● 大学の運営に関する臨時措置法等の施行について 昭和44年8月16日 文大庶第412号



文大庶第四一二号 昭和四四年八月一六日
各国立大学長・各国立大学併設短期大学部学長あて
文部事務次官通知


    大学の運営に関する臨時措置法等の施行について


 このたび、「大学の運営に関する臨時措置法」(昭和四四年法律第七〇号。以下「法」という。)が八月七日に公布され、八月一七日から施行されることとなりました。また、これに伴い「臨時大学問題審議会令(昭和四四年政令第二一九号。以下「審議会令」という。)および「大学の運営に関する臨時措置法施行規則」(昭和四四年文部省令第二四号。以下「施行規則」という。)が公布され、いずれも八月一七日から施行されることとなりました。
 これらの法令の要旨および留意点は下記のとおりでありますので、じゆうぶんご了知のうえ、これらの法令の運用について遺憾のないようお取り計らいください。

          記

1 法第一条(目的)関係

 大学問題の基本的な解決を図るためには、長期的な観点にたつた多面的かつ抜本的な方策を必要とするが、大学紛争の現況にてらし、まずもつて大学紛争を収拾し、大学の機能を回復することが緊急の課題である。
 この法律は、このような見地から、大学紛争を収拾するための大学の自主的な努力をたすけることを主眼としてその運営に関し緊急に講ずべき措置について定め、もつて大学における教育および研究の正常な実施を図ることを目的とするものであること。

2 法第二条(定義)関係

(1) この法律において「大学紛争」とは、大学(学校教育法第一条に規定する大学をいう。以下同じ。)の管理に属する施設の占拠または封鎖、授業放棄その他の学生(これに準ずる研究生等を含む。以下同じ。)による正常でない行為により、大学における教育、研究その他の運営が阻害されている状態をいうこと。

(2) 「学生(これに準ずる研究生等を含む。)」とは、大学との関係において教育を受ける立場にある者のすべてを指す意味であり、学部、大学院、短期大学、専攻科、別科の学生のほか、特定の事項について教官の指導を受けて一定期間研究に従事することを目的とする者(研究生)、特定の単位のみの修得を目的とする者(聴講生)等を含むものであり、また、これらの者が当該大学に属すると否とを問わないものであること。

(3) 「その他の………正常でない行為」としては、最近における大学紛争の実態からみて、例えば、次のような行為が予想されること。

@ 教職員、学生に対し暴行、傷害、強迫、監禁、入構阻止等を行なうこと。
A 施設、設備の損壊、資料の持出し等を行なうこと。
B 附属病院の外来患者の入構阻止、診療の妨害等を行なうこと。
C ラウドスピーカーの不当な使用等により教育、研究等を妨げるような騒音を発すること。

(4) 「大学における教育、研究その他の運営」には、事務局、学部事務室等の業務、附属病院の診療等大学の教育研究に伴うすべての業務の運営が含まれること。

(5) 大学紛争の定義として、本条は、@原因となる行為(施設の占拠または封鎖、授業放棄その他の正常でない行為)、A行為主体(学生)、Bその結果生じている状態(教育、研究その他の運営の阻害)の三要件を掲げている。これらの要件は、いずれも客観的な事実に関するものであり、これを明確に把握すれば、当該大学における紛争の状況が本条にいう大学紛争の定義に該当するか否かはおのずから明らかになるので、これらの状況の把握についてじゆうぶん留意されたいこと。

3 法第三条(学長等の責務)関係

(1) 第一項について

イ 大学の教職員は、大学の正常な運営とその改善に意を用い、大学紛争が生じたときは、全員が協力してその妥当な収拾を図るように努めなければならないこと。
ロ 紛争の収拾を急ぐあまり無原則的に学生の要求を受け入れる等安易な妥協に堕し、将来に禍根を残すようなことがあつてはならないこと。

