● 児童生徒の問題行動等への対応の在り方に関する点検について 平成15年7月22日 15文科初第490号



15文科初第490号 平成15年7月22日
各都道府県・指定都市教育委員会教育長、各都道府県知事、
附属学校を置く各国立大学長、国立久里浜養護学校長あて
文部科学省初等中等教育局長通知


    児童生徒の問題行動等への対応の在り方に関する点検について(通知)


 児童生徒の問題行動等への対応については、かねて学校における取組の充実をお願いしているところです。
 しかしながら、今般、中学生が同じ学校の生徒や幼児を殺害するという重大な事件が相次いで発生するなど、児童生徒の問題行動等は憂慮すべき状況にあります。
 これらの事件については、個別の事情や背景などに関して、事実の把握等が今後必要でありますが、少年非行等の問題については、社会全体でそれぞれの立場から取り組み、学校・家庭・地域社会、更には関係機関が積極的に連携を図っていくことが必要であります。学校においては、地域住民に信頼される安全・安心な学校づくりのため、自らの責任を十分に果たしていかなければなりません。このような観点から、今回の事件を契機として、学校における取組の在り方について改めて点検を行い、必要な見直しを行うことが大切であります。
 ついては、各学校において、別添の要領を踏まえて、学校における管理・指導体制、家庭・地域・関係機関との連携、基本的な道徳観・倫理観等の指導の在り方等について、点検を実施されるよう、お願いします。


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(別添)

    学校における点検の実施要領


T 各学校における自己点検及び教育委員会による実態把握

1 各学校(国・公・私立の幼稚園、小・中・高等学校、盲・聾・養護学校)に対して、点検項目例(別紙1)を踏まえて自己点検を促すこと。各学校を所管する教育委員会においては、各学校の自己点検の結果について適切な方法によって把握し、児童生徒の問題行動等への対応に関する今後の取組の充実に生かしていくこと。

2 別紙1の点検項目例は、国として緊急に点検を求めたい事項を例示したものであり、もとより、教育委員会等の主体的な判断によって各学校に示す点検項目の補足・充実を図ったり、学校種の相違を踏まえた点検項目の整理を行うなどの工夫はなされてよいこと。

3 各学校に対して自己点検の実施を求める際には、地域住民や保護者などの外部の意見が適切に反映されるよう、学校評議員制度を活用する等の工夫を促すこと。併せて、児童生徒の問題行動等への対応の在り方に関する国や教育委員会の従来の指導内容等について、改めて教職員一人一人の理解と認識を深めさせるよう、夏期休業期間中の校内研修の機会を活用するなど適切な対応を促すこと。

<参考>最近の生徒指導等に関する国の通知の例
(1)「いじめの問題に関する総合的な取組について」(平成8年7月初等中等教育局長通知)
(2)「少年の問題行動等への対応のための総合的な取組の推進について」
(平成13年4月初等中等教育局長、生涯学習政策局長、スポーツ青少年局長通知)※ 参考資料として、「児童生徒の問題行動への対応等に関する点検項目(案)」を添付
(3)「幼児児童生徒の安全確保及び学校の安全管理についての点検項目(例)の改訂について」(平成13年8月生涯学習政策局長、初等中等教育局長、スポーツ・青少年局長通知)
(4)「出席停止制度の運用の在り方について」(平成13年11月初等中等教育局長通知)
(5)「不登校への対応の在り方について」(平成15年5月初等中等教育局長通知)


U 国に対する点検の結果の報告

1 都道府県・指定都市教育委員会にあっては、「サポートチーム等地域支援システムづくり推進事業」の対象地域、児童生徒支援加配校の中などから、種々の均衡を考慮しつつ、小・中学校は各5〜10校程度、高等学校3〜5校程度抽出(以下、「調査対象校」という。都道府県の場合、域内の複数の市町村から抽出する。)して、現在の問題点や今後の改善策、学校に対する支援策に関する意見・要望について、具体的な報告を求めること。

2 都道府県・指定都市教育委員会においては、調査対象校からの報告を踏まえて、具体的な問題点や今後の改善策等について整理・分析するとともに、教育委員会として今後必要と考える取組や国に対する意見・要望をとりまとめ、所定の様式(別紙2)により、8月29日(金)までに下記宛て報告すること。

3 教育委員会が国への報告を作成するに当たって、特に学校と関係機関との連携に関する事項については、「サポートチーム等地域支援システムづくり推進事業」に係る事業評価検討委員会を活用するなど、関係機関から学校に対する意見・要望等を聴き、報告内容に適宜反映させること。


