◆200102KHK194A2L0339CM
TITLE:  「日の丸・君が代」処分事例集
AUTHOR: 羽山 健一
SOURCE: 最終更新:2017年9月19日
WORDS:  


「日の丸・君が代」処分事例集

大阪地裁1972年4月28日判決判決
福岡地裁1980年6月20日判決判決
福岡高裁1980年11月26日判決
京都地裁1992年11月4日判決判決
大阪高裁1996年1月25日判決判決
最高裁三小1999年1月29日判決
那覇地裁1993年3月23日判決判決
福岡高裁那覇支部1995年10月26日判決判決
福岡地裁1993年8月31日判決判決
鹿児島地裁1994年1月28日判決
福岡高裁1995年1月23日判決
最高裁二小1995年6月29日判決
大阪地裁1996年2月22日判決判決
大阪地裁1996年3月29日判決判決
大阪高裁1998年1月20日判決判決
福岡地裁1998年2月24日判決判決
福岡高裁1999年11月26日判決
最高裁二小2000年9月8日判決判決
横浜地裁1998年4月14日判決判決
浦和地裁1999年4月26日判決判決
浦和地裁1999年6月28日判決判決
仙台地裁2000年2月17日判決
千葉地裁2000年3月3日判決
青森地裁弘前支部2000年3月31日判決判決
仙台高裁秋田支判2001年1月29日
最高裁一小2001年7月12日決定
東京地裁2000年4月26日判決判決
東京高判2001年1月30日判決判決
最高裁二小2001年6月29日決定
浦和地裁2000年8月7日判決
東京高裁2001年5月30日判決判決
福岡地裁小倉支部2000年12月26日判決
福岡高裁2002年3月7日判決
最高裁2003年9月5日判決
東京地裁2001年3月22日判決判決
東京高判2002年1月28日判決判決
最高裁二小2002年7月12日決定
大津地裁2001年5月7日判決判決
大阪高判2002年11月28日判決
東京地裁2001年12月20日判決
広島県人事委員会2003年8月20日裁決
東京地裁2003年12月3日判決判決
東京高裁2004年7月7日判決判決
最高裁三小2007年2月27日判決判決
広島地裁2003年12月16日判決
広島高裁2005年7月26日判決
東京地裁八王子支部2004年5月27日判決判決
東京高裁2005年2月10日判決判決
東京地裁2004年7月23日決定決定
東京地裁2007年7月19日判決
広島地裁2004年12月9日判決
東京地裁2004年12月28日判決
東京高裁2005年9月8日判決
東京地裁八王子支部2005年3月6日決定決定
福岡地裁2005年4月26日判決判決
福岡高裁2008年12月15日判決
最高裁一小2011年7月14日判決
東京地裁2005年9月5日決定
大阪地裁2005年9月8日判決判決
大阪高裁2006年11月22日判決
最高裁三小2007年4月24日決定
東京地裁2006年3月22日判決判決
東京高裁2006年12月26日判決判決
最高裁二小2007年7月20日決定
東京地裁2006年5月30日判決判決
東京高裁2008年5月29日判決判決
最高裁一小2011年7月7日判決
東京地裁2006年7月26日判決判決
東京高裁2007年6月28日判決
東京地裁2006年9月12日判決判決
東京高裁2008年3月11日判決
最高裁一小2008年8月6日決定
東京地裁2006年9月21日判決判決
東京高裁2011年1月28日判決判決
最高裁一小2012年2月9日判決
北海道人事委員会2006年10月20日裁決裁決
大阪地裁2007年4月26日判決判決
大阪高裁2007年11月30日判決判決
東京地裁2007年6月20日判決判決
東京高裁2010年2月23日判決
最高裁一小2011年7月14日判決
神奈川県個人情報保護審査会2007年10月24日答申答申
神奈川県個人情報保護審議会2008年1月17日答申答申
横浜地裁2011年8月31日判決
東京高裁2012年7月18日判決
最高裁二小2013年4月17日決定
東京地裁2008年2月7日判決判決
東京高裁2010年1月28日判決判決
最高裁一小2011年6月6日判決判決
東京地裁2008年3月27日判決
東京高裁2009年2月18日判決
最高裁一小2009年8月14日決定
東京地裁2009年1月19日判決判決
東京高裁2009年10月15日判決
最高裁二小2011年5月30日判決判決
東京地裁2009年2月19日判決
東京高裁2011年3月10日判決
最高裁一小2012年1月16日判決
広島地裁2009年2月26日判決
広島高裁2010年5月24日判決
最高裁三小2011年6月21日判決
東京地裁2009年3月19日判決
東京高裁2010年4月21日判決判決
最高裁三小2011年6月14日判決判決
大阪地裁2009年3月26日判決判決
大阪高裁2009年9月9日判決判決
東京地裁2009年3月26日判決判決
東京高裁2011年3月10日判決判決
最高裁一小2012年1月16日判決
東京地裁2009年3月26日判決
東京高裁2011年3月25日判決
最高裁一小2012年1月16日判決
[差戻後]東京高裁2012年11月7日判決
最高裁二小2013年7月12日決定
横浜地裁2009年7月16日判決判決
東京高裁2010年3月17日判決判決
最高裁三小2011年6月21日決定
東京地裁2010年2月25日判決
東京高裁2010年8月19日判決
最高裁二小2011年7月4日判決
東京地裁2010年3月24日判決
東京高裁2010年9月28日判決
最高裁三小2011年7月19日判決
東京地裁2010年3月29日判決
東京高裁2010年11月10日判決
最高裁二小2011年7月4日判決
東京地裁2010年7月15日判決
東京高裁2012年10月25日判決
最高裁一小2013年9月5日
東京地裁2011年1月31日判決
東京高裁2012年6月27日判決
最高裁三小2013年9月10日
東京地裁2011年4月18日判決
東京高裁2012年10月18日判決
最高裁二小2013年9月6日
東京地裁2011年7月25日判決
東京高裁2012年10月31日判決
最高裁二小2013年9月6日判決
大阪地裁2012年2月6日判決判決
大阪高裁2012年10月18日判決
東京地裁2012年4月19日判決
東京高裁2013年2月26日判決
最高裁一小2013年9月5日
広島地裁2012年4月24日判決
広島高裁2013年6月20日判決
最高裁一小2014年3月6日決定
札幌地裁2013年11月29日判決
東京地裁2013年12月19日判決
東京地裁2014年3月24日判決
東京高裁2015年5月28日判決
最高裁三小2016年5月31日決定
東京地裁2015年1月16日判決
東京高裁2015年12月4日判決
最高裁三小2016年7月12日決定
東京地裁2015年5月25日判決
東京高裁2015年12月10日判決
東京地裁2015年10月8日判決
東京高裁2016年7月19日判決
大阪地裁2015年12月21日判決
大阪高裁2016年10月24日判決
最高裁一小2017年3月30日決定
東京地裁2016年4月18日判決
東京高裁2017年4月26日判決
大阪地裁2016年5月23日判決
大阪地裁2016年7月6日判決
大阪高裁2017年8月31日判決
大阪地裁2016年12月12日判決
大阪高裁2017年8月30日判決
大阪地裁2017年5月10日判決
東京地裁2017年5月22日判決
東京地裁2017年9月15日判決
  


























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大阪府立阿倍野高校・日の丸刑事事件

大阪地裁1972年4月28日判決
昭和40年(わ)第6110号 公務執行妨害被告事件

 

 大阪府議会は1963年10月11日、「官公庁及び各種学校において、日曜日を除く毎日午前9時から午後5時までの間、一斉に国旗の掲揚が行われるよう強く要望する」旨決議した。これに基づき府教育委員会は、同年11月30日、教育長名で各府立学校長宛に「国旗尊重の指導を一層徹底するするために日々国旗を掲揚することが望ましいと考えるので、特に配慮せられたい。」旨通達を出した。

このような状況下で、阿倍野高校で、A校長は国旗の連日掲揚の方針を出し、1964年12月の職員会議にはかったが、否決されるに至った。それにもかかわらず、A校長は教職員の大多数の反対を押し切って国旗の連日掲揚を実施した。1965年2月9日、交渉に派遣された大阪府立高等学校教職員組合(府高教)B執行副委員長と成績判定会議に出席するA校長との間に紛争が起こり、Bが公務執行妨害罪で起訴されたものである。裁判所は、Bの行為が可罰的違法性を欠くという弁護人側の主張に対して、次のような判断を下し、被告人を無罪とした。

(1) 国旗の掲揚については、物理的側面と教育的側面をもち、両者は不可分な関係にある以上、このような教育内容に関する問題については「校長が、教職員とよく話し合って納得のうえで実施することが望ましい」。

(2) 校長が教職員の大多数の反対を押し切って国旗の連日掲揚を強行したことは、「校務を掌る立場(学校教育法51条、28条3項)にある校長が自らの判断と責任においてなしうる事項であるかの法的評価はともかくとして、異例の措置であることは否めないところであって、阿倍野高校の教職員が校長の執った措置に反対したのも肯けないわけではない」。

(3) Bの行為は、殴る蹴る等の粗暴なものではなく、交渉を要求するための押しあいであり、公務の執行である校長の判定会議への出席も2、3分ないし3、4分遅延したにすぎず、法益侵害の程度は極めて軽微である。

(判タ283-256、教育判例百選(第3版)32事件)

 

 

 


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宗像町立自由ヶ丘小学校・卒業式君が代斉唱実施計画事件

福岡地裁1980年6月20日判決
昭和55年(行コ)第20号 君が代斉唱計画処分取消請求事件 却下

 

  1980年3月19日、宗像町立自由ヶ丘小学校では卒業式が挙行されることとなっていたところ、ある生徒の父親が、卒業式において君が代斉唱の実施を計画していることは、憲法19条、20条に違反するとして当該実施計画の取消を求めた。右父親の主張のポイントは、君が代斉唱は神社神道の布教を手助けするものであり、旧憲法時代に神社神道が国教化して狂信的軍国主義の精神的基盤となったこと等の反省から、現行憲法において信教の自由等が保障されることになったことに鑑みるならば、本件卒業式において小学校児童やPTAに君が代を押しつけることは許されないというところにある。

  これに対し、被告である同小学校校長は、小学校の卒業式において国歌君が代の斉唱を計画することは行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に当たらないので取消訴訟の対象とはならない。また、卒業式は予定期日に挙行され、本件口頭弁論終結当時において既に終了していると主張した。

  本判決は、君が代斉唱は卒業式における式次第の一部にすぎないものであって、計画通りに斉唱がなされても、式典に参加する児童、父兄、教職員、その他の関係者のいずれの権利義務に何らの変動を生ずるものではないことは明白であり、処分の取消しを求める訴えの要件を充足していないと判断した上で、訴えを却下した。

(福岡地裁1980年6月20日判決 却下)
(判時997-103、判タ423-130、教育判例百選(第3版)33事件)
(福岡高裁1980年11月26日判決 棄却)

 

 

 


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京都市教育委員会・君が代テープ配布事件

京都地裁1992年11月4日判決
昭和62年(行ウ)第7号・9号・13号・19号 損害賠償請求事件 一部却下一部棄却

 

  1986年2月上旬、京都市教育委員会(学校教育課長ら)は、「君が代」の演奏及び合唱を録音したカセットテープを市内の各小中学校の校長に配布することを決定した。この決定を受けて、被告Xは、カセットテープ290本の購入を決定し、その代金として4万4950円の公金を支出した。

  本件は、京都市の住民である原告Aらが提起した住民訴訟である。原告側の主張は、被告側が行ったカセットテープの購入と配布は、日本国憲法の基本原理である国民主権に反する「君が代」の斉唱、もしくは斉唱の強制を目的とする行為であり、日本国憲法が保障する思想・良心の自由を侵害する行為である。それ故にカセットテープの購入は、違法な公金の支出に該当するというものである。そして原告Aらは、京都市に代位して、京都市教育委員会委員長、教育委員、教育委員会事務局総務課長、学校指導課長、施設課長、小中学校校長らを被告として、違法な公金の支出による損害賠償請求とカセットテープの引き渡しを請求する住民訴訟を提起したのである。

(1) 住民監査請求の相手方と住民訴訟の被告の同一性について

  地方自治法242条の2第1項は、住民訴訟を提起する要件として住民監査請求を事前に行うことを規定している。この訴訟では、住民監査請求は行われているが、その対象である当該職員・相手方と、住民訴訟の被告との間にズレが生じているのである。

  「住民監査請求は、その行為等が複数である場合において行為の性質、目的等に照らしこれらを一体とみてその違法又は不当性を判断するのを相当とする場合を除き、その対象となる財務会計上の行為を他から区別し、特定して認識できるように個別的具体的に摘示してしなければならない。」そして、「このことは、住民訴訟の対象となる客観的事実だけではなく、その主観的事実、即ちこれを行った当該職員ないしその相手方についても同様である。」しかし、ここで言う住民監査請求は、「当該行為等とこれを行った職員の個別的、具体的摘示によって、その対象となる財務会計上の行為を他から区別して認識できる程度」のもので充分である。関与した職員が複数である場合は「当該行為の性質、目的等に照らし同一部局員又は担当者であるこれらの職員を一体とみて、その違法性又は不当性を判断するときは、必ずしも、全職員を個別的具体的に摘示しなくてもよい」。このような場合には、「後に監査結果により判明したところに従い、職員の一部を追加ないし変更したうえ、同一部局員又は担当者である新たな被告に対しても、監査請求を経たものとして、従前の被告とともに、住民訴訟を提起できる」。

(2) カセットテープの購入と損害の発生について

 「本件カセットテープの購入は、被告Xが市内の写真機店で市販の普通の録音用のカセットテープを買い受けたものであって、この時点では君が代が録音されていたものではない。この段階でカセットテープは、どのような音声をも録音できるものであって、君が代に限らず、他の教材の録音用にもなるものでそれ自体有用であり、不用品であるとは認められない。」

 また、前提行為の無効が財務会計上の行為に影響を与えるとしても、「君が代」を録音するという目的は、本件カセットテープ購入の動機に過ぎず、これを相手方に表示したという事実は認められないから、本件カセットテープの購入は無効になるものではない。それ故に「本件テープ代金支払いのためにした公金支出は、債務の弁済であって、これによる損害はないというべきである」

 「原因行為の違法が重大かつ明白である場合には財務会計上の行為が違法になるという違法継承を認める見解がある。被告参加人は、この見解に立ち、原因関係の君が代の録音、斉唱に重大明白な違法がないから、公金支出は違法ではないと主張する」。これに対し、原告側は「君が代」の違法性を主張し重大かつ明白な違法に限定した違法継承論を争っている。しかし、「君が代」の内容の適否は、「司法判断に適合しないものであり、本件において、このような違法継承論をとることは相当でないし、この理論そのものに疑問があり、当裁判所はこれを採用しない。」

(3) 「君が代」について

  「国歌とか、それと同視される歌は国民各人の心の深層に内在するシンボルの一つでもある。国歌ないしこれに準ずるものとして、君が代の内容が相当かどうかは、内心に潜在するシンボルの適否の問題といえる。それはもともと、国民ひとりひとりの感性と良心による慣習の帰すうに委ねられるべき性質のものなのである。」「国歌とされるものは、時代と国歌や社会の推移につれて好むと好まざるに拘わらず様々な歴史を刻んでいく。それに伴いその意味や受け止め方も変遷し、あるいは陳腐化して時代に合わないといわれたり、あるいは、なお、これを伝統的なものとして維持すべきであるという対立した意見が次第に生じてくる。」「国歌とされるものの歌詞や曲が二義を差し挟まない程度に明らかに憲法を誹謗し、破壊するものであることが明白でない限り、その適否は、本来、裁判所の司法判断に適合しないものである。

(京都地裁1992年11月4日判決 判時1438-37、判タ799-258、判地自106-31)
(大阪高裁1996年1月25日判決 控訴棄却 判タ909-124、判地自149-62)
(最高裁1999年1月29日判決 上告棄却)

 

 

 


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沖縄国体・日の丸焼却事件

那覇地裁1993年3月23日判決
昭和62年(わ)第346号 建造物侵入、器物損壊、威力業務妨害被告事件 有罪

 

(事件の概要)

  被告人は、1987年の沖縄国体の際、読谷村で行われたソフトボール競技の開始式において、スコアボード上のセンターポールに掲揚されていた日の丸旗を引き下ろし、これに火をつけ、球場内の観客に掲げて見せた後、投げ捨てた。被告人は、競技会の運営を混乱させたとして、建造物侵入、器物損壊、威力業務妨害罪に問われ起訴されたが、読谷村長の告訴状記載の「日の丸旗」は検察官の起訴状では「国旗」と記載されたため、日の丸の国旗としての法的根拠をめぐって論争が展開された。

(判旨)

  被告人を懲役1年に処する。執行猶予3年。

(1)「民主主義社会においては、自己の主張の実現は言論による討論や説得などの平和的手段によって行われるべきものであって」「被告人の実力行使は手段において相当なものとはいい難く」「正当行為であるとはいえない」。

(2)日の丸旗は、国際関係においては、他国と識別するために法律等により国旗として用いることが定められているといえるが、他方、国内関係において国民統合の象徴として用いる場合の「国旗については何らの法律も存在せず、国民一般に何らの行為も義務づけていない。しかし、現在、国民から日の丸旗以外に国旗として扱われているものはなく、また多数の国民が日の丸旗を国旗として認識して用いているから」、検察官が公訴事実において、器物損壊罪の対象物として記載した「国旗」とは「日の丸旗」を指すと理解でき、訴因の特定、明示に欠けるところはない。

(3)弁護人は、器物損壊等につき軽微事件としてその法益侵害も小さく起訴猶予が相当であるのに、あえて起訴した本件起訴は平等原則に違反すると主張するが、「公訴提起が無効とされるのは公訴提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に限られる」。

(那覇地裁1993年3月23判決、判時1459-157、判タ815-114)
(福岡高裁那覇支部1995年10月26日判決、判時1555-140)

 

 

 


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福岡国体「日の丸・君が代」事件

福岡地裁1993年8月31日判決
平成2年(行ウ)第24号 損害賠償請求事件 棄却


(事件の概要)

  第四五回国民体育大会の開催にあたり、福岡県が県国体事務局を設け、被告が知事として自ら福岡県実行委員会の会長に就任し、県職員をその業務に従事させ補助金の交付および実施要項の作製を行わせた。これに対し、福岡県の住民である原告らは、国体実施要項に違法性があり、その作製に係る費用などにつき、福岡県に損害を与えたとして、県に代位し被告に対し損害賠償を求めた。
  原告の主張する違法性は、@実施要項の参加資格には、「日本国籍を有する者とする」と記載され、この国籍条項は、憲法11条、13条、14条に反する、A「日の丸・君が代」、「天皇杯・皇后杯」、国籍条項の押し付けを内容とする実施要項は天皇制強化の押し付けであって「スポーツの目的外利用禁止」を定めたスポーツ振興法1条に違反する、B「日の丸・君が代」は法律上「国旗」「国歌」としての根拠がなく、それを国民に強制することは、公権力によって一定の思想信条の表現を国民に押し付け、強制することであって、憲法19条、20条、21条、国際人権条約B規約18条、19条に違反する、というもの。

(判決の要旨)

(1) 参加資格を日本国民や県民に限ったとしても、右憲法の規定に違反するとはいえない。なぜなら、憲法は、国民や県民の心身等の健全な発達等を目的として開催される国民体育大会等の参加資格までも外国人の参加資格を認めるべきであることを規定しているとは解されないからである。
(2) 憲法は国民主権とともに象徴としての天皇を規定し、国民主権下の天皇制の存在を認めている。日の丸・君が代、天皇杯・皇后杯の授与、国籍条項が国民主権に反する天皇制強化の押し付けであるとの法的・論理的必然性は認められない。
(3) 日の丸・君が代は、事実上多数の国民から国旗・国歌として扱われてきており、ほかに国民統合の象徴として用いられているものはない・・・ことに照らせば、国民参加の国体の開会式等においてこれを用いることは、その目的に沿うということもできるのであり、これをもって個人の思想、信条の強制、表現の押付けであるとはいえない。

(判例タイムズ854号195頁)

 

 

 


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大阪府立東淀川高校・日の丸引き下ろし事件

大阪地裁1996年2月22日判決
平成3年(ワ)第8943号 損害賠償請求事件 棄却[確定]

 

 府立高校の教諭A及び実習助手Bらは、卒業式当日、同校玄関前のポールに日の丸を掲揚しようとした同校長の行為を妨害し、また、入学式当日、右ポールに掲揚された日の丸を引き下ろす等の行為をしたとして、訓告の制裁を受けた。そこで、Aらは、校長のした日の丸掲揚行為及び教育委員会のした右訓告処分がそれぞれ違法であるとして、校長と大阪府に対して慰謝料の支払を求めた。本判決は次のような検討を行い、原告らの主張する違法は認められないとして請求を棄却した。

(1) 「学習指導要領、すなわち本件国旗掲揚条項は、法規としての効力をもつ」ものであり、したがって、高等学校長が、これに従って国旗の掲揚、又はこれの指導にかかわる行為をしたときには、適法な職務遂行行為に当たる。

(2) 「『日の丸』は日本を象徴する国旗であるとの慣習法が成立しているというべきである(法例二条参照)」。...「『日の丸』をめぐる現状や『日の丸』以外に日本を象徴する国旗として扱われているものが存在しないことを考えると、少なくとも現時点においては、日本の国旗は『日の丸』以外には有り得ないといわざるを得ない」。

(3) 「職員会議は校務の運営を円滑かつ効果的に行うために極めて必要かつ有効なものではあるが、これは法令上の根拠があるものではなく、また、校務の運営について最終決定をする権限も有してはいないのであって、校長はその職務を行うに当たって職員会議の意見を尊重すべきではあるが、これに拘束されるべきものとまではいうことはできない」。

(4) 「原告らは、憲法は思想良心の自由に反する行為及びこれを侵害する行為を強制されないことも保障していると主張するが、自分の考えと相容れないからといって、適法な職務行為を実力をもって妨害する行動に出ることまでを憲法が保障しているとは到底認めることができない」。

(判タ904-110、判地自146-37)

 

 

 


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鯰江中学校「日の丸」裁判

大阪地裁1996年3月29日判決
平成4年(ワ)第5768号 損害賠償請求事件 棄却[控訴]

  本件は、中学校の教員で日の丸掲揚に反対の思想をもつ原告が、卒業式(平成4年3月12日)の式典で抗議の発言をし、さらに入学式(同年4月2日)において抗議のプレートを着用したことを理由に市教委から文書訓告の措置を受けたことに対し、原告が思想及び良心の自由の権利侵害として被告校長に対し民法709条に基づき、大阪市に対し国賠法1条に基づき、慰謝料の支払いを求めたものである。

(判示事項)

(1) 文部大臣が、中学校の教科事項を定める権限に基づき教育内容等について基準を定めた本件学習指導要領の基準は、教育における機会均等の確保と一定の全国的水準の維持という目的上、必要かつ合理的と認められる大綱的基準にとどめられるべきところ、「入学式や卒業式などにおいて、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導する」旨の「国旗掲揚条項」(文部省告示第25号)は、右大綱的基準を逸脱せず法的効力を有する。

(2) 現在においては、日の丸を日本国国旗とする慣行と国民的確信がすでに形成され、一種の慣習法となっている。

(3) 国家や地方公共団体が、教師に対し、日の丸を掲揚する卒業式等に出席し、式典の事務運営の義務を課しても、教師に内心の世界観等の告白を強制するものでないかぎり、思想及び良心の自由の侵害に当たらない。

(4) 卒業式に「壇上の日の丸に抗議します」等と発言し、「入学式に『日の丸』はいりません!」等と記したプレートを着用した原告に対し職務専念義務に反する行為として文書訓告とした市教委の措置は相当と認められる。

(鯰江中学「日の丸」裁判を支援する会「鳳仙花」1998年9月)
(大阪地判1996年3月29日:労判701-61)

 

鯰江中学校「日の丸」裁判

大阪高裁1998年1月20日判決
平成8年(ネ)第1143号 損害賠償請求控訴事件 棄却[確定]

 

1.学習指導要領の法的効力

  教育基本法10条は、教育行政機関が教育条件の整備確立のための措置を講ずるにあたって、「教育の自主性尊重の見地から、不当な支配となることのないように配慮すべき義務を課して」いるが、「許容される目的のために、必要かつ合理的な範囲であるならば、たとえ教育内容及び方法に関するものであっても、これを決定することは、必ずしも同条の禁止するところではない」。

2.国旗掲揚条項の法的効力

  国旗掲揚条項には「国旗についての一方的な一定の理論を生徒に教え込むことを強制するものと解することはできず、日の丸を巡る客観的な歴史的事実等を含め、教師による国旗についての創造的、かつ弾力的な教育の余地や、地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地は十分に残されていると認められる。以上の点から考えると、国旗掲揚条項は、前記大綱的基準を逸脱するものとはいえず、教育基本法一〇条に抵触せず、法的効力を有すると解される」。

3.校長の権限と職員会議の決定の効力について

  「職員会議は、法令上の根拠がなく、校務運営について最終決定をする権限は有していないのであるから、校長がその職務を行うにあたっては、職員会議の意見を十分に聴取し、これを尊重すべきことが要請されているとはいえ、その決議が、校長の職務遂行を法的に拘束するとまでは解せない」。

4.日の丸は、国旗掲揚条項に規定される「国旗」であるか

  「これを慣習法と評価すべきか否かについては、なお検討を要するとしても、少なくとも、国旗掲揚条項にいう国旗とは、日の丸を指すことは明らか」というべきである。

5.卒業式等における国旗掲揚が、思想良心の自由を侵害するか

  「国家や地方公共団体が、教師に対し、その職務行為の一環として、日の丸の掲揚された式典の場に出席し、その式典の事務運営をする義務を課したとしても、国旗に対し敬礼をさせるなど、国旗に対する一定の観念を告白させるに等しい行為を強制する場合は格別として、そのことだけで、ただちに当該教師の思想及び良心の自由を侵害する強制行為があったとすることはできない」ものというべきである。

6.文書訓告の違法性の有無

  「入学式や卒業式の職務遂行中に、正当な理由なくマイクで式典の進行を妨げる発言や、一定の要求等を掲げるプレートを着用し、校長を含めた教職員ら、生徒、保護者らに対し、自己の信じる主義、思想等を発表することは、職務命令に違反し、かつ職務専念義務に反するもの」であり、許されない。

(大阪高判1998年1月20日:判地自182-55)

 

 

 


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福岡市立長尾小学校事件・ゲルニカ訴訟

福岡地裁1998年2月24日判決
平成6年(行ウ)第3号 戒告処分取消請求事件 請求棄却[控訴]

 

 X教諭の勤務する市立小学校では、卒業式に向けて六年生の旗を作るための実行委員会が設けられ、6年生によりピカソのゲルニカの絵を模写した旗が制作された。6年生児童はゲルニカの旗を卒業式場の正面ステージに掲げてほしいとの希望を有していたが、これは叶えられず、卒業式では、正面ステージに日の丸の旗が張られ、ゲルニカの旗はパネルに貼られた状態で卒業生席背面に掲げられた。

 ゲルニカの旗が正面に掲げられなかったことに反発した卒業生B子は、国家斉唱時に着席し、二度にわたり「歌えません」と叫んだ。B子は、卒業証書授与の際に与えられた決意表明の機会に「私はゲルニカをステージに張ってくれなかったことについて深く怒り、そして侮辱を感じています。校長先生は私達に対して、私達を大切に思っていなかったようです。ゲルニカには平和への願いや私達の人生への希望をも託していたというのに、張ってくださいませんでした。」と述べ、卒業式場が騒がしくなったが、校長が「静かに」と言い、Xが「子どもの発言は最後までお願いします」とB子の発言を続けさせたところ、B子は「私は怒りや屈辱をもって卒業します。私は絶対に校長先生のような人間になりたくないと思います。」と述べて発言を終えた。

 これに対し、市教育委員会は、「Xは、本件卒業式で国家斉唱時に、担任の児童の国家斉唱拒否の発言及び着席に呼応するかのように着席し、また卒業式が正常な進行とはいえないなか、退場の際、右手こぶしを振り上げるという参列者に多大の不信を招くような卒業式にふさわしくない不適切な行為を行った。このことは教育公務員としてふさわしくない行為であり、地方公務員法第二九条第一項の懲戒事由に該当する」として、Xに対し、戒告処分を行った。本件はXが本件処分の取消を求めた事例である。

(1) 本件着席が原告の意思に基づくものであると認められること、本件挙手が来賓や保護者に対する抗議ないしは勝利の意思表示と認められることを考慮すれば、戒告処分という、懲戒処分としては最も軽い形式による本件処分が、社会観念上著しく妥当を欠くものといえず、懲戒権の濫用によるものと判断することはできない。

