● いじめ、学校安全等に関する総合的な取組方針〜子どもの「命」を守るために〜 平成24年9月5日 文部科学省



いじめ、学校安全等に関する総合的な取組方針
〜子どもの「命」を守るために〜
平成24年9月5日
文部科学省


はじめに
第1 いじめの問題への対応強化
T 基本的考え方
U 基本的考え方に基づくアクションプラン
1.学校・家庭・地域が一丸となって子どもの生命を守るための国の取組
2.学校・教育委員会等との連携を強化するための国の取組
3.いじめの早期発見と適切な対応を促進するための国の取組
4.学校と関係機関の連携を促進するための国の取組

第2 学校安全の推進
T 基本的考え方
U 基本的考え方に基づくアクションプラン
1.学校安全に関する教育を充実するための国の取組
2.地域コミュニティの拠点としての学校施設・設備を整備充実するための国の取組
3.学校における安全管理を推進するための国の取組
4.地域社会、家庭との連携体制を構築するための国の取組

第3 体育活動中の安全確保
T 基本的考え方
U 基本的考え方に基づくアクションプラン
1.国・教育委員会・学校等の連携によって指導者の資質向上を図るための国の取組
2.学校と地域が連携して体育活動への外部指導者の参加を進めるための国の取組
3.事故の発生要因の分析等を進め、スポーツ医科学の活用による最新の知識を広げていくための国の取組
4.施設・設備の整備による安全な体育活動環境の整備を進めるための国の取組


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はじめに

 いじめは、決して許されないことであり、その兆候をいち早く把握し、迅速に対応することが必要です。しかしながら現実的には、どの学校でもどの子どもにも起こり得るものです。
 このため、文部科学省ではこれまで、学校や教育委員会等に対し、いじめの問題への取組の徹底を要請してきましたが、最近においても、いじめが背景事情として認められる生徒の自殺事案など、子どもの生命・身体の安全が損なわれるような痛ましい事案がなお発生しております。
 これらの事案の中には、学校や教育委員会におけるいじめの兆候の把握や対応が不適切であったものも見られるところであり、また、国においても、いじめについての実態把握や対応について、学校や教育委員会の主体的な取組に期待し、受け身の対応となっていたところにも課題があったところです。
 また、こうした課題は、いじめの問題だけでなく、学校安全や体育活動中の安全確保についても、同様に当てはまるものです。

 次代の我が国を担う子どもの育成を図っていく上で、その生命・身体を守ることは極めて重要であり、これまで以上に学校、教育委員会、国、さらには家庭や地域も含めた社会全体が一丸となって、いじめや学校安全等の問題に取り組んでいくことが必要です。
 このたび、このような考え方を踏まえ、これまでの取組を見直し、文部科学省として、当面、いつまでに、どのようなことに取り組むのかを示す「いじめ、学校安全等に関する総合的な取組方針」を策定したところであり、その具体的な内容は次々ページ以降のとおりです。
 文部科学省としては、今後、この取組方針に基づき、施策の見直し等を行うことにより、いじめや学校安全等の問題への取組の改善・充実を図り、設置者ごとの特色や関係者の意見を踏まえつつ、学校や教育委員会等に対し一層積極的に必要な支援をしていくこととしています。

 もとより、いじめの問題については、学校や教育委員会等においてしっかりと対応することが基本です。このため、国・公・私立の各学校や教育委員会等においては、文部科学省からの通知等を踏まえ、いま一度、いじめの問題への取組の徹底を図ってください。
 国民の皆様にも、そして、児童生徒の皆さんにも、いじめの問題について、何ができるか、何をすべきかということを、各々の立場で是非お考えいただきたいと思います。
 また、学校安全や体育活動中の安全確保についても、同様の取組をお願いします。

 文部科学省としては、教育関係者をはじめとする社会全体の連携協力の下、子どもの生命・身体の安全を守るため、この取組方針の策定をきっかけとして、今後、いじめや学校安全等の問題により積極的かつ集中的に取り組んでまいります。


