● 教育基本法第九条ならびに学校教育法第八五条の解釈について 昭和26年2月6日 委総2



昭二六、二、六 委総二 
高知県教育委員会教育長あて 
大臣官房総務課長回答「教育基本法第九条ならびに学校教育法第八五条の解釈について」

    学校教育活動外の宗教活動であつても国公立学校施設を無制限に利用させることはできない。

 照 会
一 左記のような研究会を公立学校の教員が個人としての立場で勤務時間外にその勤務する学校の施設で青年団体を対象として行う場合教育基本法第九条に抵触しないと思われるが如何ですか。

   キリスト教研究会プログラム
 (一) 讃美歌合唱
 (二) 祈り
 (三) 聖書朗読
 (四) 本論(聖書解釈とそれに含まれるキリスト教精神の講義)
 (五) 批判(教員の指導による)
 (六) 感謝の祈り
 (七) 讃美歌合唱
 (八) 質疑応答(キリスト教その他に関し)
 (九) 次回集会の計画
  備考 牧師を招くこともある。

二 右の場合その学校の生徒(中学校)が青年団の一員として含まれているときも同様抵触しないと解せられるが如何ですか。
三 右の結果一部父兄がこれに反対し学校教育に非協力的になつたり生徒を出席せしめなかつたりするような事態が生じたとき学校教育法八五条で「教育上支障がある」と学校当局者が判定するのは妥当であるか。
四 昭和二四年一〇月二五日付文部省文初庶第一五二号「社会科その他初等及び中等教育における宗教の取扱についての(三)の(ハ)」における「学校は此の種の団体の活動に対し」の活動には宗教的儀式及び行事を行うことならびに宗教団体の教職者信徒を招いて宗教の分野について講演してもらうことも含めてよいか。
五 右の場合の宗教的儀式又は行事と学校の施設で行うことは「昭和二一年一一月一日付内務省、文部次官通牒発宗五一号の(2)」に抵触しないか、又この場合は個人又は民間団体の場合も同様であるか。

 回 答
1 照会の事例は、学校教育活動の一環として行うものではないと解するから、教育基本法第九条には抵触しないものと解するが、学校の施設を利用させるか否かは、学校教育法第八五条の規定にてらし、判断さるべきである。
2 教育基本法第九条には抵触しないものと解する。
 昭和二四年一〇月二五日付文部省文初庶第一五二号「社会科その他初等及び中等教育における宗教の取扱について」の(三)の(イ)参照
3 照会の如き事態が生じた場合にこれを学校教育上支障があると解するのは、おかしいと思う。
4 昭和二四年一〇月二五日付文部省文初庶第一五二号の通達の(三)の(ハ)における「この種の団体」とは、国立または公立の学校の児童生徒が組織する自発的な宗教的団体の如きものを意味しているのであるから、照会の事例による研究会は「この種の団体」に含まれないものと解する。
5 昭和二一年一一月一日付発宗五一号「公葬等について」の通達の(二)は、文民としての功労者、殉職者等に対しての宗教的儀式または行事であるから、照会による研究会の宗教的儀式または行事とは趣旨が異なるものである。
 なお、照会による研究会は、その行事内容より見て、幾分研究会の域を脱しているように見受けられますので、憲法第八九条及び地方自治法第二一二条(編者注昭三八改正により削除)の規定もあり、これらの研究会等に学校を利用させることについては、慎重に検討して下さい。又利用させる場合にもそれが特権的利用にならないよう特に御注意下さい。




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