● 高等学校における生徒への懲戒の適切な運用について 平成20年3月10日 19初児生第37号



19初児生第37号 平成20年3月10日
各都道府県教育委員会担当課長、各指定都市教育委員会担当課長、各都道府県私立学校主管課長、附属学校を置く各国立大学法人学長 宛
文部科学省初等中等教育局児童生徒課長


     高等学校における生徒への懲戒の適切な運用について(通知)


 生徒への懲戒については、これまでも「児童生徒の規範意識の醸成に向けた生徒指導の充実について」(平成18年6月5日付け文部科学省初等中等教育局児童生徒課長通知)や「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」(平成19年2月5日付け文部科学省初等中等教育局長通知)等を通じて、その適切な運用を図るようお願いしてきたところです.
 学校における生徒指導の充実を因るには、日頃から、児童生徒が抱える問題の早期発見・早期対応に努めるとともに、問題行動を起こす児童生徒に対しては、必要に応じて懲戒を含めた措置を講じるなど、毅然とした指導を行っていくことが重要です。
 一方で、高等学校における生徒への懲戒について、その内容および運用に関して、社会通念上の妥当性の確保についての懸念があるとの指摘がなされているところであり(別添「規制改革推進のための第2次答申」参照)、各教育委員会及び学校は、下記事項に留意の上、適切な運用を行っていただくようお顕いします。
 なお、都道府県・指定都市教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等に対して、都道府県私立学校主管課にあっては所管の私立学校に対して、この趣旨について周知していただくとともに、適切な対応がなされるよう御指導をお願いします。


                      記


1 高等学校における取組について

(1)生徒への懲戒に関する基準を含め、生徒指導上の対応に関する基準やきまり、指導方針等について、あらかじめ明確化し、これを生徒や保護者等に周知し、生徒の自己指導能力の育成を期するとともに、家庭等の理解と協力を得るよう努めること。

(2)懲戒に関する基準等の適用及び具体的指導について、教職員間の共通理解を図り、学校全体としての一貫した指導を進めるとともに、その運用の状況や効果等について、絶えず点検・評価を行うよう努めること。その際、社会通念に照らし、より効果的な運用の観点から、必要な場合には、その見直しについても適宜検討すること。

(3)懲戒に関する基準等に基づく懲戒・指導等の実施に当たっては、その必要性を判断の上、十分な事実関係の調査、保護者を含めた必要な連絡や指導など、適正な手続きを経るよう努めること。

2 高等学校を所管する教育委員会における取組について

(1)各学校における懲戒に関する基準等に基づく懲戒・指導等の実施が、社会通念上妥当性を欠くものとならないようにするため、事実行為としての懲戒の意義の理解とその適正な運用を含め、参考事例等の情報を提供し、留意点等を示すことにより、これらの適正な運用のための条件整備等を推進すること。

(2)各学校における懲戒・指導等の実態について、より一層の把握に努め、適切な運用を図るよう指導していくこと。




------------------------------------------------------------
別添


規制改革推進のための第2次答申(平成19年12月25日規制改革会議)<抜粋>


U.各重点分野における規制改革
1 安心と豊かさの実現
(3)教育・研究分野
B 懲戒処分の不適切な運用の是正

【問題意識】
 生徒に対する懲戒のうち、退学、停学、訓告の処分については、学校教育法に基づき、懲戒権者としての校長の教育的見地に基づく広範な裁量に委ねられているが、その場合においても当該懲戒権の行使が社会通念上いちじるしく妥当性を欠くものであってはならないことは当然のことである。
 学校教育法及び学校教育法施行規則により懲戒のうち退学及び停学の適用において一定の制限が課されている学齢児童又は学齢生徒とは異なり、高等学校の生徒に対する懲戒については、学則・学校管理規則等に規定されていることが多いが、その内容及び運用について、社会通念上の妥当性が確保されているかは必ずしも検証されていない実態にあると考えられる。
 教育的な見地から一定の懲戒が必要なことは異論のないところである。このため、国においては、懲戒の適切な運用を含め生徒指導が適切に行われるよう、周知を行っているところである。また、学校に裁量と権限を委ねるべきという基本的な考え方からも校長の裁量権を必要以上に奪うべきではないと考える。しかし、教育現場において懲戒を含めた適切な生徒指導がなされることは大切なことであり、このことが徹底されるよう対策を講じることが重要である。
 これらを踏まえ、当面、以下の措置を早急に講ずるべきである。

【具体的施策】
 高等学校の生徒に対する自主退学、自宅謹慎、学校内謹慎、訓告等の懲戒については、例えば、解除の基準が明らかでない無期限の自宅謹慎が事前に十分な説明のないままなされる等、社会通念上妥当性を欠くものであってはならず、生徒の個々の状況に十分留意してあくまでも法令に基づき可能な範囲内で行われるべきものである。
 教育現場においてこのようなことが徹底されるよう、高等学校段階における懲戒状況等について各都道府県教育委員会において一層の実態把握に努めるべきである。【平成20 年中に措置】



Copyright© 執筆者,大阪教育法研究会