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第1 いじめの問題への対応強化

T 基本的考え方

1.学校・家庭・地域が一丸となって子どもの生命を守る
 いじめが起きることを未然に防ぐため、日頃から、学校の教育活動において、社会性や規範意識、思いやりなど、子どもの豊かな人間性を育むことが必要である。
 学校・教員を主体としつつ、社会全体で子どもを守り、育てていくため、学校と家庭・地域が連携・協働できる体制づくり等をさらに推進する。また、家庭との連携を図るため、保護者等に向けた、いじめの問題に関する普及啓発を行う。

2.国・学校・教育委員会の連携を強化
 国においてはこれまで、いじめの問題について、学校現場の主体的な取組に期待し、受け身の対応となっていたのではないかとも考えられることから、この反省を踏まえ、子どもの生命・身体を守るため、国としても積極的に役割を果たしていけるよう、文部科学省の体制を強化する。
 特に、子どもの生命・身体に関わる重大な事案については、的確かつ迅速な対応を確実に図るため、国と地方が適切に連携・協力できるよう、国の関わり方を見直す。

3.いじめの早期発見と適切な対応を促進
 いじめは、「どの子どもにも、どの学校でも起こり得る」ものであるが、決して許されないことである。いじめの問題については、もとより、学校や教育委員会等において、しっかりと対応することが必要である。
 このため、国においてこれまで示してきた、いじめの問題への基本的な考え方を改めて周知徹底するとともに、教員への研修等を通じ、さらなる理解増進を図る。
 また、幅広い外部専門家を活用した、いじめの問題等の解決に向け調整・支援する取組を推進する。
 加えて、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーをはじめとした幅広い人材を活用し、子どもが悩みを相談できる体制の充実等を図る。
 あわせて、いじめの問題を隠さず、的確な対応に努める学校・教員がきちんと評価されるよう、学校や教員の評価におけるいじめの問題への考え方を示す。

4.学校と関係機関の連携を促進
 「いじめ」は犯罪行為に当たる可能性があるとの認識の下、警察との連携を強化するとともに、福祉機関や民間団体等の関係機関と協力した取組を促進する。


U.基本的考え方に基づくアクションプラン

 国は、基本的な考え方に基づき、以下の取組を行う。

1.学校・家庭・地域が一丸となって子どもの生命を守るための国の取組

(1)いじめの未然防止に資する日々の取組の推進
○ 道徳教育やコミュニケーション活動を重視した教育活動、体験活動を推進するとともに、児童会・生徒会における活動等、子ども自身の主体的な参画によるいじめの問題への取組を促進する。【概算要求】

○ いじめの未然防止に資するよう、児童生徒一人一人が安心でき活躍できる教育活動(授業づくりや集団づくり等)の在り方について研究し、その成果を普及する。【概算要求】

(2)学校・家庭・地域の連携協力によるいじめの問題への取組の推進
○ 学校と連携し、地域人材を中心とした家庭への相談対応等の支援の仕組みづくりや、いじめの理解と対応など社会的課題に対応した保護者向け学習プログラムの開発や講座内容の充実を推進する。【概算要求】

○ 保護者等に対し、いじめの問題やこの問題への学校・教育委員会等の取組に対する理解を深めるワークショップ等を開催するなど広報啓発を充実する。【概算要求。年度内は12月から】

○ 保護者や地域住民が学校運営に参画するコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の導入拡大により、いじめの問題など、学校や地域が抱える課題を共有し地域ぐるみで解決する仕組みづくりを促す。【概算要求】

○ 社会全体で子どもを見守り育むため「学校支援地域本部」や「放課後子ども教室」など、学校・家庭・地域が連携・協働できる体制の構築を推進する。【概算要求】

2.学校・教育委員会等との連携を強化するための国の取組

(1)国におけるいじめの問題等に対応する体制の強化
○ 「子ども安全対策支援室」の事務体制を強化し、各地域との密接な連絡・相談体制を整えるとともに、学校におけるいじめの問題への気付きから問題の解決までを総合的にフォローできるよう、児童生徒課の体制を大幅に増強する。【機構定員要求】

