● 学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行について(主任制度関係) 昭和51年1月13日 文初地136


昭五一、一、一三 文初地一三六
国立久里浜養護学校長、附属学校を置く各国立大学長、
各都道府県・指定都市教育委員会、各都道府県知事あて
文部事務次官通達

    学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行について

 このたび、別添〔略〕のとおり、「学校教育法施行規則の一部を改正する省令」(以下「改正省令」という。)が昭和五〇年一二月二六日文部省令第四一号をもつて公布され、昭和五一年三月一日から施行されることとなりました。
 改正省令の趣旨は、学校においては、調和のとれた学校運営が行われるためにふさわしい校務分掌の仕組みを整えるものとすることとし、現在各学校に設置されている各種の校務を分担する主任等のうち、特に、全国的に共通した基本的なものである教務主任、学年主任、生徒指導主事等について、学校教育法施行規則(以下「省令」という。)にそれらの設置と職務内容を明確に規定し、それらの主任等が積極的に学校運営に協力することを期待するとともに、その他の規定の整備を図ったものであります。
 この趣旨に従い、学校において、学校運営が更に適正に進められ、学校の教育活動が一層活発になるよう指導の徹底に御留意願います。
 改正省令の内容の概要は左記のとおりでありますので、事務処理につきましても遺憾のないよう願います。
 なお、各都道府県教育委員会にあっては、管下の各市町村関係機関に対して、また、各都道府県知事にあっては、所轄の関係学校法人等に対して、このことを通知し、改正省令の趣旨を徹底されるよう御配慮願います。

          記

1 改正の趣旨
 およそ学校は教育の場であり、常に明るく伸び伸びとして充実した教育が行われるように運営されなければならない。そのためには、教育活動を円滑かつ効果的に展開し、調和のとれた学校運営が行われるような教職員の組織が必要である。現在、学校の教職員の組織については、学校教育法で校長、教頭等が、省令で保健主事、進路指導主事等が規定されている。また、その他の各種の主任等は、教育委員会の定める教育委員会規則又は校長の定める校務分掌規程等に基づき学校の内部組織として設置されている。今回、各学校に置かれているそれらの各種の主任等のうち、学校における教職員の組織の基本的なもので、かつ、全国的にほぼ共通に設置されているものとして、小学校においては教務主任及び学年主任について、中学校においては教務主任、学年主任及び生徒指導主事について、高等学校においては教務主任、学年主任、生徒指導主事、学科主任及び農場長について、また、盲学校、聾学校及び養護学校においては教務主任、学年主任、生徒指導主事、学科主任、農場長及び寮務主任について、それらの主任等の設置と職務を省令上明確にし、それらの主任等の役割の充実を期待するものであること。
 事務職員の組織についても小学校及び中学校においては事務主任について、また、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校においては事務長について、それらの設置と職務を省令上明確に規定したこと。
 また、右記の主任等以外の校務を分担する主任等を設置できることを規定したものであること。

