● 平成19年度全国学力・学習状況調査の実施について 平成18年6月20日 18文科初第317号



18文科初第317号 平成18年6月20日
各都道府県教育委員会、各指定都市教育委員会
各都道府県知事、附属学校を置く各国立大学法人学長 宛
文部科学事務次官(結城章夫)


      平成19年度全国学力・学習状況調査の実施について(通知)


 文部科学省では,平成19年度から,小学校第6学年及び中学校第3学年の全児童生徒を対象とする全国学力・学習状況調査を実施することとし,この度,実施要領を別紙のとおり定めましたので通知します。
 ついては,都道府県教育委員会におかれては域内の市町村教育委員会及び調査に関係する所管の学校に対して,市町村教育委員会におかれては調査に関係する所管の学校に対して,都道府県知事におかれては調査に関係する域内の私立学校及びそれを設置する学校法人に対して,国立大学法人学長におかれては調査に関係する附属学校に対して,速やかに,十分周知いただくとともに,本実施要領を踏まえて,調査を円滑かつ確実に実施するため,特段の理解と協力をお願いします。


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別紙


        平成19年度全国学力・学習状況調査に関する実施要領


1.調査の目的
(1)全国的な義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から,各地域における児童生徒の学力・学習状況を把握・分析することにより,教育及び教育施策の成果と課題を検証し,その改善を図る。
(2)各教育委員会,学校等が全国的な状況との関係において自らの教育及び教育施策の成果と課題を把握し,その改善を図る。

2.調査の名称
 「平成19年度全国学力・学習状況調査」(以下,本調査という。)

3.調査の対象とする児童生徒
(1)国立・公立・私立学校の以下の学年の原則として全児童生徒を対象とする。
ア 小学校第6学年,盲・聾・養護学校小学部第6学年
イ 中学校第3学年,中等教育学校第3学年,盲・聾・養護学校中学部第3学年

(2)盲・聾・養護学校及び小中学校の特殊学級に在籍している児童生徒のうち,調査の対象となる教科について,以下に該当する児童生徒は,調査の対象としないことを原則とする。
ア 下学年の内容などに代替して指導を受けている児童生徒
イ 知的障害養護学校の教科の内容の指導を受けている児童生徒

4.調査事項及び手法
(1)児童生徒に対する調査
ア 教科に関する調査
(ア)小学校第6学年に対する調査は,国語・算数とし,中学校第3学年に対する調査は,国語・数学とすること。
(イ)出題範囲は,調査する学年の前学年までに含まれる指導事項を原則とし,出題内容は,それぞれの学年・教科に関し,以下のとおりとすること。
 @ 身に付けておかなければ後の学年等の学習内容に影響を及ぼす内容や,実生活において不可欠であり常に活用できるようになっていることが望ましい知識・技能など(主として「知識」に関する問題)を中心とした出題
 A 知識・技能等を実生活の様々な場面に活用する力や,様々な課題解決のための構想を立て実践し評価・改善する力などにかかわる内容(主として「活用」に関する問題)を中心とした出題
(ウ)出題形式については,記述式の問題を一定割合で導入すること。
イ 質問紙調査
 小学校第6学年及び中学校第3学年の児童生徒を対象に,学習意欲,学習方法,学習環境,生活の諸側面等に関する質問紙調査を実施すること。

(2)学校に対する質問紙調査
 学校における指導内容,指導方法に関する取組や学校における人的・物的な教育条件の整備の状況及び児童生徒の体力・運動能力の全体的な状況等に関する質問紙調査を実施する。

5.調査を実施する日時
(1)児童生徒に対する調査
ア 調査実施日を平成19年4月24日火曜日とすること。
 教科に関する調査は,全体で小学校は3単位時間,中学校は4単位時間,質問紙による調査は1単位時間とすること。(ここでいう1単位時間は,小学校で45分,中学校で50分とすること。)
イ 平成20年度以降における調査の実施予定日は,原則として毎年4月の第4火曜日とすること。

(2)学校に対する質問紙調査
 平成19年4月に実施する。

(3)調査実施に関するスケジュールの予定
 別紙1のとおりとする。

6.調査の実施体制
 本調査の実施体制は,以下のとおり(公立学校,私立学校,国立学校における調査の実施系統図は,それぞれ,別紙2,別紙3,別紙4)とする。
(1)本調査は,文部科学省が,学校の設置管理者である都道府県教育委員会,市町村教育委員会,学校法人,国立大学法人等(以下,参加主体という。)の協力を得て実施する。なお,事業の一部(調査問題の発送・回収,調査結果の採点・集計,教育委員会及び学校等への提供作業等)は,文部科学省が民間機関に委託して実施する。

