● いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について(通知) 令和5年2月7日 4文科初第2121号


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4文科初第2121号 令和5年2月7日
各都道府県教育委員会教育長、各指定都市教育委員会教育長、各都道府県知事、各指定都市長、附属学校を置く各国立大学法人学長、附属学校を置く各公立大学法人学長、小中高等学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長 宛
文部科学省初等中等教育局長 藤原章夫


いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について(通知)


 平素より、文部科学行政に対する御理解・御協力を賜り誠にありがとうございます。
 いじめの問題への対応に当たっては、いじめ防止対策推進法等に基づき、各学校及び学校の設置者において、いじめの未然防止、積極的な認知、組織的な対応等の取組が進められてきたところです。しかしながら、一部のケースでは、学校及び学校の設置者が法律に基づいた対応を徹底しておらず、被害を受けた児童生徒がいじめを苦に自殺する等最悪のケースを招いた事案も発生しています。
 いじめは、児童生徒の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであり、学校及び学校の設置者は、いじめを決して許さず、被害児童生徒を徹底して守り通すという断固たる決意で、全力を尽くすことが必要です。
 また、犯罪行為(触法行為を含む。)として取り扱われるべきいじめなど学校だけでは対応しきれない場合もあります。これまで、ややもすれば、こうした事案も生徒指導の範囲内と捉えて学校で対応し、警察に相談・通報することをためらっているとの指摘もされてきました。しかし、児童生徒の命や安全を守ることを最優先に、こうした考え方を改め、犯罪行為として取り扱われるべきいじめなどは、直ちに警察に相談・通報を行い、適切な援助を求めなければなりません。また、保護者等に対して、あらかじめ周知しておくことも必要です。

 文部科学省では、いじめ問題への対応に当たり、政府における連携体制をより一層強化するため、昨年11月にこども家庭庁設立準備室と共同で「いじめ防止対策に関する関係府省連絡会議」を設置し、今後、対応すべき検討項目を添付資料3のとおり整理しました。
 この検討項目のうち、警察等との連携強化や児童生徒への指導支援の充実等、改めて取組の徹底を求める事項について下記のとおり周知しますので、各学校及び学校の設置者では、改めて自らの取組等を見直していただき、より一層適切な対応に努めていただくよう、お願いいたします。
 本件については、都道府県・指定都市教育委員会担当課におかれては所管の学校等及び域内の市(指定都市を除く。)区町村教育委員会に対して、都道府県私立学校主管部課におかれては所轄の学校法人等を通じてその設置する学校に対して、国公立大学法人附属学校事務主管課におかれてはその設置する附属学校に対して、構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の学校設置会社担当課におかれては所轄の学校設置会社及び学校に対して、周知を図るとともに、適切な対応がなされるよう特段の御配慮をお願いいたします。
 なお、本通知は、事前に警察庁、法務省をはじめ関係府省と調整の上発出しておりますことを申し添えます。


          記


1.犯罪に相当する事案を含むいじめ対応における警察との連携の徹底

(1)警察との相談・通報及び連携における基本的な考え方
 学校と警察は、児童生徒を加害に向かわせず、被害に遭うことから防ぐ等、児童生徒の健全な育成の観点から重要なパートナーであることを認識し、日常的に情報共有や相談を行うことができる連携体制の構築が求められること。
 特に、@学校の内外で発生した児童生徒の生命、心身若しくは財産に重大な被害が生じている、又はその疑いのあるいじめ事案(以下、「重大ないじめ事案」という。やA被害児童生徒又は保護者の加害側に対する処罰感情が強いなどいじめが犯罪行為として取り扱われるべきと認められる事案等に対して、警察においては、教育上の配慮等の観点から、一義的には教育現場における対応を尊重しつつも、いじめを受けた児童生徒や保護者の意向、学校における対応状況等を踏まえながら、必要な対応をとることとしていることも踏まえ、学校は、いじめが児童生徒の生命や心身に重大な危険を生じされるおそれがあることを十分に認識し、いじめ防止対策推進法(以下、「法」という。)第23条第6項に基づき、直ちに警察に相談・通報を行い、適切に、援助を求めなければならないこと。
 なお、学校のみで対応するか判断に迷う場合であっても、被害児童生徒や保護者の安心感につながる場合もあることから、警察(学校・警察連絡員等)に相談・通報すること。その際、警察に相談・通報を行った事案については、学校の設置者にも共有すること。
 近年、児童ポルノ関連を含めインターネット上のいじめが増加しており、なかでも、匿名性が高く、拡散しやすい等の性質を有している児童ポルノ関連のいじめ事案に関しては、一刻を争う事態も生じることから、被害の拡大を防ぐため、学校は、直ちに警察に相談・通報を行い、連携して対応すること。
 学校は、警察に相談・通報すべきかどうかの判断に当たっては、別添資料1に示す「警察に相談又は通報すべきいじめの事例」も参考とすること。ただし、犯罪行為に該当しなくとも、現に重大な被害が生じている、又は重大な被害に発展するおそれがある場合は警察において注意・説諭も期待できることから、別添資料1に例示されない事例についても、学校が、警察へ積極的に相談・通報を行うこと。
 重大ないじめ事案やいじめが犯罪行為として取り扱われるべきと認められる事案において学校が警察に相談・通報を行うことは法令上求められており、こうした事案について警察への相談・通報を行ったことは、学校として適切な対応を行っているとして評価されるものであること。

