● 教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律について(教員免許更新制、指導不適切教員関係) 平成19年7月31日 19文科初第541号



19文科初第541号 平成19年7月31日
各都道府県教育委員会、各指定都市教育委員会、
各都道府県知事、各指定都市市長、各国公私立大学長、
大学を設置する各地方公共団体の長、各公立大学法人の理事長、
放送大学学園理事長、国立教育政策研究所長、
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所理事長、
独立行政法人教員研修センター理事長 宛
文部科学事務次官(銭谷眞美)


   教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律について(通知)


 このたび、「教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律(平成19年法律第98号)」(以下「改正法」という。)が、平成19年6月27日に公布されました。
 このことについては、「学校教育法等の一部を改正する法律、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律及び教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律の公布について」(平成19年7月5日付け19文科初第449号文部科学事務次官通知)において既に通知したとおり、今回の改正法の趣旨は、教育基本法の改正を踏まえ、教員全体への信頼性を高め、全国的な教育水準の向上を図るため、教育職員の免許の更新制の導入及び指導が不適切な教員に対する人事管理について必要な事項の制度化を行うものです。
 改正法の概要及び留意事項は下記のとおりですので、関係する規定の整備等事務処理上遺漏のないよう願います。
 また、各都道府県教育委員会におかれては、域内の市町村教育委員会、市町村長及び所管の学校その他の教育機関に対して、都道府県知事におかれては、所轄の学校及び学校法人等に対して、国立大学長におかれては、その管下の学校に対して、本改正の周知を図るとともに、適切な事務処理が図られるよう配慮願います。
 なお、改正法は、関係資料と併せて文部科学省のホームページに掲載しておりますので、御参照ください。また、関係する政省令の改正については、追ってこれを行い、別途通知する予定ですので、予め御承知おき願います。


                   記


第一 改正法の概要

第1 教育職員免許法の一部改正関係

1 普通免許状及び特別免許状に、10年間の有効期間を定めることとしたこと。(第9条)
2 免許管理者は、普通免許状又は特別免許状の有効期間を、その満了の際、その免許状を有する者の申請により更新することができることとしたこと。(第9条の2第1項)
3 免許管理者は、「2」の申請があった場合には、免許状更新講習の課程を修了した者又は知識技能その他の事項を勘案して免許状更新講習を受ける必要がないものと免許管理者が認めた者である場合に限り、免許状の有効期間を更新するものとしたこと。(第9条の2第3項)
4 やむを得ない事由により免許状更新講習の課程を修了することが困難であると認めるときは、その免許状の有効期間を延長するものとしたこと。(第9条の2第5項)
5 免許状更新講習は、大学等が文部科学大臣の認定を受けて開設することとしたこと。(第9条の3第1項)
6 免許状更新講習の時間は、30時間以上とすることとしたこと。(第9条の3第2項)
7 第2の「1」に定める指導改善研修を命ぜられた者は、その指導改善研修が終了するまでの間は、免許状更新講習を受けることができないこととしたこと。(第9条の3第4項)
8 公立学校の教員が分限免職の処分を受けたときは、その免許状はその効力を失うこととしたこと。(第10条第1項第三号)
9 国立学校又は私立学校の教員が、分限免職の事由に相当する事由により解雇されたと認められるときは、免許管理者は、その免許状を取り上げなければならないこととしたこと。(第11条第2項第一号)
10 栄養教諭免許状の授与要件の軽減措置の対象として、幼稚園、高等学校等において学校給食の栄養に関する専門的事項をつかさどる職員及び教育委員会において学校給食の適切な実施に係る指導を担当する者を追加することとしたこと。(附則第18項)