(2)「いじめ問題アドバイザー(仮称)」の配置
○ 国が多様な専門家を「いじめ問題アドバイザー(仮称)」として委嘱し、いじめの問題への効果的な対応等について、専門的な見地から助言を得られる体制を整備する。【9月中】
(アドバイザーの例)
 弁護士、精神科医、元警察官、大学教授等

(3)電話相談体制(24時間いじめ相談ダイヤル)の見直し
○ 電話相談の内容や重大事案等への対応状況等について、各自治体が設置するものも含めて調査し、必要な見直しを図る。【10月中】

○ 24時間いじめ相談ダイヤルの番号を記載したカードを全ての児童生徒に配布し、確実な周知を図る。【概算要求】

(4)緊急調査により報告された重大事案への迅速な対応
○ いじめの問題に関する緊急調査(8月1日発出。以下「緊急調査」という。)において、児童生徒の生命・身体の安全がおびやかされる恐れがあるとして報告された重大事案について、教育委員会や学校の対応を確認し、必要な指導・助言等を迅速に行う。【報告後速やかに】

(5)生命・身体に係る重大事案への速やかな報告等のルール化
○ 緊急調査を踏まえ、児童生徒の生命・身体に係る重大事案について、国に速やかな報告を求め、報告を受けた国は、速やかに教育委員会に対して指導・助言を行うことをルール化する。【10月中】

(6)自殺事案に関する背景調査の改善
○ 児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の進め方について、現在の運用状況や関係者の意見を踏まえ、有識者会議において検討し、必要な見直しを行う。【本年度中】

3.いじめの早期発見と適切な対応を促進するための国の取組

(1)学校におけるいじめの問題に対応する教職員体制の強化
○ いじめの問題への対応のため、少人数学級の推進や特別な指導を行う学校への支援など、教員が子ども一人一人と正面から向き合える体制を整備するため教職員の定数改善を図る。【概算要求】

(2)いじめの認知及び対応に関する周知徹底等
○ これまでに国が発出した通知や「いじめ対策Q&A」、国立教育政策研究所作成の教職員向けの指導支援資料等を改めて教育委員会や学校等に配布し、いじめの問題への対応の周知徹底を図る。【本方針公表とあわせて実施】

○ いじめの認知件数に地域差があることを踏まえ、緊急調査の結果をもとに、各教育委員会や学校におけるいじめの問題に関する取組の改善・充実を促す通知を発出する。【10月中】

(3)教職員への研修等の充実
○ 大学の教員養成課程において、いじめの問題に関する認識を深め、早期発見や適切に対応できる能力を高めるような実践的な内容の充実を求める。【10月中】

○ (独)教員研修センターにおける研修において、いじめの問題に関する内容を充実させるとともに、全国各ブロックで、普及啓発協議会や指導者養成研修を実施する。
 また、「いじめ問題アドバイザー(仮称)」が講師となる研修の実施を含め、初任者研修をはじめ各都道府県等が実施する現職教員に対する研修等のいじめの問題に関する内容の充実を促す。【概算要求等。年度内は12月から】

○ スクールカウンセラー等による、教員のカウンセリング能力等向上のための校内研修を推進する。【概算要求】

(4)幅広い外部専門家を活用したいじめの問題等の解決に向け調整・支援する取組の推進
○ 各地域における、いじめの問題等を第三者的立場から調整・解決する取組を促進する。【概算要求】

○ 各地域における、いじめの問題に関する学校の対応を支援する専門家チーム(「いじめ問題等支援チーム(仮称)」)の配置を支援する。【概算要求】

(5)幅広い外部専門家を活用した教育相談体制の充実等
○ 幅広い人材を活用し教育相談体制の充実を図るとともに、スクールカウンセラー等の配置充実を図り、児童生徒の、ストレスや困難に対処する能力を育む教育を推進する。【概算要求】

