● 学校保健法施行規則の一部を改正する省令の施行並びに今後の学校における健康診断及び予防接種の取扱について 平成6年9月28日 文体学第168号



文体学第一六八号 平成六年九月二八日
附属学校を置く各国立大学長・国立久里浜養護学校長・各都道府県知事・各都道府県教育委員会教育長あて
文部省体育局長通知


    学校保健法施行規則の一部を改正する省令の施行並びに
    今後の学校における健康診断及び予防接種の取扱について

 このたび、予防接種法及び結核予防法の一部を改正する法律(平成六年六月二九日法律第五一号)、予防接種法施行令及び結核予防法施行令の一部を改正する政令(平成六年八月一七日政令第二六六号)並びに予防接種法施行規則等の一部を改正する省令(平成六年八月一七日厚生省令第五一号)の施行に伴い、別添のとおり学校保健法施行規則の一部を改正する省令(平成六年九月二八日文部省令第三八号)が制定され、本年一〇月一日に施行されることとなりました。結核予防法(昭和二六年法律第九六号)及び予防接種法(昭和二三年法律第六八号)の改正の概要、学校保健法施行規則の改正の概要並びに同法施行規則施行に伴う留意事項は左記のとおりですので、学校における結核の健康診断等について適正な実施を図られるようお願いします。
 また、学校保健法施行規則の改正に伴う留意事項のほか、予防接種法等の改正に伴って左記の点に留意する必要があるので、学校においては、児童生徒等の健康の保持増進の観点から適切に対応されるようお願いします。
 なお、都道府県教育委員会にあっては貴管下の市町村教育委員会等に対し、都道府県知事にあっては所管の私立学校等に対してこの趣旨を周知徹底されるよう併せてお願いします。

          記

第一 結核予防法及び予防接種法改正の概要

一 改正の趣旨

 予防接種を取り巻く環境が大きく変化する中で、予防接種の高い接種率を維持するためには国民の理解を得られる制度としていくことが必要であること。こうした状況を踏まえ、予防接種の対象疾病、実施方法等を改めるとともに、予防接種による健康被害についての救済措置の充実等を図るものであること。

二 結核予防法改正の要点

(一) ツベルクリン反応検査及び予防接種を受ける責務

ア 結核にかかる予防接種(以下「BCG」という。)を従来の義務付けから努力義務としたこと。

イ ツベルクリン反応検査のうち、BCGの前段階として行われるものについては、BCGと一体のものと考えられることから、BCGと同様に努力義務としたこと。

ウ ツベルクリン反応検査のうち、定期の健康診断として実施するものについては、健康診断として引き続き義務付けるものとしたこと。

(二) 定期の予防接種

 小学校第二学年及び中学校第二学年においてBCGの前段階として行われるツベルクリン反応については、受診義務のかかる定期の健康診断から外し、新たに定期の予防接種として位置付けたこと。

(三) 予防接種を行ってはならない者

 BCG接種に当たり、厚生省令で定める方法により医師が健康状態を調べ、BCG接種を受けることが適当でない者として厚生省令で定めるものに該当すると認めるときは、BCG接種を行ってはならないことを法律上明らかにしたこと。

(四) 健康被害の救済措置

 BCG接種による健康被害の救済措置の充実が行われたこと。

三 予防接種法改正の要点

(一) 対象疾病

 予防接種法の対象疾病から、痘そう、コレラ、インフルエンザ及びワイル病を削除するとともに、新たに破傷風を加えたこと。

(二) 定期の予防接種

 市町村長が行う定期の予防接種については、その対象疾病及び対象者を政令で定めることとし、政令では、定期の予防接種を行う疾病としてジフテリア、百日せき、急性灰白髄炎、麻しん、風しん、日本脳炎、破傷風を定めるとともに、その対象者を定めたこと。

(三) 予防接種を行ってはならない者

 予防接種に当たり、厚生省令で定める方法により医師が健康状態を調べ、当該予防接種を受けることが適当でない者として厚生省令で定めるものに該当すると認めるときは、予防接種を行ってはならないことを法律上明らかにしたこと。

(四) 被接種者等の責務

 改正前の予防接種法においては、予防接種の実施者から予防接種の対象者とされた者は、予防接種を受けなければならないという義務付けが行われていたが、定期の予防接種又は臨時の予防接種を受けるよう努めなければならないとする努力義務に改められたこと。
 また、このこととの関係で、予防接種は個別接種を原則とすることとなったこと。

(五) 健康被害の救済措置

 予防接種による健康被害の救済措置の充実が行われたこと。

第二 学校保健法施行規則改正の概要

一 改正の趣旨

 結核予防法等の改正に伴い、学校における健康診断の内容等の規定を整備するものであること。

二 学校保健法施行規則改正の要点

(一) ツベルクリン反応検査の時期

 小学校第二学年及び中学校第二学年における検査を健康診断から外したこと(改正後の学校保健法施行規則第四条第四項関係)。
 このことは、改正前の結核予防法において、小学校第一学年及び中学校第一学年でBCG接種を受けた者に対し翌年度に健康診断として行っていたツベルクリン反応検査が、改正によって予防接種の前段階として位置付けられたことに対応するものであること。このため、小学校第二学年及び中学校第二学年におけるツベルクリン反応検査は義務付けから努力義務となること。