2 改正省令の内容の概要
(1) 小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校(以下「小学校等」という。)においては、調和のとれた学校運営が行われるためにふさわしい校務分掌の仕組みを整えるものとすることとしたこと(第二二条の二、第五五条、第六五条及び第七三条の一五)。
(2) 小学校等には、特別の事情のあるときを除き、教務主任及び学年主任を置くものとし、教務主任及び学年主任は、教諭をもって充てることとするとともに、それらの職務を規定したこと(第二二条の三、第五五条、第六五条及び第七三条の一五)。
(3) 小学校及び中学校には、事務主任を置くことができることとし、事務主任は事務職員をもって充てることとするとともに、その職務を規定したこと(第二二条の五及び第五五条)。
(4) 小学校等においては、省令に規定する主任等のほか、必要に応じ、校務を分担する主任等を置くことができることとしたこと(第二二条の六、第五五条、第六五条及び第七三条の一五)。
(5) 小学校等及び幼稚園の学校用務員の職務を規定したこと(第四九条、第五五条、第六五条、第七三条の一五及び第七七条)。
(6) 中学校及び高等学校並びに盲学校、聾学校及び養護学校の中学部及び高等部(以下「中学校等」という。)には、特別の事情のあるときを除き、生徒指導主事を置くものとし、生徒指導主事は教諭をもって充てることとし、その職務を規定するとともに、中学校等に置かれる進路指導主事の職務に関する規定を整備したこと(第五二条の二、第五二条の三、第六五条及び第七三条の一五)。
(7) 二以上の学科を置く高等学校並びに盲学校、聾学校及び養護学校の高等部(以下「高等学校等」という。)には、専門教育を主とする学科ごとに、特別の事情のあるときを除き、学科主任を置き、農業に関する専門教育を主とする学科を置く高等学校等には、特別の事情のあるときを除き、農場長を置くものとし、学科主任及び農場長は教諭をもつて充てることとするとともに、それらの職務を規定したこと(第五六条の二及び第七三条の一五)。
(8) 高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校には、事務長を置くものとし、事務長は事務職員をもって充てることとするとともに、その職務を規定したこと(第五六条の三及び第七三条の一五)。
(9) 寄宿舎を設ける盲学校、聾学校及び養護学校には、特別の事情のあるときを除き、寮務主任を置かなければならないこととし、寮務主任は教諭をもって充てることとするとともに、その職務を規定したこと(第七三条の四)。
(10) 改正省令の施行期日を昭和五一年三月一日としたこと(附則)。