○ 関係機関・家庭・地域と連携して問題解決を図る、スクールソーシャルワーカーの配置を拡充する。【概算要求】

(6)いじめの問題への適切な対応の評価
○ いじめの問題を隠さず、適切な実態把握や対応が促されるよう、いじめの問題への対応に関する学校評価や教員評価の実施における留意事項を提示する。【10月中】

(7)ネットいじめ対策の充実
○ インターネット上の誹謗・中傷などの「ネット上のいじめ」等について学校ネットパトロールの取組事例等をまとめ、周知を図る。【本方針公表とあわせて実施】

(8)出席停止制度の検証
○ 出席停止制度についてその活用を図るため、制度活用の問題点や出席停止期間中の児童生徒に対する学習支援の在り方について、教育委員会に対する調査を行い、検証する。【10月中】

4.学校と関係機関の連携を促進するための国の取組

(1)学校と警察の連携強化
○ 「いじめ」は犯罪行為に当たる可能性があるとの認識の下、学校や教育委員会の能力を超えて犯罪として取り扱われるべきと認められる事案に関しては、早期に警察に相談して連携して対応するとともに、特に、児童生徒の生命・身体の安全がおびやかされているような場合には、直ちに通報する必要があることを周知徹底する。【9月中】

○ 緊急調査の結果を踏まえ、警察庁と協議し、学校警察連絡協議会や教育委員会・学校と警察との協定等を活用した、学校と警察の情報交換・意見交換や関係強化方策を検討し、実施する。【年内】

○ 教育委員会に、警察官経験者等の生徒指導推進協力員の配置を拡充して、学校における非行行為の早期発見、緊急時の対応等の取組を促進する。【概算要求】

(2)関係機関が連携したサポートチームの活用
○ いじめに関与した子どもへの対応等に当たり、児童相談所、保護司、民生・児童委員、人権擁護委員等の関係機関やNPO等の民間団体の協力を得て組織する、サポートチームを活用した地域の取組を促進する。【概算要求】


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第2 学校安全の推進

T 基本的考え方

 学校は、子どもが集い、人と人とのふれあいにより、人格の形成がなされる場であり、学校という場において、子どもがいきいきと学習や運動等の活動を行うためには、子どもの安全の確保が保障されることが不可欠の前提となる。また、子どもは守られるべき対象であることに留まらず、学校において、自らの安全を生涯にわたり確保することのできる基礎的な素養を育成することが求められる。
 各学校における学校安全に関する活動は、「安全教育」、「安全管理」、「組織活動」の三つから構成され、また、「災害安全(防災)」、「交通安全」、「生活安全(防犯)」の三つの領域があり、各領域の特性に応じた取組を進める必要がある。
 国は、学校保健安全法(昭和33年法律第56号)及び「学校安全の推進に関する計画」(平成24年4月27日閣議決定)に基づき、安全教育の充実、学校の施設・設備の整備充実、学校安全に関する組織的取組の推進、地域社会・家庭との連携を図った学校安全の推進など、学校安全の推進に関する取組を総合的かつ効果的に推進する。

1.学校安全に関する教育を充実する
 学校における安全教育は、安全にとって望ましい行動の変容に必要な態度や能力を育てることを目指して教育活動全体を通じて行うものである。このため、日常生活を安全に営むために必要な知識や技能を習得させる安全学習と、それらを実生活に応用し、常に安全な行動がとれるようにしていくための安全指導の充実を図る。
 また、学校現場では、学校安全に関する十分な指導時間が確保されにくい現状があることから、国は子どもの安全を守る取組を効果的に行う。

2.地域コミュニティの拠点としての学校施設・設備を整備充実する
 学校施設は子どもの学習・生活の場であるとともに、地域コミュニティの拠点であり、非常災害時には地域住民の応急避難場所ともなることから、その安全性を確保し、防災機能を強化することは重要である。このため、国においては学校施設の耐震化、非構造部材の耐震対策などを推進する。