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(別紙1)

    学校に求める点検の項目例


1 学校における管理・指導体制の在り方
(1)管理職のリーダーシップ
 生徒指導上の諸問題について、校長、教頭が実態把握や家庭・地域・関係機関との連携などの方針を具体的に示し、生徒指導主事など一部の教員に任せきりにすることなく、積極的に対応しているか。児童生徒の状況の全般的な把握はもとより、指導上特に配慮を要する児童生徒について、校長等への報告・連絡・相談が適時的確かつ十分に行われているか。
 学習指導要領の趣旨を踏まえて、道徳や特別活動等の日常の教育活動の充実が図られるよう、教育課程の編成・実施について指導力を発揮しているか。

(2)児童生徒に関する情報の共有化
 児童生徒の日頃の行動や態度などについて、学級間・学年間に止まらず、職員会議等の場で情報の共有化が図られているか。指導上特に配慮を要する児童生徒について、個別の指導計画や指導の経過に関する記録などを作成し、行動の特性や変容を見定め、次の指導の手立てを講じているか。スクールカウンセラーなどの配置校にあっては、教職員との間の連携や専門的な助言(コンサルテーション)が十分に行われているか。

(3)指導方針に関する教員間の共通理解と組織的な指導体制
 児童生徒に関する的確な実態把握を踏まえて、生徒指導の方針が確立されているか。指導方針について教職員間の共通理解がなされ、一致協力して指導に当たるよう組織的な体制をつくり、取組状況の自己点検を行っているか。校内の指導方針の前提となる、いじめ・暴力行為・不登校などに関する国及び教育委員会の指導内容について、校内研修などによって教職員の理解が深められているか。各学級・学年の問題事例等について、開かれたかたちで対応策の協議がなされているか。

(4)豊かな人間関係づくりと教育相談の充実
 日常の教育活動を通じ、児童生徒一人一人の理解を図り、教師との信頼関係、児童生徒相互の好ましい人間関係など、豊かな人間関係づくりを進め、児童生徒の心を開かせるよう努めているか。
 児童生徒や保護者の悩みや要望を積極的に受け止めるよう、教員がカウンセリングマインドを持って接するなど、全ての児童生徒を対象にした相談活動や、相談しやすい環境づくりが適切になされているか。児童生徒から相談があったときは、その内面の理解に努め、児童生徒の立場に立って適切に事後の対応をしているか。スクールカウンセラーなどの配置校にあっては、相談活動の計画や実施方法などについて教職員との間での連携が十分に図られているか。

(5)緊急時に備えた校内体制の整備
 深刻な問題行動の発生などを想定して、児童生徒・保護者・地域住民等に対して、どのように対応すべきか(情報提供や協力要請の在り方など)日頃から検討され、教職員の役割分担と協同体制が定められているか。

(6)児童生徒に関する情報の引き継ぎ
 児童生徒の進級または進学等に際して、校内の担任間または学校間での引き継ぎは適切になされているか。とりわけ、指導上特に配慮を要する児童生徒について、十分きめ細かな情報の共有化と学校間を超えた協力体制が整備されているか。

2 家庭・地域・関係機関との連携の在り方
(1)連携方針の確立と共通理解
 家庭・地域社会・関係機関との連携の進め方について、学校としての基本方針・計画や校内体制を定め、教職員間の共通理解並びにPTAや関係者への周知が図られているか。特に、様々な関係機関の役割・機能や担当者の氏名・連絡先などについて教職員に十分な周知が図られているか。

(2)保護者・地域住民との情報交換
 学校参観の実施や保護者会、PTAなどの機会を通じて、児童生徒の実態や問題行動等の状況、生徒指導の方針、道徳教育の状況などについて、保護者・地域住民に対して積極的に情報を提供しているか。学校外の児童生徒の状況などについて情報を収集する際、保護者・地域住民からの十分な協力を得ているか。不審者情報など校外での安全に関わる情報について、学校・保護者・地域住民・関係機関間で相互に注意喚起が適切になされているか。

(3)保護者への啓発、援助等
 日頃から保護者との連絡を密にし、信頼関係を深めるように努めているか。家庭でのしつけや子育てについて、PTAや関係機関と連携しながら啓発をしたり、悩みの相談に応じているか。不登校児童生徒(特に「あそび・非行」型の場合)に対して、適時の家庭訪問を行い、学校復帰に向けて当該児童生徒や保護者への適切な働きかけを行っているか。