3 留意事項
(1) 改正省令の内容の概要(1)関係
 ア 学校においては、規律を守り、校内の秩序ある生活をつくらなければならないが、一方、教員や児童生徒の創造的な活動を励まし、教育活動を適切に指導することが必要である。これらの二つの人間関係の調和を保つことが教育の場としての学校にとつては望ましいものであること。
 イ 「校務分掌の仕組みを整える」とは、学校において全教職員の校務を分担する組織を有機的に編制し、その組織が有効に作用するよう整備することであること。
(2) 改正省令の内容の概要(2)関係
 ア 教務主任又は学年主任を置かないことができる「特別の事情のあるとき」とは、学校規模が小規模である等特別の事情のあるときであること。
 イ 教務主任は、校長の監督を受け、当該学校の教育計画の立案・実施・時間割の総合的調整、教科書・教材の取扱い等教務に関する事項について教職員間の連絡調整に当たるとともに、関係教職員に対する指導、助言に当たるものであること。
 ウ 学年主任は、校長の監督を受け、学年の経営方針の設定、学年行事の計画・実施等当該学年の教育活動に関する事項について、当該学年の学級担任及び他の学年主任、教務主任、生徒指導主事等との連絡調整に当たるとともに、当該学年の学級担任に対する指導、助言に当たるものであること。
(3) 改正省令の内容の概要(3)関係
 小学校及び中学校の事務主任は、事務職員の学歴、経験年数等を考慮して命ずるものであること。
(4) 改正省令の内容の概要(4)関係
 教務主任、学年主任等の省令に規定された主任等は、学校運営上基本的な校務を分担するものとして、ほぼ全国共通に置かれるものであるが、これらの主任等のほかにも、地域や学校の実情に応じて、種々の校務を分担して遂行する主任等が設けられ、それぞれの役割を果たしている実情にあるので、省令に規定された主任等のほか、地域や学校の事情を考慮して、必要に応じ、校務を分担する主任等を置くことができることとしたものであること。
(5) 改正省令の内容の概要(6)関係
 ア 生徒指導主事を置かないことができる「特別の事情のあるとき」とは、3の(2)のアと同様であること。
 イ 生徒指導主事は、校長の監督を受け、学校における生徒指導計画の立案・実施、生徒指導に関する資料の整備、生徒指導に関する連絡・助言等生徒指導に関する事項をつかさどり、当該事項について教職員間の連絡調整に当たるとともに関係教職員に対する指導、助言に当たるものであること。
 ウ 進路指導主事は、校長の監督を受け、進路指導に関する学校の全体計画の立案、進路情報の収集、整理及び生徒の進路相談等進路指導に関する事項をつかさどり、当該事項について教職員間の連絡調整に当たるとともに、関係教職員に対する指導、助言に当たるものであること。
(6) 改正省令の内容の概要(7)関係
 ア 学科主任を置かないことができる「特別の事情のあるとき」とは、学科の規模が小規模である等特別の事情のあるときであること。
 イ 農場長を直かないことができる「特別の事情のあるとき」とは、農業に関する実習地及び実習施設の規模が小規模である等特別の事情のあるときであること。
 ウ 学科主任は、校長の監督を受け、当該学科の専門教育に関する教育計画及び実習計画の立案・実施等当該学科の教育活動に関する事項について教職員間の連絡調整に当たるとともに、関係教職員に対する指導、助言に当たるものであること。
 エ 農場長は、校長の監督を受け、農業に関する実習計画の調整、実習施設・設備の管理等農業に関する実習地及び実習施設の運営に関する事項をつかさどるものであること。
(7) 改正省令の内容の概要(8)関係
 高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の事務長は、事務職員の学歴、経験年数等を考慮して命ずるものとすること。
(8) 改正省令の内容の概要(9)関係
 ア 寮務主任を置かないことができる「特別の事情のあるとき」とは、寄宿舎の規模が小規模である等特別の事情のあるときであること。
 イ 寮務主任は、校長の監督を受け、寄宿舎の管理及び寄宿舎における児童等の教育に関する事項について教職員間の連絡調整に当たるとともに、関係教職員に対する指導、助言に当たるものであること。
(9) その他
 ア 省令に規定する教務主任、学年主任、生徒指導主事、学科主任、農場長、寮務主任、事務主任及び事務長は、学校に設置されるべきものであるが、これらの主任等は、学校の組織編制に関する基本的事項に該当するものであるから、公立の学校については、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第三三条の規定に基づく教育委員会規則(以下「教育委員会規則」という。)に、それらの設置及び職務について規定を整備すること。
 イ アに掲げる主任等(事務主任及び事務長を除く。以下同じ。)を発令するに際しては、それぞれの主任等の職務を担当するにふさわしい者を選任するものとすること。公立の学校については、その発令を、当該学校を所管する教育委員会が行うか又は校長が行うかについては、当該学校を所管する教育委員会が教育委員会規則で定めるものとし、従来の校務分掌の一翼を担う主任の選び方を変えるものではないこと。
 なお、主任は固定化せずに専門的な能力を持つ適格者ができるだけ多くこの経験を積むことが望ましいこと。しかし、このことは単に主任を回り持ちすることを意味するものではないこと。
 ウ 公立学校の事務主任及び事務長の発令については、当該学校を所管する教育委員会が行うこととし、このことを教育委員会規則で定めるものとすること。
 エ アに掲げる主任等は、いわゆる中間管理職ではなく、それぞれの職務に係る事項について教員間の連絡調整及び関係教職員に対する指導、助言等に当たるものであり、当該職務に係る事項に関して、必要があれば、校長及び教頭の指示を受けてこれを関係教職員に伝え、あるいは、その内容を円滑に実施するため必要な調整等を行うものであること。


参考
    主任問題についての文部大臣見解

    目 次
一 調和のとれた学校運営について
二 給与改善について
三 主任の制度化に当たって

 調和のとれた学校運営について(一二月六日)
 第三次給与改善を行うに当たって、目標とするところは、「調和のとれた学校運営」の一言につきる。
 学校は教育の場である。従来、いわゆる管理面できしむことが多く、明るくのびのびとした場であるべき学校が暗くなることが多かったことを反省し、管理と教育という二面をそれぞれの学校の中で調和させるべきである。
 給与改善に関する主任についての文部大臣の見解は、次の七つの原則に要約される。
一 主任問題をめぐって制度化の是非を論じる前に、主任とは何かを実態に即して正しく認識することが必要である。
 〔説 明〕
 主任は既に全国の小・中・高の学校に存在し、多様な主任があり、それは数十種に及び、その取扱い方も多様である。一つの学校で十種類に及ぶところもあり、他方、教務主任だけを置いている学校もある。その中で広くゆきわたっているものを取り上げると、小学校段階では、教務主任及び学年主任、中学校段階ではこれら二種類の主任のほかに、生徒指導、進路指導、部活動等の主任がある。さらに、高等学校の段階に進むと、上述の主任のほかに、教科主任がある。以上のような多様な主任の現状をふまえ主任の必要性や役割を正しく認識することが必要である。