(2) 小学校には校長以下の教職員が構成員となる職員会議が設置されるのが通例であるが、右職員会議の設置及びその権限に関する法令上の根拠は存在せず、儀式的行事の運営を決定する権限は校長にあると解するのが相当である。職員会議は校長の諮問機関として位置付けられるものであり、職員会議が広く認知され、通常その構成員が学校に所属する教職員全員とされることからすれば、その答申に当たる職員会議の決定が校長において相当程度尊重されるべきであるが、このことは校務に関する校長の職務権限自体に影響を与えるものではない。

(福岡地判1998年2月24日 判タ965-276)
(福岡高判1999年11月26日[控訴棄却]労判784-82)
(最二小決2000年9月8日[上告棄却])

 

 

 


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平塚養護学校・日の丸引き降ろし事件

横浜地裁1998年4月14日判決
平成6年(行ウ)第16号 訓告処分取消等請求事件 一部棄却一部却下[確定]

 

  本件は県立学校教諭であった原告らが、入学式において、ポールに掲揚されていた日の丸を引き下ろし、県教委から文書訓告処分を受けたため、県教委に対してその取り消しを、また、県に対し国家賠償法による慰謝料の支払いを求めたものである。

  本判決は、まず原告らの「訴えの利益の存否」について判断を示している。すなわち、判決は、本件訓告処分は懲戒処分と異なり、何らの法的効果も伴わないものであるから、行訴法三条二項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為」とはいえないとして、原告らの訴えを却下した。これに対し、賠償請求の訴えは独立の訴えとして、それ自体は適法として内容の判断に入っている。

(1) 入学式及び卒業式における国旗の掲揚は、校務をつかさどり、所属職員を監督する権限を有する校長が、学習指導要領の定める大綱的な基準に準拠して、その権限と責任に基づいて行う校務というべきであるから、校長が行う国旗の掲揚又はその指示に関わる行為をしたときは、右行為は適法な職務遂行行為に当たるということができる。

(2) 職員会議は法令上の根拠があるものではなく、決議機関ともいえず、校長の校務遂行上の補助機関と解すべきであるから、校長が校務を行うに当たって職員会議の意見を尊重することが望ましいとはいえても、その意見は校長を拘束するものではなく、校長の校務として国旗を掲揚する権限に影響を与えるものではない。

(3) 日の丸は日本を象徴する国旗であるとの慣習法が成立しているということができる。

(4) 憲法二六条の規定する子どもの教育は、教育を施す者の支配的権能ではなく、何よりもまず、子どもの学習をする権利に対応し、その充足を図りうる立場にある者の責務に属するものとしてとらえられるべきものであって、原告らの権利としてとらえることはできない。・・・教師に完全な教育の自由を認めることはできないというべきであるから、日の丸の掲揚が憲法二六条に違反するということはできない。

(5) 日の丸掲揚自体は原告らが日の丸の掲揚に反対の意思表示をする自由を侵害するものとはいえないから、原告らの憲法二一条違反の主張は採用することができない。さらに、日の丸掲揚は、これによって原告らの内心に強制を加えるものではないから、原告らの憲法一九条違反の主張も採用することができない。

(判タ1035-125、労判744-44、判地自182-55)

 

 


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三郷市立南中学校・卒業式欠席事件

浦和地裁1999年4月26日判決
平成8年(ワ)第1175号 損害賠償請求事件 一部認容一部棄却[確定]

 

  本件は、中学校の卒業式での日の丸掲揚、君が代斉唱に反対して卒業式を欠席した教員が、卒業生の担任でありながら呼名をしなかったことは、地方公務員法の職務専念義務および信用失墜行為に該当する非違行為があったとして減給処分を受けたが、右教員の懲戒処分の内申が市教育委員会の議決を経ずに県教育委員会に進達されたことから、県人事委員会が右処分を取り消したところ、右教員が、県、市、市教育長を相手取って三〇〇万円の損害賠償を請求した事案である。判決は、本件処分を適法として、県に対する損害賠償を請求を退けたが、市教育長の内申書の進達は違法であるとして、市に対して五万円の慰謝料の支払いを命じた。本件は日の丸掲揚、君が代斉唱を直接問題とする事案ではないので、この問題について掘り下げた検討を行っていない。

(1) 本件処分は、原告が本件卒業式に出席せず、生徒の呼名を行わなかったこと等の所為に対して課せられたものであり、県教育委員会が、原告の日の丸の掲揚、君が代の斉唱に対して反対するという思想、信条を侵害する目的あるいは正当な組合活動に対し圧力をかけるという目的で本件処分をしたという事実を認めることはできない。

(2) 学習指導要領では、国旗を掲揚し、国歌を斉唱することが望ましいとされており、また、校長は、本件卒業式においては、日の丸を掲揚し、君が代を斉唱することとし、南中学校の職員全員に本件卒業式への出席を指示したのであるから、・・・原告の右行為が、教職員としての職の信用を傷つけたと同時に、職務に専念す義務に違背していることは明かであるといわざるを得ない。

(3) 県教育委員会が、本件処分をするに際して、本件内申書が市教育委員会の議決を経ることなく県教育委員会に進達されたことを知っていたと認めることはできない。・・・右のとおりであるから、県教育委員会が市教育委員会の内申の一連の手続きの瑕疵があることを看過して本件処分をしたことを理由に、被告県に対し損害賠償を求める請求は、理由がない。

(労判771-45、判地自197-48)

 

 


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埼玉県立福岡高校・卒業式予行中止事件(1)

浦和地裁1999年6月28日判決
平成8年(行ウ)第19号 懲戒処分・裁決取消請求事件 請求棄却[確定]

 

 県立高校教諭(8名)が、校長が卒業式に日の丸を掲揚することを決定したことに反対して、担任する学級の生徒に日の丸の掲揚に反対する内容の印刷物を配布した上、生徒を放課して、卒業式の前日に予定されていた予行練習を行わなかった。これに対し県教育委員会は教諭らの行為が地方自治法33条の信用失墜行為及び35条の職務専念義務違反に該当するとして、戒告の懲戒処分をした。教諭らは教育委員会に対し本件処分の取消を求め、さらに、県人事委員会に対しその裁決の取消を求めた。判決はいずれについても違法は認められないとして、請求を棄却した。本件では、校長が日の丸の掲揚についての態度を保留し、卒業式前日の予行練習予定日の朝会において、卒業式で日の丸を掲揚塔に掲げる旨申し渡した。これに対し、原告らは、日の丸掲揚について校長と話し合う必要があるとして、第一及び第二時限は、予定どおり三年生のみの予行練習を実施したうえで、第三時限からの一年生及び二年生をあわせた予行練習を中止したのである。

(1) 国内において「日の丸」を国民統合の象徴としての国旗と定めた法規は存しないが、「日の丸」は、諸外国から日本を象徴する国旗として是認され、国内においても「日の丸」以外に国旗として取り扱われているものも存しないし、国旗として認容されていることは公知の事実である。

(2) 原告らは、本件行為は教育に密接に関連するものであり、文書の配布、行事の中止等は現場の教員の判断に委ねられているところであると主張する。...[しかし]職員は職員会議を通じて、自主的、主体的な立場から、校務の運営に必要な意見を述べることができるが、公務の運営についての最終的な決定をする権限を有するものでないことは、明かである。...本件予行練習を本件日程表に従って行うこととしたことは、校務をつかさどり、職員を監督する権限を有する校長が、その権限と職責に基づいて行う校務というべき[である]。

(3) 本件予行練習を行うことによって原告らの内心の自由に強制を加えるものでもない。

(4) 原告らは、教育局指導部次長として、事故報告書の提出及び事実確認等を指揮監督する立場にあったXが本件裁決に人事委員として関与しているので、本件裁決は、違法である旨主張する。...[しかし]Xが、原告らの本件行為について、教育局の職員に事実を調査するように指示したとしても、係る事実をもって、Xが、人事委員として、本件裁決を行うにつき中立公正を期待することができない事情が存したと認めることはできない。

(判タ1037-112、判地自199-51)

 

 


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日の出町立平井小学校・日の丸引き下ろし事件

東京地裁2000年4月26日判決
平成7年(行ウ)第49号 懲戒処分取消請求事件 認容[控訴]

 

 本件は、小学校教諭である原告が、勤務する小学校で行われた入学式当日に、校庭の国旗掲揚塔に掲揚されていた国旗を入学式の開会直前に引き降ろしたことが、地公法三二条(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)及び同法三三条(信用失墜行為の禁止)に違反するとして、戒告処分を受けたので、その取消しを請求した事案である。

 本判決は、本件戒告処分が町教育委員会の内申をまって行われたか否かについて、関係証拠を詳細に検討したうえで、本件戒告処分に先立ち町教育委員会からの内申が被告に提出されていたことを認めることはできず、本件戒告処分はその手続において地教行法三八条一項違反の違法があるとして、本件戒告処分を取り消した。ただし、本判決は上記の手続的適法性についてのみ検討して結論を下しているので、それ以外の争点については判断していない。

 県費負担教職員の任命権は、都道府県教育委員会に属するものとされているが、その服務の監督は勤務する学校を設置した市町村の教育委員会が行うものとされ(地教行法四三条一項)、県費負担教職員の任免その他の進退は、都道府県教育委員会が市町村教育委員会の内申をまって行うものとされている(同法三八条一項)。本件は、県費負担教職員の懲戒処分の取消訴訟において、市町村教育委員会からの内申と、当該懲戒処分の先後関係が争われた稀なケースである。

(東京地判2000年4月26日 判タ1053-122、判地自204-58、労判796-85)
(東京高判2001年1月30日[控訴棄却])
(最二小決2001年6月29日[上告不受理])

 

 

 


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私立柴田女子高校・国旗敬礼事件

青森地裁弘前支部2000年3月31日判決
平成10年(ワ)第63号 懲戒処分無効確認等請求事件 認容

 

  本件は、青森県弘前市の私立柴田女子高校の男性教諭が、1998年4月の入学式で国旗に敬礼しなかったことなどを理由に、同年6月、出勤停止4日の懲戒処分と1学年の担任から外す処分を受けたのを不服として、同校を経営する学校法人柴田学園を相手に、処分無効確認を求めたものである。青森地裁弘前支部は、原告の主張を全面的に認め、学校側に処分無効を言い渡した。

  学校側の主張する処分理由は、同日の入学式で教諭が(1)担任として新入生の名前を呼ぶ際、投げやりな態度に終始した、(2)あえて日の丸に敬礼しなかった、(3)始末書の提出を求められたのに対し不当に拒否したというものである。

 同校は大学から幼稚園まで7校を抱える学校法人柴田学園傘下の高校で、国旗敬礼を教育の柱の一つにしており、17年前にも学園創設記念に在校生に国旗を配り、労使が対決するなどの紛争が起きている。(毎日新聞2000年4月1日、東奥日報2000年4月1日web版)

(1) 原告の呼名が全く投げやりでやる気のないものであったかどうかは、それを聞く者の主観に多かれ少なかれ左右されうるものであることからすると、通常人を基準にした客観的判断として、原告が全く投げやりな態度であったとまで認めることはできないというべきである。仮に、被告が主張するような態度で呼名がなされたとしても、・・・本件入学式は粛々と進行し、その進行に特段支障が生じたわけでなく、生徒・父兄から苦情等が寄せられるなどして被告の信用を傷つけるといったことも認められないことからすると、右程度の原告の呼名態度をもって、「学園の信用を著しく傷つけたり、名誉を汚すような言動」(本件就業規則11条1項)がある、或いは「秩序、風紀をみだす」(同条2項)があると認めることはできないというべきである。

(2) 国民である以上、国旗に対する崇敬の念を持つべきであるかどうかということについては、原被告間において見解が大きく相違するところである。しかし、仮に、被告が主張するような見解を前提にするとしても、そのことから直ちに、国旗に対して一礼を行うことが企業秩序の一つを形成し、労働契約の内容として労働者に義務づけられると解されるわけではない。これは、被告においても同様であって、国旗に対する礼を欠いたことの一事をもって、直ちに被告の企業秩序を乱したと解することはできない。

(3) 原告は意図的に登壇の際の礼を欠いたわけではなく、たまたまこれを失念したものに過ぎないものであるから、・・・右行為によって混乱が起きたり、式進行に支障が生ずることもなく、また、生徒・父兄から苦情、抗議が寄せられたというわけでもないこと、実際、被告理事長としても、国旗に対する敬礼を欠いたことそれ自体を捉えて、原告を懲戒処分に付す考えは有していなかったことからすると、客観的に学園の信用を著しく傷つける、又は秩序を乱す行為があったと認めることはできない。

(4) 本件入学式において、原告が適切な呼名をしなかった行為及び国旗に対して一礼をしなかった行為は、いずれも被告の信用を著しく傷つけたり、名誉を汚すような言動には該当せず、被告の秩序を乱す行為にも当たらず、就業規則で定められた非違行為があったとは認められないから、このような行為について、反省の意を表すことを内容とする始末書を要求し、労働者にその提出を強制することは許されないというべきである。

(青森地裁弘前支判2000年3月31日 労判798-76)
(仙台高裁秋田支判2001年1月29日[棄却])
(最一小決2001年7月12日[上告不受理])

 

 

 


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埼玉県立福岡高校・卒業式予行中止事件(2)

浦和地裁2000年8月7日判決
平成8年(行ウ)第20号 戒告処分取消等請求事件 請求棄却[控訴]

 

  本件は同名事件(1)と同一の事例で、処分を受けた教諭らが別々に提訴したため二つの判決が言い渡されたものである。本件原告の教諭(3名)は事件(1)の原告の同僚である。判決は事件(1)とほとんど同様の理由で請求を棄却しているので、要旨についてはそちらを参照されたい。また、判決文の多くの部分で、事件(1)とまったく同じ文言が用いられている。

  本件にのみ見られる原告側の主張は、原告の行為が「校長による『日の丸』強制という憲法一九、二六条、国際人権法に反する行為に対する抵抗権の行使として適法なものであり、右適法な原告らの本件行為に対する本件処分は違法である」とするものである。判決はこれについても明確な説明を欠いたまま「右主張には、理由がない」としており、説明の不十分さにおいても事件(1)と共通している。

(浦和地判2000年8月7日 判地自211-69)
(東京高判2001年5月30日[控訴棄却・上告] 判例時報1778-34)

 

 

 


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東京都立養護学校・校舎落成式典日の丸引き下ろし事件

平成7年(行ウ)第123号 東京地裁2001年3月22日判決
懲戒処分取消請求事件 請求棄却[控訴]

 

  東京都立養護学校の落成記念式典において、同校校庭の国旗掲揚塔に校長と教頭により掲揚されていた国旗を引き下ろして隠ぺいした養護学校教諭に対してなされた懲戒処分の取消請求事件。

(1) 「掲揚された日の丸旗を実力で引き降ろした上、これを自己の占有下におき、一時的にせよ校長からの返還要求にも応じなかったというもので、決して軽視できないものであること、現実に生徒らも原告による日の丸引き降ろしを見ていることからすれば、その後原告が返還した日の丸旗が再度掲揚され、本件式典がとどこおりなく行われたことを考慮しても、客観的にみて、教育公務員としての職の信用に傷をつけ、職員の職全体の不名誉となる行為であって、地方公務員法33条(信用失墜行為)に違反する違法な行為であるといわざるを得ず、・・・同時に同法32条(法令・職務命令に従う義務)にも違反するというべきである。」

(2) 原告は、本件処分が思想良心の自由を侵害するものとして憲法19条に違反するとも主張するが、校長らのした日の丸旗掲揚行為は適法な職務遂行行為であり、これを実力で妨害することまでを同条が保障しているとは到底認められないことから、この点に関する原告の主張も採用できない。」

(3) 被告は、本件処分に先立ち、原告から事情聴取を行っており、所定の手続に従って、懲戒分限委員会の答申を受けた上、教育委員会を開催し、本件処分を議決しているのであるから、本件処分の処分手続に、違法があるとはいえない。」

(東京地判2001年3月22日[請求棄却・控訴])
(東京高判2002年1月28日[控訴棄却・上告] 判例時報1792-52)

 

 

 


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宮城県古川工業高校・日の丸廃棄事件

仙台地裁2000年2月17日判決
懲戒処分取消請求事件 請求棄却[確定]

 

  1995年3月の宮城県古川工業高校の卒業式において、職員会議では日の丸を掲揚しないよう決めていたにもかかわらず、校長が日の丸掲揚を強行しようとしたため、同校教諭が日の丸を掲揚しようとしていた者から、部外者とともに実力によって日の丸旗を奪い取って掲揚を阻止し、別の場所に掲揚した学校関係者から、再び日の丸旗を奪うとともに校舎のトイレに捨てた。県教委はこれを職務命令に背いた行為であるとして、同教諭を停職6カ月の懲戒処分とした。本件は、県教委による停職処分は懲戒権の乱用であるとして、同教諭が県教委を相手取り、処分取り消しを求めたものである。

 同教諭は校長が掲揚したのは職権を逸脱した行為で、それを阻止したのは思想信条の自由に対する侵害排除の正当防衛と主張していた。判決は、「原告の行為は他人の所有物への毀損行為であり、明らかに違法。教員としての信用を傷つけた」として訴えを棄却した。掲揚の是非そのものについての判断は示されなかった。(毎日新聞宮城版2000年2月18日など)

  本件では、国旗掲揚妨害の他に授業中の教育活動も処分対象とされている。すなわち、英語教諭であった原告が、沖縄戦と天皇の戦争責任を語り合う集いを企画し、そのビラを授業中に配布し、さらに、授業中の生徒に対し、天皇制と民主主義の関係あるいは日本政府の戦後の経済進出についての見解を表明したというものである。判決は「このような行為が、学習指導要領に定める英語教科の目標を逸脱するとともに、学校教育法42条に定める高等学校の教育の目標に違反する」として本件処分を支持している。

(教育委員会月報2000年9月)

 

 

 


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滋賀県立彦根商業高校・日の丸持ち去り事件

大津地裁2001年5月7日判決
平成7年(行ウ)第3号・第4号 戒告処分取消請求・減給処分取消等請求事件 請求棄却[控訴]

 

  1994年3月の卒業式に関わって、県立八日市養護学校の教諭である原告Aは、職員会議で校長に対する暴言を行い、卒業式の前日に生徒の卒業証書を無断で持ち去ったとして戒告処分を受けた。県立彦根商業高校(現彦根翔陽高校)の教諭である原告Bは、卒業式当日、日の丸を掲揚するため玄関に向かう教頭から日の丸を奪い取って逃げ去り、日の丸掲揚を妨害したとして減給処分を受けた。同高校の教諭である原告Cは、卒業式当日、式場に掲げられていた日の丸を持ち去って隠匿し、日の丸掲揚を妨害したとして戒告処分をうけた。本件は、原告らが、県教育委員会に対して各処分の取消を求めるとともに、県に対して、違法な処分により昇給延伸等の不利益や精神的苦痛を被ったとして損害賠償の支払を求めた事案である。

(1)高等学校指導要領の国旗条項の設けられた趣旨は教育基本法の精神に反するとまではいえないこと、国旗条項は全国的になされることが望ましいものであること、国旗掲揚の実施方法等については各学校の判断に委ねられており、その内容は一義的なものではないこと、国旗条項は教師に対し国旗についての一方的な一定の理論を生徒に教え込むことを強制するものと解することはできないことなどを理由にして、教育における機会均等の確保等の目的のために必要かつ合理的な基準を設定したものとして法的効力を有する。

(2)日の丸を掲揚したからといって、その式典が何らかの思想に賛同を表するために開催されることになるものではなく、出席者がそのような思想に賛同を表することになるものでもないから、卒業式において国旗掲揚を実施することは、教師や生徒、保護者の内心に強制を加えるものと解することができない。したがって、国旗条項が憲法13条、19条、23条、25条、26条及び市民的及び政治的権利に関する国際規約18条に反するとはいえない。

(3)校務運営についての決定権限は法令上校長にあって、職員会議にはないのであるから、校長がその職務を行うにあたっては、職員会議の意見を十分に聴取し、これを尊重すべきことが望ましいし、また必要であるとはいえ、職員会議の決議が校長の権限よりも優先するということはできない。

(4)被告教育委員会が本件各処分をするにあたって、原告らに対し、その権利保護のため告知、弁解の機会を与えなかったとしても、直ちに裁量権の逸脱があったとまではいうことはできない。

  なお、国歌条項については、本件各処分の対象行為と関係がないから、判断の必要がないとした。

(大津地判2001年5月7日 判例タ1087-117、判地自221-42)
(大阪高判2002年11月28日[控訴棄却・確定])

 

 

 


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東京都田無市立柳沢小学校・日の丸引き下ろし事件

東京地裁2001年12月20日判決
懲戒処分取消請求事件 請求棄却

 

 東京都田無市立小学校に勤務していた男性教諭が、1995年4月の始業式に掲揚されていた日の丸を降ろしたことで都教委から戒告処分にされたことを不服とし、取消を求めた訴訟の判決が20日、東京地裁であった。(朝日新聞2001年12月21日)

  判決は「原告の本件引き降ろし行為は、実力で妨害する態様のものであったこと、児童の見ている前で行われていること、本件処分が法令上の根拠を有する懲戒処分のなかでは最も軽微な処分(戒告)であることからすれば、...本件処分が社会観念上著しく妥当を欠いているとまでは認め難い」として、原告の請求を棄却した。

  その一方で、当該校長が「今までどおり行う」旨発言しながら、これに反し、従前とは異なる時間帯での日の丸掲揚を行ったことについて、「日の丸旗を巡っては様々な意見があることが考えられるから、本件のように校長が学校行事・式典における日の丸旗の掲揚を従前と異なる方法で行おうとする場合には、自己の考え、意図について十分に教職員に説明し、理解と納得を得るよう努めることが肝要であり、校務運営に関する最終的な決定権限が校長にあるからといって、そのような努力も払わないまま、いたずらに自らの権限に固執するのは...相当ではない。」として、校長の対応が「決して好ましいものとはいえない」と指摘した。

 

 

 


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千葉県立高校・国旗掲揚反対教員転任事件

千葉地裁2000年3月3日判決
損害賠償請求事件 請求棄却

 

  本件は、県立高校教諭に命じられた転任処分が、入学式での国旗掲揚に反対したことなどへの報復人事であり、人事権を濫用した違法な処分であるとして県等に対して行った損害賠償請求である。

(1) 原告は、県教委が定めた異動方針及び異動方策には合理性がない旨主張するようであるが、異動方針及び異動方策の目的、内容は、千葉県における教員人事の実情及びその推移に照らすと、これを是正するための方策として極めて妥当なものであり、また、人事における恣意的判断の排除ないし公平の理念にも適うものであって、優れて合理的な制度であると解すべきである。

(2) 原告は本件転任処分は持ち上がりを認めなかったことにより、高校の校務に支障を来すものであったと主張するが、持ち上がりができないような異動は特別の理由がない限り許されないということはできず、教員が持ち上がりをすべきかどうかは、異動を必要とする理由と、そのことによって現実に生ずる校務運営上の支障の有無、程度、内容等を比較検討して総合的に判断すべきものであるところ、本件においては、原告が本件転任処分により持ち上がりができなくなったとしても、このことから同校に著しい校務運営上の支障が生ずるものであったとはいえないというべきである。

(3) 原告が本件転任処分によって受けたと主張する不利益の主たるものは、持ち上がりができなかったことに基づくものであるが、・・・原告の心情は事実上のものにすぎす、法的に保護すべき利益には当たらないというほかはない。

(教育委員会月報2000年9月)

 

 

 


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指宿市立南指宿中学校・国歌斉唱中着席事件

最高裁(二小)1995年6月29日判決
懲戒処分取消請求事件 上告棄却

 

  卒業式の国歌斉唱の際に、校長の指示に反して起立せず、市教委や県教委の事情聴取等に応じなかった中学校教諭が懲戒戒告処分を受けた事例で、同教諭は人事委員会への不服申立および再審査請求が却下されたために処分の取消を求めて提訴した。

  (原判決の要旨)鹿児島県教育委員会規則31条1項に基づく再審査請求は行訴法14条4項にいう「審査請求」に当たると解され、当該再審の請求自体が不適法として却下する旨の決定が県人事委員会によりなされた場合には、当該再審請求に同項は適用されず、この場合には本件処分の取消を求める訴えの出訴期間は、本件裁決書正本が原告に送達された日から起算すべきであり、同日から三ヶ月が経過した後に提起された本件訴えは、出訴期間を経過したものであり不適法である。

(鹿児島地判1994年1月28日 却下)
(福岡高判1995年1月23日 棄却)
(最高裁(2小)判1995年6月29日 棄却)
(教育委員会月報1996年8月)

 

 

 


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東京都日野市立南平小学校・ピアノ伴奏拒否事件

東京地裁2003年12月3日判決
平成14年(行ウ)第51号 戒告処分取消請求事件 棄却

 

  小学校の入学式で君が代のピアノ伴奏を拒否したことを理由に戒告処分を受けた東京都日野市の市立小学校教諭(50)が都教委の処分取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は3日、請求を棄却した。

  判決によると、日野市の小学校に勤務していた音楽教諭は1999年4月、国歌斉唱の際にピアノで伴奏するよう校長に命じられたため「思想信条に照らしてできない」と拒否し、伴奏がテープに切り替えられた。都教委は同年6月、「校長の職務命令に従わなかった」として地方公務員法違反(職務命令違反、信用失墜行為)に該当するとして戒告処分にした。教諭側は「伴奏の強制は思想、良心の自由を保障した憲法に反する」として、戒告処分の取り消しを求め、2002年1月に提訴した。

  判決理由で山口幸雄裁判長は「全体の奉仕者である地方公務員は、思想・良心の自由についても公共の福祉の見地から、職務の公共性において制約を受ける」と指摘し、「学校教育法などで、入学式において国歌の斉唱が求められていることなどから、職務命令は合理的範囲内」であり、「目的や手段に著しい不合理性がない以上、職務命令の違法性は問えない」と認定し、「職務命令は正当で、思想・良心の自由を制約するものであっても、教諭は受忍すべきものだ」と判断し、処分を適法と認めた。

京都新聞・朝日新聞 web news 2003.12.03

判決の要旨は次のとおり


(1) 憲法19条違反の有無
  本件職務命令は、本件入学式において音楽専科の教諭である原告に「君が代」のピアノ伴奏を命じるというものであり、そのこと自体は原告に一定の外部的行為を命じるものであるから、原告の内心領域における精神的活動までも否定するものではない。
  原告のような地方公務員は、全体の奉仕者であって(憲法15条2項)、公共の利益のために勤務し、かつ、勤務の遂行に当たっては、全力を挙げて専念する義務があるのであり(地方公務員法30条)思想・良心の自由も、公共の福祉の見地から、公務員の職務の公共性に由来する内在的制約を受けるものと解するのが相当である(憲法12条、13条)。
  思想・良心の自由も、公務員の公共性に由来する内在的な制約を受けることからすれば、本件職務命令が、教育公務員である原告の思想・良心の自由を制約するものであっても、原告において受認すべきもので、これが憲法19条に違反するとまではいえない。
  「君が代」斉唱を実施することが子どもの思想・良心の自由に対する侵害となるとしても、そのことは「君が代」斉唱実施そのものの問題である。校長が教諭に対して「君が代」のピアノ伴奏をするよう職務命令を発したからといって、それによって直ちに原告主張の子ども及びその保護者の思想・良心の自由が侵害されるとまではいえない。
(2) 憲法1条違反の有無
  天皇は日本及び日本国民統合の象徴であるから(憲法1条)、「君が代」の「君」が天皇を指すからといって、直ちにその歌詞が憲法1条を否定することには結び付かない。「君が代」のピアノ伴奏を命じた本件職務命令が憲法1条に違反するということはできない。
(3) 憲法99条違反の有無
  本件職務命令は憲法に違反するものではないから、その発出が公務員の憲法尊重擁護義務を定めた憲法99条に違反するとはいえない。
(4) 校長の管理権ないし校務掌理権の濫用の有無
  本件職務命令は、職務命令発出の要件を満たしているといえるし、かつ、他に望ましい選択肢があるかどうかはともかくとして、本件入学式における「君が代」のピアノ伴奏を命じた本件職務命令自体が、明らかに不当な目的に基づくものであるとか、内容が著しく不合理であるとまではいえないから、本件職務命令が校長の管理権ないし校務掌理権を濫用したとまではいえない。

(東京地裁2003年12月3日判決 判時1845号135頁)
(東京高裁平成16(行コ)13 2004年7月7日判決  控訴棄却)

 