(二) ツベルクリン反応検査の技術的基準

 ツベルクリン反応検査を行う必要がない者及び行わないことができる者の規定を整理したこと(改正後の学校保健法施行規則第五条第七項第一号及び第三号関係)。また、ツベルクリン反応判読の基準において、発赤九ミリメートル以下を陰性として判定することとしたこと(改正後の学校保健法施行規則第五条第七項第二号関係)。

(三) 就学時健康診断票

 就学時健康診断票の予防接種の欄中、予防接種の例示を落とすこと。

第三 学校保健法施行規則改正に伴う学校における結核予防に係る留意事項

一 結核予防法における学校の責務

 学校の長は、改正された結核予防法、結核予防法施行令(昭和二六年政令第一四二号)及び結核予防法施行規則(昭和二六年厚生省令第二六号)の定めるところにより定期の健康診断及び定期の予防接種を行わなければならず、これらの法令に基づきBCG接種の体制を整備すること。その際、予防接種実施要領(平成六年八月二五日付厚生省保健医療局長通知の別紙)を参照されたいこと(別紙一)。

二 予防接種に関する周知徹底

 今回の結核予防法の改正により、接種義務が努力義務に変わるが、結核予防法改正後においても予防接種の重要性は何ら変わることはなく、児童生徒や保護者等に対して正しい知識の普及を図るなど予防接種を受けやすい条件整備を図りつつ、接種率の維持・向上に特に配慮する必要があること。その際、厚生省編集・発行の「予防接種と子供の健康」の活用を図ること。
 また、接種を依頼する医師等に対しては、予防接種の効果及び副反応、接種不適当者等の注意事項について周知徹底を図ること。その際、日本小児科連絡協議会予防接種専門委員会編集、厚生省発行の「予防接種ガイドライン」等の活用を図ること。

三 BCGの接種義務について

 今回の結核予防法の改正により、接種義務が努力義務に変わるので、BCG接種に当たってはBCG接種予診票(別紙二)により保護者等の意向を確認すること。
 なお、小学校第一学年及び中学校第一学年においては、健康診断としてのツベルクリン反応検査は受ける義務があり、BCGについては努力義務となること。また、小学校第二学年及び中学校第二学年におけるツベルクリン反応検査及び予防接種については努力義務となること。

四 BCG接種を行ってはならない者及び注意を要する者

 BCG接種予診票(別紙二)を活用しつつ、BCG接種を受けようとする者についての予診を徹底し、次に掲げるBCG接種を行ってはならない者に該当すると判断されたものに対してはBCG接種を行ってはならないこと。

 BCG接種を行ってはならない者

ア 明らかな発熱を呈している者
イ 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
ウ 結核その他の疾患の予防接種、外傷等によるケロイドの認められる者
エ その他、予防接種を行うことが不適当な状態にある者

 また、次に掲げるBCG接種の判断を行うに際し注意を要する者と判断されたものに対しては、被接種者の健康状態を観察し、注意して接種しなければならないこと。
 BCG接種の判断を行うに際し注意を要する者

ア 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有することが明らかな者
イ これまでの予防接種で二日以内に発熱のみられた者又は全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
ウ 過去にけいれんの既往のある者
エ 過去に免疫不全の診断がなされている者
オ 接種しようとする接種液の成分により、アレルギーを呈するおそれのある者

五 接種の方法

 予防接種法に規定する予防接種については個別接種を原則としているが、BCGについては、集団接種が原則になっているため、学校の長に接種義務が課されているものであること。

六 施行期日前後における取扱い

 小学校第二学年及び中学校第二学年で行うツベルクリン反応検査を本年九月三〇日以前に受けた者が、本年一〇月一日以降にBCG接種を受けようとすると、その法的根拠はなくなり、従って万一これにより健康被害が生じたとしても健康被害救済制度は適用されなくなる。
 このため、小学校第二学年及び中学校第二学年の児童生徒で本年九月三〇日以前にツベルクリン反応検査を受けた者が、本年一〇月一日以降にBCG接種を受けることのないよう厳に留意すること。(厚生省保健医療局エイズ結核感染症課長通知(別紙三)を参照)

第四 予防接種法等の一部改正に伴う学校における留意事項

 このたびの制度改正にともなって、予防接種は医療機関で行う個別接種が原則となるが、個別接種により実施しがたい場合は、集団接種によることができることとなっていること。予防接種法に規定する予防接種の実施は市町村長又は都道府県知事が行うものであるが、市町村長等が学校に協力を求めることも考えられるので、その場合は、学校の教育活動に支障がない範囲で、実施場所の提供、予診票の配付等の協力を行うこと。




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