● 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律における文部省関係法律の改正について 平成11年8月11日 文教地203


平一一、八、一一 文教地二〇三 
各都道府県教育委員会、各都道府県知事、
各指定都市教育委員会、各指定都市市長、
各国立大学長、国立久里浜養護学校長あて
文部事務次官通知

  地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律における文部省関係法律の改正について

 平成一一年七月八日に第一四五回国会において「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(平成一一年法律第八七号)(以下「法」という。)が成立し、平成一一年七月一六日に公布され、平成一二年四月一日から施行されることとなりました。
 これは、地方分権推進委員会の第一次から第四次までの勧告を最大限尊重して策定された「地方分権推進計画」(平成一〇年五月二九日閣議決定)に基づき、関係する法律四七五本を改正するものです。その趣旨は、各般の行政を展開する上で国及び地方公共団体が分担すべき役割を明確にし、かつ、地方公共団体の自主性及び自立性を高めることにより、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図るため、機関委任事務制度の廃止及びこれに伴う地方公共団体の事務区分の再構成、国の関与等の縮減、権限委譲の推進、必置規制の整理合理化、地方公共団体の行政体制の整備・確立等を行い、地方分権の推進を図ろうとするものです。
 文部省関係法律については、地方分権推進計画及び同計画において検討事項とされたものの具体化について検討した中央教育審議会の答申「今後の地方教育行政の在り方について」(平成一〇年九月二一日)等に基づき、地方教育行政の組織及び運営に関する法律をはじめ二一本の法律を改正しています。その趣旨は、教育行政における国、都道府県、市町村の役割分担を見直し、新たな連携協力体制を構築するため、主体的かつ積極的な地方教育行政を推進するための教育委員会制度の在り方等の見直し、社会教育及びスポーツ行政における国の関与の見直し、文化財保護行政における権限委譲の推進などのほか、機関委任事務制度の廃止及びこれに伴う地方公共団体の事務区分の再構成等を行うものです。
 文部省関係法律の改正及びその概要は別添のとおりですので、十分に御了知の上、関係する条例及び規則等を改正するなど、事務処理上遺漏のないようお願い申し上げます。特に、下記の事項につきまして御留意下さいますようお願いいたします。また、都道府県教育委員会及び都道府県知事におかれましては、域内の市町村教育委員会、所管又は所轄の学校その他の教育機関等及び学校法人に対して、周知を図るとともに、適切な事務処理が図られるよう御配慮願います。
 なお、関係政令及び省令の改正につきましては、おってこれを行い、別途通知する予定ですので、予め御承知下さいますようお願いいたします。