東京都日野市立南平小学校・ピアノ伴奏拒否事件

最高裁第三小法廷2007年2月27日判決
平成16年(行ツ)第328号 戒告処分取消請求事件 棄却

判決の要旨

(1) 上告人は,「君が代」が過去の日本のアジア侵略と結び付いており,これを公然と歌ったり,伴奏することはできない,また,子どもに「君が代」がアジア侵略で果たしてきた役割等の正確な歴史的事実を教えず,子どもの思想及び良心の自由を実質的に保障する措置を執らないまま「君が代」を歌わせるという人権侵害に加担することはできないなどの思想及び良心を有すると主張するところ,このような考えは,「君が代」が過去の我が国において果たした役割に係わる上告人自身の歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上の信念等ということができる。

(2) 本件職務命令は,上記のように,公立小学校における儀式的行事において広く行われ,南平小学校でも従前から入学式等において行われていた国歌斉唱に際し,音楽専科の教諭にそのピアノ伴奏を命ずるものであって,上告人に対して,特定の思想を持つことを強制したり,あるいはこれを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものでもなく,児童に対して一方的な思想や理念を教え込むことを強制するものとみることもできない。

(3) 憲法15条2項は,「すべて公務員は,全体の奉仕者であって,一部の奉仕者ではない。」と定めており,地方公務員も,地方公共団体の住民全体の奉仕者としての地位を有するものである。こうした地位の特殊性及び職務の公共性にかんがみ,地方公務員法30条は,地方公務員は,全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し,かつ,職務の遂行に当たっては全力を挙げてこれに専念しなければならない旨規定し,同法32条は,上記の地方公務員がその職務を遂行するに当たって,法令等に従い,かつ,上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない旨規定するところ,上告人は,南平小学校の音楽専科の教諭であって,法令等や職務上の命令に従わなければならない立場にあり,校長から同校の学校行事である入学式に関して本件職務命令を受けたものである。

裁判官藤田宙靖の反対意見(破棄差戻)

(1)私には,まず,本件における真の問題は,校長の職務命令によってピアノの伴奏を命じることが,上告人に「『君が代』に対する否定的評価」それ自体を禁じたり,あるいは一定の「歴史観ないし世界観」の有無についての告白を強要することになるかどうかというところにあるのではなく,・・・むしろ,入学式においてピアノ伴奏をすることは,自らの信条に照らし上告人にとって極めて苦痛なことであり,それにもかかわらずこれを強制することが許されるかどうかという点にこそあるように思われる。

(2)本件において問題とされるべき上告人の「思想及び良心」としては,このように「『君が代』が果たしてきた役割に対する否定的評価という歴史観ないし世界観それ自体」もさることながら,それに加えて更に,「『君が代』の斉唱をめぐり,学校の入学式のような公的儀式の場で,公的機関が,参加者にその意思に反してでも一律に行動すべく強制することに対する否定的評価(従って,また,このような行動に自分は参加してはならないという信念ないし信条)」といった側面が含まれている可能性があるのであり,また,後者の側面こそが,本件では重要なのではないかと考える。
  このような信念・信条を抱く者に対して公的儀式における斉唱への協力を強制することが,当人の信念・信条そのものに対する直接的抑圧となることは,明白であるといわなければならない。

(3)「全体の奉仕者」であるということからして当然に,公務員はその基本的人権につき如何なる制限をも甘受すべきである,といったレヴェルの一般論により,具体的なケースにおける権利制限の可否を決めることができないことも,また明らかである。本件の場合にも,ピアノ伴奏を命じる校長の職務命令によって達せられようとしている公共の利益の具体的な内容は何かが問われなければならず,そのような利益と上記に見たようなものとしての上告人の「思想及び良心」の保護の必要との間で,慎重な考量がなされなければならないものと考える。
 校長が発した職務命令が,公務員の基本的人権を制限するような内容のもの であるとき,人権の重みよりもなおこの意味での校長の指揮権行使の方が重要なの か,が問われなければならないことになる。

(最高裁第三小法廷2007年2月27日判決 判タ1236号109頁・最高裁HP)

 

 

 


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府中市立小中学校校長・国歌斉唱不実施事件

広島県人事委員会2003年8月20日裁決
懲戒処分不服申立事件 請求棄却

 

  本件は国歌斉唱指導を実施しなかった市立小中学校長に対し、県教育委員会が戒告処分を行ったことについて、被処分者が当該処分の取消を求めた不服申し立て事件である。裁決要旨は次のとおり。

(1)国歌斉唱の指導は、その性質上、地域差、学校差を越えて全国的に共通なものとして行われることが適当であるから、これを学習指導要領の一条項として規定することは、教育における機会均等の確保と全国的な一定の教育水準の維持という目的から是認されるものである。

(2)小中学校における国歌斉唱の指導は、児童生徒に精神的、肉体的な苦痛を伴うような指導を行ったり、事後の不利益取扱いを伴わせてするのでなければ、一般的には児童生徒の内心(思想及び良心)の自由を侵害することにはならない。

(3)府中市教育委員会が、請求人らの非違行為に対して何らかの措置もとらず、内申もしないことは、人事管理上著しく適正を欠くものであるから、本件処分が市町村教育委員会の内申なしに行われたことをもって、地教行法38条に違反し、違法・無効であるとまではいえない。

(教育委員会月報2003年12月)

 

 

 


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北九州市立小学校・運動会国旗申し入れ事件

最高裁2003年9月5日判決
賃金等損害賠償請求事件 原審破棄

 

  勤務時間中に職専免の承認や年休の届出のないまま、運動会の国旗掲揚の件で申し入れを行った行為は、職員団体の活動であるとし、訓告を受けたことは違法であるなどとしてなされた損害賠償請求事件。

(判旨)
 学校の職員が校長と職場の問題について話し合う際、どのような場合に職務離脱とみなされるかの基準が周知徹底されていなかったなどの理由から、原告になされた本件訓告を、懲戒権の濫用であると認定した原審を是認することはできない。

  訓告は、地公法上明文の規定はないが、職員に義務違反があった場合に、服務の監督権を有する者がその行為を将来にわたって戒めるために行う措置であって、懲戒処分とは異なるものである。本件における原告の義務違反は、職務に専念する義務という公務員制度の根幹を成す義務違反であり、上記の諸事情があるからといって、懲戒権の濫用には当たらない。

(福岡地裁小倉支部判2000年12月26日 一部認容)
(福岡高判2002年3月7日 一部認容)
(最高判2003年9月5日 原審破棄)
(教育委員会月報2004年12月)

 

 

 


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広島県立世羅高校・転任処分事件

広島地裁2003年12月16日判決
平成12年(ワ)第1580号 損害賠償請求事件件 棄却(控訴)
二審広島高裁2005年7月26日判決 棄却

 

(事件の概要)
 高教組の役員である原告らを転任させた行為は、高教組の活動を抑えるためになされた違法なもので、原告らに対し様々な苦痛を与えているとしてなされた損害賠償請求

(判決理由の要旨)
  教員の人事異動については、原則として、任命権者である県教委の自由裁量に委ねられている。
  そもそも県立学校教職員は勤務先を特定の学校に限定して採用されたものではなく、他の学校への人事異動は当然予定されていること、人事交流の促進は、教職員に多様な経験を積ませてその資質・能力の育成を図ることに資するし、職場の活性化や教職員の地域ごとの不均衡の是正にもつながると考えられることからすれば、6年以上の在職者は積極的に配置替えを行うという人事異動方針は、十分合理的なものということができる。
  在職期間が長期にわたる原告を人事異動方針における基本的な考え方に従って異動させることは十分合理的である。さらに、校長自殺事件の学校運営に及ぼす悪影響を慮り、それを緩和・軽減させる目的で外部からの抗議の対象となっている組合幹部の異動を考慮することは、合理性があることから、他の諸事情とともにこのことをも一要素として勘案した上で、異動の有無・内容を決することは、当然許される。

(教育委員会月報2004年12月9頁)

 

 

 


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東京都国歌斉唱拒否教職員・再発防止研修事件

東京地裁2004年7月23日決定
平成16年(行ク)202号 研修命令執行停止申立事件 申立却下
(本案 平成16年(行ウ)第307号)

 

  東京都が申立人らに対して発した服務事故再発防止研修命令の取消を求める訴えを本案として、当該本案判決の確定に至るまで本件研修命令の効力停止を求める申立て。

(判旨)

  申立人らが日本国民として、憲法19条により思想・信条の自由を保障されていることはいうまでもないが、他面において、申立人らは東京都の教職員であるから、公務員としての地位に基づいてなされる職務行為の遂行に際して、全体の奉仕者として公共の福祉による一定の制約を受けることがあるのも論を俟たないところであり、一般的に、相手方は、命令権者によってなされた職務命令に従わなかった教職員に対し、その再発防止等を目的として一定の研修を受けるよう命じ、その研修において一定の指導を行うことができると考えられる。ただし、それは、あくまでも公務員としての職務行為の遂行に必要な範囲内のものに限定して許されるものであり、個人的な内心の自由に不当に干渉するものであってはならないというべきである。

  したがって、本件研修が、本件職務命令等に違反した教職員に対して、公務員としての服務規律を含む教職員としてあるべき一定の水準の維持向上や職務命令違反の再発防止を目的として、それに必要な範囲内で外形的な指導を行うものにとどまるのであれば違憲違法の問題は生じないと考えられるが、例えば、研修の意義、目的、内容等を理解しつつ、自己の思想、信条に反すると表明する者に対して、何度も繰り返し同一内容の研修を受けさせ、自己の非を認めさせようとするなど、公務員個人の内心の自由に踏み込み、著しい精神的苦痛を与える程度に至るものであれば、そのような研修や研修命令は合理的に許容されている範囲を超えるものとして違憲違法の問題を生ずる可能性があるといわなければならない。

 しかしながら、本件研修命令自体をもって直ちに申立人らの内心の自由が侵害されるというわけではないことのほか、そもそも現段階においては、未だ本件研修が実施されているわけではなく、その具体的な内容や方法、程度も明らかではないこと、仮に、相手方の申立人らに対するその後の対処によって申立人らに何らかの損害が発生したとしても、それは、その段階で金銭賠償を求めたり、当該処分等の効力を争うことによって別途回復可能と考えられることからすると、現時点において、回復困難な損害の発生を回避するために緊急の必要があるときに該当するものと認めることはできないというべきである。

(判時1871号142頁、労判876号80頁)

 

 

 

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東京都国歌斉唱拒否教職員・再発防止研修事件

東京地裁2007年7月19日判決
平成16年(行ウ)第307号、同第314号
 服務事故再発防止研修命令処分取消等請求事件 棄却

 

(事件の概要)

  都教委教育長は、平成15年10月23日、「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」を発出し、これに基づき、都立高校等の各校長は、同日以降、教職員に対し、学校行事等において国歌斉唱時に国旗に向かって起立し国歌を斉唱するように(又は国歌斉唱時にピアノ伴奏をするように)職務命令を発した。都立高校等の教職員である原告らは、同日以降行われた学校の周年行事、平成16年3月中に行われた卒業式及び同年4月中に行われた入学式において、上記職務命令に従わず、国歌斉唱時に起立せず、国歌を斉唱 しなかった(又はピアノ伴奏をしなかった)ことから、都教委によって、懲戒処分(戒告又は減給)を受け、同処分を受けたことを理由として服務事故再発防止研修(本件各研修。原告ら全員に対して基本研修(本件基本研修)、原告らのうち2名に対しては基本研修の他に専門研修(本件専門研修))を受講することを命じられ、同研修を受講させられた。
  原告らは、被告に対し、本件各研修の発令及び実施は、原告らの思想及び良心の自由等を侵害する違憲、違法なものであり、また、裁量権を逸脱、濫用した違法なものであり、これにより原告らは精神的苦痛を受けたとして、不法行為(国家賠償法)に基づく損害賠償請求として、慰謝料各1万円及び遅延損害金の支払を求めた。

(判決理由の要旨)

1 思想・良心の自由、信教の自由の侵害について

(1) 原告らが、学校行事等において国歌斉唱時に起立せず、国歌を斉唱しなかったのは、国歌や国旗が過去の我が国の歴史上や宗教上果たしてきた役割に係わる原告らの歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上の信念又は信教そのもの、あるいは国家の教育に対する関与のあり方に係わる原告らの教育観及びこれに由来する職業上の信念に基づくものである。このような考えを持つこと自体は、思想及び良心の自由あるいは信教の自由として保障される。
(2)ア しかし、原告らは、本件各研修の原因となった職務命令や懲戒処分、すなわち、学校行事等における国歌斉唱時に起立し、国歌を斉唱するという職務命令及びこれに従わなかったことを理由として行われた懲戒処分について、違憲性、違法性を主張せず、その有効性については争っていない。
  そうすると、本件各研修は、原告らが有効な職務命令に違反したために有効な懲戒処分が行われたことを原因として、有効な職務命令に違反する事態の再発防止を目的として、行われたというほかない。したがって、本件各研修の発令が違法となる余地はなく、研修の発令の原因や目的の点において、本件各研修自体が憲法違反となることはない。本件各研修が、研修実施後に行われる学校行事等において発令されることが予想される職務命令(国歌斉唱時の起立、斉唱をすることを内容とするもの)違反がないようにすることを目的とすることは明らかであるが、原告らは本件各研修の原因となった職務命令が有効であることは争わないのであるから、研修実施後に発令される職務命令も当然に有効であり、そうであれば、研修実施後に発令される有効な職務命令に違反することがないようにすることを目的とする本件各研修が違法となる余地もない。
イ また、本件各研修の実施態様をみても、原告らの思想及び良心の自由や信教の自由が侵害されたとはいえない。
  本件基本研修は、担当課長から、「教育公務員の服務義務と関係法令について」というレジュメに基づいて、地方公務員法の適用範囲、服務規定に係る条文の説明、服務事故の事例の説明、服務事故に対する処分の説明等が行われ、最後に、研修内容と所感についての報告書の作成が求められたものにすぎず、その記載内容についても特段の指示はなかったというのであるから、原告らの思想、良心、信教について、表白が求められ、あるいはその思想等の変更が迫られた事実はない。
  本件専門研修は、「説諭及び服務指導」として、約20分程度、懲戒処分の理由、法令や職務命令に従う義務があることについての説諭が行われた後に、事例問題として、地方公務員法の説明や、服務事故の事例について説明が行われ、最後に、報告書の作成を求めたというものであり、専門研修を受講させられた2名の思想、良心、信仰の表白や変更を求めたものではない。
(3) 以上によれば、本件各研修の実施された内容が、原告らの思想及び良心の自由や信教の自由を侵害するものであったとは認められない。

2 裁量権の逸脱・濫用について

  原告らは、@起立しなかったこと等は、服務事故再発防止研修が目的とするモラル向上や反省になじむ非行行為ではない、A原告らが懲戒処分の違憲性を争っているときに、本件各研修を発令、実施することは、原告らの懲戒処分の取消しを求める係争の利益を奪うのみならず、同一の事実を理由として二重の不利益を課すことにほかならない、B服務事故再発防止研修を定める実施要綱(本件実施要綱)は、服務事故を起こした教職員全員に平等に適用されてはいない、C本件各研修は、原告らに精神的苦痛を与える目的で実施された、などとして、本件各研修の発令及び実施が、都教委が有する裁量権を逸脱、濫用して行われた違法なものであると主張する。
  しかし、@については、セクシャル・ハラスメントや体罰などの非行行為と、原告らが信念に基づいて国歌斉唱時に起立をしなかったという職務命令違反との間には差違がないとはいえないが、非行行為の差違によって適切な研修のあり方が異なってくることはあっても、職務命令違反の行為がある以上、その再発防止に向けた研修をすることが違法となるとは解されない。Aについては、懲戒処分の再発防止に向け、教育公務員としての自覚を促し、自己啓発に努め、モラルの向上を図ることを目的とする研修の発令、実施によって、懲戒処分を受けた教職員の係争の利益を奪われるとはいえないし、二重の不利益を課すことにもならない。Bについては、本件で非行とされた行為が、原告らの信条と密接に関連がある行為であることからすれば、原告らに対して本件実施要綱を適用することが差し控えられるべきであったとの主張にも理解し得る点はあるものの、これも原告らの非行行為に対しては再発防止研修を差し控えるという選択もあり得たというに止まるものであって、職務命令に従わなかった原告らに対して再発防止研修を行うことも選び得るのであるから、本件実施要綱を適用することが、裁量の逸脱や濫用となるとは解されない。Cについては、証拠上、本件各研修が、原告らに苦痛を与える目的で行われたものとは認められない。

(判例タイムズ1282号163頁)

 

 

 


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八王子市立石川中学・国旗国歌批判授業事件

東京地裁八王子支部2004年5月27日判決
平成13年(ワ)第443号 損害賠償請求事件 棄却(控訴)

(事件の概要)

  2002年2月、八王子市立石川中学の家庭科の教諭が、3年生の最後の授業で、君が代・日の丸について授業でとりあげた。その際、資料として、地下鉄サリン事件の実行犯に関する新聞記事を配り、そこには、「やりたくないという気持ちはありました。しかし、指示された以上はやるしかない、と思いました」、「正しいとか、間違っているかと考えるのではなく、上からの指示は自分で判断するべきでない、無条件に従うべきもの、という思考が徹底していたのです」なとという実行犯の証言が載せられていた。これを題材にして、当該教諭は「被告のことばをあなたはどう捉えますか。『卒業・入学式に『日の丸』を掲揚せよ、『君が代』を斉唱させよ』と、教委から指導された全国の校長のことばと同じに聞こえませんか。思考は同じ、だと思いませんか。」などと語りかけ、生徒たちに、自分の頭で考えて行動する人間になって欲しい旨を伝えた。

  これに対して、八王子市教育委員会は、この授業が「地方公務員法に抵触する、教育公務員たるにふさわしくない行為であって、学校及び職の信用を著しく傷つける誠に許し難いものである」として、同年8月、当該教諭を文書をもって訓告した。本件は、当該教諭が訓告が違法であると主張して、国家賠償法1条による損害賠償を求めた事案である。

(判旨)

  裁判所は次のように述べて、本件訓告は市教委に認められた服務監督権限の行使に関する裁量を逸脱するものではないとした。

 「校長らを犯罪者に比肩するこのような本件授業の方法が、原告の目指した自主性の尊重という教育の目的を達成するのに通常必要となる手段であると評価することは到底困難である。そして、原告が、上記のような教育手段を採用したことに関して教育行政から事後的に訓告という措置を受けたとしても、他の教育手段によって原告の目指す教育を行うことは何ら妨げられるものではない。」

 「本件授業に対して市教委がした本件訓告は、地方公務員法に基づく懲戒とは異なり、被訓告者である原告に対して直ちに法的な不利益をもたらさない指導監督上の措置であることが明らかである。」

 「市教委が上記のような原告の授業方法に是正すべき点があるとして服務監督上の措置として本件訓告を行うことは、不相当なものとは言い難く、本件訓告は教育基本法10条1項の趣旨に反するということはできない。」

(東京地裁八王子支部判決 判例地方自治266号49頁)
(東京高裁2005年2月10日判決 棄却)

 

 

 


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広島県公立学校・国旗掲揚台改修費用違法支出事件

広島地裁2004年12月9日判決(損害賠償請求事件) 棄却(控訴)

 

(事件の概要)

 国旗の常時掲揚のため掲揚台を新設・改修するための支出が違法であるとしてなされた住民による損害賠償請求

(判旨)

  学校施設の改修等についてこれを行うかどうか、その方法等については、各校長らの合理的な裁量判断に委ねられており、その判断の内容や手続きについて裁量の範囲を逸脱したとか又はこれを濫用したと認められる場合でない限り、その判断が法的に違法であるということはできない。しかるに、校長の判断ないし選択が教育委員会の意向を受けたものであってもそのことから直ちに裁量が与えられた趣旨ないし目的に反することにならないのはいうまでもないし、国旗の常時掲揚によって生徒が国旗を身近に感ずることができるような環境を整えることを目的として行われたとされる校長らの行為が直ちに裁量権の逸脱ないし濫用であるとはいえない。

  また、教職員や生徒等の意見を聞きながら円滑に校務を行うことが望ましいものとしても、校務を行うことは校長の職務であって、学校設備として適切な設備整備等が行われている以上、学校職員等の意見を聞かなかったことが直ちに裁量権の濫用に当たるものということはできない。

(教育委員会月報 2005年12月)

 

 

 


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東京都国歌斉唱拒否教職員・再発防止研修事件

東京地裁2005年9月5日決定
研修命令執行停止申立事件 申立却下(確定)

 

(事件の概要)

 平成16年度卒業式、平成17年度入学式において、職務命令に違反して国歌斉唱時に起立せず、職務命令違反、信用失墜行為により懲戒処分を受けた教諭らが、服務事故再発防止研修の受講を命じられたことについての執行停止申立

(判決理由の要旨)

  行政事件訴訟法25条は、処分の取消しの訴えがあった場合において、執行不停止を原則としつつ、「処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に限り、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の停止をすることができる旨を定め(同条2項)、また、「重大な損害」を生じるか否かを判断するに当たっては、「損害の回復の困難の程度を考慮」し、「損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案」すべきとしている(同条3項)。

  本件専門研修が、短時間のものに過ぎないとしても、その目的を逸脱し、その方法、内容、態様等において、当該教職員の思想・信条に反する見解を表明するよう強制し、あるいは、思想・信条の転向を強いるなど、その内心の自由に踏み込み、当該教職員に著しい精神的苦痛を与えるようなものであるときには、そのような研修を命じる職務命令は、受講者に対し重大な損害を生じさせるものであって、同法25条2項により効力等が停止されるべき「処分」に当たると判断される。

  しかしながら、現時点において、本件専門研修については、実施される日時・場所、予定時間が2時間40分であることが明らかにされているのみである。もっとも、意見書における東京都教育委員会の主張等を踏まえると、平成16年度に行われた上記専門研修とほぼ同様の方法、内容、態様で実施されると考えられる。

  平成16年度専門研修の内容等に鑑みると、これとほぼ同様の内容等で実施されると考えられる本件専門研修が、申立人である教諭らの内心の自由に踏み込み、著しい精神的苦痛を与えるようなものになるとは解されない。

(教育委員会月報 2006年12月)

 

 

 


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国立第二小学校・強制異動事件

東京地裁2004年12月28日判決
転任処分取消請求事件 却下・棄却

 

  国立第二小学校では、2000年3月の卒業式で日の丸が掲揚されたことについて、「異議、質問」をしたことを理由に、教員22人中、6人が戒告処分を、6人が文書訓告処分を受けた。同小の教員である原告は、当時の都教育委員会の異動要綱に従えば、勤続年数のうえで異動の対象とはならず、また、家族の介護を抱えていたため異動希望も出していなかった。ところが、2001年4月、原告は世田谷区内の小学校への異動を命じられた。

  東京地裁は「懲戒処分を受けた教員が一つの学校に偏在しているという客観的状況は、他の地区や学校との比較に均衡を失するものであり、このような不均衡は、児童・生徒の健全な発達という点からみて是正されることが望ましい。」として、都教育委員会の転任処分の取消を求める原告の請求を退けた。

(東京地裁2004年12月28日判決)
(田中伸尚「不服従の肖像」樹花舎・2006年)

 

国立第二小学校・強制異動事件

東京高裁2005年9月8日判決
平成17年(行コ)第38号 転任処分取消請求控訴事件 棄却(確定)

(事件の概要)

 教職員の人事異動に関する要綱の解釈と適用に誤りがあるとしてなされた転任処分の取消請求

(判旨)

  公立学校における教員の異動については、人事行政上の措置として、任命権者における裁量に委ねられており、その裁量権の行使に逸脱がある場合には、違法として評価される。そして、異動要綱は、任命権者である東京都教育委員会において自ら東京都区市町村立小中学校の教員の定期異動について指針を定めたものであり、異動要綱に定める基準に合致しない転任処分については、特段の事情のない限り、裁量権の逸脱があるものと推認され、職務の遂行において違法とみられる余地がある。

  当該教諭は、異動要綱に掲げる異動対象者の要件としての「教員組織上の不均衡」とは、「年齢、性別、教職経験及び教科の担当」又はこれに準ずる事由に限定されると主張するが、特定の事象に係る同種の行為に対して懲戒処分等を受けた教員が他校に比べて同一校に多数在籍するという客観的状況(教員23名中5名が戒告処分、5名が文書訓告)は、教員組織の均衡・充実、学校教育の向上という観点からみて、「年齢、性別、教職経験及び教科の担当」と同様に重要な事柄であり、定性的にもこれらに準ずる事項として扱われることに何ら不合理な点はない。

(教育委員会月報 2006年12月)

 

 

 


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北九州市立学校・国歌斉唱時不起立事件=福岡ココロ裁判

福岡地裁2005年4月26日判決
平成8年(行ウ)第22号、平成12年(行ウ)第4号(戒告処分取消等請求事件)、
平成12年(ワ)第2508号(損害賠償請求事件) 一部認容・一部棄却

 

主  文

 被告北九州市教育委員会が平成11年9月19日付で原告Aに対してした減給1ヶ月の処分を取り消す。
  被告北九州市教育委員会が平成9年7月18日付で原告Bに対してした減給1ヶ月の処分を取り消す。
  被告北九州市教育委員会が平成10年7月17日付で原告Bに対してした減給3ヶ月の処分を取り消す。
  被告北九州市教育委員会が平成11年7月16日付で原告Cに対してした減給1ヶ月の処分を取り消す。
 原告らの損害賠償請求を棄却する。

理由要旨

1 君が代が国歌であることについて

  君が代は、国旗国歌法の制定前においても、国歌としての地位にあったものであり、君が代の「君」が天皇を指すとの解釈を前提としても、君が代を国歌とすることが、憲法前文、同法1条に違反するとはいえない。

2 卒業式、入学式(以下「卒業式等」という。)に関する校長の権限について

  校長は、学校教育法28条3項により、教育内容を含む学校教育の事業を遂行するために必要とする一切の事務を行う権限を有するから,学校全体の行事である卒業式等に関し、その裁量の範囲内において、式次第を決定し、その実施のために、所属教職員に対して、職務命令を発することもできる。

3 職務との関連性について

  卒業式等は、教育課程の一部である学校行事として行われるものであり、その運営への協力は、教職員としての職務に関するものといえる。

4 君が代斉唱の教育課程における位置付けについて

(1)学習指導要領の定めとの関連について
  ア 教科における国歌の指導に関する定めは、国歌を尊重する態度を育て、日本人としての自覚を養い、国を愛する心を育てるために、必要かつ合理的な大綱的基準といえ、教員に対し、国歌に関する指導をしなければならないという一般的、抽象的な義務を負わせる拘束力を持つものといえる。
  しかし、卒業式等において国歌を斉唱するよう指導するものとする旨の定めは、特定の行事を指定して指導方法を定める細目的事項に関する定めであり、大綱的基準とは言い難い。したがって、校長が卒業式等において国歌斉唱を実施し、各教員がこれを指導しなければならないという義務を負わせる拘束力を持つものと解することはできない。
  イ もっとも、卒業式等において国歌を斉唱するよう指導することは、国歌を尊重する態度を育てるという教育目的に沿うほか、学校生活に有意義な変化や折り目を付け、集団への所属感を深めるという目的にも沿うことからすれば、卒業式等において国歌斉唱を実施することは、正当な教育目的に対して、一定の教育効果が期待できる教育活動ということができる。
 校長は、上記の定めを尊重し、裁量権の範囲内において、国歌斉唱を含む式次第を決定することもできる。

(2)国家、教育の信条的、宗教的中立性との関係について
 卒業式等における君が代斉唱は、特定内容の道徳やイデオロギーを教え込むものといえず、国家、教育の信条的中立性に反するものではないし、また、宗教的行為ともいえないから、憲法20条1項及び2項、教育基本法9条2項に反するものでもない。

(3)児童、生徒の思想、良心の自由との関係について
 君が代斉唱の実施・指導は、教育活動の一環として、合理的範囲を逸脱するものとはいえず、人格の形成、発展を助けるという教育の本質からすれば、それが内心に対する働きかけを伴うものであっても、児童・生徒の思想、良心の自由を不当に侵害するものとはいえない。

5 本件職務命令と原告らの人権との関係について

(1)憲法19条等違反の主張について
 原告らの差別撤廃を求める意思、戦争に対する嫌悪、教育のあり方についての意見は、憲法19条等にいう思想、良心といえるが、君が代を歌えないという考えは、原告らの人間観,世界観と直接に結び付くものではなく、本件職務命令は憲法19条等に違反しない。

(2)憲法20条1項及び2項違反の主張について
 本件職務命令は特定の宗教に結びつく行為を強制するものとはいえないから、本件職務命令は憲法20条1項及び2項に違反しない。

6 校長の裁量権逸脱の有無について

(1)教員の不起立が、教育活動における教育効果を減殺するものと考えられることからすれば、本件職務命令には必要性、合理性がある。

(2)原告らのみならず、児童、生徒や保護者にも君が代斉唱について嫌悪感、不快感を有する者があるが、他方、卒業式等において君が代斉唱を実施することを当然と考える者がいることはもとより、君が代斉唱において起立をしない教職員がいることに嫌悪感、不快感を覚える者もいると考えられることなどからすれば、本件職務命令が、ただちに、校長の裁量権を逸脱するものとはいえない。

