● 高等学校において修得した単位数と卒業認定について 昭和29年8月7日 委初231


昭二九、八、七 委初二三一
岐阜県教育長あて
文部省初等中等教育局長回答


 照 会
一 生徒が必要な単位を八五単位修得しているときは、必ず卒業させなければならないか。
二 各学校において八五単位以上例えば九〇単位をその学校の卒業必修単位として定めることは違法になるか。
三 学校の規定として卒業に必要な単位を八五単位以上例えば九〇単位と定めたときは八六単位より修得出来なかった生徒が卒業の権利を申し出たとき、学校の規定として卒業を認めないことは法的に成り立つか成り立たないか。

 回 答
 学習指導要領に規定する八五単位とは、一般的に卒業に必要な最低単位数を定めたものであって各学校は、八五単位をこえて生徒が履修すべき単位数を定めることができる。卒業の認定は、生徒が履修すべき課程を修了したと認められる場合に行われるものであるから、八五単位以上に生徒が履修すべき単位数が定められている場合には、生徒が学習指導要領に示した必要な八五単位を修得したときにおいても、校長はその生徒を卒業させないことができる。ただしこの場合においても諸般の事情を総合的に考察し、その生徒が高等学校の課程を修了したと認めうる場合は、卒業の認定を行ってよい。
 なお、生徒が履修すべき単位数を八五単位以上とする場合には、生徒の負担が過重にならないよう注意する必要がある。



 昭和二八年二月二七日
 各位 殿
 中等教育課長

 高等学校の卒業認定と履修単位との関係について今回左記のとおり伺定決裁がありましたので御了知下さい。

          記

 高等学校の卒業認定と履修単位との関係について

(1) 卒業の認定は学校教育法施行規則第二七条および第六五条によって校長が行う。 校長は高等学校教育の目的、目標にてらし、法規、学則等に基づいて、教科の学習とホーム・ルーム等必要な特別教育活動とからなる全教育課程を修了したと認められる生徒に対して卒業の認定をする。
(2) 卒業するために生徒が履修しなければならない単位(教科、科目)については、学習指導要領一般編四二ページに「高等学校を卒業するためには・・・・合計八五単位以上を履修しなければならない・・・・」と述べられているが、その趣旨は次の通りである。
 八五単位というのは卒業に必要な最低単位を示したもので、学校は八五単位をこえて生徒が履修すべき単位を定めることができる。この場合生徒の負担が過重にならないように注意する必要がある。学校が履修すべきものと定めた科目(単位数)または特別に課した実習のうち履修し得なかったものがあった場合の卒業の認定は諸般の事情の総合的考察によって、その生徒が高等学校の全課程を修了したと認められるかどうかによって校長が行う。
 この際共通必修として定められた三八単位および卒業に必要な最低単位数でる八五単位を履修したことが認められたものでなければならないことはいうまでもない。


 〔編注〕 現行高等学校学習指導要領、および学校教育法施行規則六三条の二においては、卒業までに修得させる単位数は74単位以上と定めている(平成11年現在)。また現行の高等学校学習指導要領で必修科目を定めているのは、必「履修」科目の意味であり、その「修得」が卒業認定の要件とされていない。なお、この時期においては、履修と修得の用語が明確に区別して用いられているとはいえないので注意が必要である。


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