           記

一 共通関係
 法並びに関係政令及び省令の施行のために必要な準備は、法施行前においても行うことができること。特に、必要な条例及び規則等の制定及び改廃については、法が施行される平成一二年四月一日から施行されるよう所要の措置を講じる必要があること。
二 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)の一部改正関係(法第一四〇条関係)
(一) 教育委員会の委員の任命(地教行法第三条関係)
 [法施行前の準備行為について]
 教育委員会の委員を六人とする条例は、法施行前においても制定することができる(ただし、その施行は法施行後とする必要がある)こと。さらに、当該条例を制定した場合、その規定に基づき増員する委員の任命について、法施行前に議会の同意を得ておくことができる(ただし、その発令は条例の施行後とする必要がある)こと。
 [運用上の留意点について]
 改正後の地教行法第一六条第二項の規定により、都道府県及び指定都市の教育長についても、現在の指定都市を除く市町村の教育長と同様に、教育委員会の委員のうちから任命することとなるため、都道府県知事及び指定都市市長が委員の任命を行うに当たっては、あらかじめ、教育長として適任でありその職務の遂行が可能である者を一人以上含めておくことが必要であること。
(なお、法施行の際現に在任する都道府県又は指定都市の教育長について、法施行日から三年間は引き続き教育長として在任できることとする経過措置については、(三)を参照。)
(二) 教育委員会の委員長と教育長の兼任の禁止(地教行法第一二条及び第一六条関係)
 [運用上の留意点について]
 改正後の地教行法第一二条第一項及び第一六条第二項の規定により、教育委員会の委員長と教育長の兼任はできないこととなること。
(三) 教育長の任命(地教行法第一六条関係)
 [経過措置について]
 法施行の際現に在任する都道府県又は指定都市の教育長は、法附則第六〇条第一項及び第二項の規定により、法施行日から三年間は、改正後の地教行法第一六条第二項の規定にかかわらず、引き続き教育長として在任することができること及びその身分取扱いは従前の例によることとする経過措置が設けられており、その取扱いは以下のようになること。
@ 現任の教育長
 法施行前(平成一二年三月三一日以前)に就任した教育長が引き続き在任する場合のみ経過措置の適用があり、当該教育長は、教育委員会の委員のうちから任命されていなくても、最長で平成一五年三月三一日まで在任することができること。
 なお、この教育長は、現行制度に基づき任命されるものであるため、その任命の際には文部大臣の承認が必要であること。また、定年をこえる場合には勤務延長の措置が必要であること。
 A 新任の教育長
 法施行後(平成一二年四月一日以後)に就任する教育長は、新しい制度に基づき任命されることとなるため、教育委員会の委員のうちから任命しなければならないこと。
(四) 事務の委任及び補助執行並びに条例による事務処理の特例(地教行法第二六条及び第五五条関係)
 [法施行までに必要な措置について]
 現行の地教行法第二六条第三項又は第四項の規定に基づき定められている教育委員会規則等は、法施行の際に廃止する手続をとる必要があること。
 [経過措置について]
 改正後において、都道府県教育委員会の事務を市町村教育委員会が処理することとする場合には、改正後の地教行法第五五条の規定によることとなり、都道府県の条例で定める必要があること。
 この場合、法附則第六〇条第四項及び第五項の規定により、以下のような経過措置が設けられており、その取扱いは以下のようになること。
@ 法附則第六〇条第四項関係
 改正後の地教行法第五五条の規定に基づく条例の制定に必要な協議等の手続その他の行為を法施行前に行うことができること。
A 法附則第六〇粂第五項関係
 平成二年四月一日において、現行の地教行法第二六条第三項又は第四項の規定により、市町村の教育委員会又は教育長に委任されている事務を、改正後の地教行法第五五条の規定により、法施行後も引き続き市町村教育委員会が処理することとする場合には、以下の協議を要しないこと。
 (ア) 条例の制定に係る都道府県知事と市町村長との協議
 (イ) 条例の委任により事務の範囲を定める教育委員会規則の制定に係る都道府県教育委員会と市町村教育委員会との協議
(五) 県費負担教職員の服務監督等に関する技術的な基準(地教行法第四三条関係)
 [運用上の留意点について]
 市町村教育委員会は、改正後の地教行法第四三条第四項の規定により都道府県教育委員会が定める技術的な基準に従って、県費負担教職員の服務の監督並びに地教行法第四二条又は第四三条第三項の規定に基づく都道府県の条例の実施を行わなければならないこと。
 このため、この基準については、その趣旨及び内容を事前に明らかにする観点から、教育委員会規則又はこれに基づく通知等により明確に定めることが必要であること。
 なお、技術的な基準の「技術的な」とは、主観的な意思又は判断を含まない意であること。
(六) 国又は都道府県教育委員会による指導、助言及び援助(地教行法第四八条関係)
 [運用上の留意点について]
 改正後の地教行法第四八条第一項の規定に基づく指導、助言、援助(以下「指導等」という。)の手続に関しては、改正後の地方自治法第二四七条の規定が適用されることから、指導等を書面によらないで行った場合、指導等を受けた地方公共団体から当該指導等の趣旨及び内容を記載した書面の交付を求められたときは、これを交付しなければならないこと。