第2 教育公務員特例法の一部改正関係

1 公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校及び幼稚園(以下「小学校等」という。)の教諭、助教諭及び講師(以下「教諭等」という。)の任命権者は、児童、生徒又は幼児(以下「児童等」という。)に対する指導が不適切であると認定した教諭等に対して、その能力、適性等に応じて、当該指導の改善を図るために必要な事項に関する研修(以下「指導改善研修」という。)を実施しなければならないこととしたこと。(第25条の2第1項)
2 指導改善研修の期間は、1年を超えてはならないこととしたこと。ただし、特に必要があると認めるときは、任命権者は、指導改善研修を開始した日から引き続き2年を超えない範囲内で、これを延長することができることとしたこと。(第25条の2第2項)
3 任命権者は、指導改善研修を実施するに当たり、指導改善研修を受ける者の能力、適性等に応じて、その者ごとに指導改善研修に関する計画書を作成しなければならないこととしたこと。(第25条の2第3項)
4 任命権者は、指導改善研修の終了時において、指導の改善の程度に関する認定を行わなければならないこととしたこと。(第25条の2第4項)
5 任命権者は、指導が不適切であることの認定及び指導改善研修終了時の指導の改善の程度に関する認定を行うに当たっては、教育委員会規則で定めるところにより、教育学、医学、心理学その他の児童等に対する指導に関する専門的知識を有する者及び当該都道府県又は市町村の区域内の保護者(親権を行う者及び未成年後見人をいう。)(以下「専門家等」という。)の意見を聴かなければならないこととしたこと。(第25条の2第5項)
6 「5」のほか、事実の確認の方法その他指導が不適切であることの認定及び指導改善研修終了時の指導の改善の程度に関する認定の手続に関し必要な事項は、教育委員会規則で定めるものとしたこと。(第25条の2第6項)
7 上記「1」から「6」までのほか、指導改善研修の実施に関し必要な事項は、政令で定めることとしたこと。(第25条の2第7項)
8 任命権者は、指導改善研修終了時の指導の改善の程度に関する認定において指導の改善が不十分でなお児童等に対する指導を適切に行うことができないと認める教諭等に対して、免職その他の必要な措置を講ずるものとしたこと。(第25条の3)
9 指定都市以外の市町村の教育委員会については、当分の間、指導改善研修に関する規定を適用しないこととしたこと。この場合において、当該教育委員会は、所管の小学校等の教諭等のうち、児童等に対する指導が不適切であると認める教諭等であってその任命権が当該教育委員会に属する者に対して、指導改善研修に準ずる研修その他必要な措置を講じなければならないこととしたこと。(附則第6条)

第3 改正法附則関係

1 この法律は、平成20年4月1日から施行することとしたこと。ただし、栄養教諭免許状の授与要件の軽減措置に係る改正規定については公布日から、普通免許状及び特別免許状に有効期間を定め更新制を導入することに係る改正規定については平成21年4月1日から、それぞれ施行することとしたこと。(改正法附則第1条)
2 この法律の施行前に授与されている普通免許状又は特別免許状を有する者については、その者の有する免許状には、有効期間の定めがないものとしたこと。(改正法附則第2条第1項)
3 「2」の免許状を有する教育職員その他教育の職にある者は、免許状更新講習の課程の修了確認を、文部科学省令で定める日及びその後10年ごとの日までに、受けなければならないこととしたこと。(改正法附則第2条第2項、第3項)
4 「2」の免許状を有する教育職員その他教育の職にある者が、「3」の日までに免許状更新講習の修了確認を受けなかった場合には、その者の有する免許状はその効力を失うこととしたこと。(改正法附則第2条第5項)
5 その他この法律の施行に伴う所要の経過措置について規定したこと。(改正法附則第2条第6項から第7条)
6 教育公務員特例法の一部改正に伴い、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)の一部を次のように改正することとしたこと。(改正法附則第12条)
(1)指定都市の県費負担教職員に対する指導改善研修は、当該指定都市の教育委員会が行うこととしたこと。(地教行法第58条)
(2)中核市の県費負担教職員に対する指導改善研修は、当該中核市の教育委員会が行うこととしたこと。(地教行法第59条)
 ただし、地教行法第59条の規定にかかわらず、当分の間、当該中核市を包括する都道府県の教育委員会が指導改善研修を実施しなければならないこととしたこと。(地教行法附則第27条)
7 この法律の施行に伴い、関係法律に関し、所要の規定の整備を行うこととしたこと。(改正法附則第9条から第19条(改正法附則第12条を除く。))


