● 学校教育法施行規則の一部を改正する省令の制定並びに幼稚園教育要領の全部を改正する告示、小学校学習指導要領の全部を改正する告示及び中学校学習指導要領の全部を改正する告示等の公示について 平成20年3月28日 19文科初第1357号



19文科初第1357号 平成20年3月28日
各都道府県教育委員会、各指定都市教育委員会、各都道府県知事、
各指定都市市長、附属学校を置く各国立大学長 宛
文部科学事務次官(銭谷眞美)


    学校教育法施行規則の一部を改正する省令の制定並びに幼稚園教育要領
    の全部を改正する告示、小学校学習指導要領の全部を改正する告示及び
    中学校学習指導要領の全部を改正する告示等の公示について(通知)


 このたび、平成20年3月28日文部科学省令第5号をもって、別添のとおり学校教育法施行規則の一部を改正する省令(以下「改正省令」という。)が制定され、また、文部科学省告示第26号、第27号、第28号をもって、それぞれ別添のとおり、幼稚園教育要領の全部を改正する告示(以下「新幼稚園教育要領」という。)、小学校学習指導要領の全部を改正する告示(以下「新小学校学習指導要領」という。)及び中学校学習指導要領の全部を改正する告示(以下「新中学校学習指導要領」という。)が公示されました。
 改正省令のうち学校教育法施行規則によらないで教育課程を編成することができることに関する規定及び当該規定に関する告示は平成20年4月1日から、新幼稚園教育要領は平成21年4月1日から、改正省令のうち上記以外の小学校関係部分及び新小学校学習指導要領は平成23年4月1日から、改正省令のうち上記以外の中学校関係部分、新中学校学習指導要領及び改正省令の施行に伴う文部科学省関係告示の整備に関する告示(以下「整備告示」という。)のうち第一関係は平成24年4月1日から施行されます。
 今回の改正は、教育基本法及び学校教育法の改正を受け、これらにおいて明確にされた教育の目的及び目標に基づき、平成20年1月17日の中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」(以下「答申」という。)を踏まえ、幼稚園、小学校、中学校の教育課程の基準の改善を図ったものです。本改正の概要及び留意事項は下記のとおりですので、十分に御了知いただき、これらに基づく適切な教育課程の編成・実施及びこれらに伴い必要となる教育条件の整備を行うようお願いします。
 また、各都道府県教育委員会におかれては、域内の市町村教育委員会及び所管の学校その他の教育機関に対して、各都道府県知事におかれては、所轄の学校及び学校法人等に対して、国立大学長におかれては、その管下の学校に対して、本改正の内容について周知を図るとともに、必要な指導等をお願いします。
 なお、本通知については、関係資料と併せて文部科学省のホームページに掲載しておりますので、御参照ください。

                    記

1.改正の概要

(1)幼稚園、小学校及び中学校の教育課程の基準の改善の基本的な考え方
 今回の教育課程の基準の改善は、教育基本法及び学校教育法の改正を受け、これらにおいて明確となった教育の目的及び目標に基づき、答申を踏まえ、次の方針に基づき行ったものであること。
@ 教育基本法改正等で明確となった教育の理念を踏まえ、「生きる力」を育成すること
・ 「知識基盤社会」の時代においてますます重要となる「生きる力」という理念を継承し、また、「生きる力」を支える「確かな学力」、「豊かな心」、「健やかな体」の調和を重視したこと。
・ 教育基本法及び学校教育法の改正により明確となった教育の理念を踏まえ、学校教育においては、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し、公共の精神を尊び、他国を尊重し、国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献する主体性ある日本人を育成することを明確にしたこと。これを踏まえ、伝統や文化に関する教育や道徳教育、体験活動、環境教育等を充実したこと。
A 知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視すること
・ 各教科、道徳、外国語活動、総合的な学習の時間及び特別活動(中学校にあっては外国語活動を除く。)(以下「各教科等」という。)において、基礎的・基本的な知識・技能の習得を重視した上で、観察・実験やレポートの作成、論述など知識・技能の活用を図る学習活動を充実し、思考力・判断力・表現力等の育成を重視したこと。
・ あらゆる学習の基盤となる言語に関する能力について、国語科のみならず、各教科等においてその育成を重視したこと。
・ これらの学習を充実するため、国語、社会、算数・数学、理科及び外国語等の授業時数を増加したこと。
・ これらの学習や勤労観・職業観を育てるためのキャリア教育などを通じ、学習意欲を向上するとともに、学習習慣の確立を図るものとしたこと。
B 道徳教育や体育などの充実により、豊かな心や健やかな体を育成すること
・ 体験活動を活用しながら、道徳教育や体力の向上についての指導、安全教育や食育などを発達の段階に応じ充実し、豊かな心や健やかな体の育成を図るものとしたこと。

