● 戦没者の葬祭などについて 昭和26年9月10日 文宗第51号・発総第476号



文宗第五一号・発総第四七六号 昭和二六年九月一〇日
文部次官・引揚援護庁次長通達


    戦没者の葬祭などについて


 戦没者の葬祭などに関しては、昭和二一年発宗第五一号通ちよう「公葬等について」の趣旨によつて取り扱われて来たのでありますが、民主主義諸制度の確立による国内情勢の推移及び多数遺族の心情にかんがみ、今後は、一般戦争犠牲者と合して葬祭などが行われる場合をも含み、左記の事項は、これを行つてもさしつかえないことに定められましたので、命によつて通達します。従つて、右の通ちようは、この通達の趣旨によつて、その一部が変更されたものと御了解下さい。よつて、貴都道府県内にこの趣旨が徹底するようお取り計らい願います。
 なお、申すまでもなく、信教の自由を尊重すること、特定の宗教に公の支援を与えて政教分離の方針に反する結果とならないこと、軍国主義的及び極端な国家主義的思想の宣伝鼓吹にわたらないこと、並びに政治的運動に利用されないことについては、引き続き万全の注意を払つて下さい。

          記

一 個人又は民間団体が慰霊祭、葬儀などを行うに際し、

(イ) 知事、市町村長その他の公務員がこれに列席すること。その際、敬弔の意を表し、又は弔詞を読むこと。

(ロ) 地方公共団体から香華、香華料などを贈ること。

 右は、犠牲者に対し哀悼の意を表し、不幸な遺族を慰める趣旨にそつて行われ、軍国主義的精神の鼓吹にわたらないよう配慮せられるべきである。

二 公務員が遺族を弔問すること。

三 遺骨の伝達及び出迎に際し、

(イ) 一般公衆が自発的意思によつて参列すること。

(ロ) 遺族の信仰を重んじ、その希望によつて焼香、献花など認めるなど、適当な儀礼をつくすこと。

 右の場合において、公衆特に学生生徒などの参列を強制しないことは、当然である。

四 遺族が不明であることなどにより、伝達することができない遺骨を埋葬し、又は収蔵するため、

(イ) 地方公共団体が簡素な墓又は納骨施設を造ること。

(ロ) 民間団体にその埋葬又は収蔵を委託する場合に、地方公共団体がこれに必要な委託費用を支出すること。

 右の墓又は納骨施設の外観、刻文などが功績を顕彰するようなものとならないよう十分注意すべきである。




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