3.学校における安全管理を推進する
 学校における安全管理とは、学校環境及び子どもの学校生活における行動等の危険を早期に発見し、危険を速やかに除去するとともに、万一事故等が起こった場合には、適切な措置を講ずることのできる体制を確立して、子どもの安全を確保することである。
 このため、国においては、各学校の安全点検の推進、安全教育に関する指導者の養成、各学校の学校安全に関する取組状況の調査・把握、国の学校安全に関する推進体制の強化などを図る。

4.地域社会、家庭との連携体制を構築する
 学校は地域コミュニティの拠点であり、また、子どもは生活時間の一部しか学校におらず、それ以外は地域社会、家庭で過ごしている。
 このため、国においては、各学校の安全教育、安全管理を推進するに当たって、地域社会や家庭が果たす役割の重要性を踏まえ、社会全体で子どもを育み、その安全を守るため、学校と地域社会、家庭が連携・協働できる体制づくり等を一層推進する。

U.基本的考え方に基づくアクションプラン

 国は、基本的な考え方に基づき、以下の取組を行う。

1.学校安全に関する教育を充実するための国の取組

(1)津波により児童生徒等が犠牲となった事例の検証
○ 東日本大震災の教訓を今後の防災教育・防災管理に生かすため、学校管理下で津波により児童生徒や教職員が犠牲となった事例に関し、関係自治体が実施する児童生徒等の避難行動等の検証に関する取組について、国として技術的・専門的観点から支援する。【継続的実施】

(2)防災教育をはじめとする安全教育の指導時間確保のための方策の検討○ 学校における防災教育をはじめとする安全教育を教科等として位置付けるなど、指導時間を確保するための方策について検討する。その際、学校における防災教育が系統的・体系的に実施されるよう、防災教育を実践している学校の教職員へのヒアリングや有識者による検討を行い、防災教育の体系化を図る。【概算要求】

(3)東日本大震災を踏まえた指導資料・教材の作成
○ 東日本大震災や台風等による風水害の教訓を踏まえ、教職員用参考資料「『生きる力』をはぐくむ防災教育の展開」(平成10年3月作成)を改訂し、各学校における具体的な指導計画の策定に当たっての参考資料として、防災教育の具体的かつ系統的・体系的な指導内容の整理を行う。【本年度中】

○ 東日本大震災の教訓等や近年発生している突風・竜巻等の災害等を踏まえ、防災教育視聴覚教材「災害から命を守るために(小学生用)」を改訂し、内容の充実を図る。【概算要求】

○ 学校の安全教育の推進に当たっては、発達の段階や特別支援学校等における障害のある児童生徒等についても、十分に配慮する。【継続的実施】

(4)非常災害時の子どもの心のケアの充実
○ 東日本大震災の被災地である宮城県仙台市等において「非常災害時の子どもの心のケアシンポジウム」を開催し、心のケアの重要性について、学校関係者の注意を改めて喚起する。【8月、11月実施】

○ 「非常災害時の子どもの心のケアに関する調査」の結果を検証するとともに、その結果を教師用指導資料や保護者向けリーフレットに反映させることにより、学校における心のケアへの対応の充実を図る。【概算要求】

(5)復興教育の推進
○ 地域と一体となった防災教育や心のケア、キャリア教育、表現活動など、被災地の復興を支えるため、自治体、大学、NPO等の多様な主体が取り組む、今後の学校教育の新しいモデルともなる先進的な教育活動の支援を推進する。【概算要求】

2.地域コミュニティの拠点としての学校施設・設備を整備充実するための国の取組

(1)学校施設の耐震化の推進
○ 公立学校施設の耐震化及び防災機能の強化(備蓄倉庫の整備、避難経路の整備等)を支援し、「公立の義務教育諸学校等施設の整備に関する施設整備基本方針」に基づき、平成27年度までのできるだけ早い時期に、全ての公立学校施設の耐震化を完了させる。【概算要求】