 改正後の地教行法第四八条第三項の規定に基づく指示は、改正後の地方自治法第二四五条第一号「へ」に規定する指示であることから、当該指示を受けた都道府県教育委員会は、これに従って市町村に対し指導等を行う必要があること。また、文部大臣の指示を受けて都道府県教育委員会が行う市町村に対する指導等は、法定受託事務であること(改正後の地教行法第六三条)。
(七) 都道府県教育委員会による基準の設定の廃止(地教行法第四九条関係)
 [解釈上等の留意点について]
 現行の地教行法第四九条が廃止されても、個別の法律又は条例に基づく都道府県教育委員会による基準の設定(例:公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の規定に基づく都道府県教育委員会による学級編制の基準の設定)が廃止されるものではないこと。
 [法施行までに必要な措置について]
 都道府県教育委員会は、法施行前に、この規定に基づき定めている教育委員会規則を廃止する必要があること。
 なお、現行の地教行法第四九条及び同条の規定に基づく基準が廃止されても、この基準に従って現に市町村教育委員会が定めている教育委員会規則(いわゆる学校管理規則等)が直ちに廃止されるものではなく、今後とも地教行法第三三条の規定に基づく学校管理規則等として有効であること。
 [運用上の留意点について]
 地教行法第四九条及び同条の規定に基づく基準の廃止により、今後、中央教育審議会答申(平成一〇年九月二一日)等を踏まえた学校管理規則の見直しを行うに当たっては、各教育委員会の主体的判断において行うべきものであること。
(八) 公立高等学校の通学区域の設定(地教行法第五〇条関係)
 [運用上の留意点について]
 市町村立高等学校の通学区域は、当該市町村の教育委員会が、都道府県教育委員会と協議(同意を要しない事前協議)の上、定め、又は変更することとなること。
 この協議の手続に関しては、改正後の地方自治法第二五〇条の規定が適用されることから、都道府県教育委員会は、誠実に協議を行い、相当の期間内に協議が調うよう努めなければならないとともに、意見を述べた場合に、その趣旨及び内容を記載した書面の交付を求められたときは、これを交付しなければならないこと。
 [経過措置について]
 改正後の第五〇条の規定は、法附則第六〇条第三項の規定により、平成一三年四月一日以後に高等学校に入学する者に係る通学区域から適用することとする経過措置が設けられていること。
(九) 文部大臣又は都道府県教育委員会による措置要求の廃止(地教行法第五二条及び地方自治法第二四五条の五等関係)
 [運用上の留意点について]
 現行の地教行法第五二条が廃止され、今後は、改正後の地方自治法第二四五条の五から第二四五条の七までの規定により、それぞれ、
@ 是正の要求(同法第二四五条の五)
 各大臣は、都道府県又は市町村の自治事務の処理について、
 (ア) 都道府県に対し、是正の要求を行うことができること
 (イ) 都道府県の執行機関に対し、市町村に是正の要求を行うよう指示することができること
 (ウ) (緊急を要するときその他特に必要があると認めるときは、)自ら市町村に対し、是正の要求を行うことができること
A 是正の勧告(同法第二四五条の六)
 都道府県の執行機関は、市町村の自治事務の処理について、市町村に対し、是正の勧告を行うことができること
B 是正の指示(同法第二四五条の七)
 各大臣は、都道府県又は市町村の法定受託事務の処理について、
 (ア) 都道府県に対し、是正の指示を行うことができること
 (イ) 都道府県の執行機関に対し、市町村に対する是正の指示に関し、必要な指示をすることができること
 (ウ) (緊急を要するときその他特に必要があると認めるときは、)自ら市町村に対し、是正の指示を行うことができること
 また、都道府県の執行機関は、市町村の法定受託事務の処理について、市町村に対し、是正の指示を行うことができること
となること。
 是正の要求、是正の勧告及び是正の指示(以下「是正の要求等」という。)の手続に関しては、改正後の地方自治法第二四九条の規定が適用されることから、是正の要求等を行うときは、同時に、その内容及び理由を記載した書面を交付しなければならないこと。ただし、当該書面を交付しないで是正の要求等をすべき差し迫った必要がある場合は、当該是正の要求等と同時に当該書面を交付しなくてもよいが、その場合であっても、是正の要求等をした後相当の期間内に、当該書面を交付しなければならないこと。
(一〇) 中核市の県費負担教職員の研修(地教行法第五九条関係)
 [運用上の留意点について]
 中核市に県費負担教職員の研修権限を委譲するに当たり、その円滑な委譲を図るため、中核市を包括する都道府県の教育委員会にあっては、中核市における教職員研修の実施に係る指導主事等の人員体制の整備等について、中核市の教育委員会と協議の上、適切な措置を講ずるよう努めること。
 三〜五 〔略〕
六 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(以下「義務標準法」という。)の一部改正関係(法第一四二条関係)
 ○ 学級編制についての都道府県教育委員会の同意(義務標準法第五条関係)
 [経過措置について]
 法附則第六一条の規定により、法の施行前に現行の義務標準法第五条の規定に基づく認可を受けた学級編制は、法の施行後は改正後の同法同条の規定に基づく同意を得た学級編制とみなすこととする経過措置が設けられていること。
七 その他〔略〕

別添〔略〕




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