● 「平成22年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」結果について 平成23年8月4日 23初児生第21号



23初児生第21号 平成23年8月4日
各都道府県教育委員会指導事務主管部課長、各都道府県私立学校主管部課長、附属学校を置く各国立大学法人の長、株式会社立学校を認定した各市町村担当部課長 宛
文部科学省初等中等教育局児童生徒課長


「平成22年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」結果について(通知)


 標記の調査については、毎年度御協力を頂いているところですが、このたび、暴力行為、いじめ、出席停止、小・中・高等学校における不登校、高等学校における中途退学、自殺及び教育相談の各状況について、平成22年度の調査結果(ただし、岩手県、宮城県、福島県を除く。)を取りまとめましたので、別添のとおり送付させていただきます。
 平成22年度の調査結果では、暴力行為の発生件数が約5万9千件にのぼることや、いじめの認知件数が約7万5千件と増加していること、高等学校における不登校生徒数が約5万3千人と増加したことなど、生徒指導上憂慮すべき状況が見られます。
 貴職におかれては、下記の点に御留意の上、都道府県教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等(指定都市教育委員会を含む。)に対し、都道府県にあっては所轄の私立学校に対し、国立大学法人にあっては附属学校に対し、株式会社立学校を認定した市町村担当部課にあっては認可した学校に対し、調査結果等を連絡するとともに、生徒指導の一層の充実を図るよう対応をお願いいたします。


                   記


1.暴力行為への対応について
(1)暴力行為への取組の徹底について
 今回の調査結果からは、暴力行為の発生件数が依然として高い水準で推移していることに加え、被害者が病院で治療を受けた場合の件数が約1万1千件と相当数に上るなどの憂慮すべき状況が見られる。教育委員会等及び学校にあっては、「問題を起こす児童生徒に対する指導について」(平成19年2月5日付け文部科学省初等中等教育局長通知)や、「生徒指導提要」(平成22年3月文部科学省)の考え方に基づき、教職員が一体となって、未然防止と早期発見・早期対応の取組や家庭・地域社会などの理解を得て地域ぐるみで取り組めるような体制を推進すること。
 また、暴力行為など問題行動を繰り返す児童生徒に対しては、警察等の関係機関と連携した取組を推進し、毅然とした指導を粘り強く行うなど的確な対応をとる必要があること。

(2)暴力行為の実態把握の取組について
 本調査については、統計法に基づき内閣府に設置された統計委員会の答申において、「客観的な基準の設定等、統計の比較性向上策について検討」するよう求められており、このことも踏まえて文部科学省では、本調査の実施に当たって都道府県間で「計上の仕方」による開きが生じないよう、「調査の手引」を作成・配付した上で、教育委員会等に対してより適切な実態把握を行うよう求めているところである。
 しかしながら、暴力行為の発生件数に対する被害者が病院で治療を受けた件数の割合を見ると、最も高い都道府県の46.0%と最も低い都道府県の14.4%との間で約3.2倍の開きがみられ、暴力行為の「計上の仕方」に未だばらつきが生じていると考えられる。
 このことから、教育委員会等にあっては、各学校に対して、再度、調査項目の基準や例示を徹底するとともに、各学校の担当者等を集めて「調査の手引」等を活用した説明会を開催するなど、必要な指導・助言に努めること。

2.いじめの問題への対応について
(1)いじめの問題への取組の徹底について
 いじめの問題への取組の基本として、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的・物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。」とするいじめの定義と、個々の行為がいじめに当たるか否かの判断を、表面的・形式的に行うことなくいじめられた児童生徒の立場に立って行うことが原則であることの二点を再度徹底する必要があること。
 また、いじめの問題への対応は、「いじめの問題への取組の徹底について」(平成18年10月19日付け文部科学省初等中等教育局長通知)や「生徒指導提要」(平成22年3月文部科学省)の考え方に基づき、学校においていじめを把握した場合には、学校のみで解決することに固執することなく、速やかに保護者及び教育委員会等に報告し適切な連携を図ること。
 さらに、「いじめは人間として絶対に許されない」との意識を学校教育全体を通じて児童生徒一人一人に徹底するとともに、いじめる児童生徒に対しては、毅然とした対応と粘り強い指導が必要であること。

(2)いじめの実態把握の取組について
 今回の調査結果からは、いじめを認知した学校と認知していない学校との間で、依然としていじめの実態把握のための取組に差が見られることから、学校がいじめを認知できていないケースがあるのではないかと懸念される。
 いじめの問題への取組の基本である早期発見・早期対応の前提条件となるいじめの実態把握については、各学校は、いじめはどの学校でもどの子どもにも起こり得るものであることを、再度、認識し、定期的に児童生徒から直接状況を聞く機会を確実に設ける必要がある。その手法として、各学校において「アンケート調査」を実施することを「「平成21年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」結果について」(平成22年9月14日付け本職通知)により求めているところであるが、この点については「「いじめの問題への取組状況に関する緊急調査」結果について」(本年1月20日付け本職通知)において一層の取組が求められる状況が見られた。これらの調査結果も踏まえ、アンケート調査の一層の充実を図るとともに、これに加えて、各学校の実情に応じて、「個別面談」、「個人ノートや生活ノートといったような教職員と児童生徒との間で日常行われている日記等の活用」など、更に必要な取組を充実させること。
 また、教育委員会等は、所管の学校におけるいじめの実態把握の取組状況を点検し、引き続き全ての学校に対して「アンケート調査」の実施を求めるとともに、更なる取組を行うよう必要な指導・助言に努めること。

3.高等学校における不登校に対する取組の充実について
 今回の調査結果からは、高等学校の在籍生徒数が減少しているにも関わらず、不登校生徒数が増加していることなどの憂慮すべき状況がみられる。
 高等学校における不登校生徒への対応は、「不登校児童生徒の対応の在り方について」(平成15年5月16日付け文部科学省初等中等教育局長通知)、「高等学校における不登校生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の対応について」(平成21年3月12日付け文部科学省初等中等教育局長通知)等に基づき、学校や教育委員会等は、学校における指導体制を充実するとともに学校教育を一層充実すること。特に、特色ある高等学校づくりなどの取組の中で、小・中学校において不登校を経験した生徒が進学しやすい単位制などの高等学校を設けている場合には、例えば、きめ細かな相談体制を整備する、生徒本人のみならず家庭への適切な働きかけや支援を行うなど、当該高等学校における不登校生徒に対する、未然防止や早期発見・早期対応につながる適切な支援の一層の充実を図ること。




Copyright© 執筆者,大阪教育法研究会