(3)また、被告教育委員会が行った指導は、一定の国歌斉唱の方法を提示するにとどまらず、それを実施しているか否かを監督するものであり、各校長は、その指導に従わざるを待ないという事実上の拘束を受けていたといえるから、教育基本法10条1項にいう「不当な支配」を受けたといえるが、本件各職務命令は、その内容は様々であって、最終的には、各学校の状況を把握しているはずの各校長が自己の判断によって発したものといえる。

(4)前記諸事情を考慮すると、本件職務命令が、裁量権を逸脱して発せられたとまで認めるには足りず、無効であるとはいえない。

7 処分理由に信用失墜行為が含まれるかについて

  処分理由書に記載されているのは職務命令違反行為のみであり、被告教育委員会は、文書提出命令に反し、議事録等を提出しないので、本件処分の理由にはいずれも信用失墜行為は含まれていないものとみなす。

8 処分の相当性について

(1)戒告処分については、地方公務員法上の処分として最も軽い処分であること、教育活動についての職務命令違反を理由とする処分であること、原告らは同様の職務命令違反を繰り返し、すでに厳重注意、文書訓告を受けていたことからすれば、裁量権の範囲を逸脱したということはできない。

(2)減給処分については、式の進行に混乱がなかったことや、原告らの教員としての適格性を疑わせる他の事情の存在が認められないこと等を考慮すると、式の進行を阻害したり、積極的な扇動行為と評価される場合は格別,給与の減額という直接に生活に影響を及ぼす処分をすることは、社会観念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱したものといえる。

9 原告らの損害賠償請求について

(1)教員である原告らに対する本件職務命令や戒告処分、指導は適法であり、不法行為となる余地はない。
 また、学校用務員は、そもそも卒業式等の行事に参加する義務を負わないものと解されるが、式に参加する場合には、式の円滑な進行に対して協力すべく一定の制約を受けることを受忍しているものと解されるから、学校用務員に対する職務命令も裁量権を逸脱するものとはいえず、それに違反したことを理由とする文書訓告、厳重注意も適法であって、不法行為にはあたらない。

(2)減給処分についても、違法な処分を受けたことによる信用の低下や精神的苦痛は、特段の事情のない限り、その処分が取り消されることによって回復され、減給処分を受けた原告らに、当該処分が取り消されてもなお回復されない損害が発生したと認めるに足りる証拠はない。

(評釈:西原博史・ジュリスト1294号100頁)

 

北九州市立学校・国歌斉唱時不起立事件=福岡ココロ裁判

福岡高裁2008年12月15日判決
平成17年(行コ)第13号(戒告処分取消等請求控訴事件) 変更

 

君が代で着席、教職員側が敗訴 福岡高裁判決

 北九州市立の小、中、養護学校の入学式や卒業式での君が代斉唱をめぐり、着席して歌わなかった教職員17人と教職員組合が、職務命令に従わなかったとして、市教委から受けた処分の取り消しや損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が15日、福岡高裁であった。丸山昌一裁判長は校長の職務命令については合憲と判断。減給処分4件の処分を取り消した一審・福岡地裁判決の原告勝訴部分を取り消し、処分は適法だったとした。教職員側は近く上告する。

 丸山裁判長は君が代斉唱などを指示した校長の職務命令について、「君が代が教職員の歴史観や世界観を直ちに否定するものと認められない」として一審と同様、憲法19条(思想良心の自由)、同20条(信教の自由)に違反しないとの判断を示した。

 一方、教職員らの不起立行為について「儀式的行事の雰囲気を乱し、保護者らに不安を抱かせた」などと述べ、地方公務員法で禁じられた信用失墜行為にあたると指摘。北九州市教委による減給処分は「同種の職務命令違反を繰り返しており、裁量権の逸脱とは言えない」と結論付けた。

 判決によると、教職員らは89〜99年の入学式などで、校長から「起立して斉唱」と職務命令を受けたが、「特殊な歴史的背景を持つ君が代は歌えない」と着席したまま歌わなかった。

(朝日新聞2008年12月16日web版)

 

北九州市立学校・国歌斉唱時不起立事件=福岡ココロ裁判

最高裁1小2011年7月14日判決
平成21年(行ツ)第111号(戒告処分取消等請求事件) 一部却下・一部棄却

 

 北九州君が代訴訟:教職員側敗訴の2審判決が確定

  入学式などで君が代斉唱時に起立しなかったとして、懲戒処分を受けた北九州市の小中学校の教職員らが市教委などを相手に処分取り消しなどを求めた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は14日、起立斉唱命令を合憲と判断し、教職員側の上告を棄却する判決を言い渡した。教職員側の敗訴とした2審判決が確定した。全国の学校現場で起きた一連の君が代不起立問題で初めて提訴された訴訟だった。

  訴えていたのは、現役と元教職員計17人と労働組合「北九州がっこうユニオン・うい」。小法廷は5月以降の一連の最高裁判決と同様、起立斉唱命令が思想と良心の自由に対する「間接的制約となる面がある」としつつ、職務の公共性などから合憲と結論づけた。弁護士出身の宮川光治裁判官が「合憲性の判断はより厳しい基準でされるべきだ」との反対意見を述べた。

  判決後の会見で「うい」の竹森真紀書記長は「教委は、反対意見の裁判官が出たことを重く受け止めてほしい」と話した。
 1審判決(05年)は起立斉唱命令を合憲としながら、3人に対する減給処分は重すぎるとして処分を取り消したが、2審の福岡高裁判決(08年)は「儀式的行事の雰囲気を乱し、処分は相当」として1審を取り消した。【伊藤一郎】

(毎日新聞2011年7月14日web版)

 

 

 


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東京都立野津田高校・卒業式ビラ配り市民逮捕事件

東京地裁八王子支部2005年3月6日決定
平成17年(む)第63号(勾留請求却下決定取消準抗告事件) 棄却

 

【事件の概要】

  東京都町田市の都立野津田高校の敷地で日の丸、君が代に反対するビラを配ったとして、男性2人が警視庁に建造物侵入容疑で逮捕された事件で、東京地裁八王子支部が2人の勾留請求を却下したことがわかった。検察側が申し立てた準抗告も棄却され、2人は6日に釈放された。2人は取り調べに黙秘していた。
  町田署によると、2人は4日午前8時45分ごろ、ビラを配るため同校の敷地に侵入した疑いで現行犯逮捕された。この日は同校の卒業式で、2人は正門の外のバスのロータリー周辺で生徒や父母にビラを配っていた。ロータリーも同校の敷地内のため、教員が注意をしたが立ち去らず、通報で駆けつけた署員が退去を求めても従わなかったという。公安部は2人について左翼系の活動家だとみている。
  弁護人は「ビラを配っていた場所は校門の外でバスの停留所もあり、一般人の立ち入りが制限されるような建造物ではない」と主張していた。
  川津良幸町田署副署長は「敷地外に出るよう学校側が何度言っても2人は立ち退かず、警察の指示にも従わなかった。適正な捜査であり、釈放は残念だ」と話している。2人のうち1人は「どこまでが敷地か確認し、すぐに敷地外に出て公道で配っていた。警官は警告もなしにいきなり車の中に引き込んで逮捕した。許せない」と話している。
(朝日新聞2005年3月7日)

【地裁決定】

  上記被疑者に対する建造物侵入被疑事件について、平成17年3月5日東京地方裁判所八王子支部裁判官がした勾留請求却下の裁判に対し、同日、東京地方検察庁八王子支部検察官から適法な準抗告の申立てがあったので、当裁判所は、次のとおり決定する。

   主   文

本件準抗告の申立てを棄却する。

   理   由

1 本件準抗告の申立ての趣旨及び理由は、東京地方検察庁八王子支部検察官作成の準抗告及び裁判の執行停止申立書(「準抗告申立書に関する追完」と題する書面を含む。)記載のとおりであるからこれを引用するが、要するに、本件被疑事実が建造物侵入罪の構成要件を充足しないとして本件勾留請求を却下した原裁判は違法であるから、これを取り消した上、勾留状の発布を求めるというものである。

2 そこで検討するに、本件被疑事実の要旨は、いわゆる中核派の構成員である被疑者が、ほか1名と共謀の上、平成17年3月4日午前8時2分ころから同日午前8時45分ころまでの間、同派傘下団体の全国労働組合交流センターが発行する「不起立闘争の拡大こそ戦争協力拒否の闘い」と見出しのあるビラを配布する目的で、東京都立野津田高等学校の敷地内に立ち入り、もって、正当な理由がないのに人の看守する建造物に侵入したというものである。
 しかしながら、一件記録によれば、被疑者らが立ち入った上記高等学校の敷地部分は、同高等学校の門塀等物的囲障設備の外側に存在する土地であり、これを建造物侵入罪の客体である「建造物の囲繞地」と評価することは困難である。被疑者らが同高等学校関係者から敷地の外との境界線を示されて注意を受けたにもかかわらず敷地内に立ち入ったこと等、検察官主張の事情を考慮してもなお、同敷地部分が軽犯罪法1粂32号にいう「入ることを禁じた場所」に当たるか否かはともかく、上記の結論は左右されないというべきである。

3 以上より、本件勾留請求を却下した原裁判に違法はなく、正当というべきであり、したがって、本件準抗告の申立ては理由がないから、刑事訴訟法432条、426条1項後段によりこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

 

 

 


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枚方市君が代訴訟・不起立教職員調査事件=スミぬり裁判

大阪地裁2005年9月8日判決
平成15年(行ウ)第60号(損害賠償等請求事件) 棄却

 

  枚方市教育委員会は2002年の入学式について、「平成14年度入学式の国歌斉唱時、起立しなかった教職員調査」を行った。市教委は、起立しなかった教職員の氏名、起立しなかった理由を校長に文書報告させ、それを一覧表にまとめた。これに対して、枚方市民37人が違法な調査に使った公費の返還を求めて、2003年3月31日に住民監査請求を行ったが、市監査委員がこれを監査しなかったことを受けて、30人が同年6月25日、大阪地裁に訴訟を提起した。

  本件は、枚方市の住民である原告らが、当時の教育長が枚方市立小中学校長に同調査の実施を指示した不法行為により、枚方市が調査事務を担当した教職員の給与相当の損害及び調査に使用した事務用紙等の損害を被ったとして、被告に対し、教育長に当該不法行為に基づく損害賠償請求をすることを求める住民訴訟である。

  枚方市個人情報保護条例は「思想・信条及び信仰に関する」情報の収集を禁止しているが、市教委は同調査を行ったことについて「服務状況の調査であって思想・信条に関する個人情報を収集したわけではない」と反論していた。ところが、後日、市民グループが同調査結果を情報公開請求すると、氏名や理由の箇所をスミ塗りした一覧表が公開され、教育長名の「部分公開決定通知書」には、「起立しなかった理由(思想、信条、信仰等に関する情報)は、個人に関する情報」と書かれていた。こうした経緯から、原告らは本件を「スミぬり裁判」と呼んでいる。

(判旨)

  被告は、本件公金の支出は住民監査請求の対象となる「財務会計行為」ではないので、請求の要件を満たしていないと主張した。これに対し裁判所は、「非財務会計行為であっても、・・・・当該行為が地方公共団体に対する不法行為に該当し、そのために支出された経費が損害といえる場合もあり得る」と判断し実質審議に入った。

  しかし、「本件調査は、枚方市の事務としてされたものであり、その経費は、枚方市が負担すべきものであるから、その経費をもって枚方市の損害と認めることはできない」から、教育長による本件調査実施の指示が、枚方市に対する不法行為には当たらないとした。

  本件調査実施は市教委の権限を逸脱濫用したものであるとする、原告の主張に対し、裁判所は、「権限の逸脱濫用があったか否かを問わず、本件調査が枚方市の事務であり、その経費を枚方市が負担すべきことには変わりはない」とし、「権限の濫用があったか否かは、それによって権利侵害を受けた教職員がいる場合に、その教職員から枚方市に対する国家賠償請求訴訟等の中で判断されるべき問題である」と判示した。

大阪地裁2005年9月8日判決(棄却)
大阪高裁2006年11月22日判決(棄却)
最高裁(三小)2007年4月24日決定(上告棄却、上告不受理)

 

 

 


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東京都立大泉養護学校・絵付きブラウス着用事件

東京地裁2006年3月22日判決
平成16年(行ウ)426号(戒告処分取消請求事件) 棄却(控訴)

(事件の概要)

 入学式において、日の丸に斜線をいれたデザインを描いたブラウスを着用して式典に出席したため、校長が上着を着用するようにとの職務命令を出したが、これに従わなかったこと等によりなされた戒告処分の取消等請求

(判決理由の要旨)

  本件ブラウスを着用した姿で入学式に臨席することは、教育課程の場において校長の決定した国旗掲揚・国歌斉唱の方針に抗議する意思を表明しようとするものであって、教育公務員たる当該教員の職責に抵触し、また、入学式の円滑な進行を妨げ混乱を招くおそれのある行為であったといわざるを得ない。

  当該教諭の着用するブラウスに描かれた図柄が直接、入学式参列者の目に触れないようにするため、校長が上着の着用を求める職務命令を発したことは裁量権の行使としても合理的であった。

  憲法21条の表現の自由は、民主主義社会における重要な基本的人権の一つとして特に尊重されなければならないものであり、これをみだりに制限することは許されないものの、そのような自由といえども国民全体の共同の利益を擁護するため必要かつ合理的な制限を受けることは、憲法の許容するところであるというべき。

  当該教諭は、学校教育の一環として行われた入学式において、教職員間に見解の対立のある事項に関し、学校長が学習指導要領に従って決定した方針に対して抗議表明を行おうとしたものであるところ、地方公務員は全体の奉仕者であって(憲法15条2項)、公共の利益のために勤務し、かつ、職務の遂行にあたっては、全力を挙げて専念すべき義務がある(地公法30条)ことを踏まえると、このような場において、上記のような意思表明を行うことは地方公務員としての職責に抵触するものであって、そのような行為が制約されるのはやむを得ない。

(教育委員会月報2006年12月)
(田中伸尚「不服従の肖像」樹花舎・2006年)

 

東京都立大泉養護学校・絵付きブラウス着用事件

東京高裁2006年12月26日判決
平成18年(行コ)第117号(戒告処分取消請求控訴事件) 棄却(上告)

 

(事件の概要)

  Xは、東京都立大泉養護学校の教諭であるが、2002年4月9日に行われた同学校の入学式において、右胸に黒枠内に赤く塗りつぶした丸を描き、それに斜線を入れた図柄と、背中にハートに鎖を描いた図柄とが入った本件ブラウスを着用したまま出席しようとしたところ、同校長から本件ブラウスの上に上着を着用するように命じられたのに、これに従わないで、本件ブラウスを着用したままの姿で入学式に出席し、また、同年8月7日、同校長から本件ブラウス着用に関する事実確認のために校長室に来るように命じられたのに、これに従わなかった。

  そこで東京都教育委員会Yは、2002年11月6日、Xの右行為は地方公務員法32条及び33条に違反するとしてXを戒告とする旨の本件懲戒処分を行ったところ、Xは、本件懲戒処分は懲戒権の逸脱、濫用に当たり違法であるなどと主張し、本件懲戒処分の取り消しを求めた。

  一審は、本件懲戒処分は適法であるとして、Xの本件請求を棄却したので、Xが一審判決を不服として控訴した。

(判決理由の要旨)

(1) Xの着用する本件ブラウスに描かれた本件図柄が外形的にも国旗掲揚・国歌斉唱の実施に抗議する意思を積極的に表明する趣旨が読み取れる以上、校長がXに対して上着の着用を求めたことは、正当な裁量権の行使というべきであり、裁量権の逸脱、濫用はない。

(2) Xの本件ブラウスの着用は、入学式の円滑な進行を妨げ混乱を招くおそれのある行為であり、学校における統一的な運営に対する保護者や住民の信頼・信用を害するものと評さざるを得ず、職員としての信用を傷つけ、職員全体の不名誉となるような行為に該当する。

(3) Xの本件ブラウスの着用行為は、地方公務員法32条、33条に違反し、同法29条1項1号ないし3号の懲戒事由に該当することが明らかであり、本件懲戒処分に裁量権の逸脱、濫用は認められない、と判断し、一審判決を支持して、本件控訴を棄却した。

(東京高裁2006年12月26日判決 判時1964号155頁)
(最高裁(二小)2007年7月20日決定 上告棄却)

 

 

 


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東京都立板橋高校・卒業式威力業務妨害事件

東京地裁2006年5月30日判決
平成16年(わ)第5086号 威力業務妨害被告事件 有罪

 

  定年まで勤務していた東京都立板橋高校の04年の卒業式に来賓として訪れた際、開式前に保護者らに国歌斉唱時に起立しないよう呼びかけたなどとして、同校元教諭・被告(65)が威力業務妨害罪で在宅起訴された刑事裁判で、東京地裁は30日、無罪主張を退け、罰金20万円(求刑・懲役8カ月)の判決を言い渡した。村瀬均裁判長は「式の遂行は現実に妨害された」として威力業務妨害罪の成立を認めた。一方で「元教諭に対する非難は免れないが、元教諭は式の妨害を直接の目的としたのではなく、式もほぼ支障なく実施された」と述べ、懲役刑ではなく罰金刑が相当だと結論づけた。元教諭側は即日控訴した。

  判決によると、元教諭は04年3月11日午前9時42分ごろから午前9時45分ごろまでの間、板橋高校体育館で、午前10時開式予定の卒業式のために着席中の保護者に向かい、「今日は異常な卒業式」と訴え「国歌斉唱のときは、できたらご着席をお願いします」などと大声で呼びかけ、教頭が制止すると「触るんじゃないよ」などと怒号をあげた。校長が退場を求めても従わず、式典会場を喧噪(けんそう)に陥れ、開式を約2分遅らせるなどした。

  元教諭の退出後に卒業生が入場。今回の裁判の対象になった元教諭の式場での行為と直接の因果関係はないが、冒頭の国歌斉唱時に卒業生の約9割が着席する事態が起きた。これを問題視した都教委などが被害届を出したのを受け、東京地検が異例の在宅起訴に踏み切っていた。

  判決は、呼びかけの内容が学校側にすれば許容できない内容で、校長らが職責上放置できないものだから「威力」にあたる▽退場要求に従わず怒号し、校長らが対応を余儀なくされた――などとして威力業務妨害罪が成立すると判断した。

  弁護側は「配布や呼びかけは私語が許されている時間帯で、教頭からの制止も受けていない」と争ったが、判決はこれを退けた。

  元教諭は、教員生活最後の年に受け持った1年生の卒業を見届けるために来賓として来ていた。

「板橋高校卒業式事件」の東京地裁判決の理由骨子は次の通り。
(1) 被告の行為はそれ自体が威力にあたる行為で、現実に業務妨害の結果が生じている。
(2) 妨害は短時間だったことなどを考慮すると、懲役刑を選択するのは相当ではない。

都立板橋高校卒業式事件の経過 都教委は03年10月、入学・卒業式の国歌斉唱時の起立徹底を通達で打ち出した。問題となった式は、その後初めての卒業シーズンを迎えた04年3月に行われた。元教諭が週刊誌コピー配布や不起立の呼びかけをした式には、国旗・国歌をめぐる混乱を予想していた都教委が指導主事5人を派遣していたほか、以前から不起立に批判的だった地元都議も来賓として招かれていた。都議は式直後の議会で生徒の着席を問題視する質問をし、都教委側も元教諭について法的措置をとることを表明。学校側が被害届を出し、東京地検公安部が04年12月に在宅起訴した。

(朝日新聞2006年05月30日web版)

 

東京都立板橋高校・卒業式威力業務妨害事件

東京高裁2008年5月29日判決
平成18年(う)第1859号 威力業務妨害被告事件 棄却(上告)

 

  04年3月の東京都立板橋高校の卒業式で、君が代斉唱時の起立に反対して式の進行を妨害したとして、威力業務妨害罪に問われた元同校教諭、藤田勝久被告(67)の控訴審判決で、東京高裁(須田賢裁判長)は29日、罰金20万円とした1審を支持し、元教諭の控訴を棄却した。1審は斉唱時の起立を命じる校長の職務命令について憲法判断しなかったが、高裁は合憲とした。元教諭側は即日上告した。

  弁護側は「校長の起立命令は思想・良心の自由を保障する憲法に違反し、対抗した元教諭の行為は罪に当たらない」と主張した。判決は「君が代の伴奏命令は思想・良心の自由を害しない」とした07年2月の最高裁判決を引用し「斉唱時の起立命令にも当てはまる」と合憲判断した。

  さらに判決は「憲法は表現の自由を絶対無制限に保障したものでなく、他人の権利を不当に害することは許されない」とし、「式直前の厳粛な状況下で、卒業式を『異常な式』と決めつけて大声を上げ、会場内を喧噪(けんそう)状態に陥らせた元教諭の行為は社会的相当性を欠く」と非難した。

 判決によると、元教諭は卒業式の開始前に「異常な卒業式で、教職員は君が代斉唱時に立って歌わないと処分されます」と父母らに大声で呼びかけるなどして開始を2分遅らせた。元教諭は式の2年前まで同校に勤務し、式の来賓だった。【伊藤一郎、木村健二】

  ▽元教諭の弁護団の話 表現内容が公権力の意に反することを理由とする刑事罰に裁判所が加担しており、表現者に対する圧殺効果は計り知れない。

  ▽中村正彦・東京都教育長の話 行為の違法性が認められ、一定の評価をしている。今後も学校での教育活動が適正に行われるよう取り組んでいく。

(毎日新聞2008年05月30日web版)
(判例時報2010号47頁、判例タイムズ1273号109頁)

 

東京都立板橋高校・卒業式威力業務妨害事件

最高裁一小2011年7月7日判決
平成20年(あ)第1132号 威力業務妨害被告事件 棄却

 

 君が代斉唱、着席呼びかけた元教諭有罪確定へ 上告棄却

 東京都立板橋高校の卒業式で、君が代斉唱時に着席するよう呼びかけて式の進行を妨げたとして威力業務妨害罪に問われた同校元教諭・藤田勝久被告(70)の上告審で、最高裁第一小法廷(桜井龍子裁判長)は7日、元教諭の上告を棄却する判決を言い渡した。罰金20万円とした一、二審判決が確定する。

 判決によると、元教諭は2004年3月、卒業式直前の体育館で、保護者らに向かって「今日は異常な卒業式。国歌斉唱のときは、できたら着席を」と呼びかけた。教頭らの制止にも「触るんじゃないよ」と怒鳴るなどし、開式を約2分遅らせた。
 元教諭は上告審で、刑事罰を科すことは「表現の自由」を保障した憲法21条に反すると主張した。
 判決は「表現の自由は民主主義社会で特に重要な権利」と認めつつ、過去の判例に沿って「絶対無制限には保障しておらず、公共の福祉のために必要で合理的な制限を受ける」と指摘。「たとえ意見を外部に発表する手段であっても、他人の権利を不当に害することは許されない」と述べた。

(朝日新聞2011年7月8日web版)
(判時2130号144頁、判タ1358号73頁)

 

 

 


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国立第二小学校・ピアノ伴奏拒否事件

東京地裁2006年7月26日判決
平成16年(ワ)第3156号 損害賠償請求事件 棄却

 

  国立市立小学校に教員として勤務し主に音楽の授業を担当していた原告が、以下の@ないしHの行為が原告の思想・良心の自由、信教の自由、教育の自由及び表現の自由を侵害するものであり、これにより精神的苦痛を被ったなどと主張して、国立市と東京都に対して損害賠償を求めた事案である。原告が問題にしている事実の骨子は、次のとおりである。

  @ 卒業において校長が、教職員との十分な議論も児童に対する事前の説明もせず「日の丸」を掲揚した。
  A 市教委の担当者が原告に対して行った卒業式前後における原告の言動等に関する聞き取りの態様が、原告の信条を推知し、これに非難・処罰を加えようとするものであった。
  B 都教委の担当者が原告に対して行った卒業式前後における原告の言動等に関する事情聴取の態様が、原告の信条を推知し、これに非難・処罰を加えようとするものであった。
  C 市教委が原告に対して卒業式当日リボンを衣服に着用するなどの方法により国旗掲揚に反対する意思を表明したとの理由で文書による訓告を行った。
  D 校長が、原告に対し卒業式及び入学式での君が代斉唱のピアノ伴奏を強要し、また、これにより原告を自己の信仰・信念を告白せざるを得ない状況に追い込んだ。
  E 校長が、原告に対し卒業式及び入学式での国歌斉唱のピアノ伴奏を指示し、これを断れば同人が望む音楽の授業を担当させずに学級担任をさせる旨を告げて、国歌斉唱のピアノ伴奏を強要した。
  F 校長が、原告の授業内容について児童を対象とした調査を行うなどして原告の授業に介入した。
  G 校務分掌に関し、校長が、国歌斉唱のピアノ伴奏を拒否したことに対する報復として、原告にその希望する5、6 学年の音楽を担当させなかった。
  H 異動に関し、国歌斉唱のピアノ伴奏を拒否したことに対する報復として、都教委が、原告のS小学校への異動を発令した。

(判旨)

 Cの文書訓告の違法性の有無について
  本件文書訓告は原告の職務専念義務違反を対象にしているのであり、その具体的態様は、原告がA校長による国旗掲揚に反対の意思を有していたことそれ自体ではなく、原告がリボンを衣服に着用するなどの行為によって反対の意思を表明したことであるから、本件文書訓告が原告の思想・良心の自由を侵害するとは認められないし、また、本件文書訓告による表現の自由に対する制約は付随的なものであると認められる。そして、全体の奉仕者である公務員(憲法15条2項)は、表現の自由についても、職務の公共性に由来する内在的制約を受けるのであり、とりわけ、勤務時間中の表現行為に関しては制約の度合いが高いというべきであるところ、本件文書訓告によって制約される原告の表現行為は、まさに職務時間中のものである。

 Dの行為の違法性の有無について
  A校長は,原告に対して地方公務員法所定の職務上の命令(地方公務員法32条)として国歌斉唱のピアノ伴奏を命じてはおらず,最終的にはテープ伴奏により国歌斉唱を行っているのであって,原告が個人的理由を挙げて国歌斉唱のピアノ伴奏をしたくないと述べた後も引き続き国歌斉唱のピアノ伴奏をしてほしい旨を要請してはいるが,これはあくまで説得の範囲内にとどまるものであったと認められる。こうしたことに,後記ウ説示の事情をも併せ考慮すると,Aによるピアノ伴奏要請の態様が強要に当たるものであると認めることはできないというべきである。

 Fの授業内容調査の違法性の有無について
  B校長が行った調査は、事後的に行われたものであって、あらかじめ授業の内容を録音するなどして授業内容の適否を審査するといった態様の調査と比べると、教員に与える心理的圧迫の程度は少ないものであると認められる。こうしたことに加え、初等普通教育に携わる小学校の教諭が授業の内容を秘密にする権利・利益を保障されていると解することができる法令上の根拠は見当たらないことをも併せ考慮すると、調査方法が教育的配慮を尽くしたものであったと評価できるかどうかはともかくとして、当時原告が休暇を取得中で、翌週火曜日にならないと登校しないという事情の下におけるB校長の調査の態様が原告の授業に対する不当な介入に当たると認めることはできない。

 Hの異動の違法性の有無について
  原告が国歌斉唱のピアノ伴奏を拒否していたことは、一定程度本件異動に影響を与えていたものと認められる。しかしながら、任命権者である都教委が教員の異動について裁量権を行使するに当たっては、当然に種々の事情を考慮し得るのであるから、ある事情が異動に影響を与えていたとしても、そのことをもって直ちに裁量権の逸脱又は濫用があるということはできないのであって、裁量権の逸脱又は濫用が問題となり得るのは、例えば、不利に斟酌すべきではない事情を不利に斟酌したというような場合である。しかし、本件においては、原告の処遇が、単に原告の希望に沿うものでないというだけでなく、他の教職員と比べて不利なものであったことなどについて何ら具体的な主張・立証がない。

 

国立第二小学校・ピアノ伴奏拒否事件

東京高裁2007年6月28日判決
損害賠償請求事件 棄却

 

  日の丸に抗議するリボンを胸に着けて卒業式に出席したことで文書訓告処分にしたのは憲法違反などとして、東京都国立市立小学校に勤務していた女性音楽教諭が、市などに420万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は28日、請求を退けた1審東京地裁判決を支持、教諭の控訴を棄却した。

  浜野惺裁判長は「校長による国旗の掲揚は、参加者の思想、良心、信教の自由を侵害しない。リボン着用は、学習指導要領に従い、国旗を尊重する態度を育てようとした校長の意図に反する。処分が社会通念上、著しく妥当性を欠くとはいえない」と判断した。

