● 公立高等学校の入学者選抜について 昭和59年7月20日 文初高283



昭五九、七、二〇 文初高二八三 
各都道府県教育委員会あて 
文部省初等中等教育局長通知

    公立高等学校の入学者選抜について

 このことについては、昭和四一年七月一八日付け文初中第四一一号「公立高等学校の入学者選抜について」により各都道府県において実施されてきたところでありますが、文部省においては、今日までの高等学校入学者選抜の実施状況や高等学校教育のその後の進展等を踏まえ、関係者の協力を求めてその改善について検討を加えてきました。
 その結果、高等学校入学者選抜については、所要の省令改正(「学校教育法施行規則の一部改正について」昭和五九年七月二〇日付け文初高第二八二号文部事務次官通達参照)を行うほか、下記趣旨によることといたしたいので、貴教育委員会におかれては、公立高等学校入学者選抜の適切な実施に努められるようお願いします。
 なお、貴教育委員会が総合的な検討を行う際には、「高等学校入学者選抜方法の改善に関する検討会議」の取りまとめ(別添)の内容を十分参考とされるようお願いします。

          記

1 高等学校の入学者選抜は、中学校長から送付された調査書その他必要な書類、選抜のための学力検査の成績等を資料として、各高等学校、学科等の特色に配慮しつつ、その教育を受けるに足る能力・適性等を判定して行うものとする。
2 受験機会については、同じ高等学校においても定員の一部を留保して、入学者選抜を2回にわたって実施するなど、受験生に複数の機会を与える工夫を行うことが望ましい。ただし、この場合、一部の受験生のみの利益に帰することがないように配慮する必要がある。
3 学力検査実施教科などその実施方法及びその結果の利用方法については、各高等学校、学科等の特色に応じた工夫が行われ得るように配慮するものとする。
4 学力検査の問題の作成に当たっては、その出題傾向が中学校の学習指導に望ましい影響を与えるものとなるよう配慮し、中学校学習指導要領に示されている各教科の目標に即し、その内容の基本的な事項について出題するものとする。特に、単に記憶力を問うのみでなく、理解力、応用力、分析力を問うことのできる適切な問題を作成するよう配慮するものとする。
5 調査書は、学力検査とともに入学者選抜の重要な資料として重視される必要があるが、その利用に当たっては、調査書と学力検査の比重の置き方やその他の取り扱いについて、中学校教育への影響に十分留意するとともに、各高等学校、学科等の特色に応じた適切な配慮を行うものとする。
6 調査書の各教科の学習成績以外の記録については、これを積極的に利用することとするが、安易に点数化して利用することのないよう十分に配慮することが望ましい。
 なお、調査書の記載事項については、入学者選抜の資料として真に必要な事項を精選するものとする。
7 推薦入学については、高等学校、学科等の特色にふさわしい者を選抜するため、積極的に実施することが望ましく、高等学校によっては普通科においてもこれを実施することを考慮することが望ましい。推薦入学を実施する場合には、推薦書の提出を求めたり、面接を併用するなどの工夫を行うものとする。
8 面接については、これを積極的に利用することが望ましい。面接を実施する場合には、その方法や基準を明確にしておくこと、複数の試験官が面接することなどの配慮を行うものとする。
9 帰国子女については、あらかじめ入学定員の一定枠を設けたり、通学区域について弾力的な扱いをするなどの配慮を行うとともに、選抜の時期、選抜の方法、学力検査等について、可能な限り弾力的な取扱いをすることが望ましい。
 なお、諸外国の学校の学期の始期、終期の違いにより、学年の途中で帰国する帰国子女については、一般の出願者とは別に、早期に入学者選抜を行い、あらかじめ入学許可の内定を行うことも考えられる。
10 保護者の転勤に伴なうその子女の入学者選抜については、昭和五九年三月一日付け国初第八号「保護者の転勤に伴う高等学校生徒の転入学の許可等の取り扱いについて」に基づいて、可能な限り弾力的に取り扱うものとする。
11 通学区域の設定に当たっては、生徒の居住地によって高等学校受験の機会が大きく異なることのないように留意し、特色ある高等学校の学科等については、可能な限り広い範囲から受験できるようにすることが望ましい。
12 中学校における進路指導は、昭和五八年一二月八日付け文部事務次官通知文初職第三二五号「学校における適正な進路指導について」に基づいて、適正に実施するとともに、調査書の取扱いについても適正を期するよう努める必要がある。
 なお、いわゆる体験入学については、その機会の拡充と内容の充実を一層図ることが望ましい。

別添  略

                文初高第二八三号
                昭和五九年七月二〇日
各 都 道 府 県 知 事
附属学校を置く各国立大学長 殿
               文部省初等中等教育局長
                    高 石 邦 男

     高等学校の入学者選抜について(通知)

 文部省においては、高等学校入学者選抜の実施状況及び近年の高等学校教育の進展等を踏まえ、関係者(「高等学校入学者選抜方法の改善に関する検討会議」)の協力を求めてその改善について検討を加えてきました。その結果、公立高等学校の入学者選抜については、別添一の通り各都道府県教育委員会に通知したところです。
 「高等学校入学者選抜方法の改善に関する検討会議」 の報告書(別添二)においては、一部の高等学校の学力検査において、中学校学習指導要領の範囲を逸脱した出題がなされるなど、その出題傾向が中学校の生徒に特別の受験勉強を強いている面が見られ、生徒の進学塾への依存等の望ましくない結果が生じていると指摘し、その改善策の一環として、学力検査の問題作成については、教育研究機関の活用を図る等、恒常的な研究体制の整備を提案しています。
 貴職におかれては、別添一及び二を参考としつつ、貴管下の各高等学校において、適正かつ公正な高等学校入学者選抜が実施されるよう特段の御配慮をお願いします。





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