二 学校は行政官庁でも企業体でもない。したがって、学校の運営を行政官庁や企業体のように管理の側面からだけでとらえることはできない.
 〔説 明〕
 学校運営を考える基本は、学校とは何かという問題意識から発しなければならない。学校は行政官庁でもなく企業体でもない。児童生徒が自主的に学習して成長するように、教員もまたそれぞれ創意工夫をこらして教育に当たる場である。
 過去二十年にわたって、教育をめぐって保守と革新の政治的な対立が激しかったために、学校運営には本来二つの柱があるべきであったにもかかわらず、ともすれば管理の側面のみが浮かびあがり、一方は管理の強化、他方は管理阻止あるいは管理反対の立場をとって不毛な議論が繰り返され、ともすれば肝心の教育活動が忘れられる。政争から教育をきりはなし、静かな場で教育を充実するためには、学校運営に当たって本来必要とされる二つの柱に均衡のとれた調和を実現しなければならない。

三 学校運営に当たっては、二つの柱がある。一つは管理面であり、他の一つは教育指導である。それにもかかわらず、管理強化と管理阻止あるいは反対の声が対立しやすいのは、一つの重要な柱である教育指導の面が現状では軽視される傾向があるからである。
 〔説 明〕
 学校生活には二種類の人間関係が存在する。一つは規律正しい生活を営むことであり、もう一つは、愛情、いたわり、そして教員や児童生徒の創造的な活動を励ますような関係である。
 これら二つの人間関係が調和を保つことが教育の場としての学校としては最も望ましい。
 学校運営の目的は、上述した二つの要素を含む調和的な人間関係をつくりあげることにある。したがって、学校運営は二つの柱によって立つものでなければならない。一つは規律を守り、つくるための管理の機能であり、管理に当たっては、法律、政令、また、諸般の規則を重んじて、校内の秩序ある活動をつくらねばならないのである。
 学校運営上もう一つの重要な柱は、教育活動を適切に指導することにある。教育の指導については、学習指導要領がその基準を示しているが、それをそれぞれの地域あるいは学校の実態に合わせ、すべての教員や児童生徒の活動を活発にすることが必要である。

四 主任は、現状においても教育指導の面を担当しているが、この点をいっそう明らかにしてその役割の充実を期待したい。
 〔説 明〕
 主任はこれまでのところ、全国的にある程度の相違はあろうが、学校における各種の教育活動について、調整、助言等の役割を果たしている。その点、校長、教頭という管理的な職とは異なる。教務主任、生徒指導主任、学年主任、教科主任、保健主任などの主任はいずれも教育活動の指導を充実させることを至上の課題としなければならない。
 学校によっては地域差もあり、公害、都市問題、受験体制の激化、過疎地域、授業についてゆけぬ子どもの問題など激動する社会には、それぞれの学校にとって緊急かつ多様な問題があり、学習指導要領の基準に基づいて教育計画を立案するに際しては、それぞれの学校はすべての教員の協力のもとに、自分の学校の指導要領ともいうべきものをもっていなければならない。その作業に励み、校長あるいは教頭に意見を述べて、自分が所属する学校の教育活動の方針を作っていく点に各種の主任の重要な役割がある。
 主任は、校内の規律を重んじ、校長や教頭の方針に従って活動し、これを補佐する反面、関係の教員の参画を得て意見をまとめあげ、また、これを指導していかなければならない。

五 学校運営におけるこの二つの柱に調和をもたらすために、文部省も教育委員会も適切な行政を行うことを目的としている。
 〔説 明〕
 文部省においては、初等中等教育に関して次のような二つの機能を果たしている。一つは、初等中等教育を管理的側面から充実をはかることであり、もう一つは、教育活動を担当し、中央教育審議会、教育課程審議会等における専門家の討議に基づく答申や報告を尊重してたえず指導要領の改善に努めること等である。
 各県、市等の教育委員会には管理主事と指導主事がおり、双方が担当する分野で活動しながら、相補的な関係に立っている。
 特に指導主事は激変する社会や文化の中で、文部省が示した学習指導要領を具体的にどのように実現すべきかを配慮する重要な任務を遂行しなければならない。

