● インターンシップの推進について 平成10年12月16日 10初職42



平一〇、一二、一六 10初職四二
各都道府県教育委員会教育長、各都道府県知事あて
文部省初等中等教育局職業教育課長、
文部省生涯学習局生涯学習振興課長通知

    インターンシップの推進について

 日頃より、インターンシップの推進につきましては格段の御尽力をいただきありがとうございます。
 近年、国際化・情報化の進展、産業構造の変化など日本の社会経済の変化にともなって、雇用慣行が急速に変化しつつあるとともに、自主性・創造性を持った人材育成が必要とされており、その中で、高等学校や専修学校の生徒が企業等において実習・研修的な就業体験を行うインターンシップに対する関心が急速に高まっています。
 文部省においても、インターンシップが学校の教育内容の改善・充実や生徒の学習意欲の喚起、主体的な職業選択の能力や高い職業意識の育成などの観点で大きな意義を有していることから、「教育改革プログラム」(平成一〇年四月二八日)においてその推進を図ることとしており、高等学校や専修学校におけるインターンシップの実施方法等について、調査研究を行っているところです。また、理科教育及び産業教育審議会答申(平成一〇年七月二三日)においても、インターンシップの推進についての提言がなされているところであります。
 現在でも、高等学校や専修学校においてインターンシップについての様々な取組が進められていますが、その推進に当たっては受入機関等の開拓が重要な課題になっているところです。
 このようなことから、文部省におきましては、別添一(写)のとおり、文部省関係機関にインターンシップに関する生徒の積極的な受入れを求めるとともに、関係省庁に対しても別添二(写)のとおり、格段の協力を依頼したところです。また、今後、その他の省庁に対しても、協力を依頼することとしております。
 このような状況を踏まえ、各学校におけるインターンシップへのより積極的な取組を促すため、学校関係者と受入機関等の関係者との間で協議の場を設けるなど、インターンシップの推進体制の構築に努めるとともに、都道府県教育委員会におかれては、管下の学校や各市町村教育委員会に対して、都道府県知事にあっては管下の私立学校に対して、この趣旨の周知徹底を図るようお願いします。
 なお、この度、大学等がインターンシップに取り組む場合の事務や配慮事項などをまとめた「インターンシップ・ガイドブック」を文部省においてまとめましたので、参考にしていただければ幸いです。


(参考)
  「今後の専門高校における教育の在り方等について」(抜粋)
 理科教育及び産業教育者議会答申(平成一〇年七月二三日)