(2)警察との日常的な情報共有体制の構築による連携強化
 重大ないじめ事案やいじめが犯罪行為として取り扱われるべきと認められる事案では、直ちに警察への相談・通報が必要である一方、学校では取扱いの判断が困難な事案も想定されるため、学校及び学校の設置者においては、警察署並びに警視庁、道府県警察本部及び方面本部の少年担当課(以下、「警察署等」という。)等と個別事案に係る日常的な情報共有や相談・通報ができるよう下記のような体制の構築に取り組むこと。

@警察署等との協定の締結による円滑な情報共有の推進
 学校及び学校の設置者と警察との相互連絡の枠組みに係る協定等における連絡対象事案として、重大ないじめ事案や犯罪行為として取り扱われるべきと認められるいじめ事案に加え、犯罪行為には該当しなくとも警察による注意・説諭等が効果的と認められるいじめ事案を盛り込むことにするなど、いじめの情報共有、相談・通報に係る協定等の締結・見直し等を進めること。
A学校・警察連絡員の指定の徹底
 警察との日常的な情報共有・相談体制を構築するため、学校・警察双方において、連絡窓口となる担当職員の指定を徹底すること。その際、自殺予告等緊急を要する事案に適切に対応できるよう、休日等執務時間以外の時間帯における連絡体制の構築にも留意しておくこと。
 (想定される担当者の例)
 学校側:副校長・教頭、生徒指導主事
 警察側:警察署生活安全課長、係長など
B学校警察連絡協議会等の活用
警察への相談・通報を確実に行うため、学校警察連絡協議会等の場において認識の共有を図るとともに、相談・通報を行うべきか否か学校が判断に迷うような場合も積極的に相談することをあらかじめ申し入れておくなど、警察と連携した対応が早期に可能となるよう相談・通報の促進を図ること。
Cスクールサポーター制度※1の積極的な受入れの推進
 警察署等に配置されているスクールサポーターは、日常的な情報共有・相談・通報の相手方として有効であり、警察と学校の緊密な連携を図る上でのパイプ役にもなっていることから、引き続き、学校及び学校の設置者では、学校訪問や校内巡回を含め積極的な受入れを図ること。また、教育委員会等においても、退職警察官等を活用した取組を進めるとともに、スクールサポーター制度に類似した制度(生徒指導推進協力員など)を運用している場合には、その従事者と警察署等との情報交換を行うための連絡協議会の開催等を通じて確実に学校等と警察との連携を図ること。

(3)警察と連携したいじめへの適確な対応における留意事項
 警察では、重大ないじめ事案に当たらない事案であっても、当該児童生徒又はその保護者が犯罪行為として取り扱うことを求めるときは、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除き、被害の届出を即時受理することとしていることから、学校は、警察から連絡を受けた場合には、緊密に連携しつつ、その捜査又は調査に協力すること。
 警察が捜査・調査中であっても、学校は、警察と連携しつつ、必要な指導・支援を行わなければならないこと。