○ 国立学校施設の耐震化を支援し、「第3次国立大学法人等施設整備5か年計画」に基づき、平成27年度までに全ての国立学校施設の耐震化を完了させる。【概算要求】

○ 私立学校施設について、国公立学校施設の状況を勘案しつつ、できる限り早期の耐震化完了を目指し、「私立学校施設防災機能強化集中支援プラン」を引き続き推進し、耐震補強や防災機能強化への補助、耐震改築への長期低利融資等の支援を、拡充を図りながら継続的に行う。【概算要求】

(2)学校施設の非構造部材の耐震対策の推進
○ 学校施設の非構造部材の耐震対策を支援し、非構造部材の点検・対策の速やかな実施を促進する。また、学校施設の非構造部材の耐震化ガイドブックや耐震対策事例集の見直し・充実を図り、学校の設置者の効果的な取組の促進を図る。【概算要求等】

○ 特に、落下した場合に致命的な事故が起こりやすい屋内運動場等の天井等について、緊急的な総点検の実施と落下防止対策の強化を促進するため、耐震対策の支援に加え、学校の設置者への働きかけを強化する。また、新たに天井等落下防止対策の手引きを作成するとともに、学校施設の危険度や対策の優先度の判断など技術的な指導・助言を行う専門的技術者を学校の設置者に派遣することにより、技術的な支援体制を構築する。【概算要求等】

3.学校における安全管理を推進するための国の取組

(1)通学路の緊急合同点検の実施
○ 登下校中の子どもが巻き込まれる交通事故が相次いで発生したことを受け、関係省庁(文部科学省、国土交通省、警察庁)より、8月末を期限として、各学校において学校、道路管理者、警察が連携し、保護者、地域住民等の協力も得て「通学路の緊急合同点検」を実施するよう要請した。点検結果については、関係省庁において実施状況を把握する。【9月中】

(2)通学路の緊急合同点検結果を受けた対策の検討
○ 関係省庁において、点検結果を受け、11月末を期限として実施するよう要請している各地域の教育委員会、道路管理者、警察の連携による対策の検討を促進する。
 その際、対策の検討に資するよう、関係省庁が共同で平成24年8月に取りまとめた「通学路の交通安全の確保に関する有識者懇談会」取りまとめを情報提供するなど引き続き必要な支援を行う。【年内】

(3)関係省庁の連携による通学路対策の予算の確保
○ 関係省庁(文部科学省、国土交通省、警察庁)が連携して副大臣会合を機動的に開催し、通学路の安全対策のための必要な予算の確保に努める。【概算要求】

(4)通学路安全対策アドバイザーの派遣
○ 通学路の安全を確保するため、特に対策が必要な市町村に対し、「通学路安全対策アドバイザー」を派遣し、専門的な見地からの必要な指導・助言の下、学校、教育委員会、関係機関等の連携による通学路の合同点検や安全対策の検討を行う。【概算要求】

(5)通学路の安全対策推進のための調査研究の実施
○ 通学路の総合的な安全対策を効果的に推進するため、先進事例調査、活動内容調査、事業効果分析などの調査研究を実施する。【概算要求】

(6)安全教育に関する指導者養成等
○ 防災教室、交通安全教室、防犯教室の講師となる教職員等を対象として、教職員や子どもの防災、交通安全、防犯に関する意識の向上等を図るため、危険予測・危険回避能力を育成するための講義、子どもの安全確保の方法や心肺蘇生法(自動体外式除細動器(AED)の取扱を含む。)等を学ぶ実技講習、実践事例発表などを各都道府県で開催する。また、学校におけるAEDなどの整備を促す。【概算要求】

(7)学校安全に関する取組状況調査の実施
○ 全ての学校を対象に隔年で実施している「学校の安全管理の取組状況調査」において、平成24年度から従来の生活安全(防犯)に加え、災害安全(防災)、交通安全を含めた総合的な「学校安全の取組状況調査」として実施する。【本年度中】