(2)都道府県教育委員会は,域内の市町村教育委員会に対して指導・助言・連絡等をするなど調査に協力する。また,自らが設置管理する調査に関係する学校に対して指示・指導・助言等をするなど調査にあたる。

(3)都道府県知事は,私立学校の所轄庁として調査に協力する。

(4)市町村教育委員会,学校法人,国立大学法人等は,学校の設置管理者として調査に協力し,所管の学校に対して指示・指導・助言等をするなど調査にあたる。

(5)学校は,校長を調査責任者として,設置管理者である市町村教育委員会等の指示・指導・助言等に基づき調査にあたる。

7.調査結果の取扱い
(1)調査結果の示し方
 調査結果については,小学校及び中学校のそれぞれについて,以下の事項等を示すこととする。
ア 教科に関する調査の結果について,国語,算数・数学のそれぞれ,主として「知識」に関する問題と,主として「活用」に関する問題に分けた四つの区分ごとの平均正答値,中央値,最頻値,標準偏差等
イ 都道府県・市町村・学校・児童生徒の学力に関する分布の形状等が分かるグラフ
ウ 国語,算数・数学の問題ごとの正答率
エ 児童生徒及び学校に対する質問紙調査の結果について,
(ア)学習意欲や学習方法等に関する結果
(イ)児童生徒の学習環境や生活の諸側面等と学力との相関関係の分析
(ウ)学校における教育条件の整備状況等と学力との相関関係の分析

(2)調査結果の公表
 文部科学省は,以下のア〜ウについて,(1)に掲げる調査結果の分析データを公表する。
ア 国全体の状況及び国立・公立・私立学校別の状況
イ 都道府県ごとの公立学校全体の状況
ウ 地域の規模等に応じたまとまり(大都市(政令指定都市及び東京23区),中核市,その他の市,町村,または,へき地)における公立学校全体の状況

(3)調査結果の提供
 調査結果については,各教育委員会,学校等に対して,(2)に示す文部科学省が公表する内容に加えて,以下の調査結果を提供し、その内容は別紙5のとおりとする。
ア 文部科学省は,参加主体に対して,以下の調査結果を提供すること。
(ア)都道府県教育委員会に対しては,その設置管理する各学校に関する調査結果
(イ)市町村教育委員会に対しては,当該市町村における公立学校全体及びその設置管理する各学校に関する調査結果
(ウ)学校法人に対しては,その設置管理する各学校に関する調査結果
(エ)国立大学法人に対しては,その設置管理する各学校に関する調査結果
イ 各学校に関する調査結果は,当該学校全体,各学級及び各児童生徒に関するものとすること。学校は,各児童生徒に対して,当該児童生徒にかかる調査結果を提供すること。
ウ 文部科学省は,都道府県教育委員会に対して,当該都道府県における公立学校全体,域内の各市町村における公立学校全体及び各市町村が設置する各学校に関する調査結果を提供すること。

(4)調査結果の取扱いに関する配慮事項
 調査結果の取扱いについて配慮すべき点は,以下のとおりとする。
ア 調査結果の公表にあたっては,本調査の結果が学力の特定の一部分であることを明示すること。また,数値の公表にあたっては,それにより示される調査結果についての読み取り方を併せて示すこと。
イ 本調査の実施主体が国であることや市町村が基本的な参加主体であることなどにかんがみて,都道府県教育委員会は,域内の市町村及び学校の状況について個々の市町村名・学校名を明らかにした公表は行わないこと。
 また,市町村教育委員会は,上記と同様の理由により,域内の学校の状況について個々の学校名を明らかにした公表は行わないこと。
ウ 市町村教育委員会が,保護者や地域住民に対して説明責任を果たすため,当該市町村における公立学校全体の結果を公表することについては,それぞれの判断にゆだねること。また,学校が,自校の結果を公表することについては,それぞれの判断にゆだねること。
 ただし,本調査により測定できる学力は特定の一部分であることや,学校評価の中で体力なども含めた教育活動の取組の状況等を示し,調査結果の分析を踏まえた今後の改善方策等を併せて示すなど,序列化につながらない取組が必要と考えられること。
エ 都道府県教育委員会が,例えば,教育事務所単位で調査結果を公表するなど個々の市町村名が明らかとならない方法で公表することは可能であると考えられること。
 また,都道府県等が独自に実施する学力調査の公表の取扱いについては,もとよりそれぞれの自治体の判断にゆだねられること。