(4)学校と警察の連携・対応の実例
 実際に学校が警察へ通報・相談して解決に向かった事案として以下のような事例がある。
【警察からの聴き取りによる事案解明】
 生徒が同級生に対して普段の昼食代やブランド品の購入代金の肩代わりを行うなどの金銭授受が発覚。加害生徒は、学校からの聴き取りに対しては否認していたが、警察から事情を聴かれると、一転して素直に金銭の受け取りについて認めた。
【触法少年への警察からの指導】
 被害児童が加害児童から髪を切られる等の被害を受け、学校が対応に当たったが、保護者が納得出来ず警察に相談。警察が加害児童・保護者より事情聴取を行い、調書を作成した後、加害児童に指導を行うとともに、指導内容を被害児童・保護者に伝えた。警察から指導が行われたことで被害児童・保護者は納得した。
【加害・被害保護者への警察による対応】
 生徒間での恐喝事案において、被害生徒の保護者が警察に被害届を提出。警察は被害届受理後、学校において現場検証を行い、加害生徒の逮捕に至った。学校は、被害加害双方の保護者への連絡対応に苦慮していたところ、警察より学校が間を取り持つ必要はないという助言を受けた。警察が両者への対応を行ったことで、学校が連絡対応を行わずに済むようになった。
【SNS上での問題への対応】
 ある生徒のわいせつ画像が当該生徒の通う学校において拡散された事案において、相談を受理した警察が速やかに捜査に入り、関係生徒への聴き取りと指導が行われ、事案発覚以降、画像の拡散を防ぐことができ、拡散元である生徒も特定することができた。
【警察と連携したインターネット上のトラブル防止教室の実施】
 警察と協力して、定期的に児童生徒や保護者を対象にインターネット上のトラブル防止教室を開催することで効果的に未然防止を図るとともに、学校と警察とが顔の見える関係を構築でき、連携強化にもつながった。

 なお、重大ないじめ事案等が発生した際に、警察に対し適切な相談・通報を行わないことは不適切な対応として、懲戒処分に当たり得ることや、訴訟に発展する際に責任を追及されることにもなりかねないことから的確な対応が求められること。


2.被害児童生徒への支援及び加害児童生徒に対する指導・支援の充実

(1)被害児童生徒への支援
 いじめを認知した際には、何よりも被害児童生徒を徹底して守り抜くとの意識の下、被害児童生徒にとって信頼できる人(親しい友人や教職員、家族、地域の人等)と連携し、被害児童生徒に寄り添い支える体制を構築し、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー(以下、「SC・SSW」という。)を始め、医療機関等とも協力しつつ、ケース会議を速やかに開催し、適切なアセスメントを行い、二次的な問題の発生(被害の拡大等いじめの再発、不登校、自殺等)を防ぎ、傷ついた心のケアを行うこと。
 また、被害児童生徒から事実関係の聴取を行う際には、被害児童生徒にも責任があるという考え方はあってはならず、「あなたが悪いのではない」ことをはっきりと伝えるなど、自尊感情を高めるよう留意すること。
 被害児童生徒が不登校や別室登校になった場合には、心のケアだけでなく、学習面でも十分な支援を行うこと。
 被害児童生徒が安心して学習その他の活動に取り組むことができるよう、必要に応じて加害児童生徒を別室において指導することとしたり、状況に応じて出席停止制度を活用したりして、被害児童生徒が落ち着いて教育を受けられる環境の確保を図ること。

(2)加害児童生徒への指導・支援
 加害児童生徒に対しては、いじめを行う背景として、心理的ストレス、集団内の異質なものへの嫌悪感情などが考えられ、いじめと疑われる事案については、関係者へのヒアリング等を通して適切に状況確認を行うとともに、こうした加害行為の背景や当該児童生徒が抱える課題についてSC・SSWと連携して、適切なアセスメントを行いつつ、教育的配慮の下、毅然とした態度で指導・対応を行い、自らの行為を反省させることが必要であること。
 加害児童生徒が様々な背景を有している場合もあり、特別な配慮を必要とする場合には、加害児童生徒や保護者に対し、SC・SSWを活用して指導だけでなく適切な支援を行うこと。
 加害児童生徒に対するアセスメントや指導・支援を行うに当たっては、SC・SSWの活用に加えて、外部の専門機関を活用することも有効であり、児童生徒の心理や性格の面からアセスメントを行う法務少年支援センター等の活用や、加害児童生徒の健全育成を図るためのカウンセリングや注意・説諭等が期待できる少年サポートセンター、警察署等の警察機関との連携を行うことも考えられること。
 法務少年支援センター※2については、非行や犯罪行為のみならず、保護者との関係、職場や学校などでのトラブル、交友関係などの問題や悩みを抱える対象者についても支援をしており、心理検査、問題行動の分析や指導方法等の提案、児童生徒や保護者に対する心理相談、問題行動の背景にある考え方や行動の癖、偏りなどに目を向けたり、より良い対処方法を学んだりすることを促す教育、法教育に関する出張授業なども行っており、平時から、学校及び学校の設置者は計画的な支援について情報交換を行うとともに、事案に応じて、個別的支援を依頼するなどの連携を図ることが考えられること。
 いじめは、単に謝罪をもって安易に解消とすることはできないこと。
 いじめ解消の二条件※3を満たすに至った場合も、いじめが再発する可能性が十分にあり得ること等を踏まえ、学校は、当該いじめの被害児童生徒及び加害児童生徒について、日常的に注意深く観察するなど継続的な指導・支援が必要であること。

