管の専修学校高等課程に対して、御周知いただきますよう、よろしくお願いします。
記
1.様々な事情を有する入学志願者に対する適切な受検機会の確保について
一人ひとりの入学志願者の受検機会の確保は重要であることから、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ等の感染症(以下「感染症」という。)の罹患等、本人に帰責されない身体・健康上のやむを得ない理由(病気・事故等※)等により、用意された試験日程では受検できない生徒が受検機会を失うことのないよう、追検査や調査書等の書類のみによる選考の実施等、受検機会の確保のための柔軟な対応に努めていただきますようお願いします。特に、他の学校で学ぶことができないような教育課程を実施する特色ある学科・コースについて、学ぶ意欲のある入学志願者の受検機会が確保されるよう、特段の御配慮をお願いします。
※例えば、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状と考えられる症状や月経随伴症状等も含む。
なお、インフルエンザ罹患者への受検機会の確保に係る配慮についてはこれまでも「高等学校入学者選抜におけるインフルエンザ罹患者等への対応について」(平成28年10月14日付け28初児生第26号文部科学省初等中等教育局児童生徒課長通知)及び「今後の高等学校入学者選抜におけるインフルエンザ罹患者等に対する追検査等の実施について」(平成29年3月29日付け28初児生第34号初等中等教育局児童生徒課長通知)においてお願いしておりますので、そちらも御参照ください。
加えて、疾病等を理由として受検上の配慮を要する生徒については、受検上の配慮に関する事前相談等の対応についても御配慮いただきますようお願いします。
また、受検生が自然災害や試験会場に向かう途中の事故・事件に巻き込まれた場合、痴漢の被害に遭った場合等には、当該受検生が、そうしたやむを得ない事由により受検機会を失うことのないよう、追検査や試験時間の繰下げを行うなど、受検機会の確保のための柔軟な対応に努めていただくようお願いします。
このことについて、入学志願者やその保護者、入学志願者の在籍する中学校等に対して、幅広く情報提供をお願いします。
2. 受検生の安全確保及び感染症対策等の徹底について
入学者選抜の実施に当たっては、受検生が安心して受検に臨めるよう、必要に応じて所轄の警察署等とも連携しながら、試験会場等の警備体制の確認や危機対応マニュアル等の周知徹底等、受検生の安全確保に細心の注意を払うよう努めてください。
また、試験会場等における感染症対策について、換気の確保や手洗い等の手指衛生の励行等の対策を、それぞれの地域や試験会場、試験方法等に見合った形で講じてください。なお、試験監督者や面接官等の試験業務に携わる者については、基本的な感染症対策を心がけるとともに、試験実施当日に体調不良とならないよう、体調管理に努めてください。
3.調査書の活用等における留意事項について
入学者選抜において調査書を活用する場合、感染症の影響によって、特定の入学志願者が不利益を被ることがないよう、記載する事項や内容について、御配慮をお願いします。
なお、大学入学者選抜の調査書については、「令和7年度大学入学者選抜実施要項」(令和6年6月5日付け6文科高第299号文部科学省高等教育局長通知。以下「大学入学者選抜実施要項」という。)(別添)において、出欠の記録に関する記載事項のうち出席停止・忌引等の日数や、それらの日数が推測できる授業日数は記載をしないこと等の取扱いがされておりますので、高等学校入学者選抜等においても、各実施者の実情等を勘案し、各実施者の判断により、大学入学者選抜における取組を参考としてください。
また、各実施者の実情により、調査書において出席等に係る日数(「出席日数」「出席停止・忌引等の日数」「授業日数」「出席しなければならない日数」等)の記入欄を設ける場合には、臨時休業や分散登校、出席停止等に伴う当該欄への記載内容によって、特定の入学志願者が不利益を被ることがないよう、御配慮をお願いします。なお、欠席日数欄を設ける場合には、欠席の理由を記載できる欄を設けたり、入学志願者が自ら欠席の理由について申告できる機会を設けたりするとともに、入学志願者が本人に帰責されない身体・健康上のやむを得ない理由(病気・事故等※)により、中学校等を欠席したと認められる場合、そのことのみをもって合理的な理由なく選抜において不利に取り扱うことがないよう、御配慮をお願いします。