(2)授業時数等の教育課程の基本的枠組み
 小学校及び中学校等の各教科等の授業時数を以下のとおりに変更し、総授業時数を増加するとともに、小学校の教育課程に外国語活動を加えたこと。

@ 小学校
  区分    第1学年 第2学年 第3学年 第4学年 第5学年 第6学年
各教科の授業時数
   国語     306   315   245   245   175   175
   社会               70    90   100   105
   算数     136   175   175   175   175   175
   理科               90   105   105   105
   生活     102   105
   音楽      68    70    60    60    50    50
   図画工作    68    70    60    60    50    50
   家庭                        60    55
   体育     102   105   105   105    90    90
道徳の授業時数    34    35    35    35    35    35
外国語活動の授業時数                   35    35
総合的な学習の時間           70    70    70    70
の授業時数
特別活動の授業時数  34    35    35    35    35    35
総授業時数     850   910   945   980   980   980

注1 この表の授業時数の1単位時間は、45分とする。
 2 特別活動の授業時数は、小学校学習指導要領で定める学級活動(学校給食に係るものを除く。)に充てるものとする。

A 中学校
  区分    第1学年 第2学年 第3学年
各教科の授業時数
  国語      140   140   105
  社会      105   105   140
  数学      140   105   140
  理科      105   140   140
  音楽       45    35    35
  美術       45    35    35
  保健体育    105   105   105
  技術・家庭    70    70    35
  外国語     140   140   140
道徳の授業時数    35    35    35
総合的な学習の時間  50    70    70
の授業時数
特別活動の授業時数  35    35    35
総授業時数     1015   1015   1015

注1 この表の授業時数の1単位時間は、50分とする。
 2 特別活動の授業時数は、中学校学習指導要領で定める学級活動(学校給食に係るものを除く。)に充てるものとする。

(3)幼稚園における主な改善事項
・ 幼稚園及び小学校の円滑な接続を図るため、規範意識や思考力の芽生えなどに関する指導を充実するとともに、幼稚園と小学校との連携に関する取組を充実したこと。
・ 幼稚園と家庭の連続性を確保するため、幼児の家庭での生活経験に配慮した指導や保護者の幼児期の教育の理解を深めるための活動を充実したこと。
・ 教育課程に係る教育時間の終了後等に行う教育活動の具体的な留意事項を示すとともに、子育ての支援の具体的な活動を例示したこと。

(4)小・中学校における主な改善事項
@ 言語活動の充実
・ 言語は、知的活動やコミュニケーション、感性・情緒の基盤である。このため、国語科における読み書きなどの基本的な力の定着を図るとともに、各教科等における記録、説明、論述、討論といった学習活動を充実したこと。
A 理数教育の充実
・ 科学技術の土台である理数教育の充実を図るため、国際的な通用性、内容の系統性、小・中学校での学習の円滑な接続を踏まえて、指導内容を充実したこと。
B 伝統や文化に関する教育の充実
・ 国際社会で活躍する日本人の育成を図るため、各教科等において、我が国や郷土の伝統や文化を受け止め、それを継承・発展させるための教育を充実したこと。
・ 具体的には、国語科での古典、社会科での歴史学習、音楽科での唱歌・和楽器、美術科での我が国の美術文化、保健体育科での武道の指導などを充実したこと。
C 道徳教育の充実
・ 道徳教育は、道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行うものであることを明確化したこと。
・ 発達の段階に応じて指導内容を重点化し、体験活動を充実したこと。
・ 道徳教育推進教師(道徳教育の推進を主に担当する教師)を中心に、全教師が協力して道徳教育を展開することを明確化したこと。
・ 先人の伝記、自然、伝統と文化、スポーツなど、児童生徒が感動を覚える教材を活用することとしたこと。
D 体験活動の充実
・ 児童生徒の社会性や豊かな人間性をはぐくむため、その発達の段階に応じ、集団宿泊活動や自然体験活動(小学校)、職場体験活動(中学校)を重点的に推進することとしたこと。
E 外国語教育の充実
・ 積極的にコミュニケーションを図る態度を育成し、言語・文化に対する理解を深めるために、小学校高学年に外国語活動を導入したこと。
・ 中学校においては、コミュニケーションの基盤となる語彙数を充実するとともに、聞く・話す・読む・書くを総合的に行う学習活動を充実したこと。