(2) 第二項について

イ 大学紛争が生じている大学(以下「紛争大学」という。)の学長は、当該大学の最高責任者として、紛争の収拾にあたつては、指導性を発揮して全学的に職員の意思の統合を図り、収拾に関する方針および措置を決定し、これを推進するように努めなければならないこと。
ロ 紛争大学の学長は、大学の管理に属する財産が本来の目的に従つて管理されおよび保全されるように適切な措置を講じなければならないこと。特に国立大学においては、その財政の基盤が国民の負担によつていることをじゆうぶん自覚し、法令の規定に従い国有財産の管理保全についていつそう留意すること。

(3) 第三項について

イ 大学当局と学生との間における意思の疎通がじゆうぶんでないことが無用の摩擦を生ずる原因となることが多いことにかんがみ、紛争大学の学長その他の機関は、当該紛争に係る問題に関し、ふさわしい領域内における学生の意思、希望等を適切な方法によつてきくように努め、紛争の妥当な収拾および大学の運営の改善に資すると認められるものについては、その講ずべき措置にこれを反映させるように配慮しなければならないこと。
ロ 学生の意見、希望等をきくことがふさわしい領域を考えるにあたつては、それぞれの問題について学生がどの程度の知識、経験、責任能力をもつものと期待できるかを判断の基準とすべきである。そのような観点からみた場合、学生の課外活動、福利厚生事業、修学環境の整備、教育計画と授業の内容、方法の改善などの分野については、問題の取り上げ方によつては、適当と考えられるが、教職員の人事、学業成績の評価、学校財政などの分野については適当でないと考えられること。
ハ 学生の意見、希望等をきくにあたつては、その方法が適切でなければならず、学生側の意見を多衆の威力によつて一方的に押しつけられるという結果になりやすい方法はとるべきでないこと。

4 法第四条(大学紛争の報告)関係

(1) 第一項について

イ 大学紛争が生じたときは、学長は、直ちに文部大臣にその旨および紛争の状況を報告しなければならないこと。
ロ 報告は、次の事項を記載した書面をもつて行なわなければならないこと(施行規則第一条)。なお、書面による報告にさきだつてとりあえず電話等で概要を報告すること。

@ 当該大学紛争の発生の日時
A 学生による正常でない行為の態様および学生の主な主張
B 教育、研究その他の運営の阻害の状況
C その他学長が必要と認める事項

(2) 第二項について

イ 文部大臣は、紛争大学の学長に対し、大学紛争の状況ならびに大学紛争の収拾および大学の運営の改善のため講じた措置および講じようとする措置について、必要に応じ、報告を求めることができること。
ロ 紛争大学の学長は、文部大臣が必要と認めて報告を求めた場合のほか、次の事項についてそのつどすみやかに報告されたいこと。

@ 大学紛争の状況に著しい変化が生じたときは、その状況。
A 法第六条第一項第一号の機関を設置したとき(協議に係る場合を除く。)または廃止したときは、その旨その他参考となる事項。
B 法第六条第一項第二号の措置の全部または一部を廃止したときは、その旨その他参考となる事項。
C 法第七条第一項の休止の措置(同項による期間の延長の措置を含む。)をとつたとき、または解除したときは、その旨その他参考となる事項。
D 大学紛争が収拾されたときは、その旨その他参考となる事項。

5 法第五条(文部大臣の勧告)関係

イ 文部大臣は、紛争大学の学長に対し、大学紛争の収拾および大学の運営の改善のため講ずべき措置について、臨時大学問題審議会にはかり、必要な勧告をすることができること。
ロ イの勧告は、当該大学による自主的な努力をたすけるようなものでなければならないとされていること。
ハ 勧告を受けた紛争大学の学長その他の機関は、その勧告を尊重し、勧告に係る措置の実施に努めなければならないこと。

6 法第六条(運営機関等の特例)関係

(1) 第一項について

イ 紛争大学において、大学紛争の収拾および大学の運営の改善に関する措置を迅速かつ適切に決定しおよび執行するため必要があると認められるときは、学長は、評議会(これを置かない大学にあつては、教授会。第二項において同じ。)にはかり、次の措置をとることができること。