※例えば、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状と考えられる症状や月経随伴症状等も含む。
その他、学習評価の内容等の記載や諸活動の記録、指導上参考となる諸事項等の記載についても、地域の感染状況や中学校等の臨時休業の実施等の状況、生徒の状況等に応じ、当該記載が少ないこと等をもって、入学志願者が不利益を被ることがないよう御配慮をお願いします。
また、中学校等の部活動等におけるスポーツ・文化関係の行事、大会の実績や、資格・検定試験等の成績を入学者選抜において評価する際には、感染症等の感染拡大を防止するため中止、延期又は規模縮小等となったこれらの行事等に入学志願者が参加できなかったことのみをもって不利益を被ることがないよう、参加することができた他の行事等における実績・成績を評価すること等の措置を講じていただくようお願いします。
なお、公立高等学校入学者選抜の調査書の記載事項については「高等学校入学者選抜について」(平成5年2月22日付け文初高第243号文部事務次官通知)において、「高等学校入学者選抜の資料として、真に必要な事項に精選すること。」としているところであり、今後の調査書の検討に当たっては、入学者選抜の実施に真に必要な事項に見直しを図っていただきますようお願いします。また、私立高等学校における入学者選抜については、各私立学校及び私学団体の自主的改善努力を促しつつ、公立高等学校に係る上記記載の趣旨に即し、一層の改善を図るようお願いします。
4.公立高等学校の入学者選抜における志願者数が定員に満たない場合の対応等について
高等学校入学者選抜の実施方法等は、実施者が決定し、高等学校の入学は入学者選抜に基づいて各校長が、その学校に期待される社会的役割や学科等の特色を踏まえ、その学校及び学科等で学ぶための能力や適性等を適切に判定し、許可するものです。定員内不合格自体が直ちに否定されるものではありませんが、定員内でありながら不合格を出す場合には、各教育委員会等及び各校長の責任において、当該受検生に対し、その理由が丁寧に説明されることが適切です。
一方で、学ぶ意欲を有する生徒に対して、学びの場が確保されることは重要であり、そうした観点から、各教育委員会等においては、「令和5年度高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)」(令和5年12月文部科学省初等中等教育局参事官(高等学校担当))等を通じて、定員内不合格を出さないよう取り扱っている例を含め、他の教育委員会における入学者選抜の実施方法等を参照するなどしていただくとともに、合理的な説明となっているかについて改めて御検討いただくようお願いします。
また、域内の学ぶ意欲を有する中学生の進学先が確保されているかについても、教育委員会の高等学校担当部署と中学校担当部署が連携するなどして、改めて確認、分析するとともに、今後の域内の高等学校政策の検討につなげていただきますようお願いします。
5.日本人学校等の在校歴がある入学志願者に係る配慮事項について
日本人学校及び私立在外教育施設(以下「日本人学校等」という。)の中には、政情不安や治安の悪化等を受けて、児童生徒等の安全性を確保する必要性が生じ、オンライン指導等の方法により教育を継続・補完しているものがあるところ、その所在国・地域ごとに都市封鎖等の期間や教育活動に対する政府等からの指示内容は異なっています。また、日本人学校等からは、このような日本人学校等の置かれている状況について十分に理解されていないことを原因として、在籍する児童生徒が日本国内の高等学校へ進学するための入学者選抜において不利益を被るのではないかとの懸念の声が寄せられています。こうした状況を踏まえ、日本人学校等の在校歴がある入学志願者一人ひとりが安心して受検に臨めるよう、以下について十分御配慮をお願いします。
(1)日本人学校等の在校歴がある入学志願者については、その所在国・地域における都市封鎖等の影響により、授業日数が大きく異なる場合において、調査書に示されている日本人学校等における授業日数の多寡により不利益を被ることがないように配慮すること。
(2)上記(1)の場合において、日本人学校等より、調査書と併せ、その所在国・地域における外務省の危険情報による政治社会情勢上の影響を踏まえて実施した教育内容を記録した書類の内容を記載した副申書等の提出があった場合は、その内容を勘案するなどの配慮を行うこと。
6.その他御配慮いただきたいことについて