(3)児童生徒に対するいじめ問題に係る普及啓発、未然防止の推進
 学校及び学校の設置者は、全ての児童生徒を対象に、いじめに向かわせないための未然防止の取組として、例えば、道徳科や学級・ホームルーム活動などの時間に、いじめの実際の事例や動画教材等も活用しつつ、児童生徒が自主的にいじめの問題について考え、議論するなどのいじめの防止に係る実践的活動に取り組むこと。
 その際、SCやSSW等の専門家を活用して、児童生徒自身が自分の感情に気付き適切に表現することについて学んだり、自己理解や他者理解を促進したりする心理教育の視点を取り入れた未然防止教育を行うことも有効であること。
 児童生徒のいじめ問題に係る理解を深める観点から、学校は、「いじめ防止対策基本方針」について見直しなどを行う際に、児童生徒も参画して行うことが望ましいと考えられること。
 こうした児童生徒への普及啓発、未然防止を進める前提として、学校及び教職員は、いじめ問題に係る各種法令や基本的な対応の考え方について生徒指導提要(令和4年12月改訂)等を活用して、理解しておくことが求められること。
 その際、SC・SSW及びスクールサポーター等と共同で研修を行うなど、学校関係者が共通理解を図るように努めること。

(4)学校間・学校種を超えた情報共有・連携の徹底
 加害児童生徒・被害児童生徒が複数校にまたがる場合には、守秘義務が課されていることに留意しつつ、必要に応じて本人又は保護者の同意を経て、学校は、各校のいじめ防止対策組織間で情報共有を行い、連携して対応すること。その際、必要に応じて、教育委員会や都道府県の私学担当部局は、橋渡し役を担うなど円滑な連携体制の構築に努めること。
 当事者である児童生徒の転校や進学を見据え、学校は、いじめの事実関係に加え、当該児童生徒の特性や抱える困難等を含め十分な引継ぎを行うよう取り組むこと。その際、「児童生徒理解・支援シート※4」等を作成して情報共有を図ることも考えられること。


3.保護者と学校がともにいじめ防止対策を共有するための普及啓発の推進

(1)いじめ問題に係る家庭等への普及啓発・支援
 「学校いじめ防止対策基本方針」について、各学校ホームページへの掲載やその内容について前年度の取組を振り返りつつ、入学時・各年度の開始時に児童生徒、保護者等に説明すること。また、「学校いじめ防止対策基本方針」を見直す際には、保護者や地域が参画することで、策定後の円滑な取組の推進が図られることから、積極的に取り組むことが望ましいこと。
 入学説明会や保護者会、PTAの会合等の機会を通じて、保護者に対し「全ての児童生徒にとって安全で安心な学校づくり、学級づくり」の実現に向け、学校への協力を求めるとともに、いじめを発見した時の連絡相談窓口の周知やインターネット上のいじめなどについて理解を深める活動に取り組むこと。加えて、法に定めるいじめの定義、保護者の責務、重大事態調査の目的及び範囲等について普及啓発を図ること。
 いじめが犯罪行為に相当し得ると認められる場合には、学校としても、警察への相談・通報を行うことについて、あらかじめ保護者等に対して周知を行うことが重要であること。
 いじめの問題について、保護者に限らず、地域の大人など社会全体で連携して対応することが必要であり、学校は、PTAや地域の関係団体等といじめの問題について協議する機会を設けたり、学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)を活用することも考えられること。