@ 次に掲げる機関を設けること。
(イ) 副学長その他の学長を補佐する機関
(ロ) 大学紛争の収拾および大学の運営の改善に関する事項について審議する機関
(ハ) 大学の運営に関する事項を管理しおよび執行する機関

A 学校教育法および教育公務員特例法に規定する機関(学長および教授会ならびに学部長、教養部長、研究所長、病院長、図書館長、評議会および協議会)の職務および権限の一部を、学長がみずから行なうものとし、もしくはこれらの機関の議を経ることなく行なうことができるものとし、またはこれらの機関のうち他の機関もしくは@の機関に行なわせるものとすること。

ロ 大学紛争に対応して迅速かつ適切な措置をとりうる体制がじゆうぶん確立されていないことが大学紛争の収拾を困難にしている一因にもなつていることにかんがみ、このような点の改善を促進する趣旨から本条は設けられたものである。したがつて、本条に規定する措置をじゆうぶん活用して運営の改善を図り、紛争の収拾に努められたいこと。

(2) 第二項について

 紛争大学においては、学長は、評議会にはかり、大学紛争の収拾および大学の運営の改善に関する問題について意見を聴取しまたは協議するための会議を設けることができること。

(3) 第三項について

イ (1)のイの@の(イ)または(ハ)の機関(補佐機関または管理執行機関)の設置(改組を含む。)および(1)のイのAの措置(権限の委譲等の措置)は、学長があらかじめ書面をもつて文部大臣に協議して行なうこと。

ロ (1)のイの@の機関((ロ)の審議機関にあつては、Aの権限委譲等の措置を伴うものに限る。)またはその構成員の任命は、学長の申出に基づき、文部大臣が行なうこと。

(4) 第四項について

イ (1)のイの@の(ロ)の機関(審議機関)の構成員には、当該大学の職員のほか、学外の学識経験者を加えることができ、(2)の会議(意見聴取または協議のための会議)には、学外の学識経験者を参加させることができること。

ロ 学外者を加えまたは参加させることができることとされているのは、広く学外の意見をとりいれてこれを大学紛争の収拾に役立たせようとする趣旨であり、また従来、大学の運営がややもすれば閉鎖的になりがちであるとされていた点を改善しようとする意味からも、この制度の活用についてはじゆうぶん配慮されたいこと。

ハ (2)の会議(意見聴取または協議のための会議)には、ふさわしい領域内の問題については、当該大学の学生の代表を参加させることができること。(3の(3)のロ参照)

なお、学生の代表の選び方については、全学生の総意を代表しうるような方法をくふうされたいこと。

7 法第七条(教育等の休止および停止)関係

(1) 第一項について

イ 紛争大学の学長は、大学紛争を収拾するため必要があると認めるときは、紛争学部等の教育研究機能の全部または一部を六月以内の期間、休止することができること。この場合において、やむを得ない事情があるときは、休止の期間を三月以内において延長することができること。なお必要がなくなつたときは、休止の措置を解除することができること。

ロ 学部等の区分は、次によること。(施行規則第二条第一項)

@ 学部(当該学部を基礎として置かれる専攻科を含み、分校および附属病院を除く。)
A 教養部
B 分校
C 大学院研究科
D 短期大学の学科(当該学科を基礎として置かれる専攻科を含む。)
E 別科
F 附置研究所(附属病院を除く。)
G 附属病院(分院を除く。)
H 附属病院の分院
I 大学の教員その他の者に教育または研究のため共同利用させる施設

ハ 教育研究機能の休止またはその解除の措置をとるにあたつては、学長は、当該措置に係る学部等の長に通知するとともに学内に公示する等当該措置について関係者に周知させるよう配慮されたいこと。

(2) 第二項について

イ 紛争大学の学部等において大学紛争が生じた後九月(紛争再発の場合は六月)以上を経過した場合において、なお収拾が困難であると認められるときは、文部大臣は、当該大学の学長の意見をきいたうえ、臨時大学問題審議会の議に基づき、当該学部等における教育研究機能を停止することができること。この場合においては、文部大臣は、当該大学の学長に対し所要の措置(学内に対する周知、施設設備等の保守管理体制の整備等)をとるように指示するものであること。