六 校長、教頭についても、この二つの役割があることを実態に即しつつ、この際、一層明らかにし、各学校に校風をつくるようにしたい。
 〔説 明〕
 各学校には、現在校長と教頭が置かれている。校長や教頭の場合にも、とかく学校運営の一つの柱である管理的な面を強調する議論が一部にあるが、それでは学校運営は一方的なものに偏する結果になる。校長と教頭はどちらも、管理的な面と教育活動の指導の面を担当すべきものと考えなければならない。学校運営に当たっては、ともすれば管理的側面だけをめぐって強化とそれに対する反対のいきおいが強い中で、この際国をあげて努力すべきことは、学校運営のもう一つの柱である教育活動の指導を充実強化することである。したがって、現在は一部の教頭は授業を担当しているが、こうしたことを尊重し、さらに授業担当に限らず、校長、教頭が教育面で指導力を発揮し、各学校に「校風」ともいうべきものをつくりあげていくことが望ましく、この問題について、各学校はもとより、校長会、教頭会など関係各方面で検討されることを要望する。

七 今後は、できる限り多くの教員が、各種の主任を経験し、その専門職としての能力を十分に発揮することによって、学校教育活動がより一層活発になることが望ましい。
 〔説 明〕
 主任については、次のように今後改善を行っていくのがよいと考える。
(一) どの種の主任を受け持つ場合にも、主任は引続き教員として相当の時間数の授業を担当すべきである。
(二) 原則として主任の地位についた者を固定化せずに、できうる限り多くの教員が主任としての経験を績むことができるように配慮することが望ましい。
(三) 現在、教諭・助教諭の段階では、小学校では女性が半数をこえており、中学校でもほぼ三割を占めている。それにもかかわらず現状では主任の職にある者は男性が多いが、校内組織が適切に機能し、教育指導上にも効果をあげるためには、女性の主任が増えることを期待する。この方向に進めば、男女の別を問わず、全教員の力を生かすことができるばかりか、将来、婦人の校長や教頭を多数生み出す地盤をきずくことができる。
 以上が文部大臣の主任についての見解である。
 この見解をめぐって具体的でかつ冷静な討議を経て今後の主任のあり方を明確に定め、最もふさわしい校内組織を作りあげたいと考えている。
 学校は、教員にとっては教育活動の場、児童生徒にとっては学習の場である。学校は、本来、両親が愛するわが子の健全な成長のために、教育を託する場であり、当然、両親は学校に強い期待をよせている。学校は両親のこの負託にこたえて、将来の日本をになう立派な人間を育成しなければならない。私があえて見解を発表したのも、この両親の負託にこたえるためである。


   給与改善について(一二月六日)
 第三次の給与改善は、繰り返していうと、「調和のとれた学校運営」を目的としている。したがって、別記した主任に対する処遇のほかに、三種類のものを考えている。
一 全教員に対して、第二次給与改善に引き続き待遇の改善をはかりたい。
二 教育経験の豊かな優れた教諭を一等級とすること。
 これまで、一等級の待遇を受けている者は校長の一部と教頭に限られているが、この種の地位につく者以外で教諭の地位にあって長期にわたり教育に貢献している者の待遇の改善をはかりたい。
三 学校教育においては、いわゆる部活動などの特別活動の強化に努めることが必要であり、したがって部活動の促進と助言指導に当たる者に対する教員特殊業務手当の支給範囲を拡大するようにしたい。