(1)デジタル技術の活用等、入学志願者の利便性の向上や実施者及び教職員の負担軽減に資する取組は、各実施者の実情に応じて、更なる推進をお願いします。その際、実施に当たっては、入学志願者に不利益が生じないことが前提であることに、十分に留意いただいた上で、取組を進めていただくようお願いします。
(2)入学者選抜は、生徒にとって、その後の進路等を決める極めて重要な機会であるため、入学者選抜の手続きについては、万全を期すよう、お願いします。
(3)試験会場内の適切な巡視を行うことなど、入学者選抜の公平・公正な実施のための取組について、必要に応じて見直しながら、各実施者の実情に応じた形で行っていただきますようお願いします。その際、大学入学者選抜実施要項(別添)に記載されている大学入学者選抜における取組の内容についても、必要に応じて参考としてください。
(4)障害のある生徒に対する受検上の配慮については、本人・保護者の希望、障害の状態等を踏まえ、別室での受検、試験時間の延長等、引き続き適切な配慮がなされるようお願いします。その際、「高等学校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料」(令和4年12月文部科学省初等中等教育局特別支援教育課)に記載されている基本的な考え方や配慮の例についても、参考としてください。
(5)「外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等に関する指針」(令和2年7月文部科学省総合教育政策局国際教育課)において示しているとおり、外国人の子供が社会で自立していくためには、高等学校等において適切な教育を受けることが重要であることから、公立高等学校入学者選抜において、外国人生徒を対象とした特別定員枠の設定や受検に際しての配慮(試験教科の軽減、問題文の漢字へのルビ振り等)等の取組を推進していただくようお願いします。
(6)入学者選抜について多様化が進む中、高等学校で学ぶ意欲や能力を有する不登校経験を有する生徒について、その努力を適切に評価することが望まれます。在籍する学校における出席の状況のみをもって不利益な取扱い(例えば、欠席日数のみをもって出願を制限するなど)をしないようにするとともに、生徒の自己申告書や学校以外の場(家庭におけるオンライン学習を含む。)における学習状況に係る資料等を選抜において適切に勘案するなどの配慮を行うことが望まれます。
(7)高等学校への就学時に、親権者以外の第三者であるいわゆる保証人を求めている高等学校について、身寄りのない保護者及び生徒が、保証人を探すことが困難であるという声が寄せられています。国公立の高等学校への就学時に、保護者以外の者を保証人とすることを規則上求めている場合においても、保証人を見つけることが困難な状態にある生徒については、保証人を求めないという柔軟な運用を速やかに行うとともに、保証人の必要性について改めて御検討いただくようお願いします。
(8)小学校や中学校等の入学者選抜についても、当該入学者選抜において該当がある場合には、上記1から3まで、5から6(3)までに準じた工夫を講じていただくことが望ましいと考えられます。
(9)その他、高等学校入学者選抜等に関する最近の通知として、児童養護施設等に入所する入学志願者が親権者の同意を得ることが困難な場合の柔軟な取扱いに関する「児童養護施設等に入所する未成年者の高等学校等への入学手続等における配慮について」(令和4年10月14日付け4文科初第1415号文部科学省初等中等教育局長、総合教育政策局長、厚生労働省子ども家庭局長通知)及び学校部活動・地域クラブ活動の評価方法の明確化等に関する「『学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン』の策定及び学校部活動の地域連携・地域移行に関する関連制度の運用について」(令和4年12月27日付け4ス庁第1640号スポーツ庁次長、文化庁次長、文部科学省総合教育政策局長、初等中等教育局長通知)がございますので、改めて御参照ください。
<別添資料>
(別添)「令和7年度大学入学者選抜実施要項」(令和6年6月5日付け6文科高第299号文部科学省高等教育局長通知)
【参考】
○高等学校入学者選抜について(文部科学省ホームページ)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/04120702.htm
Copyright© 執筆者,大阪教育法研究会