ロ 教育研究機能を停止する場合には(1)のロの区分によつて行なうことを原則とするが、これにより難い特別な事情があるときは、文部大臣は、この区分をさらに細分することができること。(施行規則第二条第二項)

ハ 教育研究機能の停止の措置をとるにあたつては、その旨を官報に告示する予定であること。

ニ 紛争大学に対しては、この法律の第七条第一項までの規定の適用だけで紛争が自主的に収拾されることを期待しているが、本項は、大学がこれらに規定する措置等によつて紛争の収拾に努めてもなお教育研究機能を回復することができず、すでに収拾のための手段がほとんどつきてしまつたような段階に至つた場合に大学の最終的な努力を促すことを目的としたものであるので、その趣旨を正しく理解し、教職員にじゆうぶん周知徹底するよう配慮されたいこと。

ホ 本項の停止の措置は、紛争発生後九月が経過したことにより、自動的、画一的にとられるものではなく、それぞれの大学の紛争の状況、今後の見とおし等その実態に即して慎重に運用されるものであること。

(3) 第三項について

イ 大学紛争が収拾されたと認められるときは、文部大臣は、学長の意見をきいて、停止の措置を解除しなければならないものとされていること。

ロ 解除の措置をとるにあたつては、その旨を官報に告示する予定であること。

8 法第八条(教育等の停止に伴う効果)関係

 教育研究機能の停止の措置がとられたときは、その措置が解除されるまでの間は、次に定めるところによること。

(1) 当該学部等の職員については、次に掲げる者を除き、これを休職にするものとすること。この場合には、教育公務員特例法第一〇条の規定は、適用されないこと。

イ 大学紛争の処理に関し特に必要な義務、日常管理業務または特別の事情により直ちに停止することが困難な業務であつて、文部省令で定めるものに従事する者

ロ 非常勤職員(いわゆる非常勤講師、日々雇用職員その他常時勤務に服することを要しない職員)

ハ 国家公務員法(同法に基づく人事院規則を含む。)の規定による休職者または停職者

(2) (1)のイに基づき文部省令で定める業務は、次に掲げるものであること。(施行規則第三条)

@ 次に掲げる者または機関の職務に属する業務

(イ) 法第六条第一項第一号イまたはハの機関(補佐機関または管理執行機関)またはその構成員
(ロ) 学部長、学部主事、夜間学部主事、教養部長、留学生部長、分校主事、留学生課程主事、研究所長、図書館長、分館長、病院長、分院長、診療科長、臨床検査等に関する部の長、薬剤部長、教育施設または研究施設の長、学内共同利用施設等の長、短期大学主事、附属学校長、保健管理センターの所長ならびに厚生補導に関する部の部長および課長
(ハ) 養護教諭養成所の所長
(ニ) 事務職員、技術職員および教務職員(教育職俸給表(一)の適用を受ける者を除く。)
(ホ) 船舶職員
(ヘ) 原子炉主任技術者、放射線取扱主任者等の特別の物質または施設の管理者または取扱者

A 附属病院の専任の教員(教育職俸給表(一)の適用を受ける教職員を含む。)が従事している診療業務で、直ちに停止することが困難なもの
B 出張を命ぜられ、海外において遂行中の業務
C その他学長の申出をまつて文部大臣が指定した業務

(3) (1)による休職者には、俸給、扶養手当、調整手当、暫定手当および期末手当ならびに寒冷地手当の一〇〇分の七〇以内を支給すること。

なお、運用にあたつては、一〇〇分の七〇を支給する予定であること。

(4) (1)による休職者は、その併任官職に係る職務に従事することができること。

(5) その他(1)の休職に関し必要な事項は、人事院規則で定めることとされていること。なお、人事院規則が制定されたときは、おつて通知する予定であること。

(6) 当該学部等の教員の欠員の補充は、行なわないこと。

(7) 当該学部等の学生については、停止の措置がとられている期間は、在学期間に算入しないこと。したがつて、停止の措置が解除された後においては、当該停止期間を考慮して法令上の在学期間が確保されるようじゆうぶん配慮されたいこと。

