● 保護者の転勤に伴う高等学校生徒の転入学の許可等の取り扱いについて 昭和60年10月17日 文初高第239号



文初高第二三九号 昭和六〇年一〇月一七日
各都道府県教育委員会教育長あて
文部省初等中等教育局長通知


    保護者の転勤に伴う高等学校生徒の転入学の許可等の取り扱いについて


 標記の件については、「保護者の転勤に伴う高等学校生徒の転入学の許可等の取り扱いについて」(昭和五九年三月一日付け国初第八号文部省初等中等教育局長通知)に基づき、各都道府県において積極的にお取り組みいただき、改善についての報告もいただいているところです。
 さて、今般、総務庁行政監察局では「転居者の子弟に対する高等学校の受入措置の改善状況に関する調査結果」(別添)を発表すると共に、当省に参考通知してきました。同通知においては、各都道府県においておおむね前記文部省通知の主旨に沿つた改善措置が講ぜられている状況を認めつつも、なお、改善につき検討の余地のある事項もあることを指摘しています。
 転入学に関する情報の収集及び提供や入学者選抜の際の願書提出期限等の配慮については、なお、改善につき検討の余地のある県もみられます。また、転入学試験の実施回数、四月当初の転入学試験の実施、受入の際の定員上の配慮については、各学校に対し一層周知徹底が図られる必要があると考えられます。
 各都道府県においては、今後とも文部省通知の主旨に沿つて一層の改善が図られるようお願いします。


別添

転居者の子弟に対する高等学校の受入措置の改善状況に関する調査結果

(昭和六〇年九月)
(総務庁行政監察局)

目次
第一 調査の目的
第二 調査結果
一 転入学予定高校生に対する受入措置の改善
(一) 公立高校における転入学希望者の受入れ
(二) 転入学に関する情報の収集及び提供
二 転居予定中学生に対する公立高校入学試験の受験機会の確保


第一 調査の目的等

一 目的

 文部省は、昭和五九年二月に当庁が行つた転居者の子弟に対する高等学校の受入措置に関する地方監察の結果に基づく改善意見の通知に対応して、昭和五九年三月都道府県教育委員会(以下「県教委」という。)及び都道府県(以下「県」という。)に対し、高等学校(以下「高校」という。)における転入学試験の実施時期・回数、転入学許可に係る定員枠等について、改善措置を講ずるよう指導している。
 この調査は、全国の四七県教委及び県並びに公立高校を対象として、文部省通知に基づくその後の高校転・入学に関する改善状況を把握して、当庁の改善意見の推進に資するため実施したものである。

二 対象機関

都道府県(四七)
都道府県教育委員会(四七)
高等学校(一二六校)

三 実施局

管区行政監察局 全局
四国行政監察支局
行政監察事務所 全事務所

四 実地調査時期

昭和五九年一二月

第二 調査結果

一 転入学予定高校生に対する受入措置の改善

(一) 公立高校における転入学希望者の受入れ

 文部省は、「保護者の転勤に伴う高等学校生徒の転入学の許可等の取り扱いについて」(昭和五九年三月一日付け初等中等教育局長通知。以下「文部省通知」という。)によつて、県教委及び県に対し、@転入学試験については、実施回数を可能な限り多くすること(原則として年三回程度は実施すること。)、また、可能な限り四月当初にも実施すること、A転入学許可については、転入学希望に可能な限り応じられるよう、例えば、これらの者に係る転入学許可の特別定員枠を設定するなど適切な配慮を行うことなどについて改善指導を行うよう通知している。
 今回、転入学試験の実施回数及び四月当初の実施状況並びに受け入れ定員について、全国四七県教委の指導状況及び調査対象一二六公立高校の実施方針をみると、次のとおりである。

ア 転入学試験の実施回数

(ア) 県教委の高校に対する指導状況

 各県教委の公立高校に対する指導状況をみると、四七県教委とも、転入学試験を年三回程度以上実施するよう指導しており、このうち、文部省通知によつて指導内容を改善したものは三四県教委(七二・三%)に及んでいる。

(イ) 高校における転入学試験の実施方針

 調査対象一二六公立高校における転入学試験の実施方針をみると、年三回程度以上実施することとしているものが一〇四校(八二・五%)と多数を占めており、このうち、文部省通知に沿つて実施回数を年三回程度以上としたものが四三校(四一・三%)みられる。一方、その他の二二校では年二回の実施となつているが、このうち一六校では、今後年三回の実施を検討することとしている。しかし、六校では、三学期の転入学試験は学習指導、カリキュラムの差異等の面で問題が多い等の理由から実施していない。