第二 留意事項

第1 教育職員免許法の一部改正関係

 教育職員免許法の一部改正に係る留意事項については、今後、教育職員免許法関係省令の改正等を行う際、その内容等とあわせて別途通知する予定であること。

第2 教育公務員特例法の一部改正関係

1 総括的な事項について
(1)第25条の2及び第25条の3の措置の公正かつ適正な運用について
 第25条の2及び第25条の3の措置は、全国的な教育水準の確保の観点から、指導が不適切な教員に対する人事管理に関する所要の手続について法律上規定したものであり、その趣旨を踏まえ、各任命権者においては、指導が不適切な教員に対する人事管理システムのより一層公正かつ適正な運用に努めること。
(2)第25条の2及び第25条の3の措置と分限処分との関係について
 @ 第25条の2及び第25条の3の措置が設けられたことにより、分限処分の要件には何ら変更が生ずるものではないこと。
 A 第25条の2及び第25条の3の措置は、児童生徒への指導が不適切な教員が指導に当たることがないよう、各任命権者が、より適切に対応することができるようにする趣旨から設けられたものであり、教員として適格性に欠ける者や勤務実績が良くない者等、分限免職、分限降任又は分限休職に該当する者(地方公務員法第28条第1項各号又は第2項各号に該当する者)については、当該処分を的確かつ厳正に行うべきであること。
 B 指導を適切に行うことができない原因が、精神疾患に基づく場合には、本措置の対象にはならないものであって、医療的観点に立った措置や分限処分等によって対応すべきものであること。
(3)教育委員会規則の制定又は改正について
 各任命権者においては、第25条の2第5項及び第6項において教育委員会規則で規定することとなっている事項のほか、指導が不適切な教員に対する人事管理システムに関し必要と認める事項があれば、教育委員会規則に規定すること。
 なお、文部科学省においては、指導が不適切な教員に対する人事管理システムに関するガイドラインを作成し、各任命権者の参考となるよう、情報提供を行う予定であること。

2 「指導が不適切である」ことの認定について(第25条の2第1項関係)
 第25条の2第1項の「指導が不適切である」ことに該当する場合には、様々なものがあり得るが、具体的な例としては、下記のような場合が考えられること。
 各教育委員会においては、これらを参考にしつつ、教育委員会規則で定める手続に従い、個々のケースに則して適切に判断すること。
 @ 教科に関する専門的知識、技術等が不足しているため、学習指導を適切に行うことができない場合(教える内容に誤りが多かったり、児童等の質問に正確に答え得ることができない等)
 A 指導方法が不適切であるため、学習指導を適切に行うことができない場合(ほとんど授業内容を板書するだけで、児童等の質問を受け付けない等)
 B 児童等の心を理解する能力や意欲に欠け、学級経営や生徒指導を適切に行うことができない場合(児童等の意見を全く聞かず、対話もしないなど、児童等とのコミュニケーションをとろうとしない等)

3 指導改善研修について(第25条の2第1項関係)
 第25条の2第1項において、任命権者に対して、指導改善研修をしなければならない義務の対象としているのは、公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校及び幼稚園の教諭、助教諭及び講師としていること。
 校長、園長、副校長、副園長、教頭、主幹教諭、指導教諭、養護教諭、栄養教諭及び養護助教諭等については、任命権者に対して指導改善研修の実施を義務付ける対象から除いているが、このことは、各任命権者において必要があれば、これらの者に対して指導改善研修を実施することを妨げるものではないこと。
 また、指導が不適切であると認定された教員が、指導改善研修を受講している期間中において、当該教員が、地方公務員法第28条第1項各号又は第2項各号に該当する場合には、当該教員に対し分限処分を行うことは妨げられないこと。
 なお、地方公務員法第29条第1項の規定による停職中の者に対して、指導改善研修の受講を命ずることはできないこと。

4 指導改善研修の実施期間について(第25条の2第2項関係)
 第25条の2第2項の「特に必要があると認めるとき」とは、当初に定められた指導改善研修の期間の終了時において、再度研修を行うことにより当該教諭の指導の改善の余地が見込まれる場合を想定していること。なお、指導改善研修の実施期間に関し、必要がある場合には、教育委員会規則等の見直しを行うこと。

5 指導改善研修に関する計画書について(第25条の2第3項関係)
 第25条の2第3項の計画書の作成に当たっては、指導が不適切であることの内容や程度等が様々であることから、画一的な研修ではなく、個々の教員が抱えている問題の内容や程度等に応じた研修を実施するようにすること。