  判決によると、教諭は2000年3月の卒業式で、校長が日の丸を掲揚したことに抗議の意思を示すため、胸元に青いリボンを着けて出席。市教育委員会は文書訓告処分にした。

(東京新聞 2007年06月28日)

 

 

 


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国立第二小学校・卒業式国旗掲揚抗議事件

東京地裁2006年9月12日判決
平成15年(行ウ)第536号 懲戒処分取消請求事件 棄却

 

  卒業式で屋上に日の丸を掲揚した校長に抗議したなどとして、戒告処分を受けた東京都国立市立第2小の元教諭5人が処分取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁の土田昭彦裁判官は12日、「抗議は不名誉な信用失墜行為で処分は適法」として請求を棄却した。

  土田裁判官は判決理由で「正当な職務権限に基づいて国旗を掲揚し、教職員に協力を求めた校長に原告は従うべきだ」と述べた。

  判決によると、原告らは同小の卒業式があった2000年3月24日早朝、校長が国旗を揚げたため、式の前に校長室で抗議。卒業式には幅1センチでライトブルーのリボンを着けて出席した。

  東京都教育委員会は同年8月、信用失墜行為と職務専念義務違反を理由に、原告5人を戒告処分とし、原告以外のリボンを着用しただけの教職員も文書訓告処分にした。

(KYODO NEWS 2006年09月12日)

 

 

 

国立第二小学校・卒業式国旗掲揚抗議事件

東京高裁2008年3月11日判決
懲戒処分取消請求控訴事件 棄却

 

 日の丸抗議、2審も教諭側敗訴 国立二小の卒業式
  卒業式で国旗を掲揚した校長に抗議するなどしたのは信用失墜行為に当たるとして、戒告処分を受けた東京都国立市立第二小の元教諭5人が、都に処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が11日、東京高裁であった。稲田龍樹裁判長は「抗議やリボン着用は教育公務員としての信用失墜行為で、処分は適法」として、訴えを退けた1審東京地裁判決を支持、教諭側の控訴を棄却した。

  判決によると、原告らは同小の卒業式があった平成12年3月24日朝、校長が屋上に国旗を掲げたため、式の前に校長室で抗議。式典には抗議を示すリボンを付けて出席した。都教委は同年8月、信用失墜行為を理由に原告5人を処分した。

(SANKEI WEB NEWS 2008.3.12)
(最高裁(一小)2008年8月6日決定 上告棄却)

 

 

 


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「日の丸・君が代」強制反対・予防訴訟

東京地裁2006年9月21日判決
平成16年(行ウ)第50号・第223号・第496号、平成17年(行ウ)第235号
国歌斉唱義務不存在確認等請求事件 一部認容

 

主文要旨

1 原告ら(在職中の教員369名)が,被告都教委に対し,本件通達(10.23通達)に基づく校長の職務命令に基づき、原告らが勤務する学校の入学式,卒業式等の式典会場において,会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務のないことを確認する。

2 本件通達に基づく校長の職務命令に基づき,原告らが勤務する学校の入学式,卒業式等の式典会場において,会場の指定された席で国旗に向かって起立しないこと及び国歌を斉唱しないことを理由として,いかなる処分もしてはならない。

3 原告ら(音楽科教員10名)が被告都教委に対し,本件通達に基づく校長の職務命令に基づき,原告らが勤務する学校の入学式,卒業式等の式典の国歌斉唱の際に,ピアノ伴奏義務のないことを確認する。

4 被告都教委は,原告らに対し,本件通達に基づく校長の職務命令に基づき,原告らが勤務する学校の入学式,卒業式等の式典の国歌斉唱の際に,ピアノ伴奏をしないことを理由として,いかなる処分もしてはならない。

5 被告都は,原告ら(401名全員)に対し,各3万円及びこれに対する平成15年10月23日(通達発令日)から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。


理由要旨

(1) 本案前の答弁
  原告らが侵害を受ける権利の性質及びその侵害の程度,違反に対する制裁としての不利益処分の確実性,不利益処分の内容及び性質に照らすと,・・・事後的に争ったのでは,回復し難い重大な損害を被るおそれがあると認めることができ,・・・したがって,原告らの訴えのうち公的義務の不存在確認請求及び予防的不作為請求にかかる部分は適法というべきである。

(2) 日の丸・君が代と思想・良心の自由
  我が国において,日の丸,君が代は,明治時代以降,第二次世界大戦終了までの間,皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきたことがあることば否定し難い歴史的事実であり,国旗・国歌法により,日の丸,君が代が国旗,国歌と規定された現在においても,なお国民の間で宗教的,政治的にみて日の丸,君が代が価値中立的なものと認められるまでには至っていない状況にあることが認められる。このため,国民の間には,公立学校の入学式,卒業式において,国旗掲揚,国歌斉唱をすることに反対する者も少なからずおり,このような世界観,主義,主張を持つ者の思想・良心の自由も,他者の権利を侵害するなど公共の福祉に反しない限り,憲法上,保護に値する権利というべきである。
  教職員に対し,一律に,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱すること,ピアノ伴奏をすることについて義務を課すことは,思想・良心の自由に対する制約になるものと解するのが相当である。
  被告らは,本件通達に基づき校長が教職員に対し国歌斉唱を命じ,ピアノ伴奏を命じることは,教職員に対し一定の外部的行為を命じるものであり,当該教職員の内心領域における精神活動までを制約するものではなく,思想,良心の自由を侵害していないと主張する。しかし,人の内心領域の精神的活動は外部的行為と密接な関係を有するものであり,これを切り離して考えることは困難かつ不自然である。

(3) 学習指導要領の国旗・国歌条項に基づく義務
  学習指導要領の国旗・国歌条項は,法的効力を有しているが,同条項から,原告ら教職員が入学式,卒業式等の国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務,ピアノ伴奏をする義務までを導き出すことは困難であるというべきである。

(4) 本件通達に基づく義務
  本件通達及びこれに関する被告都教委の都立学校の各校長に対する一連の指導等は,教育の自主性を侵害するうえ,教職員に対し一方的な一定の理論や観念を生徒に教え込むことを強制することに等しく,教育における機会均等の確保と一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準を逸脱しているとの謗りを免れない。したがって,本件通達及びこれに関する被告都教委の都立学校の各校長に対する一連の指導等は,教育基本法10条1項所定の不当な支配に該当するものとして違法と解するのが相当である。

(5) 校長の職務命令に基づく義務
  職員は,原則として,各校長の職務命令に従う義務を負うものの,当該職務命令に重大かつ明白な瑕疵がある場合には,これに従う義務がないものと解するのが相当である。
  原告ら教職員は,・・・入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱するまでの義務,ピアノ伴奏をするまでの義務はなく,むしろ思想,良心の自由に基づき,これらの行為を拒否する自由を有している。
  原告ら教職員が入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立すること,国歌を斉唱することを拒否したとしても,格別,式典の進行や国歌斉唱を妨害することはないうえ,生徒らに対して国歌斉唱の拒否を殊更煽るおそれがあるとまではいえず,学習指導要領の国旗・国歌条項の趣旨である入学式,卒業式等の式典における国旗・国歌に対する正しい認識を持たせ,これを尊重する態度を育てるとの教育目標を阻害するおそれもないといえる。
  さらに,原告らのうち音楽科担当教員は,音楽科の授業においてピアノ伴奏をする義務を負っているものの,入学式,卒業式等の式典における国歌斉唱の伴奏は音楽科の授業とは異なり,必ずしもこれをピアノ伴奏で行わなければならないものではないし,仮に音楽科担当教員が国歌斉唱の際のピアノ伴奏を拒否したとしても,他の代替手段も可能と考えられ,当該教員に対し伴奏を拒否するか否かについて予め確認しておけば式典の進行等が滞るおそれもないはずである。

(6) 国家賠償請求権の存否
  原告らは、・・・違法な本件通達及びこれに基づく各校長の本件職務命令によって,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱するか否か,ピアノ伴奏をするか否かの岐路に立たされたこと,あるいは自らの思想・良心に反して本件通達及びこれに基づく各校長の本件職務命令に従わされたことにより,精神的損害を被ったことが認められる。これらの損害額は,前記違法行為の態様,被害の程度等を総合考慮すれば,1人当たり3万円を下らないものと認定するのが相当である。

(7) 結論
  起立したくない教職員,斉唱したくない教職員,ピアノ伴奏したくない教職員に対し,懲戒処分をしてまで起立させ,斉唱等させることは,いわば,少数者の思想良心の自由を侵害し,行き過ぎた措置であると思料する次第である。国旗,国歌は,国民に対し強制するのではなく,自然のうちに国民の間に定着させるというのが国旗・国歌法の制度趣旨であり,学習指導要領の国旗・国歌条項の理念と考えられる。

(判時1952号44頁、判タ1228号88頁)

 

 

 

「日の丸・君が代」強制反対・予防訴訟

東京高裁2011年1月28日判決 平成18年(行コ)第245号
各国歌斉唱義務不存在確認等請求控訴事件 取消(上告)

 

事案の概要:
  本件は甲事件,乙事件,丙事件及び丁事件からなり,その事案の概要は,次のとおりである。
  東京都立高等学校及び東京都立盲・ろう・養護学校(以下,これらを併せて「都立学校」という。)に勤務する教職員ら又は勤務していた教職員らは,控訴人東京都教育委員会(東京都教育委員会は,このように控訴人の立場のほかに,控訴人東京都の代表者兼処分行政庁の立場の場合がある。以下,単に「都教委」という。)を相手に,甲事件を平成16年1月30日に提訴し,乙事件を平成16年5月27日に提訴し,丙事件を平成16年11月19日に提訴した。その請求は,都教委に対する訴えについては,無名抗告訴訟として,勤務する学校の入学式,卒業式等の式典会場において,会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務のないこと及び勤務する学校の入学式,卒業式等の式典の国歌斉唱の際に,ピアノ伴奏義務のないことを確認するという公的義務不存在確認請求,並びに無名抗告訴訟として,勤務する学校の入学式,卒業式等の式典会場において,会場の指定された席で国旗に向かって起立しないこと及び国歌を斉唱しないことを理由として,いかなる処分もしてはならないこと及び勤務する学校の入学式,卒業式等の式典の国歌斉唱の際に,ピアノ伴奏をしないことを理由として,いかなる処分もしてはならないことを求める予防的不作為請求である。
 また,都立学校に勤務する教職員ら又は勤務していた教職員らは,被控訴人東京都(都教委を代表者兼処分行政庁とする。)を相手に,丁事件を平成17年5月27日に提訴した。その請求は,無名抗告訴訟として,勤務する学校の入学式,卒業式等の式典会場において,会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務のないこと及び勤務する学校の入学式,卒業式等の式典の国歌斉唱の際に,ピアノ伴奏義務のないことを確認するという公的義務不存在確認請求,並びに法定抗告訴訟として,差止訴訟(平成16年法律第84号による改正によって行政事件訴訟法3条7項が新設されたが,その訴えである。)であり,会場の指定された席で国旗に向かって起立しないこと及び国歌を斉唱しないことを理由として,いかなる処分もしてはならないこと及び勤務する学校の入学式,卒業式等の式典の国歌斉唱の際に,ピアノ伴奏をしないことを理由として,いかなる処分もしてはならないことを求めるものである。そして,甲事件ないし丁事件には,被控訴人東京都(都知事を代表者とする。)を相手とする国家賠償法1条1項に基づく慰謝料請求訴訟(附帯請求としての遅延損害金請求訴訟)が関連請求として併合提起されている。

(裁判所ウェブサイト、判時2113号30頁、判タ1364号94頁)

国旗国歌義務化は「合憲」 都教委側が逆転勝訴

  入学式や卒業式で国旗に向かっての起立や国歌斉唱を求めた東京都教育委員会の「通達」や「校長の命令」は、思想と良心の自由を定めた憲法に違反するなどとして、教職員ら395人が、従う義務がないことの確認や慰謝料を求めた訴訟の控訴審判決で東京高裁の都築弘裁判長(三輪和雄裁判長代読)は28日、「通達には合理性があり、思想・信条・良心などの自由を定めた憲法に反しない」などとして1審東京地裁判決を取り消し、教職員側の請求を棄却した。教職員側は上告する方針。

  都教委は平成15年10月、都立高校の校長に国旗掲揚、国歌斉唱やピアノ伴奏の実施方法を通達し、従わなかった教職員を懲戒処分にしていた。

  都築裁判長は通達について「式典の国旗掲揚、国歌斉唱を指導すると定めた学習指導要領に基づいている。一方的な観念を子供に植え付ける教育を強制するものではない」とした。

  判決は、国旗国歌法制定(11年)の前から日の丸が「国旗」、君が代が「国歌」であることは慣習法として確立していたと判断。「一律に起立、斉唱するよう求めた都教育長通達には合理性があり、思想・信条・良心などの自由を定めた憲法に反せず、教育基本法が禁じる『不当な支配』にも当たらない」とした。

  原告側は通達違反を理由にした懲戒処分などの事前差し止めも求めたが、「訴訟要件を満たしていない」と訴えを却下した。

  18年9月の1審東京地裁判決は「原告は起立や斉唱を強要され、精神的損害を受けた」としたほか、日の丸と君が代について「第二次世界大戦が終わるまで軍国主義思想の精神的支柱だったのは歴史的事実」として、原告側の主張を全面的に認め、都に1人当たり3万円の慰謝料の支払いを命じた。判決後、都教委側が不服として控訴していた。

(SANKEI WEB NEWS 2011年01月28日)

 

 

 

「日の丸・君が代」強制反対・予防訴訟

最高裁一小判決2012年2月9日判決 平成23年(行ツ)第177号
国歌斉唱義務不存在確認等請求事件 棄却

 

<君が代起立斉唱>都教職員の敗訴確定…義務なし確認訴訟

  学校行事で日の丸に向かい起立して君が代を斉唱するよう義務づけた東京都教委の通達は違憲として、都立学校の教職員らが義務がないことの確認などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(宮川光治裁判長)は9日、教職員側の上告を棄却した。教職員逆転敗訴の東京高裁判決(11年1月)が確定した。

  起立斉唱の職務命令については最高裁が昨年、合憲判断を示しており、小法廷もこれに沿う判断をした。1審・東京地裁は通達を「教育基本法が禁じる不当な支配に当たり、憲法が認める思想・良心の自由を侵した」とし、通達に従わなかった教職員に対する処分の禁止などを命じた。これに対し2審は「憲法に反しない」と逆転敗訴としていた。

  教職員側は、行政チェック機能の強化を図って04年に改正された行政事件訴訟法に基づき、将来見込まれる懲戒処分の差し止めも求めた。小法廷は「処分後では救済が困難である場合、事前の差し止め訴訟を起こせる」と初判断。今回の訴訟では「不起立を繰り返すと懲戒処分が累積加重され、事後的な回復が著しく困難になる」と訴えは適法と認めたが、請求自体は退けた。

 桜井龍子裁判官は「個人の権利救済の実効性を高めることに重点を置いた。訴えは適法だが、職務命令違反の内容など個別事情を立証する必要がある」との補足意見を述べた。【石川淳一】

(毎日新聞web版2012年2月9日)

 

 

 


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倶知安町立中学校・君が代カセット事件

北海道人事委員会2006年10月20日裁決
平成13年(不)第3号 不利益処分審査請求 処分取消

 

事案の概要

  本件は、倶知安町立倶知安中学校の教諭である請求者が、平成13年3月15日、同校で挙行された卒業式会場において、カセットテープによる君が代の演奏が始まった直後、CDカセットを持ち去りながらスイッチを切り、君が代の演奏を妨害し、卒業式の円滑な遂行を妨げたとして、地方公務員法第29条第1項第1号及び第2号に基づき同年7月27日戒告処分に付されたことを不服としてその取消しを求めた事案である。

理由要旨

1.思想・良心の自由の侵害となるか
 ( 生徒 )
  本件君が代の演奏は、唱和できる者は唱和するよう告げてCDカセットにより君が代を演奏したというものであって、生徒らに君が代の斉唱を強制するようなものではなかったから、生徒らの思想、良心の自由、あるいは沈黙の自由を侵害したとはいえない。
 ( 保護者 )
  保護者らの出席は義務とはされていない上、保護者らは卒業式における教育活動の対象でもない。したがって、日の丸への拝礼や君が代の斉唱を求められたとしても、それに賛同する者のみが任意に応じれば良く、これに疑問を抱く者は常に拒否する自由が確保されているといえる。しかも、本件君が代の演奏は、保護者らに一律に唱和を求めるものでもなかったから、保護者らに対する関係でも思想、良心の自由に対する侵害となるものではない。
 ( 教職員 )
  教職員が自己の思想、良心に反することを理由に日の丸への拝礼や君が代の斉唱ないし演奏を拒むことを超えて、卒業式を欠席したりその分担にかかる職務を放棄し、あるいは式の進行を妨害するなどの行為に及ぶことは許されないと解さなければならない。・・・本件卒業式では、君が代の演奏が学校の方針として正式に決定されたものかどうかの手続上の問題はともかくとして、教職員に対し、君が代の斉唱ないし演奏を強制したようなものでもなかったから、教職員の思想、良心の自由を侵害したとはいえない。

2.子どもの権利条約に反するか。
 ( 第13条 情報への接近の自由 )
  日の丸の掲揚・君が代の斉唱ないし演奏は、・・・特定の主義、主張や世界観あるいは政治イデオロギーへの加担、崇拝、信奉を求めるものではないことは既に述べたとおりであり、したがって、子どもの権利条約が禁止する偏った価値を教え込むことには該当せず、同条約第13条に反するものではない。
 ( 第12条 意見表明権 )
  生徒らに日の丸の掲揚や君が代の斉唱の意義等についての事前学習の機会や意見表明の機会が付与されたとの事実を認めるに足りる証拠もないから、本件君が代の演奏は児童、生徒らの意見表明権を保障した同条約に反するものであったといわなければならない。
  しかしながら、教育課程を編成するに当たりどのような方法でどの範囲まで生徒らに意見表明の機会を付与すべきかを具体的に定めた規定はなく、しかも意見表明の機会が与えられないままに編成された教育課程の効力がどのようなものとなるかについても同条約は直接触れるところがない。したがって、・・・上記手続違背があることにより教育課程の編成が当然に無効となり、本件君が代の演奏行為が違法となるものと解することはできない。

3.教員の教育の自由を侵害するか
 ( 学習指導要領について )
  国旗掲揚・国歌斉唱指導条項は国旗・国歌を尊重する態度を育てるための指導方法の細目を定めるもので、児童生徒の教育に当たる教員がこれと異なる方法による指導の余地はなく、また、地方の特殊事情等に応じた個別化の余地も認められないものとなっていることから、教育の内容及び方法についての大綱的な基準とはいい難く、その法的拘束力は否定せざるを得ないというべきである。
 ( 校長の校務掌理権 )
  教職員は勿論、式に出席する生徒らにおいても本件卒業式において君が代の演奏が行われることは一切知らされていなかったことは既に認定のとおりであり、このような経緯を見れば、本件君が代の演奏は本校としてこれを実施する旨の正式な決定及びそれに伴う諸手続を欠いたものであったといわざるを得ない。
 
4.懲戒事由該当性について
  君が代が強引に演奏されようとした際、請求者がこれを実力で阻止したというものであって、卒業式の挙行方法を巡る意見の対立を式の進行中にまでそのまま持ち込み卒業式に混乱を生じさせたことは明らかであるから、教育公務員としての職の信用を失墜させる行為に該当するものといわなければならない。

5.懲戒権の濫用について
  以下の諸点(背景事情と本件行為の動機・目的、労使確認、影響の軽微性等)を考慮すれば、本件処分は処分者の裁量権を逸脱したものとして取消しを免れないというべきである。

(2007年11月16日、道人事委は道教委が行っていた再審請求を却下した)


 

 

 


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枚方市不起立教員調査情報削除請求事件

大阪地裁2007年4月26日判決
平成17年(行ウ)第21号・第25号 非削除決定取消等請求事件 一部認容

 

(事件の概要)

  被告枚方市教育委員会が枚方市立各小中学校に対し,平成14年度入学式の国歌斉唱時,起立しなかった教職員の氏名及びその理由等の調査を行い,枚方市立小中学校の各校ごとに起立しなかった教職員の氏名及びその理由等を一覧にして記載した「平成14年度入学式の国歌斉唱時,起立しなかった教職員調査(小学校)」及び「平成14年度入学式の国歌斉唱時,起立しなかった教職員調査(中学校)」を作成し,保管している。
  本件の被告教育委員会に対する請求は,被告枚方市の教職員である原告らが,本件文書に記録された原告らの個人情報に関する部分は,原告らの思想,信条及び信仰に関する事項が記載されているとして,被告教育委員会に対し,枚方市個人情報保護条例18条に基づき,上記部分の削除を求めたところ,被告教育委員会が削除しないとの決定をしたため,その取消しを求めるものである。
  本件の被告枚方市に対する請求は,本件文書に記録された原告らの個人情報は,原告らの思想,信条及び信仰に関する事項であるから,特別の規定がなくても,自己情報コントロール権に基づき,上記情報の削除請求ができると主張して,上記情報の削除を求めるとともに,上記情報の収集及び保管が憲法19条に違反するなどと主張して,慰謝料100万円の支払を求めるものである。

(判旨)

1. 思想・信条・信仰に関する個人情報の収集制限について(条例7条2項)

  同条項に規定する「収集」は,実施機関が,思想,信条及び信仰に関する事項に関する個人情報を収集する目的でこれを収集する場合を指すものと解され,収集した結果,それが思想等に関する事項に関する個人情報であったことが判明する場合は想定していないというべきである。そして,前記のとおり,不起立の理由として原告らが述べる内容は,事前には,原告らの思想,信条及び信仰に関するものか否か判明しないことに照らせば,本件情報の収集が,本件条例7条2項の規定による制限を超えて収集されたものということはできない。

2.収集目的及び記録項目の明示、直接収集について(条例8条)

  被告教育委員会は,本件情報を原告らから直接収集していないから,この点において,本件条例8条1項違反が認められる。・・・その聴取において,各校長が被告教育委員会からの調査依頼に基づく聴取であることを告げたことを窺わせる証拠はない以上,本人の知らないうちに被告教育委員会によって本件情報が収集されたことになるのであって,本件条例8条1項の上記趣旨が全うされたとはいえない。しかも,本件において,同条項によって収集の際に明らかにされるべき収集目的(服務監督権限に基づく調査等の目的で収集すること)や記録項目(不起立の理由を記録すること)が各校長から原告らに明らかにされたことを認めるに足りる証拠はない。

3.自己情報コントロール権に基づく削除請求の可否について

  本件では,本件情報の収集において,本件条例8条1項違反が認められ,同条例18条に基づく削除請求が可能というべきであるから,自己情報コントロール権に基づく直接の削除請求を認める必要性はなく,上記各要件を詳細に検討するまでもなく,同権利に基づく請求には理由がない。

4.学習指導要領及び7点指示の適法性について,

  [学習指導要領の国旗国歌条項は]国旗・国歌についてどのような教育をするかについてまでは定めてはいないこと,入学式及び卒業式を除いて国旗掲揚・国歌斉唱を行う式典の選択を残していること,国旗掲揚の態様や国歌斉唱の指導の方法を指定しておらず,地方の実情等に合わせた国旗掲揚の実施や国歌斉唱の指導をする余地を残していることからすれば,上記条項は,その内容が一義的であるとか,教職員に対し,国旗・国歌について一方的な一定の理論を生徒に教え込むことを強制するものとはいえず,必要かつ合理的な大綱的な基準として法的効力を持つものというべきである。

  [7点指示の]指示内容は,学習指導要領の趣旨に沿ったものであり,それ自体,不当・不合理なものとはいえない上,入学式の挙行に当たり,各学校の自主的な判断に委ねられている場面も相当程度残されていることなどをも併せて考慮すれば,本件7点指示が,被告教育委員会による「不当な支配」に当たると解することはできない。

  原告らの「君が代」に対する考え方は,「君が代」に対する多様な価値観の一つを前提とするものであり,一定の配慮が必要であるとしても,儀式的行事の際,国歌を起立して歌うことは,原告らの世界観,人生観及び宗教観に直ちに結び付くものとはいえない上,本件では,前記のとおり,学校の方針として国歌斉唱時に起立することを求められているのであるから,原告らが特定の思想や信仰を有するということを外部に表明する行為であると評価することはできない(最高裁平成16年(行ツ)第328号・同19年2月27日第三小法廷判決・裁判所時報第1430号4頁参照)。

  国歌斉唱の際に起立することが指示されることにより,原告らが自己の思想等に反する行為を強いられたと感じたり,原告らの思想等の内容が推知され得ることがあるとしても,原告らが地方公務員として上記各規定の適用を受けることからすれば,これをもって,原告らの思想・良心の自由,信仰の自由及び沈黙の自由が侵害されたと解することはできない。

5.国家賠償請求の可否について

  被告教育委員会が本件条例8条の手続に違反して本件情報を収集したことは,原告らのプライバシー権を侵害するものというべきである。・・・もっとも,本件情報収集において認められる違法は,実施機関による直接収集を規定した本件条例8条違反に限られ,他の違法事由は認められないこと,被告教育委員会には,本件情報を保管する必要性があったこと,被告教育委員会が本件情報を保管中,本件情報にアクセスし得たのは,教育長,教育次長,学校教育部長,学校教育部次長など,一部の者に限られていたこと(弁論の全趣旨),本判決により,本件情報の非削除決定が取り消され,同情報が削除されることにより,被告教育委員会が本件情報を保管していることによる原告らの精神的苦痛は解消されることなどの事情を併せて考えれば,原告らの精神的損害を慰謝する金額としては,1万円が相当である。




枚方市不起立教員調査情報削除請求事件

大阪高裁2007年11月30日判決
平成19年(行コ)第56号 非削除決定取消等請求控訴事件 一部認容

 

(経過)

  原審は,市教委に対する非削除決定の取消しについては認容したが,被控訴人に対する削除請求は棄却し,慰謝料請求も各1万円の限度で認容し,その余の慰謝料請求を棄却したため,控訴人らが敗訴部分を不服として控訴した。なお,その後市教委において,本件文書から本件情報を削除したため,控訴人らは,被控訴人に対する本件情報の削除請求に係る訴えを取り下げた。

(判旨)

1. 思想・信条・信仰に関する個人情報の収集制限について(条例7条2項)

  「君が代」が,第二次世界大戦終了までの間,皇民化教育の一環として,天皇の世が永久にいつまでも続くように願う歌として用いられ,皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として活用されたこと,このような歴史的経緯を踏まえ,国歌としての「君が代」に対する,歴史観,世界観に立脚し,儀式的行事において,「君が代」を国歌として斉唱すること及び国歌斉唱時に起立することに反対する者がいるところ...。
  控訴人らが国歌斉唱時に起立しなかったこと及び不起立の理由として控訴人らがその勤務する学校の校長に述べた内容で本件情報が構成されている以上,それは本件条例7条2項1号所定の思想,信条に関する個人情報に該当するものと認められる。
  市教委は,国歌斉唱時に起立しなかった教職員数及び氏名,その理由を調査項目に入れて本件調査をしていること,不起立の理由を調査することは,その対象者の思想,信条に関する個人的情報の収集につながることに鑑みると,市教委が本件調査を実施したこと自体,「君が代」に対して否定的見解を有する者の存否,人数,上記見解の具体的内容などを市教委において把握する目的もあったものと推認することができる。...そうすると,市教委は,本件条例7条2項の規定による制限を超えて,控訴人らに関する本件情報を収集等したものであり,違法の評価を免れないというべきである。

2.収集目的及び記録項目の明示、直接収集について(条例8条)

  市教委は,控訴人らの本件情報を,控訴人らがそれぞれ所属する小,中学校の各校長から報告を受ける形で収集しており,控訴人らから直接収集していないことは明らかであって,市教委による控訴人らの本件情報の収集は,本件条例8条1項にも違反するものというべきである。...しかも,本件において,同条項によって収集の際に明らかにされるべき収集目的(服務監督権限に基づく調査等の目的で収集すること)や記録項目(不起立の理由を記録すること)が各校長から控訴人らに明らかにされたことを認めるに足りる証拠はない...。