8.調査実施にあたっての相談体制
(1)学校の設置管理者である市町村教育委員会等においては,所管の学校からの相談に対応するなど適切な指導・助言を行う。

(2)調査実施にあたっての市町村教育委員会,学校等からの問い合わせや調査問題の発送・回収状況の把握・確認等に対応するため,文部科学省が民間機関に委託して,学力調査相談連絡センター(コールセンター)を設置する。

(3)本調査についてインターネット上で相談を行うことを可能とする専用のWebサイトを開設し,教育委員会,学校等との双方向の情報交流を図る。

9.予備調査
 本調査の確実かつ円滑な実施に必要な検討を行うために予備調査を実施する。
(1)調査事項,対象学年等
 本調査に準じる。

(2)対象校
 全国の小学校及び中学校から各々100校程度を選定する。

(3)調査日時
 平成18年11月から12月までの間で,予備調査対象校の行事などの都合を勘案し,実施可能な日において実施する。

(4)その他
ア 予備調査の調査問題及び調査結果の公表は行わないが,予備調査実施後に一部の問題例を公表すること。
イ 個々の児童生徒に対する調査結果の提供は行わないが,当該学校に対しては,学校全体の児童生徒の学力の分布が分かる調査結果を提供する予定であること。
ウ 具体的な実施方法等については,おって予備調査実施マニュアルで示す予定であること。

10.留意事項
(1)各教育委員会,学校等における実施体制等
 本調査を実施するにあたり,以下の体制を整備することとする。
ア 各教育委員会等においては,調査責任者及び担当者を指名するとともに,所管の学校からの相談に対応するなど,適切に実施体制を整備すること。
イ 各学校においては,調査責任者及び担当者を指名し,適切に実施体制を整備すること。
ウ 調査問題や個人情報等の調査に関して知り得た秘密については,各教育委員会,学校等においてその保持を徹底すること。

(2)学校行事による日程の変更等
 本調査は,原則として対象となるすべての学校の協力を得て実施することとしている。ただし,調査実施日に既に修学旅行等の学校行事が予定されており,この学校行事の日程を変更できない特別の事情がある場合は,教育委員会,学校等の判断により,調査実施日以降に別途調査することを可能とする。
 この場合,全体の集計からは除外することとするが,教育委員会,学校等の求めに応じて,採点及び調査結果の提供を行うこととする。

(3)体力・運動能力の状況に関する調査
 文部科学省が定める新体力テスト実施要項に基づく新体力テストを平成18年度に小学校第5学年及び中学校第2学年の児童生徒を対象として実施している学校に対しては,学校に対する質問紙調査において,その測定結果の提供を求めることとする。

(4)障害のある児童生徒に対する配慮
 障害のある児童生徒については,一人一人の障害の種類や程度に応じて,調査時間の延長,点字・拡大冊子の使用,別室の設定などの配慮を行うものとし,詳細については,別途,調査実施マニュアルで示すこととする。

(5)調査問題等の公開
 文部科学省は,本調査を実施後速やかに,調査問題,採点基準,出題のねらい等を公開することとする。

(6)調査により得られる分析データの取扱い
ア 文部科学省は,調査により得られる分析データのうち,公表する内容を除くものについて,以下のような考え方で対応すること。
・ これが一般に公開されることになると,序列化や過度な競争が生じるおそれや参加主体からの協力が得られなくなるなど正確な情報が得られない可能性が高くなり,調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられるため,行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条第6号の規定を根拠として,同法における不開示情報として取り扱うこととする。
イ 教育委員会等においても,提供される調査結果のうち,文部科学省が公表する内容を除く分析データについて,上記を参考に,それぞれの情報公開条例に基づく同様の規定を根拠として,適切に対応する必要があること。

(7)調査実施マニュアルの作成・配付
 本調査の具体的な実施方法等については,平成19年1月に作成・配付を予定している調査実施マニュアルで示す予定である。調査実施マニュアルの主な記載項目は以下のとおりとする。
ア 作業日程
イ 調査の実施体制
ウ 各教育委員会,学校等の連絡体制
エ 問題冊子の体裁・構成及び時間割のモデル案
オ 本調査実施時における具体的な作業手順
カ 障害のある児童生徒に対する具体的な配慮事項
キ 不測の事態への対応



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