イ 新一年生に対する四月当初の転入学試験の実施

(ア) 県教委の高校に対する指導状況

 県教委の公立高校に対する指導状況をみると、新一年生に対する四月当初の転入学試験を実施するよう指導しているものが四五県みられ、このうち、文部省通知によつて指導内容を改善したものは三一県(六六・〇%)となつている。また、その他の二県については、昭和六〇年度から改善するよう検討している。

(イ) 高校における四月当初の転入学試験の実施状況

 調査対象一二六公立高校における新一年生に対する昭和五九年四月当初の転入学試験の実施方針をみると、実施することとしているものが八四校(六六・七%)あり、このうち、文部省通知に沿つて改善したものは二一校(二五・三%)となつている。一方、四二校(三三・三%)については、未実施となつているが、このうち、三二校については、今後その実施を予定又は検討することとしている。しかし、その他の一〇校については、四月当初の転入学試験は住民感情からみて、あるいは学校行事が多いため実施が困難であること、同一通学圏内の他の高校で実施していること等を理由として実施していない。

ウ 転入学者の受入定員

(ア) 県教委の高校に対する指導状況

 県教委の公立高校に対する転入学者の受入定員に係る指導状況をみると、四七県教委とも教育上支障がない範囲内で転入学希望者を受け入れるよう指導しており、このうち、転入学者のための特別定員枠の設定を指導しているものが一二県教委(二五・五%)みられる。また、四七県教委のうち文部省通知によつて、改善したものは二五県教委(五三・二%)となつている。

(イ) 高校における転入学者の受入定員

 調査対象一二六公立高校の受入方針をみると、教育上支障がない範囲内で転入学希望者を受け入れるとしているものが全体の九八・四%に当たる一二四校みられ、このうち、転入学者のために、例えば、定員の二%等の一定割合、あるいは、学級の数に相当する人数を特別の定員枠として設定しているものが一八県で四七校(三七・三%)みられる。また、前記一二四校のうち二三校(一八・五%)では、従来、欠員の範囲内で転入学を許可していたが、文部省通知に沿つて改善措置を講じたものである。
 なお、一二四校を除く他の二校(一県)では、欠員が多いため転入学者の受入定員について特段の配慮を行う必要がないとしている。

(二) 転入学に関する情報の収集及び提供

 文部省は、前記の文部省通知によつて県教委及び県に対し、転入学試験に関する基本的な事項(募集時期、募集定員、試験期日等)についての情報を十分に把握し、照会に対して的確に対応できるようにするとともに、適宜、マスコミ等に情報を提供する等により関係者に対する広報に努めること等を指導している。
 今回、四七県教委および県の転入学に関する情報の収集及び提供の実施状況をみると、公立高校については、四七県教委のうち四〇県教委(八五・一%)では、試験期日、募集定員等の情報を把握しており、また、その他の七県教委(一四・九%)のうち、一県教委は六〇年度から実施することとしている。しかし、六県教委においては外部からの転入学に関する照会及び転入学希望者が少ないこと、あるいは、転入学試験の実施時期が不特定であることなどの理由から情報収集を行つておらず、転入学希望者の照会に対し的確に対応できるものとなつていない。
 また、私立高校については、情報収集を行つている県は、四七県のうち三〇県(六三・八%)となつており、また、その他の一七県(三六・二%)のうち、二県は昭和六〇年度から実施することとしているが、一五県においては前記県教委と同様の理由により情報収集が行われていない。
 しかしながら、転居予定者にとつて、転入学に関する情報の迅速かつ的確な把握が望ましいことなどから統一的な情報収集が十分でない県教委及び県においては、なおその改善について検討する余地がある。

二 転居予定中学生に対する公立高校入学試験の受験機会の確保

 文部省は、前記の文部省通知によつて、県教委に対し、転勤者の子弟に係る公立高校入学試験の受験手続きを可能な限り弾力的に取り扱うことが望ましく、願書提出期限は少なくとも一般の受験者に係る出願変更期限(出願変更を認めない県にあつては願書提出期限)とするよう指導している。
 今回、四七県の転居予定者に係る公立高校入学試験の出願資格審査の申請書提出期限、入学願書の提出期限(以下「出願期限」という。)及び出願変更期限の設定状況についてみると、出願資格審査申請期限及び出願期限を一般受験者の出願変更期限(出願変更を認めない県にあつては出願期限)以降としているものは二三県(四八・九%)、このうち、文部省通知に沿つて改善されたものが一〇県となつており、また、一四県(二九・八%)については、転居予定者の出願資格審査申請期限及び出願期間が一般受験者の出願期間と同一となつている。
 一方、その他の一〇県(二一・三%)については、出願資格審査の申請期限が一般受験者の願書受付開始日前に設定されており、これらの県においては、出願資格審査申請期限が転居予定者に対する事実上の出願期限となつていることからみて、なお改善について検討する余地がある。




Copyright© 執筆者,大阪教育法研究会