(8)国における学校安全の推進のための体制強化
○ 学校における防災教育・防災管理の充実を図るとともに、通学路をはじめとする学校安全への対応を強化するため、国における交通安全、生活安全・防犯に係る推進体制を抜本的に増強するとともに、課名を「学校健康教育課」から「学校安全・健康教育課」(仮称)に変更する。【防災教育関係:10月から】【総合的な学校安全関係:機構定員要求】

4.地域社会、家庭との連携体制を構築するための国の取組

(1)実践的防災教育総合支援事業の実施
○ 各学校において防災教育・防災管理に関する実践的な取組を支援する「実践的防災教育総合支援事業」において、地域住民や保護者・関係機関との連携体制を構築・強化しながら児童生徒や学校の災害対応能力を高める防災訓練等の手法の開発・普及を支援する。【概算要求】

(2)スクールガード・リーダーの養成等
○ 防犯の専門家や警察官OB等をスクールガード・リーダーとして委嘱し、各学校やスクールガード(学校安全ボランティア)に対する警備のポイント等の指導と評価等を全国の小学校において実施する。
 スクールガード・リーダーとしての資質を備えた人材を継続的に確保するため、学校安全に積極的に取り組んでいた教職員OB等を対象に育成講習会を開催する。【概算要求】

(3)学校警察連絡協議会等の設置
○ 各自治体において、学校と警察などの関係機関、団体との意見交換の場が設定されるよう促すとともに、地域社会全体で子どもの安全を守るための活動を推進する。【継続的実施】
(4)警察、道路管理者等との連携による通学路の合同点検(再掲)
○ 各学校において学校、道路管理者、警察が連携し、保護者、地域住民等の協力も得て、8月末を期限として「通学路の緊急合同点検」を実施するとともに、これらの機関の連携により、11月末を期限として対策を検討する。【年内】


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第3 体育活動中の安全確保

T.基本的考え方

 本年度から必修となった武道をはじめとする学校における体育活動は、青少年の心身の健全な発達に資するものである。また、自らを律し、相手を尊重する態度を養うことなどが期待され、運動を通して、互いに協力する、自己の役割を果たすなどの意欲を育てる、友情を深めるといった好ましい人間関係を形成するなどの重要な役割を果たすものである。
 一方で、毎年度重大な事故が報告されており、安全面でのさらなる配慮や工夫が求められていることから、国においては、各種の安全対策等の取組を行い、体育活動における安全対策を推進する。

1.国・教育委員会・学校等の連携によって指導者の資質向上を図る
 子どもが安心して活動できる体育活動を確保する上で、最も重要なことは指導する教員の資質能力を向上させることである。このため、国としても指導者が知っておくべき事項について参考資料等をまとめ、広く学校や指導者に周知する。
 また、同時に、教育委員会や学校、関係団体の連携を進め、体育活動の指導者を対象とする講習会等を広く開催し、体育活動の指導者が広く参加できる機会を提供する。
 なお、この場合の指導者は、教員に留まらず、地域の協力を得つつ外部指導者も含めることとし、できる限り外部指導者も研修等を受けられるよう対策を講ずることとする。

2.学校と地域が連携して体育活動への外部指導者の参加を進める
 体育活動、特に中学校において必修化された武道や部活動において、指導を担当する教員を補佐し、支援する観点から、専門性の高い外部指導者の協力を得ることは子どもの安全を確保する上でも重要である。
 しかしながら、これまで学校はともすれば外部の人材を受け入れることに消極的な傾向があり、このような人材が十分に活用されてきたとは言い難い。
 このため、学校と地域が連携し、能力と熱意のある外部指導者の体育活動への参加をより積極的に進め、体育の授業や部活動の安全を高めていくための対策を講ずることとする。