(8)

イ 当該学部等の学生の停止の措置がとられている期間に係る授業料は免除すること。

ロ 免除される授業料の額は、授業料年額の一二分の一相当額に停止の措置がとられた日の前日の属する月の翌月から、停止の措置が解除された日の属する月の前月までの月数を乗じて得た額とすること。(施行規則第四条第一項)

ハ イにより免除される授業料の全部または一部をすでに徴収しているときは、これを返還すること。(施行規則第四条第二項)

ニ 年度の途中において停止の措置が解除された場合において徴収すべき授業料は、解除された日の属する月の翌月に徴収すること。(施行規則第四条第三項)

(9) 日本育英会は、当該学部等の学生に対しては、停止の措置がとられている期間は、学資の貸与を行なわないものとされていること。

9 法第九条(国立学校設置法の改正等の措置)関係

(1) 第一項について

イ 教育研究機能の停止措置がとられた後三月以上の期間を経過してもなお大学紛争の収拾が著しく困難であり、当該大学、学部等の設置の目的を達成することができないと認められるに至つたときは、国立学校設置法を改正するための措置その他必要な措置が講ぜられなければならないとされていること。

ロ 本条の適用によつてとられる措置としては、当該大学、学部、学科、大学院等の廃止、改組、縮少、他大学への移管等の措置およびこれらの措置に伴う在学生の取扱い等の措置が考えられること。

(2) 第二項について

文部大臣は、(1)の措置を講じようとするときは、当該大学の学長の意見を聞くとともに、臨時大学問題審議会の議を経なければならないとされていること。

10 法第一〇条(学部等の間の紛争のあつせん)関係

(1) 第一項について

イ 学部等の間の紛争が大学紛争の収拾にとつて重大な障害となつているときは、学長は、関係学部等の長の同意を得て、文部大臣に対し、あつせんを申請することができること。

ロ あつせんの申請は、次の事項を記載した書面をもつて行なわなければならないこと。(施行規則第五条)

@ 申請人の氏名および住所
A 紛争に係る学部等の名称
B あつせんを求める事項
C 紛争の経過および問題点
D その他あつせんを行なうに際し参考となる事項

(2) 第二項および第三項について

文部大臣は、あつせんの申請があつたときは、臨時大学問題審議会によるあつせんに付するものとし、そのあつせんは、同審議会のあつせん員によつて行なうこととされていること。

11 法第一一条(紛争大学の入学者の選抜等の協議)関係

イ 紛争大学において新入生に対する教育または学生の卒業について見とおしが困難であるときは、当該大学の学長は、入学者の選抜または学生の卒業に関し、文部大臣に協議しなければならないこと。なお、入学者の選抜については、その実施の可否、卒業についてはその時期について協議することを予定しているものであり、その協議の手続および時期等については、おつて通知すること。

ロ 入学者の選抜の実施の可否を決定する最終的な権限は設置者たる文部大臣にあるが、大学紛争の長期化というような異常な事態においては大学当局と協議のうえ決定するのが適当であるとの趣旨から本条の規定が設けられたものであること。

12 法第一二条(公立または私立の大学についての準用)関係

公立または私立の大学について、次の規定を準用し、これに必要な読替え規定を設けること。

@ 公立大学に準用される規定
(イ) 大学紛争の報告に関する規定(法第四条)
(ロ) 勧告に関する規定(設置者が文部大臣に協議して勧告する。)(法第五条)
(ハ) 運営機関等の特例に関する規定(学長が設置者と協議して行なう。)(法第六条)
(ニ) 教育等の休止および停止に関する規定(停止は設置者が文部大臣と協議して行なう。)(法第七条)
(ホ) 教育等の停止に伴う効果に関する規定(休職除外の範囲等は設置者が定める。)(法第八条)
(ヘ) 公立大学の設置に関する条例の改正等の措置に関する規定(設置者が文部大臣に協議して行なう。)(法第九条)
(ト) あつせんに関する規定(法第一〇条)
(チ) 入学者の選抜等の協議に関する規定(学長は設置者に協議しなければならない。)(法第一一条)