一 生徒の在学中における就業体験(インターンシップ)の推進について
(一) インターンシップの推進の必要性
 専門高校においては、これまでも「課題研究」や各科目の実習の一部として、産業現場等における実習(いわゆる「現場実習」)が教育課程上に位置付けられた形で行われてきたところである。現場実習においては、実際的な知識や技術・技能に触れることが可能となるとともに、生徒が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり、主体的な職業選択の能力や職業意識の育成が図られるなど、高い教育効果を有するものである。
 しかし、現時点においては、衛生看護科における病院での実習等、資格取得の条件となっているため、長い実践の積み重ねがある分野もある一方で、現場実習を実施している割合を各学科ごとに見ると、農業で約四割、工業で約一割、商業で約二割など、総じて専門高校が現場実習に積極的に取り組んでいるといえる状況ではない。この背景には、受け入れ企業等を見つけるのが容易でない、現場実習の実施事例に関する情報が不足しているなどの理由があると思われる。
 また、現場実習のような教育課程上に位置付けられたもののみならず、地域によっては、学校とは関係なく企業等が主体となって職場体験のプログラムを企画する例も見られる。平成一〇年四月から、専修学校における学習成果や技能審査の成果と同様、学校外におけるこうした活動についても、単位認定できる途が開かれたところである。
 こうした現状を踏まえると、これまで現場実習として取り組まれてきた実践に基づきつつ、更に幅広く生徒が在学中に自らの学習内容や将来の進路等に関連した就業体験を行うことをインターンシップとして奨励し、専門高校における教育活動の一層の充実や生徒の勤労観・職業観の育成を図ることが必要である。
(二) インターンシップの教育上の意義
 インターンシップは、学校における教育活動だけでは不十分な部分を補完する機能を持ち、学校内の教育と有機的な連携を図ることにより、次のような高い教育効果を期待することができる。
 第一に、職業の現場における実際的な知識や技術・技能に触れることが可能となるとともに、学校における学習と職業との関係についての生徒の理解を促進し、学習意欲を喚起するなど、専門高校における教育内容・方法の改善・充実に資することができる。
 第二に、生徒が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり、主体的な職業選択の能力や高い職業意識の育成が促進される。
 第三に、インターンシップの場は、生徒が教員や保護者以外の大人と接する貴重な機会であり、異世代とのコミュニケーション能力の向上も期待できる。
(三) インターンシップの実施形態
 インターンシップの実施形態は、大きく分けて、学校が主体となって行うもの、企業等が主体となって行うものの二つが考えられる。
 学校が主体となって行う場合には、各教科における「課題研究」や各科目の実習、あるいは特別活動の一環として取り組むことが考えられる。また、地域の実態等に応じ、各設置者や学校の判断により、インターンシップを行うための単独の科目を設けることも考えられる。
 そのため、現在、学習指導要領においては、各教科・科目の実習時間数のうち、現場実習をもって替えることができる時間数を一〇分の七以内に制限しているが、現場実習への取組をより一層弾力的にするために、この制限については廃止することが適当であると考える。
 一方、企業等が主体となってインターンシップのためのプログラムを用意し、それに生徒が参加するということも考えられる。このような学校外における就業体験活動等の単位認定に当たっては、必要に応じてオリエンテーションの実施、計画書の提出、活動レポート等による成果の報告など、学校による事前・事後の適切な指導が望まれる。
(四) インターンシップの実施上の留意事項
 (インターンシップと報酬との関係)
 インターンシップは、教育活動の一環として行われるものであり、いわゆるアルバイトとは明確に区別されなければならない。したがって、原則としては、インターンシップによる企業等での就業体験につき、その対価として報酬を得ることは望ましくない。しかし、インターンシップの態様によっては、交通費、食費等の実費や何らかの報酬が支払われる場合も想定される。その場合にもそのことによりインターンシップの教育的意義やねらいが損なわれることがないよう十分に留意する必要がある。
 (インターンシップと就職・採用活動との関係)
 高等学校におけるインターンシップは、就職・採用活動と結び付けられるべきものではない。その企画、実施に当たって、学校は受け入れ事業所等関係者にその趣旨やねらいなどについての十分な理解を求め、インターンシップの名を借りた早期の採用活動が行われることにならないよう留意すべきである。
 (安全の確保や事故等の防止)
 インターンシップ中の生徒の事故等の防止については、学校、企業等の双方において十分に留意する必要があるが、インターンシップの現場における安全の確保に関しては、企業等において責任を持った対応が必要である。
 また、生徒が企業等に損害を与える場合も含め、万一に備え、学校と企業等との間で責任の所在と役割分担を明確にするとともに、保険への加入等必要な措置をとることが望まれる。
(五) インターンシップの推進方策
 専門高校においては、すでに現場実習という形で、インターンシップへの取組が始められているが、積極的な取組が行われている学校はまだ一部にすぎない。その原因の一つは、インターンシップの実施に必要な情報が不足していることが考えられる。
 そのため、文部省においては、現場実習も含めインターンシップの全般的な状況について把握に努めるとともに、様々な実践例について積極的に情報提供することが望まれる。
 また、学校側のニーズと企業等のニーズを効果的に結び付けるため、各地域ごとに産業教育振興会等を活用しながら、学校と企業、関係行政機関等が協議する場を設けることも考えられる。
別添一及び二〔略〕




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