3.事故の発生要因の分析等を進め、スポーツ医科学の活用による最新の知識を広げていく
 体育活動中の事故が一定程度発生することは避けられないが、死亡などに至るような重大な事故を回避することは不可欠である。
 このため、関係団体等と連携しつつ、実際の事故の発生要因等について分析を進め、その防止策等についての最新の知識を広く発信し、関係者の知識・技能を常に新たなものとするための対策を講ずることとする。

4.施設・設備の整備による安全な体育活動環境の整備を進める

 体育活動中の事故は、施設・設備を常に点検し、より安全なものにしていくことによってある程度避けることが可能である。
 このため、学校の設置者が施設・設備を見直し、より安全なものにしていくよう支援のための対策を講ずることとする。

U.基本的考え方に基づくアクションプラン

 国は、基本的な考え方に基づき、以下の取組を行う。

1.国・教育委員会・学校等の連携によって指導者の資質向上を図るための国の取組

(1)柔道をはじめとする体育の指導書の作成及び配布
○ 柔道の指導に当たっては、本年3月に教員向けの安全指導における参考資料を作成・配布するとともに、同年7月に有識者からなる協力者会議でまとめた安全指導の在り方についての報告書を周知したところである。今後、さらに、安全指導を含めた効果的な柔道指導方法を取りまとめた手引きなどを作成し、学校等に配布する。【本年度中】

(2)体育活動の指導者の講習会の推進
○ 柔道について、上記の手引きの周知徹底等を図り、授業を安全に実施するため、中・高等学校の保健体育科の全ての教員等を対象とした安全指導講習会を開催する。【概算要求】

○ (独)教員研修センターや武道関係団体と連携して、体育担当教員や部活動指導者を対象とした各地域のリーダーとなり得る教員を養成するための講習会を開催する。【本年度中】

2.学校と地域が連携して体育活動への外部指導者の参加を進めるための国の取組

(1)武道を中心とする体育の授業への外部指導者の参加促進
○ 武道が必修化となった体育の授業における武道指導の充実を図り、授業を安全に行うため、教育委員会における地域の指導者の派遣などの取組を促進する。【概算要求】

○ 武道関係団体における支援体制の強化を図るため、同団体が行う地域の指導者の質を確保するための取組を推進する。【概算要求】

(2)部活動への外部指導者の参加促進
○ 運動部活動における意欲と能力のある指導者の確保等を図り、安全な部活動を進めるため、教育委員会における地域の指導者の派遣などの取組を促進する。【概算要求】

3.事故の発生要因の分析等を進め、スポーツ医科学の活用による最新の知識を広げていくための国の取組

(1)現実のデータに基づく事故発生要因等の分析
○ 体育活動における重大事故について、(独)日本スポーツ振興センターと連携し、災害共済給付の情報等から、事故発生要因等の分析等を進め、インターネット等を活用して情報を発信するとともに、全国会議等で周知を進めていく。【今後、毎年経常的に】

○ 死亡などに至るような体育活動中の重大事故については、今後、各都道府県教育委員会等から事故の状況等について報告を求め、全国会議等で情報を共有するとともに、さらに必要な対応について検討する。【今後、毎年経常的に】

(2)スポーツ医科学の最新の知識等の発信
○ スポーツ事故の防止を図るため、医療関係団体、大学(教員養成)、スポーツ関係団体等と連携して、今後の学校における指導体制の充実等について検討し、スポーツ医科学を活用した事故防止対策を図るため、教育委員会関係者に情報共有するための全国協議会を開催する。【概算要求】

4.施設・設備の整備による安全な体育活動環境の整備を進めるための国の取組

(1)施設・設備等の整備に関する国の取組
○ 必修となった中学校の武道を安全に、かつ、円滑に実施できる武道場の整備促進を図るため、その整備に係る国の補助について充実させる。【概算要求】

○ 武道用具など安全な体育活動に必要な教材・用具を整備し、また、計画的に見直していくことができるよう「義務教育諸学校における新たな教材整備計画」として、「教材整備指針」に基づく教材の整備に必要な経費について、所要の財政措置が講じられている。【平成24年度から10ヵ年計画として既に措置済み】







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