(2)いじめの当事者となった児童生徒の保護者への対応
 被害児童生徒の保護者に対しては、いじめの事実が確認された場合、家庭訪問等により、その日のうちに事実関係を伝えるとともに、被害児童生徒を徹底して守り通すことを伝え、できる限り不安を除去し、学校の今後の対応について合意形成を図ること。
 学校の対応について記録を詳細に残し、保護者への対応についても担任等のみで対応するのではなく、組織的な対応を徹底すること。
 加害児童生徒の保護者については、直近の調査結果において、いじめの事実について保護者への報告を行っていない事案が半数以上にのぼること※5から、学校は、迅速に保護者に連絡し、いじめの事実を正確に説明すること。
 加害児童生徒への指導支援においては、保護者の協力が不可欠であり、学校と保護者が協働で、成長支援という視点を持ちながら当該児童生徒への指導支援を行うこと。
 特に、SNSやオンラインゲーム等でのいじめなどインターネット上のいじめについては、契約者である保護者の協力が必須であり、学校と保護者は、協働して対応に当たること。
 いじめの対応に当たり、保護者との信頼関係を築くことが困難な場合などには、スクールロイヤーやスクールサポーター等が保護者への説明を行うことで膠着状態が改善することもあるため、状況に応じて活用すること。


4.いじめの重大事態における総合教育会議の活用及び首長部局からの支援

(1)いじめの重大事態における総合教育会議の活用の徹底等
 総合教育会議は地方公共団体の長と教育委員会との協議・調整の場であり、法律※6においても、総合教育会議の協議事項として、「児童、生徒等の生命又は身体に現に被害が生じ、又はまさに被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合等の緊急の場合に講ずべき措置」が規定されているが、十分に活用されているとは言い難い※7。
 地方公共団体においては、法に定めるいじめの重大事態※8(主として1号事案における児童生徒の生命や身体に重大な被害が生じた疑いがある事案)が認められる場合には、速やかに総合教育会議の開催等を通じ、地方公共団体の長と教育委員会とで十分な意思疎通を図り、緊密に連携して対応すること。総合教育会議を開催する際は、会議の開催のみを目的とするのではなく、深刻な事案に対して、地方公共団体の長と教育委員会とが一体となって取り組むための協議の場として実質的に機能するよう取り組むこと。
 なお、総合教育会議に先立ち、当該事案について速やかに教育委員に情報提供し、教育委員会としての判断を求める等の必要な対応を遺漏なく行うこと。
 地方公共団体においては、総合教育会議の議題として、いじめの重大事態における協議に限らず、例えば、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の公表時において、いじめを含む生徒指導上の諸課題に係る各地域の調査結果も議題として取り扱い、現状の報告や認識の共有を図ることも考えられること。
 教育委員会・教育長は、いじめの重大事態が発生した際に、地方公共団体の長と確実に連携した対応がとれるよう、総合教育会議の開催に限らず、日頃から密にコミュニケーションをとること。

(2)いじめの重大事態における首長部局との連携・協力
 いじめの重大事態が発生した際、法第28条に基づき、学校又は学校の設置者において速やかに重大事態調査を実施することが求められていることから、速やかに組織を立ち上げることができるよう、平時から調査を行うための組織を設置しておくことが望ましいこと。
 他方、調査の実施に当たっては、適当な調査委員の選定等に時間を要する場合もあり、調査開始の遅れ等が課題として指摘されている。学校又は学校の設置者が、主体的に調査を行うことを前提としつつも、上記の場合などには、必要に応じて地方公共団体の長に対して支援や協力を求め、迅速な調査組織の立ち上げ及び調査の開始に努めること。
 なお、都道府県教育委員会においては、小規模の自治体など、平時から調査組織の設置が困難な地域も想定されることを踏まえ、これらの地域を支援するため、職能団体や大学、学会等の協力を得られる体制を平素から整えておくこと。


【参考】(略)

【添付資料】(略)
・添付資料1 警察に相談又は通報すべきいじめの事例
・添付資料2 いじめ防止対策に係る関係府省連絡会議について
・添付資料3 いじめ防止対策に係る今後取り組む検討項目について





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