6 指導が不適切な教員の認定の手続について(第25条の2第5項関係)
 第25条の2第5項により、各任命権者は、教育委員会規則において、専門家等からの意見聴取に関して必要な事項について規定する必要があること。
 「その他児童等に対する指導に関する専門的知識を有する者」としては、退職教員、地域の校長会関係者、地域の教育長協議会関係者などを想定していること。
 任命権者は、専門家等の意見を参考としつつ、最終的には、自らの権限と責任に基づいて、公正かつ適正に指導が不適切な教員の認定を行うこと。
 指導が不適切な教員の認定における専門家等からの意見聴取に当たっては、総合的に審査・調整する必要があることや認定作業の迅速化を図ることから、会議を実施してこれらの者から意見聴取するよう努めること。
 なお、専門家等は、教職員の人事等に関する情報を知りうる立場にあることから、一般職の公務員と同様に、任期中及び任期終了後において守秘義務を負うことが必要であるため、各任命権者は、教育委員会規則に、専門家等からの意見聴取に関して必要な規定を整備する際に、あわせて守秘義務に関する規定を設けること。

7 認定の手続に関する教育委員会規則について(第25条の2第6項関係)
 第25条の2第6項により、指導が不適切な教員の認定や指導改善研修等が公正かつ適正に実施されるよう、教育委員会規則において、事実の確認の方法や認定の手続に関し必要な事項を定めるに当たっては、あわせて対象となる教員本人から書面又は口頭により意見を聴取する機会を設けることについての規定を設けること。
 「事実の確認の方法」については、各任命権者において適切に規定すべきものであるが、例えば、学校での指導の実態、児童生徒又は保護者等からの苦情等の記録、校長の注意等の改善方策の成果などについて、校長等による日常的な観察、指導主事等が学校訪問した際の観察又は事情聴取などの方法を想定している。
 また、「その他認定に必要な手続」については、同様に、各任命権者において適切に規定すべきものであるが、例えば、
 @ 校長から任命権者に対して行う、指導が不適切な教員に関する報告及び指導が不適切な教員に対する人事管理システムへの申請の手続、
 A 専門家等の意見聴取を含めた、指導が不適切な教員の認定の手続、
 B 専門家等の意見聴取を含めた、指導改善研修終了時における認定の手続、
などを想定している。
 なお、県費負担教職員については、服務監督権者である市町村教育委員会は、校長から指導が不適切と思われる教員について報告を受けた場合、適切な指導・助言を行うとともに、必要があると判断した時は、任命権者である都道府県教育委員会に対して指導が不適切な教員に対する人事管理システムへの申請を行うようにすること。

8 政令で定める事項について(第25条の2第7項関係)
 第25条の2第7項の政令で定める事項については、指導改善研修の対象から除く者を定めることを予定していること。

9 指導改善研修後の措置について(第25条の3関係)
 「免職その他の必要な措置」について、「免職」とは、地方公務員法第28条第1項による「免職」を指し、「その他の必要な措置」とは、地教行法第47条の2第1項による「県費負担教職員の免職及び都道府県の職への採用」、地方公務員法第17条第1項の「転任」、指導改善研修の「再受講」などを想定していること。

10 附則第6条について
 指定都市以外の市町村の教育委員会において、当該教育委員会が任命権を有する教諭等(幼稚園の教諭等を含む。)の中に児童等に対する指導が不適切な者がいる場合には、当該市町村教育委員会も第25条の2及び第25条の3の「任命権者」に該当し、第25条の2及び第25条の3の措置を講じなければならないこととなる。
 しかし、現在、指定都市以外の市町村の教育委員会においては、必ずしも指導が不適切な教員の人事管理システムが十分に整備されているわけではなく、その整備には一定の期間を要するものと考えられる。
 このことから、附則第6条においては、指導が不適切な教員の人事管理システムが整備されるまでの間、第25条の2第1項の指導改善研修に代えて「これに準ずる研修その他必要な措置」を講ずるよう義務付けたものであること。
 「これに準ずる研修その他必要な措置」とは、例えば、都道府県や他の市町村で実施している指導改善研修への参加の要請及び派遣、大学等への派遣などを想定している。

11 地教行法附則第27条について
 現在、中核市の県費負担教職員の研修については中核市教育委員会が実施することとなっているため、本来、指導改善研修についても、中核市教育委員会が実施することが求められる。
 しかし、現在、中核市においては、必ずしも指導が不適切な教員の人事管理システムが十分に整備されているわけではなく、その整備には一定の期間を要するものと考えられる。
 このことから、地教行法附則第27条においては、中核市において指導が不適切な教員の人事管理システムが整備されるまでの間、当該指導改善研修は、当該中核市を包括する都道府県教育委員会が実施することとし、それに対して、同法第45条第2項の規定に基づき、中核市は協力しなければならない義務を負うこととしたものであること。


(初等中等教育局初等中等教育企画課)







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