3.学習指導要領及び7点指示の適法性について

  学習指導要領における国旗国歌条項は,...その内容が一義的であるとか,教職員に対し,国旗,国歌について一方的な一定の理論を生徒に教え込むことを強制するものとはいえず,必要かつ合理的な大綱的な基準として法的効力を持つものというべきである。
  市教委による上記[7点]指示が校長の裁量権に対し,事実上,相当程度の制約を課すものであったことは推認するに難くなく,また,本件7点指示を全体として見た場合,その内容が余りにも具体的で詳細に過ぎるなど,全面的には賛同し難い点もある(市教委としては,より現場の自主性を尊重するよう配慮すべきであったと考えられる。)。しかし,前記のとおり,その指示内容は,法律や学習指導要領の趣旨に沿ったものであり,それ自体,不当・不合理なものとはいえない上,入学式の挙行に当たり,少ないながら各学校の自主的な判断に委ねられている場面も残されていることなどをも併せて考慮すれば,直ちに本件7点指示が市教委による「不当な支配」に当たるとまで解することはできない。
  なお,...市教委において,各小,中学校における本件7点指示(特に教職員が国歌斉唱時に起立していたか否かの点について)の実施状況を調査する必要があると考えたのであれば,各校長に対し,国歌斉唱時に起立しなかった教職員数の報告を求めれば足り,それ以上に本件情報まで収集する必要はなかったというべきである。

4.損害について

  控訴人らは,市教委によって違法に,控訴人らの本件情報を収集され,これを本件文書に記載されて保管されていたこと,しかも,市教委は,控訴人らが同人らに関する本件情報の削除を要求したにもかかわらず,これを拒否し,審査会の答申も無視して,控訴人らの異議申立てを棄却したこと,本件訴訟が当審に係属した後,市教委によって削除されるまでの相当長期間にわたって,控訴入らの本件情報は,関係者の目に触れる状態になっていたことが認められ,市教委の上記違法行為によって,控訴人らは,少なからぬ精神的苦痛を被ったものというべきである。そして,上記違法行為の内容,程度その他本件に現れた一切の事情を総合考慮すると,控訴人らの上記精神的苦痛に対する慰謝料額は各10万円を下らないものと認められる。

 

 

 


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東京都立高校・不起立再雇用取消事件

東京地裁2007年6月20日判決
平成16年(ワ)第12896号(甲事件)、平成17年(ワ)第15415号(乙事件)
 地位確認等請求事件 棄却

 

(事件の概要)

  教諭ないし再雇用職員として都立高校に勤務していた甲原告ら9名は,再雇用職員の採用選考に合格していた。甲原告らのうち1名はこの合格を辞退し非常勤講師としての採用手続を進めていた。平成16年3月の卒業式において甲原告らは職務命令に反し,国歌斉唱の際,起立をしなかった。そこで,都教委は同月30日,甲原告らの再雇用職員採用選考の合格を取り消し,また,再雇用を辞退していた1名については非常勤講師としての採用をしなかった。
  教諭として都立高校に勤務していた乙原告は,再雇用職員の採用選考に合格していたが,平成17年3月の卒業式において職務命令に反し,国歌斉唱の際,起立をしなかった。そこで,都教委は同月30日,乙原告の再雇用職員採用選考の合格を取り消した。
  本件は,原告らが東京都に対し,再雇用職員採用選考の合格取消及び,本件採用拒否が違法・無効であるとして,再雇用職員・講師の地位にあることの確認及び報酬の支払い並びに国賠法に基づく損害賠償等の支払いを求めた事案である。

(判決理由の要旨)

(1) 本件職務命令と憲法19条(思想及び良心の自由)との関係
  卒業式で,国旗に向かっての起立及び国歌斉唱を拒否することは,全原告らにとって,社会生活上の信念に基づく一つの選択ではあり得るものの,一般的には,これと不可分に結び付くものではないから,本件職務命令が全原告らの精神活動それ自体を否定するものとはいえない。加えて,式典で歌唱がされる際,歌唱者が会場正面に向けて起立することは,儀式・式典における儀礼的行為であることなどを勘案すると,本件職務命令のとおりの行為をすることが,特定の思想などの精神活動自体の表明となるものではない(最高裁平成19年2月27日第三小法廷判決・裁判所時報1430号52頁)。
  また,本件職務命令の命ずる行為が全原告らの内心領域における精神活動に影響を与え得ることは否定できないとしても,本件職者命令は公務員の職務の公共性に由来する必要かつ合理的な制約としで許容されるものと解される。
  さらに,全原告らは,本件職務命令が生徒の思想及び良心の自由を侵害するとも主張するが,同命令は直接的に生徒に対して起立等を求めるものではなく,そもそも,教育の実践の面において,生徒の内心に対する一定程度の働きかけを伴うことは不可避であり,これを直ちに強制と同一視し得ないことからすると,本件職務命令が生徒の思想及び良心の自由を侵害するものとはいえない。

(2) 本件通達と旧教基法10条1項との関係
  本件通達及びこれをめぐる一連の都教委の都立高校に対する関与・介入は,その政策的な意味での賛否について議論の余地があるのは別として,法的には,許容される目的に基づき,これを実現するために必要かつ合理的な関与・介入の範囲にとどまると評価するのが相当であり,旧教基法10粂1項が禁ずる教育への不当な支配に該当するとはいえない。

(3) 本件合格取消しの裁量逸脱・濫用の有無について
  本件合格取消しにつき検討すると,合格通知を発した後の事情により当該合格者が再雇用職員の新規採用ないし更新の要件を欠くに至ったと認められる場合に合格を取り消すことは,正当な人事裁量権の行使というべきである。そして,上司により発せられた職務命令の違反の有無は,勤務成績の評価を左右する事情に当たると解するのが相当である。してみると,本件職務命令に反してされた原告らの不起立行為が同人らの勤務成績の評価を低下させるものとなることは否定し難いから,都教委が不起立行為をもって,勤務成績の良好性に欠けると判断したことが不合理であるということはできない。
  これに対し,原告らは,@本件不起立行為は約40数秒程度の短い時間に,ただ起立せずに指定された席に着席し続けただけであることや,A一般職の地方公務員として在勤していた時期に懲戒処分を受けた教職員であっても,再雇用職員として採用された者がいることなどを指摘して,本件合格取消しは均衡を失するなどと主張する。しかし,@については,一部の教職員が起立しないことそれ自体が卒業式などの式典における国旗掲揚・国歌斉唱の指導効果を減殺するものであることに加え,本件不起立行為が国旗・国歌条項の実施についての都教委の関与・介入に対する抗議としての一種の示威行動とも評価し得るものであること,また,Aについては,原告らが指摘する事情は本件と基礎事情を異にすることを勘案すると,上記主張はいずれも採用できない。

(判時2001号136頁)



東京都立高校・不起立再雇用取消事件

東京高裁2010年2月23日判決  平成19年(ネ)第3938号
 地位確認等請求控訴事件 棄却

 

「君が代」不起立、元教職員側の控訴棄却 再雇用訴訟
  卒業式で「君が代」斉唱時の不起立を理由に定年後の再雇用を取り消された東京都立高校の元教職員10人が、都側に再雇用職員としての地位確認などを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は23日、元教職員側の請求を棄却した一審・東京地裁判決を支持し、控訴を棄却した。
  奥田隆文裁判長は「国歌斉唱の職務命令は思想や良心の否定には当たらず、裁量権の逸脱乱用があったともいえない」と指摘した。
  判決によると、10人は03〜04年度に定年退職した後の再雇用や講師の選考に合格していたが、卒業式で起立や斉唱をしなかったため合格を取り消された。
  一審判決(2007年6月)は、卒業式での君が代斉唱の命令を「内心の精神活動に影響を与えることは否定できないが、必要かつ合理的な制約として許容される」として、原告側の請求を退けた。
  不起立を理由に04〜05年度に再雇用されなかった別の元教職員ら13人について、東京高裁の別の裁判長は先月、1人当たり約210万円の賠償を命じた一審・東京地裁判決を取り消し原告側逆転敗訴の判決を言い渡した。元教職員らは最高裁に上告している。

(朝日新聞2010年2月23日web版)

 

東京都立高校・不起立再雇用取消事件

最高裁一小2011年7月14日判決 
平成22年(オ)第1262号 地位確認等請求控訴事件 棄却

 

君が代起立命令訴訟、また3件合憲判決 最高裁

 卒業式などで君が代斉唱時に起立を命じた校長の職務命令をめぐり、東京都と北九州市の教職員らが起こした3件の訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷は14日、いずれも「職務命令は思想・良心の自由を保障した憲法に違反しない」との判断を示した。
  先行した6件の最高裁判決と同様の判断で、教職員らの上告を棄却した。教諭側の敗訴が確定したのは計9件となった。
 3件のうち1件は、不起立を理由に定年後の再雇用を取り消された都立高校の元教員10人が提訴。残る2件は戒告などの処分を受けた北九州市立の小中・養護学校の教職員ら計17人と教職員組合が提訴した。それぞれ職員としての地位確認や処分の取り消しなどを求めていた。

朝日新聞2011年7月14日

 

東京君が代強制解雇事件原告団・弁護団 声明(抜粋)

1 本日、最高裁第一小法廷(裁判長・横田尤孝裁判官)は、都立高校の教職員10名が卒業式等の国歌斉唱時に校長の職務命令に従わずに起立しなかったことのみを理由に、定年等退職後の再雇用職員としての合格を取り消した事件(東京君が代強制解雇事件)について、教職員らの上告を棄却する不当判決を言い渡した。これに先立ち、6月30日には教職員らの上告受理申立てを不受理とする決定がなされており、教職員らの敗訴が確定した。

2 本件は、東京都教育委員会(都教委)が2003年10月23日付けで全都立学校の校長らに通達を発し(10.23通達)、卒業式等において国歌斉唱時に教職員らが国旗に向かって起立し、国歌を斉唱することを徹底するよう命じ、これに従わないものを処分するとして、「日の丸・君が代」の強制を進める中で起きた事件である。
  上告人らは、それぞれが個人としての歴史観・人生観や、長年の教師としての教育観に基づいて、過去に軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきた歴史を背負う「日の丸・君が代」自体が受け入れがたいという思い、あるいは、国旗国歌を容認しながらも教育的見地から学校行事における「日の丸・君が代」の強制は許されないという思いを強く持っており、そうした自らの思想・良心から、校長の職務命令には従うことができなかった。
  ところが、都教委は、定年等退職後に再雇用職員として、いったんは合格を通知した上告人らに対して、卒業式等で校長の職務命令に従わず国歌斉唱時に起立しなかったことのみを理由に、既に勤務校の面接を済ませて新学期の担当も決まっていた状況にあったにもかかわらず、年度末の時点で突然、合格を取消したのである。

3 今回の最高裁判決は、本年5月30日以降の一連の小法廷判決を引用するのみで、本件事案に即した判断を示さなかった。国歌斉唱時の起立斉唱を命じる校長の職務命令が憲法19条に違反するかという問題について、起立斉唱行為が国旗・国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であること、個人の思想良心の自由についての間接的な制約となることを認めた。
 にもかかわらず、本判決を含めた一連の小法廷判決は、本件職務命令が、卒業式における「慣例上の儀礼的な所作」として起立斉唱を求めるものに過ぎない一方、公務員の地位の性質や職務の公共性を踏まえた上で、教育上の行事にふさわしい秩序の確保と式典の円滑な進行を図るものであり、制約を許容し得る程度の必要性・合理性が認められるとして、本件職務命令が憲法19条に違反しないと判断した。(以下略)

2011年7月14日)

 

 

 


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神奈川県立高校・不起立教員情報利用停止請求事件

神奈川県個人情報保護審査会2007年10月24日答申
自己情報の利用停止の請求拒否処分に関する異議申立てについて
答申第83号 利用不停止処分取消

 

(事件の概要)

  神奈川県教育委員会は、平成17年度卒業式及び平成18年度入学式の国歌斉唱時に起立しなかった教職員の人数及び氏名を把握するように各県立学校長に指示し、不起立者の氏名、不起立の事実、指導の経過等の内容を記載した経過説明書の作成及び提出を求めた。本件県立高等学校の平成17年度卒業式において、異議申立人が国歌斉唱時に起立しなかったことから、本件校長は異議申立人に係る経過説明書(本件行政文書)を作成し教育委員会高校教育課長に提出した。
(1)異議申立人は、本件行政文書に記載されている情報は、異議申立人の思想信条に該当し、神奈川県個人情報保護条例第6条等の規定に違反して取り扱われたものであるとして、平成18年6月15日付けで、教育委員会に対して、本件行政文書に記載された異議申立人の氏名について、利用の停止を請求した(本件利用停止請求)。
(2)教育委員会は、平成18年7月14日付けで、本件利用停止請求に係る個人情報の利用を停止しないとする決定を行った(本件利用不停止処分)。
(3)これに対して異議申立人は、平成18年9月5日付けで、本件利用不停止処分の取消しを求める、という趣旨の異議申立てを行った。

(答申の要旨)

(1) 条例第6条は、実施機関が原則として取り扱ってはならない個人情報として、「思想、信条及び宗教」、「人種及び民族」、「犯罪歴」及び「社会的差別の原因となる社会的身分」(取扱制限情報)を掲げている。
  条例第6条は、取扱制限情報は人格そのものあるいは精神作用の基礎にかかわる情報であること及び不当な差別に利用されるおそれのある情報であることから、不安や苦痛を感じさせる程度が強いとともに基本的人権を侵害する危険性が高いものであり、他人が取り扱うことは例外的にのみ認められるものでなければならないことを定めたものである。
  なお、「取り扱ってはならない」とは、取扱制限情報の収集、保管、利用及び提供のすべてを禁止する趣旨である。
  また、思想信条を原則取扱い禁止とする事項として掲げたのは、内面の思想そのものまで統制しようとした過去の苦い経験を踏まえたものであり、条例第6条において原則取扱い禁止とする思想信条とは、支持政党名、政治団体名、政治理念、政治活動の経歴、政治的信条等その人の政治的信念及び個人の人格形成の核心をなす人生観、世界観が発露した情報がこれに当たるものであると解される。

(2) 実施機関が説明しているとおり、本件情報は異議申立人が国歌斉唱時に起立しなかった事実の経過に係る情報であり、異義申立人が国歌斉唱時に起立しなかった理由は記載されていない。
  しかし、前記アで述べたとおり、条例第6条において原則取扱い禁止とする思想信条とは、その人の政治的信念及び個人の人格形成の核心をなす人生観、世界観が発露した情報がこれに当たるものであると解されることから、異義申立人が国歌斉唱時に起立しなかった理由が記載されていないことをもって、直ちに本件情報が思想信条に該当しないということはできないと解される。

(3) 異議申立人は、国家の象徴である国旗及び国歌にどのように向き合うかは、個人の思想及び良心の問題であり、不起立という行為は、異議申立人の人格形成の核心をなす人生観、世界観の発露である旨主張している。
  このことに照らせば、異議申立人は、国歌斉唱時に起立しなかった理由として、国旗及び国歌に対する一つの価値観等を挙げたものと認められる。
  このような異議申立人の考え方は、国旗及び国歌に対する異議申立人の歴史観、世界観及びこれに由来する社会生活上の信念ということができる。
  したがって、異議申立人の、平成17年度卒業式の国歌斉唱時における不起立という行為は、異義申立人の思想信条に基づく行為であると認められる。
  ・・・したがって、異議申立人が平成17年度卒業式において国歌斉唱時に起立しなかった事実の経過に係る情報は、異議申立人の一定の思想信条を推知し得る情報であるということができる。
  ・・・以上のことから、本件情報は、異議申立人の政治的信念及び個人の人格形成の核心をなす人生観、世界観が発露した情報であって、条例第6条において原則取扱い禁止とされている思想信条に該当する情報であると判断する。

(4) なお、本件情報は、条例第6条において原則取扱い禁止とされている思想信条に該当する情報という面を有するが、同時に、実施機関が行う教職員の服務に関する事務に係る情報としての側面をも有するものと認められる。
  実施機関は、本件情報と同様の情報を、正当な事務等の実施のために必要があると認めて取り扱うときは、あらかじめ審議会の意見を聴くことが相当である。




神奈川県個人情報保護審議会
平成20年1月17日答申 個情審議第280号
「教育委員会における神奈川県個人情報保護条例第6条
及び第8条に定める個人情報の取扱いについて」

 「起立拒否の教員名報告は不適当」 神奈川県審議会「君が代」問題で答申
  神奈川県教育委員会が君が代斉唱時に起立しなかった教職員名を校長に報告させていることについて、県個人情報保護審議会は17日、「思想、信条に関する個人情報を例外的に扱う正当性、必要性は認められない」と不適当とする答申をまとめた。近く、県教委に提出する。
  県が同審議会の答申に反して事業を継続した例はないが、県教委は答申が「最終的な実施権限は県教委に委ねられる」との見解も示していることを踏まえ、報告を継続する方向で検討する。
  県教委によると、同様のケースで県個人情報保護審議会に意見を求めるのは珍しいという。
 答申は、起立しなかった教職員名の取り扱いは思想、良心の自由を保障した憲法19条と深く関係していると指摘。県教委が「正当な事務や作業の実施に必要で、県個人情報保護条例が認める例外に当たる」と主張していることについて「適当と答申することはできない」との判断を示した

(産経新聞web版 2008年1月18日)





神奈川県立学校・不起立教員情報利用停止請求事件

横浜地裁2011年8月31日判決
平成20年(行ウ)第89号、平成21年(行ウ)第67号、平成22年(行ウ)第33号、平成22年(行ウ)第67号
行政処分取消等請求事件 棄却


 君が代斉唱時の不起立情報収集は適法 教職員側の請求棄却 横浜地裁
  神奈川県教育委員会が県立高校の卒業式と入学式で君が代斉唱時に起立しなかった教職員の氏名を収集しているのは、県個人情報保護条例に違反するなどとして、教職員ら27人が県を相手に、個人情報の破棄と1人当たり100万円の慰謝料の支払いなどを求めた訴訟の判決で、横浜地裁(佐村浩之裁判長)は31日、教職員側の請求を棄却した。
  不起立情報が同条例で保護の対象として定める思想、信条情報に該当するかが争点だった。
  佐村裁判長は「不起立情報は、思想信条情報に当たる」としたが、「職務命令に反した違反事実についての情報で、正当な事務のためのものというほかない」とし、条例が保護の例外として認める要件に該当すると指摘。「県教委の判断は教職員の服務規律保持を担う行政機関として裁量内」と結論づけた。
  県教委は、学習指導要領に基づく国旗掲揚・国歌斉唱の指導徹底を図るため、平成18年3月の卒業式から氏名収集を開始。教職員は個人情報の利用停止と消去を求めたが、県教委は認めず利用不停止決定を行った。
  県個人情報保護審議会は19〜20年、収集を「条例で禁止されている思想信条情報の収集に該当し、不適当」とし、利用停止を答申。県教委は収集した氏名をいったん破棄したが、その後も氏名収集を継続し、22年にも同審議会が同様の答申をしていた。
  県教委は「学習指導要領に基づき国旗国歌を尊重する態度を身につけることは、学校教育で重要な意義を持つ」とし、卒業式や入学式の君が代斉唱の際、起立しなかった教職員の氏名収集と指導経過の記録を継続している。

(産経新聞web版 2008年8月31日)





神奈川県立学校・不起立教員情報利用停止請求事件

東京高裁2012年7月18日判決
平成23年(行コ)第326号
各行政処分取消等請求控訴事件 棄却(上告)


教職員二審も敗訴 君が代不起立情報収集訴訟

  県教育委員会が入学式や卒業式の君が代斉唱時に起立しなかった教職員の氏名を情報収集したのは、県個人情報保護条例に違反するとして、教職員ら二十五人が県に情報の削除を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(大竹たかし裁判長)は十八日、訴えを退けた一審横浜地裁判決を支持し、教職員側の控訴を棄却した。教職員側は最高裁に上告する。
  起立しなかったという情報が条例で収集を禁じる「思想信条に関する個人情報」かについて、大竹裁判長は「不起立はその動機や理由が分からなければ、特定の思想の表明だと外部から認識することは困難」と述べ、思想信条の情報ではないと判断。一審同様、「人事管理上、必要な収集で条例違反ではない」として訴えを退けた。
  昨年八月の一審判決は、不起立の情報は思想信条の情報にあたるとして、教職員側の主張を認めていた。教職員側の弁護団は「一審よりも後退した判断で不当だ」と批判した。
  教職員の氏名の情報収集をめぐっては、県の複数の諮問機関が「収集は不適当」と答申を出したが、県教委は「服務指導のため必要」と説明し、収集を続けている。

(東京新聞web版 2012年7月19日)

最高裁二小2013年4月17日決定
平成24年(行ツ)第357号、平成24年(行ヒ)第411号
上告棄却・上告不受理

 

 

 


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東京都立高校・不起立再雇用拒否事件

東京地裁2008年2月7日判決
平成17年(ワ)第15718号(甲事件)、平成18年(ワ)第7392号(乙事件)
損害賠償請求事件 一部認容・一部棄却

 

(事件の概要)

  都立高校の校長は、東京都教育長の平成15年10月23日通達に基づいて、教職員に対し、卒業式等において、国歌斉唱時に国旗に向かって起立し、国歌を斉唱するよう職務命令を発令した。都立高校の教職員であった原告らは、これに従わなかったため、職務命令違反を理由として、定年後(一部原告は勧奨退職後)の嘱託員としての再雇用を不合格とされた。本件は、原告らが、不合格は違法であるとして、損害賠償(逸失利益、慰謝料等)を求めるものである。

(判決理由の要旨)

(1) 本件職務命令は、思想及び良心の自由を侵害するか
  原告らが、卒業式等の国歌斉唱時に「日の丸」に向かって起立し、「君が代」を斉唱することを拒否することは、原告らの歴史観ないし世界観又は信条に基づく行為であろうといえるが、一般的には、これらと不可分に結びつくものということはできない。
  本件職務命令は、原告らに対し、特定の思想を持つことを強制したり、あるいはこれを禁止したりするものではなく、特定の思想の有無について告白することを強要するものでもなく、児童に対して一方的な思想や理念を教え込むことを強制するものとみることもできない。

(2) 本件通達は、「不当な支配」に該当するか
  本件通達は、・・・その目的には合理性があるといえるし、・・・発すべき必要性もあったといえる。そして、本件通達は、卒業式等における国歌斉唱及び国歌斉唱に関する実施指針のみを定めるものであって、教職員が生徒に対して「日の丸」、「君が代」に関する歴史的な事実等を教えることを禁止するものではないし、教職員に対し、国旗、国歌について、一方的に一定の理論を生徒に教え込むことを強制するものとはいえない。したがって、これらの点においても、本件通達が合理性を欠くとはいえない。

(3) 本件職務命令は、原告らの専門職上の自由を侵害するか
  校長が、教職員に対し、卒業式等の国歌斉唱時に「日の丸」に向かって起立し、「君が代」を斉唱することを求めることは、生徒に対して特定の思想のみを教授することを強制する性質を有するものであるとはいえないし、教職員や生徒、保護者や来賓等多数の人が参列する集団的行事である卒業式等において、校長がその権限に基づき、国歌斉唱を含む式次第やその進行を予め一律に定め、これを実施しようとすることは、儀式としての性質上その必要性はあるといえるから、本件職務命令は、原告らに認められる教授の自由ないし教職員としての専門職上の自由を侵害するものであるとは認められない。

(4) 本件不合格は、憲法19条に違反するか。
  都教委は、原告らが卒業式等において本件職務命令に従わず、起立せず国歌斉唱しなかったことは、職務命令違反及び信用失墜行為に当たる重大な非違行為であって、嘱託員選考の「正規職員を退職する前の勤務成績が良好であること」の要件を欠くとして不合格としたものであり、原告らが特定の思想、良心を有していることを理由として不合格としたものとは認められない。

(5) 本件不合格について、裁量の逸脱、濫用があるか。
  本件職務命令に反し、卒業式等において、起立せず、国歌斉唱をしないという行為は、生徒らに対して指導すべき事項である国旗、国歌の尊重に反し、国旗に向かって起立し、国歌を斉唱している他の教職員や来賓等に対して、不快の念を与える可能性がある行為であるとはいえるものの、積極的に式典の進行を妨害するものではなく、本件職務命令が、とりわけ重大なものとはいえず、これのみで教職員の勤務成績を決定的に左右するような内容のものとも解されないし、また、過去においては卒業式等の国歌斉唱時に起立せず、国歌斉唱をしなかった教職員も嘱託員として採用されていたのであるから、不起立と国歌斉唱をしなかったという行為自体が、その性質上、直ちに嘱託員としての採用を否定すべき程度の非違行為というのは疑問である。
  原告らの不合格は、従前の再雇用制度における判断と大きく異なるものであり、本件職務命令違反をあまりにも過大視する一方で、原告らの勤務成績に関する他の事情をおよそ考慮した形跡がないのであって、客観的合理性や社会的相当性を著しく欠くものといわざるを得ず、都教委はその裁量を逸脱、濫用したものと認めるのが相当である。

(6) 損害賠償責任
  原告らに対する本件不合格は、都教委による不法行為であると認められるから、都教委の設置者である被告は、原告らに対し、国家賠償法に基づき、本件不合格により原告らに生じた損害を賠償すべき責任を負うべきである。 本件での原告らの損害は、甲事件原告らがそれぞれ合計212万8600円、乙事件原告らがそれぞれ合計211万6000円となる。

(判時2007号141頁)


 

東京都立高校・不起立再雇用拒否事件

東京高裁2010年1月28日判決 
平成20年(ネ)第1430号 損害賠償請求控訴事件
原判決取消、請求棄却

 

 君が代不起立で再雇用拒否 元教職員側、二審は逆転敗訴
 都立高校の元教職員ら13人が、卒業式などで「君が代」の斉唱時に起立しなかったことを理由に、退職後に嘱託職員として採用されなかったのは不当だと訴えた訴訟の控訴審判決が28日、東京高裁であった。稲田龍樹裁判長は「不合格処分に裁量の逸脱はなかった」と述べ、都教委側に計2700万円を支払うよう命じた一審判決を取り消し、元教職員側を逆転敗訴させた。

 同じ時期に再雇用されなかった別の元教諭については東京高裁の別の裁判長が2009年10月、約210万円の賠償を命じた一審・東京地裁判決を取り消し、原告側逆転敗訴の判決を言い渡し、元教諭が最高裁に上告している。

 今回、訴訟を起こしていた元教職員は、04年春の卒業式などをめぐって処分を受け、05〜06年に再雇用を拒否された。一審・東京地裁は都教委の判断について「職務命令違反をあまりに過大視し、裁量を逸脱していた」として、1人あたり約210万円を支払うよう命じていた。

 これに対し、高裁判決は「再雇用の裁量権はかなり広く、不法行為を構成するのは例外的な場合だ。再雇用を希望する者が抱く期待が法的保護を受けるとはいえない」と判断。職務命令に違反して起立しなかったことで戒告処分を受けた元教職員たちが低い評価を受けたのは「やむを得ない」と述べ、都教委側に裁量の逸脱はなかった、と結論づけた。

 斉唱時に起立を命じた職務命令そのものが合憲で、国歌・国旗の取り扱いについて都教委が03年に出した通達も旧教育基本法に違反しないという判断は一審と同様だった。

 一方、都教委は28日、「主張が認められたことは当然のことと認識している。今後も採用選考は適正に実施していく」との談話を出した。

(朝日新聞2010年1月28日web版)
(判時2086号148頁)

 

東京都立高校・不起立再雇用拒否事件

最高裁一小2011年6月6日判決 
平成22年(オ)第951号 損害賠償請求事件 棄却

 国旗国歌 職務命令、再び「合憲」 最高裁が元教員側の上告棄却
  卒業式などで校長の職務命令に反し、国旗に向かっての起立や国歌斉唱をしなかったことを理由に、退職後に嘱託職員として再雇用しないのは違法として、都立高の元教職員13人が損害賠償を東京都に求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は6日、元教職員側の上告を棄却した。「校長の職務命令は思想と良心の自由を侵すものとして憲法19条に違反するとはいえない」と判断を示した。元教職員側の敗訴が確定した。

  5月30日の第2小法廷判決に続く合憲判断。職務命令の合憲性が争点となった訴訟は、第3小法廷でも今月14日と21日に判決が予定されている。この2件も、2審の結論を見直す可能性がある弁論が開かれないことから、2審の合憲判断が維持される見通し。

  第1小法廷は「起立斉唱行為は慣例上の儀礼的な所作としての性質を有し、職務命令は個人の歴史観や世界観を否定するものではなく、個人の思想と良心の自由を直ちに制約するものとは認められない」と指摘。ただし、国歌国旗に敬意を表明することは応じがたいと考える人にとっては「思想と良心の自由に間接的な制約となる面があることは否定し難い」とした。
  その上で「必要性、合理性が認められるか否かという観点から判断するのが相当」とし、式典を円滑に遂行するという命令の目的や公務員の職務の公共性を踏まえ、「許容しうる程度の必要性、合理性が認められる」と結論付けた。
  判決は5人の裁判官のうち、4人の裁判官の多数意見による結論。宮川光治裁判官(弁護士出身)は「職務命令によって内面に生じた矛盾、葛藤、精神的苦痛などを踏まえて、審査が行われる必要がある」として、違憲性をより厳格に判断すべきだとの立場から、審理差し戻しを求める、反対意見を述べた。

  1、2審判決によると、元教職員らは平成15〜17年度の卒業式などで国旗掲揚時に起立せず、国歌を斉唱しなかったとして東京都教育委員会から戒告や減給の処分を受け、退職後は嘱託職員として採用されなかった。
  1審東京地裁判決は20年2月、原告の違憲主張は退けたが、「不採用は都教委の裁量権の逸脱」として都に計2750万円の賠償を命令。2審東京高裁判決は22年1月、「裁量権の逸脱はなかった」として1審判決を取り消した。

(産経新聞 2011年6月6日web版)

裁判官宮川光治の反対意見(抜粋)

  国旗に対する敬礼や国歌を斉唱する行為は,私もその一員であるところの多くの人々にとっては心情から自然に,自発的に行う行為であり,式典における起立斉唱は儀式におけるマナーでもあろう。しかし,そうではない人々が我が国には相当数存在している。それらの人々は「日の丸」や「君が代」を軍国主義や戦前の天皇制絶対主義のシンボルであるとみなし,平和主義や国民主権とは相容れないと考えている。そうした思いはそれらの人々の心に深く在り,人格的アイデンティティをも形成し,思想及び良心として昇華されている。少数ではあっても,そうした人々はともすれば忘れがちな歴史的・根源的問いを社会に投げかけているとみることができる。

  本件通達は,校長の職務命令に従わない場合は服務上の責任を問うとして,都立高等学校の教職員に対し,式典において指定された席で国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを求めており,その意図するところは,前記歴史観ないし世界観及び教育上の信念を有する教職員を念頭に置き,その歴史観等に対する否定的評価を背景に,不利益処分をもってその歴史観等に反する行為を強制しようとすることにあるとみることができる。本件各職務命令はこうした本件通達に基づいている。

 本件各職務命令の合憲性の判断に関しては,いわゆる厳格な基準により,本件事案の内容に即して,具体的に,目的・手段・目的と手段との関係をそれぞれ審査することとなる。目的は真にやむを得ない利益であるか,手段は必要最小限度の制限であるか,関係は必要不可欠であるかということをみていくこととなる。……その上で,本件各職務命令がそれを避けるために必要不可欠であるか,より制限的でない他の選び得る手段が存在するか(受付を担当させる等,会場の外における役割を与え,不起立不斉唱行為を回避させることができないか)を検討することとなろう。

(判時2123号3頁、判タ1354号69頁)

 

 

 


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東京都卒業式不適切祝辞事件

東京地裁2008年3月27日判決
損害賠償請求事件 棄却(控訴)

 

(事件の概要)

  来賓として参列した前勤務校の卒業式において、不適切な発言内容を含む祝辞を述べたことに対して現勤務校の校長による指導が、違法な公権力の行使であるとしてなされた損害賠償請求。

(判決理由の要旨)

  本件指導は、校長が有する所属職員に対する監督権限に基づき行われ、その内容・態様からすれば、これが法的な効果を伴わないものであり、かつ、権力的な作用・要素を含むものでもないことは明らかといえる。このような非権力的事実行為は行為対象者に何らの法的義務を課したり、また、行為対象者の権利・利益を法的に強制するものではないことからすると、所要の行政目的を達成するための柔軟性の高い措置として、それが非権力的事実行為の性質・趣旨を逸脱するようなもの、すなわち、強度の干渉にわたったり、実質的に行為対象者に重大な不利益を与えるのに等しいなどといった事情がない限り、広く許容されるべきものと解される。

  原告は、本件指導は原告の表現行為の規制となるから、内容明確な規制根拠がなければこれを規制し得ず、また、かかる規制根拠が存したとしても、その表現行為により重大な支障が生じたという場合でなければこれを規制することはできないと主張するが、本件指導のような非権力的事実行為はそもそも法定外の柔軟な措置であるから、明確な法的根拠を必須とするものではなく、また、その態様も強度の干渉や重大な不利益を被らせるようなものを想定していない以上、非権力的事実行為の国賠法上の違法性の有無を判断するのに、原告主張のような基準によるべき根拠は見出し難く、採用することはできない。

(教育委員会月報2009年2月)




 「もの言える自由」裁判 ・最高裁上告棄却!