(5)学校教育法施行規則等によらない教育課程の編成
 これまで内閣総理大臣の認定により構造改革特別区域研究開発学校設置事業として行われてきた、学校教育法施行規則等によらないで教育課程の編成を可能とする特例について、文部科学大臣の指定により可能としたこと。

2.留意事項

(1)移行措置期間の特例
 平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間における現行の小学校学習指導要領(平成10年文部省告示第175号)及び平成21年4月1日から平成24年3月31日までの間における現行の中学校学習指導要領(平成10年文部省告示第176号)の必要な特例については、追ってこれを告示し、別途通知する予定であること。

(2)入学者選抜における学力検査
 平成23年度以降に実施する中学校の入学者選抜における学力検査については、新小学校学習指導要領に定める各教科の内容が出題範囲となるよう配慮すること。また、平成24年度以降に実施する高等学校の入学者選抜における学力検査については、新中学校学習指導要領に定める各教科の内容が出題範囲となるよう配慮すること。
 また、中学校及び高等学校の入学者選抜に当たっては、新学習指導要領の趣旨を踏まえ、基礎的・基本的な知識・技能の習得とともに、思考力・判断力・表現力等についてもバランスよく問うことに留意し、知識・技能を活用する力に関する出題の充実に配慮すること。

(3)教育条件の整備
 答申において指摘されているとおり、新学習指導要領の理念の実現のためには、個々の児童生徒に応じたきめ細かい指導が必要であり、これまで以上に教師が子どもと向き合う時間を確保する必要があること。
 このため、指導体制の充実のほか、外部人材の活用、学校の事務負担の軽減、ICT環境の整備、教員研修、教材、学校図書、学校の施設・設備の充実などを図る必要があること。

(4)新学習指導要領の周知・徹底
 新学習指導要領の理念が各学校において実現するためには、各学校の教職員が新学習指導要領の理念や内容についての理解を深める必要がある。このため、文部科学省としては平成20年度に集中的に周知・徹底を図ることとしており、各教育委員会等においても、新学習指導要領に関する説明会や研修会を開催するなど、教職員に対して周知・徹底を図ること。
 また、学習指導要領は大綱的な基準であることから、その記述の意味や解釈などの詳細については、文部科学省が作成・公表する学習指導要領解説において説明することを予定している。このため、学習指導要領解説を活用して、教職員が学習指導要領についての理解を深められるよう周知・徹底を図ること。

(5)地域との連携・協力の推進
 答申において指摘されているとおり、地域全体で学校教育を支援するため、「学校支援地域本部」など学校と地域との連携体制の構築を図るとともに、学校内外の教育活動の緊密な連携を図ることが重要である。
 このため、地域住民等の幅広い参画を得て、地域全体で学校教育を支援する体制の構築を図ること。また、学校外の取組については「放課後子ども教室」などの実施により、児童生徒に必要な様々な活動の機会の提供に努めるとともに、実施に当たっては、学校教育との緊密な連携及び児童の安全の観点からも余裕教室をはじめ学校諸施設の積極的な活用を図ること。

〔参考〕文部科学省ホームページアドレス
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm
(ホーム>教育>小・中・高校教育に関すること>新しい学習指導要領)




Copyright© 執筆者,大阪教育法研究会