A 私立大学に準用される規定
(イ) 大学紛争の報告に関する規定(法第四条)
(ロ) 運営機関等の特例に関する規定(法第六条)
(ハ) 教育等の休止および停止に関する規定(停止は設置者が文部大臣と協議して行なう。)(法第七条)
(ニ) 教育等の停止に伴う効果に関する規定(在学期間不算入および日本育英会の学資の不貸与のみ)(法第八条)
(ホ) あつせんに関する規定(学校法人の役員間の紛争のあつせんを含む。)(法第一〇条)

13 法第一三条(臨時大学問題審議会)関係

(1) 文部省に、臨時大学問題審議会(以下「審議会」という。)が置かれること。

(2) 審議会は、文部大臣の行なう勧告、教育研究機能の停止および国立学校設置法の改正等の措置についての調査審議、大学紛争の収拾および大学の運営に関する重要事項についての建議ならびに学部等の間の紛争のあつせんを行なうものであること。

(3) 審議会は、次に掲げる者のうちから、文部大臣が内閣の承認を経て任命する一五人以内の委員で組織されること。

@ 大学の学長または教員および私立大学を設置する学校法人の役員
A その他大学問題に関し広い識見を有する者

(4) 特別の事項を審議するため、およびあつせんを行なうため必要があるときは、審議会に特別委員を置くことができること。

(5) 委員の任期は二年とすること。(審議会令第二条第一項)

(6) 特別委員は、文部大臣が内閣の承認を経て任命するものとし、当該特別の事項またはあつせんが終つたときは退任すること。(審議会令第三条第一項および第二項)

(7) 審議会の定足数は、委員および議事に関係のある特別委員の過半数とし、議事は出席した委員および特別委員の過半数で決すること。(審議会令第六条)

14 法第一四条(省令への委任)関係

(1) 学部等の区分、授業料の免除に関する細目、あつせんに関する手続その他この法律の執行に関し必要な事項は、文部省令(大学の運営に関する臨時措置法施行規則)で定めること。

(2) 施行規則においては、次の事項を規定したこと。

イ 大学紛争の発生についての報告の記載事項(第一条)
ロ 教育等の休止および停止に係る学部等の区分(第二条)
ハ 教育等の停止の場合における休職の除外(第三条)
ニ 免除される授業料の額等(第四条)
ホ あつせんの手続等(第五条)

15 法附則関係

(1) 紛争発生についての経過措置

イ この法律の施行前に生じた大学紛争で、この法律の施行後引き続き継続しているものはこの法律の施行の日(昭和四四年八月一七日)に生じたものとみなして、この法律の規定が適用されること。したがつて、該当する大学の学長は、この法律が施行されたときは直ちに大学紛争の状況について報告しなければならないこと。

ロ イの報告は、4の(1)のロによるほか、当該大学紛争に係る事態の経緯を記載して行なうこと。(施行規則附則第二項)

ハ イに該当する大学紛争でこの法律の施行の日においてすでに六月以上を経過しているものについては、五月を経過したものとみなして法第七条第二項(教育研究機能の停止措置に関する規定)が適用されること。

(2) 運営機関の特例についての経過措置

 この法律施行の際現に学長補佐機関等で文部大臣の協議に係るものに相当する機関があり、これを引き続き設置しようとするときは、当該大学の学長は、この法律の施行の日から二〇日以内に、当該機関の名称、組織および所掌事項を文部大臣に報告しなければならず、その報告があつたときは、同項の措置があつたものとみなされていること。

(3) 廃止

この法律は、その施行の日から五年以内に廃止するものとされていること。





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