  「もの言える」裁判「上告棄却」の決定が2009年7月2日付けで出され弁護士事務所に送付されました。棄却の理由は、本件上告理由は、違憲をいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、上告が許される各項(民翫法312条1項又は2項所定の場合)に規定する事由に該当しない、という「門前払い」でした。
 4月28日に「上告理由書」等を提出し、最高裁に5月14日に記録到着、それから実質1ヶ月半にも満たない間に第一小法廷(甲斐中辰夫主任裁判官、涌井紀夫、宮川光治、桜井龍子、金築誠志裁判官)は一体どんな「審理」を行ったのでしょうか?
 週休日に前任校卒業式に出席した教員が来賓紹介の際述ぺた短い祝辞、=「おめでとうございます。色々な強制の下であっても自分で判断し行動できるカを磨いていってください。」=が不適切だと東京都教育委員会が調査・指導・公表したことが、「表現の自由」「思想・良心の自由」等の侵害だという訴えに対して、まったく憲法上の判断をせずに棄却した地裁・高裁判決が、最高裁の「上告棄却」によって確定しました。

(パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2 2009/8/29)

 

 

 


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東京都立南葛飾高校・不起立再雇用拒否事件(1)

東京地裁2009年1月19日判決
平成19年(行ウ)第767号 再雇用拒否処分取消等請求事件
一部認容・一部却下・一部棄却(控訴)

 

  卒業式で君が代斉唱時に起立しなかったことを理由に、都が退職後に再雇用しなかったのは違法だとして、都立高校の元教諭の男性(62)が再雇用などを求めた訴訟の判決が19日、東京地裁であった。渡辺弘裁判長は「不起立による戒告処分をもって不合格と評価することは極めて不合理だ」と判断し、1年間の雇用報酬などにあたる211万円の支払いを都に命じた。
  男性は「再雇用拒否処分の取り消し」を求めたが、判決が「不合格は行政処分にあたらない」として訴えを却下したため、男性は控訴する方針。
  判決によると、男性は04年3月の卒業式で君が代斉唱時に起立しなかったため戒告処分を受けた。07年3月に都立高校を定年退職する前に再雇用を申請したが不合格の通知を受けた。
  判決は、再雇用希望者のほぼ全員が採用されていたことを重視し、「再雇用されるという期待には合理性がある」と判断。「不起立を過大視し、社会的相当性を著しく欠いており、都教委は裁量権を逸脱した」と結論づけた。
  君が代斉唱時の不起立による再雇用拒否をめぐる東京地裁の判断は分かれている。07年6月の判決は元教諭側の請求を棄却。08年2月の判決は、都教委側に裁量権の逸脱があったとして元教諭ら13人への賠償を認めた。ただ、今回も含めていずれの判決も都の通達に基づき、起立斉唱を命じる校長の職務命令は思想・良心の自由を定めた憲法に反しないと判断した。

(朝日新聞2009年1月19日web版)
(判時2056号148頁、判タ1296号193頁、労判979号5頁)

 

東京都立南葛飾高校・不起立再雇用拒否事件(1)

東京高裁2009年10月15日判決
平成21年(行コ)第62号 再雇用拒否処分取消等請求控訴事件
一部取消、請求棄却(上告・上告受理申立)

 

 君が代不起立訴訟、元教諭が逆転敗訴
  卒業式で君が代斉唱時に起立しなかったことを理由に定年後の再雇用を拒否された東京都立高元教諭の男性(62)が、都に不採用処分の取り消しと損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が15日、東京高裁であった。原田敏章裁判長は、都教委の裁量権の逸脱を認めて211万円の賠償を命じた一審・東京地裁判決を取り消し、元教諭の請求を退けた。元教諭は上告する方針。
  判決は、君が代斉唱時の起立を命じる職務命令がある以上、元教諭はそれに従う職務上の義務があるとして、「厳粛な雰囲気の中で行われるべき卒業式で起立しなかったことは重い非違行為だ」と指摘。都教委が、不起立による戒告処分を理由に再雇用しなかったことは、裁量権の乱用にはあたらないと判断し、一審の判断を覆した。
  原田裁判長はさらに、「個々の教諭が信念のみに従っていては学校教育が成り立たない。都立高の教諭という職業を選択した以上、信念を後退させることを余儀なくされることは、当然に甘受すべきだ」と言及した。
  判決によると、元教諭は04年3月の卒業式で君が代斉唱時に起立しなかったため戒告処分を受けた。その後の卒業式などでは起立したが、07年の定年退職前に申請した再雇用は認められなかった。
  元教諭は判決後、「教師は機械ではない。信じていないものに屈服する教育の方が間違っている」と話した。

(朝日新聞2009年10月15日web版)
(判時2063号147頁、労判995号60頁)

 

東京都立南葛飾高校・不起立再雇用拒否事件(1)

最高裁二小2011年5月30日判決
平成22年(行ツ)第54号 再雇用拒否処分取消等請求事件 棄却

 

 国歌斉唱、起立命令は合憲 個人の思想、制約せず 最高裁初判断
  卒業式の国歌斉唱で起立しなかったことを理由に、退職後に嘱託教員として雇用しなかったのは違法として、東京都立高の元教諭、申谷(さるや)雄二さん(64)が都に損害賠償などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(須藤正彦裁判長)は30日、起立を命じた校長の職務命令を合憲と判断し、原告の上告を棄却した。都に賠償を命じた1審判決を取り消し、原告の逆転敗訴となった2審判決が確定した。最高裁は平成19年2月、国歌伴奏を命じた職務命令を合憲と初判断したが、国歌斉唱の起立命令への合憲判断は初めて。

  1、2審判決などによると、申谷さんは16年3月の都立高の卒業式で起立せず、東京都教育委員会から戒告処分を受けた。19年3月の退職前に再雇用を求めたが、不合格とされた。

  同小法廷は判決理由で、卒業式などでの国歌斉唱の起立は「慣例上の儀礼的な所作」と定義。起立を命じた職務命令について「個人の歴史観や世界観を否定しない。特定の思想の強制や禁止、告白の強要ともいえず、思想、良心を直ちに制約するものとは認められない」と指摘した。
  その上で、「『日の丸』や『君が代』が戦前の軍国主義との関係で一定の役割を果たしたとする教育上の信念を持つ者にとっては、思想、良心の自由が間接的に制約される面はあるが、教育上の行事にふさわしい秩序を確保するための必要性、合理性が認められる」との判断を示した。
  判決は4人の裁判官の全員一致の意見で、うち3人が補足意見を付けた。竹内行夫裁判官は「他国の国旗、国歌に対して敬意をもって接するという国際常識を身に付けるためにもまず自分の国の国旗、国歌に対する敬意が必要」とした。

  1審東京地裁判決は21年1月、職務命令の違憲性を否定したが、「起立しなかったのは1回だけで不採用は裁量権の乱用にあたる」として都に約210万円の賠償を命じた。2審東京高裁は同年10月、職務命令の合憲性を認め、命令がある以上、原告は従う職務上の義務があるとして、1審判決を取り消す判決を言い渡した。

 判決骨子
一、職務命令は、個人の思想および良心の自由を直ちに制約するものと認めることはできない
一、職務命令は、個人の思想および良心の自由についての間接的な制約となる面はあるものの、上記の制約を許容し得る程度の必要性および合理性が認められる
一、命令は儀礼的行動を求め、秩序の確保や式典の円滑な進行を図るもので、憲法に反しない

(産経新聞 2011年5月31日web版)
(判時2123号3頁、判タ1354号51頁)

 

 


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八王子市立小学校・ピアノ伴奏拒否戒告処分事件

東京地裁2009年2月19日判決
平成18年(行ウ)第713号 懲戒処分取消請求事件 棄却

 

  八王子市立小学校における2004年3月の卒業式での国歌斉唱の際に、職務命令に反してピアノ伴奏をしなかった音楽専科の教員に対する戒告処分は違法として、東京都と八王子市を相手に処分の取り消しを求めた訴訟。東京地裁は教員の訴えを退け、ピアノ伴奏を命じる職務命令は合憲で、処分も違法とはいえないとした。
  控訴審の東京高裁は、職務命令を合憲としたものの、処分を妥当とした地裁判決を変更し戒告処分を取り消す「逆転勝訴」の判決を下した。
 上告審の最高裁第一小法廷は、戒告処分を取り消した二審判決を破棄して、教員の請求を棄却した。

 

東京高裁2011年3月10日判決
平成21年(行コ)第104号 懲戒処分取消請求事件 変更(請求認容)

最高裁一小2012年1月16日判決
平成23年(行ツ)第236号、平成23年(行ヒ)第254号 懲戒処分取消請求事件 原判決破棄・棄却

 

 


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広島県立高校・不起立処分事件

広島地裁2009年2月26日判決
平成16年(行ウ)第21号・第36号 懲戒処分取消請求事件 棄却

 

 入学式や卒業式の「君が代」斉唱時に、職務命令に反して起立しなかったために広島県教委から戒告処分を受けたのは、思想良心の自由を侵害しているなどとして、県立高校の教諭ら45人が、処分の取り消しを求めた訴訟の判決が26日、広島地裁であった。橋本良成裁判長は「職務命令は不必要に原告らの信念に反する行為を強制するものではない」とし、教諭らの請求を棄却した。
 訴えによると、教諭らは01〜03年度の入学式や卒業式で、各校の校長から「君が代」斉唱時に起立するよう職務命令を受けたが従わず、戒告処分を受けた。
 判決は、入学式や卒業式での「君が代」斉唱に際して起立することは、国歌に敬意を表する社会的儀礼としての意味があると定義。「起立しないことが、原告らの歴史観に基づく一つの選択ではある」としつつも、国旗・国歌法で「君が代」が国歌とされたことを挙げ、「民主主義的な政治過程を通じて国歌が定められた以上、思想はさておき、起立する限度で国歌に敬意を示すことが、ただちに原告らの歴史観や世界観を否定することにはならない」と結論づけた。

(朝日新聞2009年2月26日web版)

 

 

広島県立高校・不起立処分事件

広島高裁2010年5月24日判決
平成21(行コ)第6号 懲戒処分取消請求事件 棄却

 

 君が代訴訟、二審も棄却 広島高裁「処分は適法」
  卒業式や入学式で職務命令に反して君が代を起立斉唱しなかったことを理由に戒告処分にしたのは懲戒権の逸脱・乱用として、広島県の県立高校などの教諭と遺族ら男女計42人が県教育委員会の処分取り消しを求めた訴訟で、広島高裁は2010年5月24日、「国歌斉唱時の起立は一般の儀礼的行為で、処分は適法」として、教諭側の控訴を棄却した。
  判決理由で広田聡裁判長は「校長の職務命令は内心の精神活動に影響を与えるが、学習指導要領の趣旨にかなっており、社会に開かれた学校の行事では個々の教師の裁量はおのずから制限されるべきだ」と指摘。思想・良心の自由を定めた憲法19条の違反には当たらず、処分を適法とした一審広島地裁判決を踏襲した。
  判決によると、教諭らは2001〜04年、校長の職務命令に従わず、君が代斉唱時に起立しなかったとして、戒告の懲戒処分を受けた。

(京都新聞2010年5月24日web版)

 

広島県立高校・不起立処分事件

最高裁三小2011年6月21日判決
 平成22年(行ツ)第372号 懲戒処分取消請求事件 棄却

 

 君が代起立職務命令、合憲判断 最高裁4例目

 広島県立高校の教諭らが、卒業式などで「君が代」斉唱時に校長の命令に反して起立せずに戒告処分を受けたことを不服として県教委に処分の取り消しを求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(大谷剛彦裁判長)は21日、教諭らの上告を棄却する判決を言い渡した。教諭らの敗訴が確定した。
 判決は、起立させる校長の職務命令について「思想・良心の自由」を保障した憲法19条に違反しないと判断した。同種の訴訟で「合憲」と判断した最高裁判決は4例目。
 原告の教諭ら42人は、2001〜03年度の入学式や卒業式で君が代斉唱時に校長の命令に反して起立しなかったことから、県教委から戒告処分を受けた。
 第三小法廷は、先行した3判決の内容を踏襲。職務命令が個人の思想・良心の自由を「間接的に制約する面は否定しがたい」と認めつつ、教育上の行事にふさわしい秩序を確保する目的などを考慮すれば、「制約には必要性・合理性がある」と結論づけた。  裁判官5人のうち、弁護士出身の田原睦夫裁判官は審理を高裁に差し戻すべきだとする反対意見を述べた。「一部の教諭らについては起立だけでなく斉唱まで命令されたと解釈できる」と指摘。「斉唱の命令は、内心の核心的部分を侵害する可能性がある」との考えを示した。(山本亮介)

(朝日新聞2011年6月21日web版)
(判時2123号3頁、判タ1354号51頁)

 

 

 


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大阪府立東豊中高校・国歌斉唱時発言事件

大阪地裁2009年3月26日判決
平成19年(行ウ)第171号 懲戒処分取消請求事件 棄却

 

(事件の概要)

  本件は,大阪府立東豊中高校の教諭として勤務していた原告が,同校の平成13年度の卒業式において,国歌斉唱の際に式場中央寄りに歩み出て,「本校の職員会議で君が代は実施しないと決議されています。歌う歌わない,退出するしないは,皆さんの良心に従って判断して下さい。」という趣旨の発言を行ったことについて,大阪府教育委員会から,地方公務員法33条の信用失墜行為に当たる等として,懲戒処分である戒告処分受けたため,被告に対し,その取消しを求める事案である。

(判旨)

  高等学校学習指導要領の国旗・国歌条項は,高等学校教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的な大綱的基準として,法規としての性格を有していると解するのが相当である。

  @本件卒業式当時,大阪府立の高等学校を含めて大阪府下の学校でも国歌としての「君が代」を斉唱することがかなりの学校で行われていた上,A全国の公立の高等学校でも卒業式において,国歌斉唱が広く実施されていたところ,以上のような事実からすると,卒業式に国歌斉唱をすることは卒業式の出席者にとって通常想定されていたことといえ,国歌斉唱をもって,これを行う教職員や生徒が特定の思想を有することを外部に表明するものであるとまでいうことはできない。特に,本件卒業式のような校長の高等学校学習指導要領に基づいた国歌斉唱の指示の場合には,より一層,国歌斉唱をもって特定の思想信条を有することを外部に表明するものとまでいうことはできない。

  原告の本件行為は,本件卒業式において,生徒,保護者及び学校関係者が整然と参列する中で,卒業式としての意義を踏まえ,国歌斉唱をその意義を踏まえて厳粛な雰囲気の中で実施することを妨げるものと認められ,したがって,校長が定めた実施方法による国歌斉唱の円滑な遂行を妨げないという,地方公務員かつ教育職員としての職務上の責務に反するものというべきである。

  府教委が林校長に対して行った国歌斉唱に関する指導について,教育基本法10条1項で禁止された教育に対する「不当な支配」に当たるとは認められない。

 

 

大阪府立東豊中高校・国歌斉唱時発言事件

大阪高裁2009年9月9日判決
平成21年(行コ)第64号 懲戒処分取消請求控訴事件 棄却

 

 大阪高裁は基本的に原判決を引用し請求を棄却した。そして、「事案に鑑み」と前置きして補足説明を加えている。

(補足説明)

○ 思想信条の自由について
 君が代という国歌が担ってきた戦前からの歴史的役割に対する認識や歌詞の内容から,君が代に対し負のイデオロギーないし抵抗感を持つ者が,その斉唱を強制されることを思想信条の自由に対する侵害であると考えることには一理ある。とりわけ,「唱う」という行為は,個々人にとって情感を伴わざるを得ない積極的身体的行為であるから,これを強要されることは,内心の自由に対する侵害となる危険性が高い。したがって,君が代を斉唱しない自由も尊重されるべきである。本件訴訟における控訴人の主張は,以上の限りにおいて首肯しうるものを含んでいる。・・・しかしながら、君が代斉唱に対し、積極的な行動をもって妨害し、その円滑な実施を妨げることが、上記思想信条の自由を根拠に容認されるものではない。

○ 本件行為の目的、意義
 本件行為は,正当防衛行為でも正当業務行為でもなく,控訴人がそれまでの日々の教育活動において表明してきた教員としての心情,信念を本件卒業式の出席者の前で表明して,自分の言動の首尾一貫性を示そうとした個人的行為である。そして,本件卒業式は,東豊中高校にとって儀式的学校行事であるから,控訴人が個人的意見を表明する場でないことはいうまでもないところである。

○ 本件行為の影響
 本件卒業式の挙行中に,その式次第をめぐって学校内部に激しい分裂があることを,教員がことさらに露わにすることは,その分裂が周知の事実であっても,参加者全員が前記の祝意とはなむけの気持ちで心を一つにして,式次第に従って真摯な態度で挙行すべき卒業式に,突如として異質な要素を持ち込み,その雰囲気の統一性を破るものであることは否定しようがない。
 したがって、本件行為は物理的ないし時間的な関係で本件卒業式を妨害したものではないけれども,前記の意義がある卒業式の厳粛な雰囲気を損なって,その意義を傷つけた点において,これを妨害したといわなければならない。

○ 卒業生に対する応答
 控訴人は,本件式次第化に反対する行動をした卒業生に対する担任教諭からの応答として本件行為をしたと主張するところ,・・・そのような応答は,本件卒業式の式場で,式次第に関する司会者の進行発言に相当する態様で行うべきものではない。

 

 

 

 


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東京都立学校・不起立処分事件(第1次訴訟)

東京地裁2009年3月26日判決
平成19年(行ウ)第68号 懲戒処分取消等請求事件 棄却

 

事案の概要:
本件は、都立学校(高等学校又は養護学校)の教職員である原告ら172名(うち65名は既に退職。)が、平成15年11月8日から平成16年4月9日までに都立学校で行われた卒業式、入学式及び創立周年記念式典(以下「卒業式等」という。)に際して、事前に各校長から発令された、国歌斉唱時に国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すること又は国歌斉唱時にピアノによる伴奏をすることを命ずる職務命令は、原告らの思想及び良心の自由を侵害するなど違憲、違法なものであったから、これに従わなかったことを理由として東京都教育委員会(以下「都教委」という。)が原告らに対して行った懲戒処分も違憲、違法であるとして、各懲戒処分の取消しを求めるとともに、都教委の設置者である東京都に対して、国家賠償法に基づき損害賠償(逸失利益及び慰謝料)の支払を求める事案である。

(裁判所ウェブサイト、判タ1314号146頁)

 国旗・国歌不起立処分訴訟 都の処分は正当
  卒業式での国旗掲揚、国歌斉唱の際に起立しなかった教職員に対する懲戒処分は違法として、都立学校の教諭ら172人が都に処分の取り消しと1人55万円の慰謝料などを求めた訴訟の判決が26日、東京地裁であった。中西茂裁判長は教諭らの請求を棄却した。
  中西裁判長は、都教委が平成15年に出した、卒業式で国旗掲揚と国歌斉唱の徹底を命じた通達と、通達に基づく校長の職務命令について、「特定の思想を持つことを強制、又は禁止するものではない」として、憲法違反には当たらないと判断。
  処分についても、「職務命令に違反したことは非難されるべきで、戒告処分が重いともいえない」と結論付けた。

(産経新聞2009年3月27日web版)

 

東京都立学校・不起立処分事件(第1次訴訟)

東京高裁2011年3月10日判決
平成21年(行コ)第181号 懲戒処分取消等請求控訴事件 変更・請求認容

 

1 事案の概要
  都立高等学校等の教職員らである控訴人ら(168名)が,東京都教育委員会から,平成15年11月〜平成16年4月に行われた卒業式等において,校長の職務命令に従わないで,国歌斉唱時に国旗に向かって起立せず,又はピアノ伴奏をしなかったことを理由に,戒告等の懲戒処分を受けたことにつき,被控訴人東京都に対し,上記職務命令及び懲戒処分は違憲,違法であると主張して,懲戒処分の取消しと損害賠償(慰謝料)を請求する事件である。原審は,請求を全部棄却した。

2 結論(主文)
(1)控訴人らに対する懲戒処分を取り消す。
(2)控訴人らの損害賠償請求は棄却する。

3 理由の概要
(1)既に退職している控訴人らについても,懲戒処分の取消しを求める利益がある。
(2)起立斉唱,ピアノ伴奏を命じた校長の職務命令は,旧教育基本法10条等に違反せず,違法ではない。
(3)起立斉唱,ピアノ伴奏を命じた校長の職務命令及び控訴人らに対する懲戒処分は,憲法19条の思想・良心の自由の保障に違反しない。
(4)控訴人らには校長の職務命令に違反したなどという懲戒事由があるが,控訴人らに懲戒処分を科すことは,懲戒権者の裁量権の範囲を逸脱するものであって,違法であるから,懲戒処分を取り消すべきである。
(5)控訴人らの慰謝料請求には理由がない。

(裁判所ウェブサイト、判時2113号30頁、判タ1364号94頁)

 

東京都立学校・不起立処分事件(第1次訴訟)

最高裁一小2012年1月16日判決
平成23年(行ツ)第263号 懲戒処分取消等請求控訴事件 一部認容・一部棄却

 

  卒業式などで日の丸に向かって起立せず、君が代を斉唱しなかった公立学校の教職員などを減給、戒告とした東京都の懲戒処分をめぐる訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷は、戒告処分を受けた168人については処分を取り消した二審判決を破棄して、全員の請求を棄却した。減給処分を受けた1人については、処分を取り消した二審判決を支持した。

(懲戒処分の裁量権について)
  本件職務命令の違反に対し,教職員の規律違反の責任を確認してその将来を戒める処分である戒告処分をすることは,学校の規律や秩序の保持等の見地からその相当性が基礎付けられるものであって,法律上,処分それ自体によって教職員の法的地位に直接の職務上ないし給与上の不利益を及ぼすものではないことも併せ考慮すると,……過去の同種の行為による懲戒処分等の処分歴の有無等にかかわらず,基本的に懲戒権者の裁量権の範囲内に属する事柄ということができると解される。
  不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについて,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮を必要とする。

(戒告処分について)
  本件職務命令の違反を理由として,第1審原告らのうち過去に同種の行為による懲戒処分等の処分歴のない者に対し戒告処分をした都教委の判断は,社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず,上記戒告処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないと解するのが相当である。

(減給処分について)
  過去に入学式の際の服装等に係る職務命令違反による戒告1回の処分歴があることのみを理由に第1審原告に対する懲戒処分として減給処分を選択した都教委の判断は,減給の期間の長短及び割合の多寡にかかわらず,処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き,上記減給処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法の評価を免れないと解するのが相当である。

(判例時報2147号127頁、判例タイムズ1370号78頁)

 

 

 


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東京都公立学校・不起立停職処分事件

東京地裁2009年3月26日判決
平成18年(行ウ)第589号・第560号 停職処分取消等請求事件 棄却

 

事案の概要:
原告Aは,当時勤務していた立川市立C中学校(以下「C中」という。)で平成18年3月17日に行われた平成17年度卒業式において,同校校長から,国旗に向かって起立し国歌を斉唱することという職務命令を受けていたのに,国歌斉唱時に起立しなかったところ,東京都教育委員会(以下「都教委」という。)は,これまでにも原告Aが同種の行為により複数の処分を受けており,上記不起立は,地方公務員法(以下「地公法」という。)32条,33条に違反するとして,原告Aに対し,平成18年3月31日付け停職3月の処分をした。原告Bは,当時勤務していた東京都立D養護学校(以下「D養護学校」という。)で平成18年1月25日に行われた同校創立30周年記念式典において,同校校長から,国旗に向かって起立し国歌を斉唱することという職務命令を受けていたのに,国歌斉唱時に起立しなかったところ,都教委は,これまでにも原告Bが同種の行為により複数の処分を受けており,上記不起立は,地公法32条,33条に違反するとして,原告Bに対し,平成18年3月13日付け停職1月の処分をした。本件は,原告両名が,上記各処分は,憲法19条,教育基本法(平成18年法律第120号による改正前のもの。以下「旧教育基本法」という。)10条に反するなどとして,上記各処分の取消しを求め,また,上記各処分により精神的苦痛を被ったとして,損害賠償を請求している事案である。

(裁判所ウェブサイト)

