● 通級による指導の対象とすることが適当な自閉症者、情緒障害者、学習障害者又は注意欠陥多動性障害者に該当する児童生徒について 平成18年3月31日 17文科初第1178号



17文科初第1178号 平成18年3月31日
各都道府県教育委員会教育長、各都道府県知事
附属学校を置く各国立大学法人学長 宛
文部科学省初等中等教育局長(銭谷眞美)


    通級による指導の対象とすることが適当な自閉症者、情緒障害者、
    学習障害者又は注意欠陥多動性障害者に該当する児童生徒について(通知)


 このたび、小学校若しくは中学校又は中等教育学校の前期課程の通常の学級に在籍する学習障害又は注意欠陥多動性障害の児童生徒を、その障害の状態に応じて行われる特別の指導(以下「通級による指導」という。)の対象とすることができること等について、学校教育法施行規則の一部改正等を行い、その改正等の趣旨、内容及び留意事項について、「学校教育法施行規則の一部改正等について」(平成18年3月31日付け17文科初第1177号初等中等教育局長通知)をもってお知らせしたところです。
 この改正に伴い、児童生徒が通級による指導の対象となる自閉症者、情緒障害者、学習障害者又は注意欠陥多動性障害者に該当するか否かの判断に当たって留意すべき点等は下記のとおりですので、十分御了知の上、遺漏のないようお願いします。
 また、各都道府県教育委員会におかれては、所管の学校及び域内の市町村教育委員会に対して、各都道府県知事におかれては、所轄の学校及び学校法人に対して、このことを十分周知されるようお願いします。


                   記


 学校教育法施行規則第73条の21の規定に基づく通級による指導は、「障害のある児童生徒の就学について」(平成14年5月27日付け14文科初第291号初等中等局長通知)(以下「291号通知」という。)に掲げる者に加え、学習障害者及び注意欠陥多動性障害者についても対象とするとともに、通級による指導の対象となる情緒障害者については、これまで、291号通知においてその障害の程度を「一 自閉症又はそれに類するもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの」又は、「二 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの」として示してきたところであるが、今般、上記一を自閉症者と、上記二を情緒障害者として整理することとしたこと。
 自閉症者、情緒障害者、学習障害者又は注意欠陥多動性障害者については、それぞれ以下の(1)の各号に掲げる障害の種類及び程度の児童生徒を対象として適切な指導が行われることが適当であること。また、これらの児童生徒を含め、通級による指導を行うに際しての留意事項については、以下の(2)のとおりであること。
 なお、291号通知の記の第1の2のbの(1)の「イ 情緒障害者」は廃止し、これに該当する障害の種類及び程度については、以下の(1)の「ア 自閉症者」又は「イ 情緒障害者」に該当するものとする。
 また、通級による指導の対象とするか否かの判断に当たっては、保護者の意見を聴いた上で、障害のある児童生徒に対する教育の経験のある教員等による観察・検査、専門医による診断等に基づき、教育学、医学、心理学等の観点から総合的かつ慎重に行うこと。
 その際、通級による指導の特質に鑑み、個々の児童生徒について、通常の学級での適応性、通級による指導に要する適正な時間等を十分考慮すること。

(1) 障害の種類及び程度
 ア 自閉症者
 自閉症又はそれに類するもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの
 イ 情緒障害者
 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの
 ウ 学習障害者
 全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示すもので、一部特別な指導を必要とする程度のもの
 エ 注意欠陥多動性障害者
 年齢又は発達に不釣り合いな注意力、又は衝動性・多動性が認められ、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもので、一部特別な指導を必要とする程度のもの

(2) 留意事項
 通級による指導を行うに際しての留意事項は以下のとおり。
 ア 通級による指導を担当する教員は、基本的には、この通知又は291号通知に示されたうちの一の障害の種類に該当する児童生徒を指導することとなるが、当該教員が有する専門性や指導方法の類似性等に応じて、当該障害の種類とは異なる障害の種類に該当する児童生徒を指導することができること。
 イ 通級による指導を行うに際しては、必要に応じ、校長、教頭、特別支援教育コーディネーター、担任教員、その他必要と思われる者で構成する校内委員会において、その必要性を検討するとともに、文部科学省の委嘱事業である特別支援教育体制推進事業等により各都道府県教育委員会等に設けられた専門家チームや巡回相談等を活用すること。
 ウ 通級による指導の対象とするか否かの判断に当たっては、医学的な診断の有無のみにとらわれることのないよう留意し、総合的な見地から判断すること。
 エ 学習障害又は注意欠陥多動性障害の児童生徒については、通級による指導の対象とするまでもなく、通常の学級における教員の適切な配慮やティーム・ティーチングの活用、学習内容の習熟の程度に応じた指導の工夫等により、対応することが適切である者も多くみられることに十分留意すること。


(3) その他
 情緒障害者を対象とする特殊学級については、今後、文部科学省においてその在り方について検討を進めることとしていること。




Copyright© 執筆者,大阪教育法研究会