(4)地域住民等の意見の反映
 学校評議員制度や学校モニター制度を活用するなどして、学校の生徒指導や道徳教育、安全管理の在り方などについて、地域住民や保護者などの意見を聴き、これを学校運営に適切に反映しているか。

(5)関係機関との開かれた連携
 警察、児童相談所などの関係機関との間で、学校内外の児童生徒の問題行動や非行、安全に関わる問題について意図的・計画的に情報交換を進めるとともに、具体的な事例研究や対策の協議などを行っているか。特に、不審者情報について迅速に関係機関からの情報を得、保護者への周知などに連携して対応する体制がつくられているか。また、学校で適切な対応が難しい事例などについては、問題を抱え込まずに早期から積極的に連携し、適切な役割分担の下、協同して当該児童生徒や保護者への支援に当たっているか。児童虐待防止法の基本的な内容(児童虐待の早期発見や関係機関への通告に関する教職員の責務など)について、教職員間の周知が図られ、同法の趣旨に沿った適切な対応がとられているか。

3 基本的な道徳観・倫理観等の指導の在り方
(1)体験活動の活用など多様な指導方法による道徳教育の実践
 道徳教育において、児童生徒の実態等を十分考慮し、例えば、学校生活における日常的な課題を含め悩みや心の揺れ、葛藤等の課題を積極的に取り上げたり、社会奉仕体験活動や自然体験活動などの体験活動の活用、魅力的な教材の開発・活用、保護者や地域の人々との協力など、児童生徒一人一人の心に響く指導方法の工夫が具体的になされているか。特に、自分や他人を傷つけてはならないこと等に関して適切な機会を捉えて繰り返し指導し、かけがえのない生命を尊重することについて深く考え、理解させているか。また、法やきまりを守ることなどについて、発達段階を踏まえつつ、具体的な社会問題や法規を取り上げるなどして、自らの行動に責任を持つことの大切さを理解し、実践できるような力を育てる指導を行っているか。

(2)特別活動等における創意工夫
 学級(ホームルーム)活動において、児童生徒が存在感を感じ、よりよい学級づくりに努めるような環境づくりがなされているか。特に、各学年当初からの日常の生活や学習への適応に関する指導に計画的に取り組み、不安や悩みの解決、望ましい人間関係の確立、心身ともに健康で安全な生活態度や習慣の形成などについて適切な指導が行われているか(例:入学時等のオリエンテーション、意識調査の実施)。
 学校行事等において、体験的な活動を通して、成就感や充実感を味わうなどして集団の所属感を深めるとともに、人間としての生き方を自覚できるような指導が適切に行われているか。
 特別活動のみならず、学校の教育活動全体を通じて、地域社会との連携の下、社会奉仕体験活動や自然体験活動などの体験活動が積極的に推進されているか。

(3)規範意識の向上に向けた関係機関との連携による取組
 警察、福祉や青少年育成部局、保護司などの関係機関や民間団体と連携し、「非行防止教室」などの学習機会を設け、児童生徒の規範意識の向上に向けて、少年非行や犯罪の実情に即した具体的な指導を行っているか。


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(別紙2)教育委員会から国に提出する報告の様式

    学校における点検の結果について


T 学校からの報告の概要
 調査対象校:小学校  校  中学校  校  高等学校  校

1 学校の管理・指導体制の在り方
(1)○○○○
 ※ 現在の問題点や今後の改善策、学校に対する支援策に関する意見・要望について、原則として小・中・高等学校の種別に整理して記述する。特に数が多く目立つものや、留意すべき内容のものについては、その旨を付記するとともに、教育委員会としての総括的な所見があれば併せて記載する。なお、今後の具体策の検討に資するよう、抽象的な一般論に止まらず、具体的な例示を交えて記述する。特に、関係機関との連携については、学校側の問題点のみならず関係機関側の問題点として改善を望みたい点に関しても記すこと。
 注)以下、原則として、点検項目例の各項目(カッコ付き数字のもの)ごとに作成することとするが、適当と判断する場合は、項目を統合・整理して作成しても差し支えない。


U 教育委員会として今後必要と考える取組
1 学校の管理・指導体制の在り方

 注)以下、点検項目例の大項目(1〜3)ごとに作成。


V 国に対する意見・要望
 ※ 特に、学校と家庭・地域・関係機関との連携を推進する上で、制度的な課題を含め、国に望む事項があれば具体的に記述すること。

 注)点検項目全体を通じて記述。






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