   主任の強度化に当たって(一二月二五日)
      − 「調和のとれた学校運営について」補足見解−
 一二月六日の「調和のとれた学校運営について」と題する大臣見解をめぐって多くの疑問が提出された。
    (教育指導の重視を)
 そのうち見解と立場を異にする二つの強い批判がある。第一に、学校運営を管理だけの角度からとらえる批判があるが、主任はもとより校長・教頭についても、教育指導の側面を重視すべきであると考える。第二に、制度化には一切反対という批判に対しては、その立場をとれば改善は不可能である。
    (批判にも耳を傾ける)
 そのほかにも多くの疑問があった。以下はその中でも主要なものであり、国会における一九時間にわたる質疑応答、また、新聞や文部省内の視学委員の会などの教育専門家が提出した疑問の中から共通でしかも重要だと思われるものを選んだものである。その中には賛成の声も多くあるが、コンセンサスを得るためには、賛成よりも反対の声に応えるべきであると考え、批判については聞くべきものは聞き、その主要なもの七点について次のように見解の補足を行いたい。
    (給与改善のあり方)
 第三次給与改善は人確法の趣旨に基づき、まず全教員の給与の改善をめざすべきだとする問があるが、同感である。
 文部省としても、第三次の給与改善については(1)全教員の給与の改善、(2)校長や教頭の地位にはつかないが、教育に長く打ち込んできた教諭の待遇を教頭並みに一等級にすること、(3)主任や部活動の促進と助言指導に当たる者の待遇改善を考えている。
    (管理と教育指導の関係)
 さきの見解は学校運営に当たって、管理と教育指導を同列の二つの柱としているが、教育の方が重要ではないかという疑問がある。これも賛成ではあるが、現状の主任問題をめぐる議論の中で、管理絶対反対と管理強化の声が衝突していることからも明らかなように、教育指導面がともすれば軽視されるきらいがあるので、この際主任が教育指導に当たることを制度的に明らかにし、二つの柱に調和を持たせようというのが見解の趣旨である。学校の目的が教育にあることは当然であり、将来は管理面をめぐる是非の対立が緩和し、教育指導が前面に出る方向が生まれることが望ましい。
    (校長・教頭の役割)
 校長や教頭は、やはり主に管理にたずさわるという見方もあるが、校長や教頭は教育界のベテランであり、今後はできる範囲内で教育指導の面を強化してほしい。そのための具体的な検討を校長会や教頭会に要望する。
    (主任制に画一化はとらぬ)
 小・中・高の各学校で特定の主任だけを取り上げて制度化すると千差万別の学校に画一化をもたらすのではないかという批判がある。この批判は卒直に受入れ、省令で特定の主任のほかに、必要に応じて他の主任を置くことができることを明らかにした。
    (中間管理職ではない)
 先の文相見解はいずれは主任を中間管理職にもっていくための一時的なごまかしにすぎないとする批判がある。これが中間管理職でないことは、たびたび明言しているところであるが、それがごまかしでないようにするためにこそ省令の中で主任の仕事は指導や助言、連絡調整にあることを明記した。主任の職務は上司として職務命令を発することにあるのではない。また、主任の制度化は五段階給与を実現しようとするものでもない。
    (主任には専門的適格者を)
 主任を制度化すると、差別を校内につくるのではないかとする批判もある。それだからこそ、見解において、主任を固定化せずに専門的な能力を持ち適格な教員ができるだけ多くこの経験を積むことが望ましいことを明らかにした。そればかりではなく、小学校では約五〇%、中学校でも約三〇%の教員が女性であり、現在でも小学校においては、既に学年主任は男性より女性の方が多いという事実にかんがみ、女性が主任の職にできる限り多くつくことが望ましいことを明らかにした。要するに、できうる限り多くの教員の参加を得て、教育指導者としての主任を強化することが制度化の目的であり、そのようにして全校の活力を教育指導に総動員することをねらいとしている。
    (主任の任命)
 主任が制度化されると、すべて教育委員会が任命することになるのではないかとする疑問がある。委員会が行うか、校長が行うかについては教育委員会が決めればよいのである。学校管理規制を改める際に主任の任命を委員会は、校長に委任することができるものとし、現状における校務分掌の一翼を担う主任の選び方を今回の制度化によって変える意志はなく、むしろ実態をそのまま認めるという方向を選んだ。
    (実施について)
 主任が制度化されるのは、明年の三月からであるが、文部省としては、今後、校長を中心とする学校の教職員に対しいろいろな課題を投げかけ、それぞれの学校がその解決を自ら探し求めるような方向に進めたい。もちろん国としてなすべき事柄も多々あるが、学校現場においても当面の問題解決に格段の努力をしてほしい。そうして各学校が新しい校風ともいうべきものを作り上げることを期待する。





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