  東京地裁の中西裁判長は、原告らが2006年に行われた卒業式または周年行事において君が代斉唱時に起立せず、斉唱しなかったことを理由に、東京都教育委員会が行った原告Nに対する停職3ヶ月、原告Kに対する停職1ヶ月の懲戒処分の取消と損害賠償を求めた事件に対し、原告らの請求をいずれも棄却する判決を言い渡した。
  同日、中西裁判長は、東京都立学校の教師173名に対する同様の事案に対し、原告らの請求をいずれも棄却する判決を言い渡した。これらの二つの判決内容はほぼ同じで、都教委側の主張をそのまま取り入れている。
(思想信条の自由について)
「一般に、自己の思想や良心に反することを理由として、およそ外部行為を拒否する自由が保障されるとした場合には、社会が成り立ちがたいことは明白であり、これを承認することはできない。」
(裁量の逸脱について)
「職務命令違反行為は、...児童・生徒らに対して指導すべき事項である国旗、国歌の尊重に反するし、卒業式等の円滑な進行を妨げるおそれがあるから、決して軽微な非違行為ということはできない。」

 

 

東京都公立学校・不起立停職処分事件

東京高裁2011年3月25日判決
平成21年(行コ)第151号 停職処分取消等請求事件 棄却

 

国旗国歌訴訟 教諭の処分取り消し請求、東京高裁も棄却

  学校行事で日の丸に向かって起立し、君が代を斉唱するよう義務付けた東京都教育委員会の通達や校長の職務命令に従わず、停職処分を受けた都内の公立学校教諭2人が、処分取り消しなどを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は25日、1審・東京地裁と同様、請求を棄却する判決を言い渡した。加藤新太郎裁判長は「職務命令は憲法が保障する思想・良心の自由を侵害せず、処分も裁量権の範囲内」と述べた。
  加藤裁判長は「停職は重大な不利益処分」としつつ、2人が同趣旨の行為で繰り返し処分されていたことなどを踏まえて都の対応を適法とした。一方で「処分は極めて合理的とは評価できず、都の裁量権の範囲の上限だ」とも指摘した。
 原告はNさん(60)とKさん(61)=昨年3月に定年退職=で、06年3月に停職3カ月と1カ月の懲戒処分を受けた。Kさんが04年に受けた戒告処分については、東京高裁の別の裁判長が処分を取り消す判決を言い渡しており、最高裁で改めて処分の適否が争われる見通し。【和田武士】

(毎日新聞2011年3月25日web版 一部仮名)

1.「日の丸・君が代」の評価
  日の丸・君が代が利用された面があったことは過去の歴史的事実ではある。しかし、戦後半世紀以上にわたり、憲法の精神に従った民主的で文化的な国家建設が行われ、...現代において、皇国思想や軍国主義的又は極端な国家主義的傾向又はそのような価値観を一方的に押しつける教育は少なくとも公立学校の教育現場には存在しないと解される。

2.「日の丸・君が代」に対する一律起立・斉唱について
  日の丸、君が代にかかわる歴史的事実を踏まえて主体的に対応すべきであるとの立場をとれば論争的主題ということも可能であるが、...国旗・国歌の尊重という一定の普遍性のある基礎的知識を付与することは、普通教育の性格上、むしろ必要なことである。このような基礎的知識に属する事項については、反対の意見や観念がある場合であっても、一方的な一定の理論ないし観念を児童・生徒に教え込むものと評することは失当というほかない。

3.停職処分について
  控訴人らが不起立を繰り返したものである以上、控訴人らによる職務命令違反の非違行為としての評価が量的に加重されたものとなることはやむを得ないことというべきである。...停職が重大な不利益処分であることから最大限慎重な配慮を加えても、また控訴人が真摯な動機の下にかかる行動に出ていることを考慮しても、なお同人について処分を加重し、停職3月としたことが、社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権を濫用、逸脱したものと評価することはできない。

 

東京都公立学校・不起立停職処分事件

最高裁一小2012年1月16日判決
平成23年(行ツ)第242号 停職処分取消等請求事件 一部破棄自判・一部破棄差戻・一部上告棄却

 

  卒業式などで日の丸に向かって起立せず、君が代を斉唱しなかった公立学校の教職員を停職処分とした東京都の懲戒処分をめぐる訴訟の上告審判決で、最高裁は、停職処分を受けた2人のうち、1人の処分は取り消したが、もう1人は過去の処分歴を重視し、違法性はないとした一、二審判決の判断を支持した。

(裁量権の逸脱、濫用について)
  不起立行為の動機,原因は,当該教員の歴史観ないし世界観等に由来する「君が代」や「日の丸」に対する否定的評価等のゆえに,本件職務命令により求められる行為と自らの歴史観ないし世界観等に由来する外部的行動とが相違することであり,個人の歴史観ないし世界観等に起因するものである。……そして,不起立行為の結果,影響も,当該式典の進行に具体的にどの程度の支障や混乱をもたらしたかは客観的な評価の困難な事柄であるといえる。
  不起立行為に対する懲戒において戒告,減給を超えて停職の処分を選択することが許容されるのは,過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為の前後における態度等に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべきである。

(上告人Kについて)
  過去2年度の3回の卒業式等における不起立行為による懲戒処分を受けていることのみを理由に上告人Kに対する懲戒処分として停職処分を選択した都教委の判断は,停職期間の長短にかかわらず,処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き,上記停職処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法の評価を免れないと解するのが相当である。

(上告人Nについて)
  同種の問題に関して規律や秩序を害する程度の大きい積極的な妨害行為を非違行為とする複数の懲戒処分を含む懲戒処分5回及び文書の配布等を非違行為とする文書訓告2回を受けていたことを踏まえて,上告人Nに対する懲戒処分において停職処分を選択した都教委の判断は,停職期間(3月)の点を含め,処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず,上記停職処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないと解するのが相当である。

(判例時報2147号127頁、判例タイムズ1370号78頁)

 

東京都公立学校・不起立停職処分事件

東京高裁2012年11月7日判決[差戻審]
停職処分取消等請求事件 認容

 

君が代不起立で停職、都に初の賠償命令 東京高裁判決

  東京都立の養護学校の式典で起立せず、君が代を斉唱しなかったとして停職処分を受けた元教員の女性が、都に損害賠償などを求めた訴訟の差し戻し後の控訴審判決で、東京高裁(南敏文裁判長)は7日、30万円の賠償を都に命じた。
  都教委による停職や減給などの懲戒処分が問題になった一連の日の丸・君が代訴訟で、都に賠償を命じた判決は初めて。
  判決はまず、停職処分について「思想・良心の自由に影響があり、慎重に検討すべきだった」と都側の過失を認めた。
  その上で、「教諭と児童生徒との触れ合いは教育に欠かせない」と指摘。「教諭が停職中に教壇に立てないという精神的苦痛は、処分の取り消しや停職中の給与支払いでは回復できない」と結論づけた。
  元教員が2006年に受けた停職1カ月の処分は、今年1月の最高裁判決で取り消しが決まっており、賠償の必要性を判断するため高裁に審理が差し戻されていた。同種訴訟では停職処分が取り消されても、賠償までは認めない判決も出ており、司法判断が分かれた形になった。
  比留間英人・都教育長は「判決は遺憾だ。内容を確認し、今後の対応を検討する」とコメントした。

(朝日新聞 2012年11月7日)

 

 

 


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神奈川県立学校・忠誠義務不存在確認請求事件
=神奈川・こころの自由裁判

横浜地裁2009年7月16日判決 平成17年(行ウ)第41号等
 国旗国歌に対する忠誠義務不存在確認請求事件 棄却

 

(事案の概要)

  原告らは,神奈川県立学校に勤務する教諭,実習助手,事務職員,技能職員及び非常勤の嘱託員である。神奈川県教育委員会は,同教育長名で,平成16年11月30日,県立学校の各校長に対し,「入学式及び卒業式における国旗の掲揚及び国歌の斉唱の指導の徹底について(通知)」を発して,県立学校の入学式,卒業式において,国旗を式場正面に掲げるとともに,国歌の斉唱は式次第に位置付け,斉唱時に教職員は起立して国歌を斉唱すること,国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たり,教職員が本件通知に基づく校長の職務命令に従わない場合や式を混乱させる等の妨害行動を行った場合には,服務上の責任を問い,厳正に対処していくことを教職員に周知することなどにより,各学校が入学式,卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱を適正に実施するよう通知した。本件は,原告らが,国旗に向かって起立して国歌を斉唱することを強制されることは,原告らの思想・良心の自由を侵害し,教育に対する不当な支配の禁止に反するなどと主張して,原告らが被告に対し,県立学校の入学式,卒業式の式典において,国旗に向かって起立し国歌を斉唱する義務のないことの確認を求めた事案である。


(判示事項)

1 本件において,起立斉唱命令により原告らの有する権利又は法的地位に対する危険,不安が現に存し,これを後の時点で事後的に争うより,現時点において確認の訴えを認めることが当事者間の紛争の抜本的な解決に資し,有効適切といえ,原告らの被告に対する国歌斉唱時の起立斉唱義務の不存在確認の訴えについて,確認の利益が認められる。

2 起立斉唱命令は,原告らの思想及び良心の自由を侵害するものとして憲法19条に反するとはいえない。

3 教育長通知は,国旗・国歌条項の内容を具体化する権限を有する県教委の権限によるもので,具体的な命令を発する必要性に基づくものとして,許容される目的に基づき,これを実現するために必要かつ合理的な関与・介入の範囲にとどまると評価するのが相当であるから,旧教育基本法10条1項及び教育基本法16条1項が禁ずる教育に対する「不当な支配」に該当するとはいえない。

4 校長が教職員である原告らに対し,起立斉唱命令を発することが校長の有する裁量を逸脱・濫用するものとはいえない。

5 原告らは,それぞれ,その所属する学校の校長から,生徒に対して国歌斉唱の指導を行うため,また,式の円滑な進行のため,入学式,卒業式において,式の参加者として式次第に従って,国歌斉唱時に起立する旨の起立斉唱命令が発せられた場合には,これに基づき,入学式,卒業式に参列するに際し,国歌斉唱時に国旗に向かって起立し国歌を唱和する義務を負うものと解される。

 

神奈川県立学校・忠誠義務不存在確認請求事件
=神奈川・こころの自由裁判

東京高裁2010年3月17日判決 平成21年(行コ)第284号
 国旗国歌に対する忠誠義務不存在確認請求控訴事件 原判決取消、請求却下

 

 君が代裁判 1審判決を取り消し、訴えを却下 東京高裁
  入学式や卒業式で起立して君が代を斉唱するよう求めた神奈川県教委の通知は、思想・良心の自由を侵害し違憲として、県立学校の教職員132人が従う義務のないことの確認を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は17日、請求を棄却した1審判決を取り消し、訴えを却下した。藤村啓裁判長は「通知は指導であって、義務を生じさせる命令に当たらず、訴え自体に理由がない」と述べた。
  通知は04年11月、県教育長名で各校長に出された。原告側は「従わないと懲戒処分の恐れがある」と主張したが、高裁は「懲戒処分の例はなく、具体的な紛争は生じていない」と指摘した。1審・横浜地裁は「通知は命令」と認定していた。

(毎日新聞2010年3月17日)

 

神奈川県立学校・忠誠義務不存在確認請求事件
=神奈川・こころの自由裁判

最高裁三小2011年6月21日決定
平成22年(行ツ)第285号、平成22年(行ヒ)第290号
国旗国歌に対する忠誠義務不存在確認請求控訴事件 棄却・上告不受理

 

 君が代不起立 神奈川も教職員側敗訴 最高裁決定・5度目

  入学式などで起立して君が代を斉唱するよう求めた神奈川県教委の通知(04年)は、思想・良心の自由を保障した憲法に違反するとして、同県立学校の教職員ら130人が、従う義務がないことの確認を求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は21日付で、教職員側の上告を棄却する決定を出した。請求を却下した1、2審判決が確定した。

 起立斉唱命令を巡る最高裁の判断は5月以降4回出ており、いずれも合憲判決だった。今回の訴訟は教職員側が懲戒処分など具体的な不利益措置の取り消しを求めた過去4件の訴訟と異なっており、小法廷は決定の理由を「教職員側の主張は上告理由に当たらない」とした。【伊藤一郎】

(毎日新聞 2011年6月22日web版)

 

 

 


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八王子市・町田市立中学校不起立懲戒処分事件

東京地裁2009年3月19日判決 平成19年(行ウ)第181号・第670号
戒告処分取消等、裁決取消請求事件 棄却

 

 

八王子市・町田市立中学校不起立懲戒処分事件

東京高裁2010年4月21日判決 平成21年(行コ)第145号
 戒告処分取消等、裁決取消請求控訴事件 控訴棄却

 

(事案の概要)

  町田市ないし八王子市の市立中学校に勤務する東京都公立学校教員である控訴人らは、各自の勤務する中学校の校長から、卒業式又は入学式の国歌斉唱時に起立すペき旨の職務命令を受けたが、これに従わないで起立しなかったことを理由として、都教委から、地方公務員法29条による戒告処分を受けた。
  本件は控訴人らが、国歌斉唱時の起立を命じる本件各職務命令は違憲、違法であるから、これに従わなかったことを理由とする本件各処分も違憲、違法なものであると主張して、本件各処分の取消しを求め、併せて、本件各職務命令による思想及び良心の自由の侵害並びに都教委の事情聴取及び服務事故再発防止研修を受講させられたことによる精神的損害等を主張して、国家賠償法に基づく損害賠償の支払を求めるとともに、控訴人らが本件各処分の取消しを求めてした審査請求に対して、人事委員会がした審査請求ををいずれも棄却するとの裁決の取消しを求めた事案である。
  原審は、@国歌斉唱の際の起立は.客観的にみて特定の思想を有することを外部に表明する行為と評価することはできないから、本件各職務命令が特定の思想を強制又は禁止したり、生徒らに一方的な思想等を教え込むことを強制するものとはいえず、思想及び良心の自由等を侵害するものとはいえない、A控訴人らに本件各職務命令に背いて自由に卒業式を執り行うことができる権利があると解することはできないから、本件各職務命令が控訴人らの教授の自由等を侵害するものともいえない、B地方公共団体が設置する教育委員会は必要性、合理性が認められる場合には教育の内容及び方法について具体的な命令を発することができ、上記各教育委員会が国旗掲揚及び国歌斉唱について発出した各通達は、国旗、国歌に対する尊重の態度を養うため必要性及び合理性があったといえるから.上記改正前の教育基本法10条に違反すると評価することはできないとして、本件各職務命令及び本件各処分の違憲性、違法性は認められないと判断し、また、本件各裁決に固有の手続的違法性も認められないとして、いずれの請求も棄却した。

(判示事項)

  当裁判所も、本件各職務命令が違憲、違法であるとは認められず、これに従わずに、卒業式又は入学式における国歌斉唱の際に起立をしなかったとして控訴人らに対してされた本件各処分が違憲、違法であるとも認められないから、控訴人らの各請求はいずれも理由がないものと判断する。

 

八王子市・町田市立中学校不起立懲戒処分事件

最高裁三小2011年6月14日判決
平成22年(行ツ)第314号 戒告処分取消等、裁決取消請求控訴事件 棄却・棄却

 

 君が代不起立訴訟 3度目の合憲判断 最高裁

  入学式などで君が代斉唱時に起立しなかったことを理由に戒告処分を受けたのは「思想・良心の自由」を保障した憲法に反するとして、東京都内の公立中学校の教諭ら3人が都を相手に処分取り消しなどを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は14日「起立斉唱命令は合憲」と判断し、教諭側の上告を棄却した。訴えを退けた2審判決(10年4月)が確定した。最高裁の三つの小法廷で合憲判決が出そろったが、弁護士出身の田原裁判長が2人目となる反対意見を述べた。

  5月30日と6月6日の別の小法廷での判決と同様、今回の判決も、命令が思想・良心の自由への「間接的制約となる面は否定しがたい」としつつ、教諭の職務の公共性などから合憲とした。田原裁判長は「起立命令と斉唱命令は分けて考えるべきで、斉唱命令は内心の核心的部分を侵害する可能性がある」との反対意見を述べた。
  そのうえで、田原裁判長は不起立を理由とした処分について「命令内容が思想・良心の自由に直接関わる場合、処分はより慎重になされるべきだ」と指摘。多数意見の岡部喜代子裁判官も「不利益処分は慎重にすべきだ」との補足意見を述べた。

  原告の教諭ら(2人は退職)は入学式や卒業式で起立斉唱しなかったとして、04年に戒告処分を受けた。うち一人の元教諭は判決後「教育現場に処分を伴った一律強制がまかり通っている。行政をたしなめるべき司法が追認したことは残念」と話した。
 1審の東京地裁判決(09年)は同命令を合憲としたうえで「最も軽い戒告としたことに裁量権の逸脱はない」と請求を棄却。東京高裁も支持した。【伊藤一郎】

(毎日新聞 2011年6月14日web版)

 裁判官田原睦夫の反対意見

 本件各職務命令は,「起立して斉唱すること」を一体不可分のものとして発せられたものと解されるところ,上告人らの主張する歴史観ないし世界観に基づく信条との関係においては,本件各職務命令のうち「起立」を求める部分については,その職務命令の合理性を肯認することができるが,「斉唱」を求める部分については上告人らの信条に係る内心の核心的部分を侵害し,あるいは,内心の核心的部分に近接する外縁部分を侵害する可能性が存するものであるといわざるを得ない。

  原審は,本件各職務命令が入学式又は卒業式等の式典における国歌斉唱の際に「起立すること」と「斉唱すること」を不可分一体のものとして命じているものであるか否か,また,国歌の「斉唱命令」が上告人らの信条に係る内心の核心的部分と直接対峙し,侵害し得る関係に立つものであるのか否か,あるいは内心の核心的部分との直接対峙関係には立たないものの,その核心的部分に近接する外縁を成し,その侵害は,なお憲法19条によって保障されるべき範囲に属するといえるか否かという諸点について審理し,判断をなすべきところ,かかる諸点について十分な審理を尽くすことなく判決をなすに至ったものといわざるを得ない。 よって,本件は,原判決を破棄の上,更に上記諸点について審理を尽くさせるべく,原審に差し戻すのを相当と思料する次第である。

(裁時1553号14頁、判時2123号3頁、判タ1354号75頁)

 

 

 


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府中市立小学校・不起立戒告処分事件

最高裁二小2011年7月4日判決 
平成23年(行ツ)第62号 懲戒処分取消等請求事件 棄却

 

 君が代斉唱不起立訴訟2件に「合憲」 最高裁判決

  卒業式で君が代斉唱時に起立を命じた校長の職務命令をめぐる2件の訴訟で、最高裁第二小法廷(須藤正彦裁判長)は4日、「命令は思想・良心の自由を保障した憲法に違反しない」との判断を示し、東京都内にある学校の教諭らの上告を棄却する判決を言い渡した。先行した4件の最高裁判決と同じ判断で、同種の訴訟での敗訴確定は5、6例目となる。

 敗訴したのは、2004年の卒業式で起立せず戒告処分を受け、退職後の再任用の選考で不合格となった元都立高教諭と、05年の府中市立小学校の卒業式で起立せず戒告処分を受けた小学教諭。それぞれ再任用の不合格と戒告処分の取り消しを求めていた。

 判決は「思想・良心の自由を間接的には制約しているが、制約には必要性・合理性がある」との判断を踏襲した。

(朝日新聞2011年7月4日web版)

東京地裁2010年3月29日判決、平成19年(行ウ)第380号
東京高裁2010年11月10日判決、平成22年(行コ)第164号
最高裁二小2011年7月4日判決、平成23年(行ツ)第62号

 

 

 


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東京都立南葛飾高校・不起立再雇用拒否事件(2)

最高裁二小2011年7月4日判決 
平成22年(行ツ)第431号 再任用拒否処分取消等請求事件 棄却

 

 君が代斉唱不起立訴訟2件に「合憲」 最高裁判決

  卒業式で君が代斉唱時に起立を命じた校長の職務命令をめぐる2件の訴訟で、最高裁第二小法廷(須藤正彦裁判長)は4日、「命令は思想・良心の自由を保障した憲法に違反しない」との判断を示し、東京都内にある学校の教諭らの上告を棄却する判決を言い渡した。先行した4件の最高裁判決と同じ判断で、同種の訴訟での敗訴確定は5、6例目となる。

 敗訴したのは、2004年の卒業式で起立せず戒告処分を受け、退職後の再任用の選考で不合格となった元都立高教諭と、05年の府中市立小学校の卒業式で起立せず戒告処分を受けた小学教諭。それぞれ再任用の不合格と戒告処分の取り消しを求めていた。

 判決は「思想・良心の自由を間接的には制約しているが、制約には必要性・合理性がある」との判断を踏襲した。

(朝日新聞2011年7月4日web版)

最高裁で同日に言渡が行われた府中市立小学校・不起立戒告処分事件と東京都立南葛飾高校・不起立再雇用拒否事件(2)の判決文は、上告人・代理人の名前以外は全く同じ。 「理由」は結論のみでこの間の最高裁判決の引用にすぎない。しかも補足意見を含めて全文僅か3ページしかない。

 

 

 


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公立小学校・不起立戒告処分事件

最高裁三小2011年7月19日判決
平成23年(行ツ)第5号 懲戒処分取消等請求事件 棄却

 

2006年処分、東京教組「求める会」
東京地裁2010年3月24日判決、平成19年(行ウ)第557号、
東京高裁2010年9月28日、平成22年(行コ)第155号
最高裁三小2011年7月19日判決、平成23年(行ツ)第5号

 

 

 


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東京都立小中学校・不起立処分事件

東京地裁2010年7月15日判決
平成19年(行ウ)第162号 懲戒処分取消等請求事件 棄却(控訴)
2004年、2005年 戒告・減給・停職処分、東京教組10人不起立裁判

東京高裁2012年10月25日判決
平成22年(行コ)第271号 懲戒処分取消等請求控訴事件 
一部認容・一部棄却

最高裁一小2013年9月5日 懲戒処分取消等請求事件 
上告棄却

  東京都が教職員に君が代の斉唱を義務づけていることが憲法に違反するかどうかが争われた裁判で、最高裁判所は、 「憲法に違反しない」という判決を言い渡し、訴えを起こした教員らの敗訴が確定しました。
  都の教育委員会が卒業式や入学式で君が代を起立して斉唱するよう命じたことに対し、都内の小中学校の教員や元教員合わせて10人が「思想や良心の自由を保障した憲法に違反する」と主張して裁判を起こしていました。
  最高裁判所第1小法廷の金築誠志裁判長は「今回の職務命令は憲法には違反しない」と訴えを退ける判決を言い渡し、教員らの敗訴が確定しました。原告らは起立しなかったために受けた処分の取り消しも求めていましたが、最高裁が上告を退けたため、一部の教員の減給処分を重すぎるとして取り消し、そのほかの戒告処分などは有効とした2審の判決が確定しました。

(NKH web news 2013年9月5日)

 

 

 


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東京都立特別支援学校不起立処分事件

東京地裁2011年1月31日判決
平成19年(行ウ)第4号、平成19年(行ウ)第5号、平成19年(行ウ)第6号 
懲戒処分取消等請求事件 棄却(控訴)
2004年処分取消請求。都障労組3人裁判
東京高裁2012年6月27日判決 棄却(上告)

 

 

 


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東京都小学校不起立非常勤教員採用取消事件

東京地裁2011年4月18日判決
平成21年(行ウ)第584号、平成21年(ワ)第6379号 
懲戒処分取消請求事件、地位確認等請求事件 棄却
東京高裁2012年10月18日判決(控訴棄却)
最高裁第二小法定2013年9月6日判決(上告棄却)

事案の概要
  2008年2月に公立学校非常勤教員採用選考に合格した元教員が、同年3月実施の卒業式の際に「国旗に向かって起立し国歌を斉唱すること」という職務命令に違反して戒告処分を受けたことにより非常勤教員としての適性を欠くと判断され、教育委員会から合格を取り消されたことについて、同採用内定の取消は違憲・違法な本件処分を理由としていることなどから無効であるとして、懲戒処分の取消を求めるとともに、非常勤教員たる地位の確認ならびに未払報酬等の支払を求めた事案。

控訴審の判断
  日勤講師(非常勤教員)の勤務関係は、教育委員会による任命という行政処分によって成立、発生するものであり、当該選考に合格した旨の通知がされたことをもって、日勤講師(非常勤教員)たる地位が生じることはないというべきである。よって、日勤講師(非常勤教員の勤務関係の法的性格は、労働契約関係ではなく、公法上の任用関係と解するのが相当である。
  非常勤教員の勤務関係については、一般の労働関係法規が適用され、勤務実態も私法上の労働契約関係にあるのと何ら変わらないから、非常勤教員の勤務関係は雇用契約であり、採用合格の取消は採用内定の取消(始期付解約権留保付労働契約の留保解約権の行使)に当たるなどと主張する。
  特別職たる地方公務員について、労働契約関係を規律する労働関係法規が適用されるとしても、地方公務員法は、公務員関係として規律される一般職地方公務員についても、同じく労働契約関係を規律する労働関係法規が適用されるとしながら、そのうちの一定の規定につき適用を除外してするという仕組みを採用しているにすぎないことからすれば、労働契約関係を規律する労働関係法規が適用されるとしても、そのことから直ちに、日勤講師(非常勤教員)の勤務関係の法的性質が労働契約関係であると決することができないことは原判決説示のとおりである。日勤講師(非常勤教員)は、特別職ではあっても地方公務員であるだけでなく、学校教育法所定の「講師」(同法37条16項)であって、地教行法34条により、教育委員会の所管に属する学校等の職員として、教育長の推薦により教育委員会が任命すべきものである。日勤講師(非常勤教員)の勤務関係の法的性質が私法上の労働契約関係であるということはできない。
  なお、控訴人は、非常勤教員の勤務関係が公法上の任用関係であるとしても、採用内定の取消の理論は妥当すると主張するが、採用内定の取消自体は、採用内定を受けた者の法律上の地位ないし権利関係に影響を及ぼすものではない(最高裁昭和57年5月27日第一小法廷判決)から、地位確認請求等を認める余地はない。

(教育委員会月報2015年6月号)

 

 

 


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東京都立学校・不起立減給処分事件(第2次訴訟)

東京地裁2011年7月25日判決 
平成19年(行ウ)第591号 懲戒処分取消等請求事件 棄却

 

事案の概要:
  本件は,東京都教育委員会(以下「都教委」という。)が,東京都内の都立高等学校又は都立養護学校の教職員であった原告ら66名について,平成17年3月4日から平成18年4月7日までの間に原告らの所属校で行われた卒業式又は入学式(以下「卒業式等」という。)において,各所属校の校長(以下「本件各校長」という。)から,事前に,国旗に向かって起立し,国歌を斉唱することを命ずる職務命令を受けていたにもかかわらず,国歌斉唱時に起立せず(以上は,原告P21及び原告P26を除く原告らの関係),国歌斉唱時にピアノによる国歌の伴奏をすることを命ずる職務命令を受けていたにもかかわらず,ピアノ伴奏を行わなかった(以上は,原告P21及び原告P26関係)のは,地方公務員法(以下「地公法」という。)32条,33条に違反するとして,地公法29条1項1号ないし3号に基づき,原告らに対し,別紙2懲戒処分等一覧表の「処分日」欄記載の日付に「処分内容」欄記載の各懲戒処分(以下,各懲戒処分を併せて,「本件各処分」という。)をしたことから,原告らが,本件各処分は憲法19条,20条,23条,26条,31条,教育基本法(ただし,平成18年法律第120号による改正前のもの。以下同じ。)10条1項に違反するなどと主張して,本件各処分の取消しを求めるとともに,本件各処分により精神的苦痛を被ったと主張して,都教委の設置者である被告に対し,国家賠償法に基づき,損害賠償(慰謝料)を求める事案である。

(裁判所ウェブサイト)


(要旨)
  2004年度卒業式の国歌斉唱時における不起立が職務命令違反・信用失墜行為とされ減給処分(10分の1.6か月)を受けたことに対して、その取消と国家賠償を求めた裁判。

1.本件通達及び本件各職務命令は原告らの思想及び良心の自由を侵害する憲法19条違反のものかについて
 2011年5月30日以降にあった一連の最高裁各小法廷判決と同様に、本件通達及び本件各職務命令については、外部的行動の制限を介して原告らの思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面はあるものの、本件通達及び本件各職務命令の目的及び内容並びに制約の態様等を総合的に衡量すれば、上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められる。

2.本件通達及び本件各職務命令は旧教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に当たるものであるかについて
 学習指導要領の国旗国歌条項は教師に国歌斉唱の指導義務を負わせたものであるが、そのような教育指導が徹底されていなかったため、本件通達発出の必要性は認められ、教職員に対して起立斉唱を求めることは教育指導の方法として合理性が認められるから、旧教育基本法10条1項にいう「不当な支配」には当たらない。

3.本件各処分は裁量権を逸脱又は濫用したものであるかについて
 原告らの行為によって卒業式等の進行に具体的な支障がなかったとしても軽微な非違行為とは言えず、不起立等が職務命令違反・信用失墜行為に該当することは否定できない以上、都教委がなした懲戒処分は、社会通念上著しく妥当を欠くとはいえないため、裁量権の逸脱濫用には当たらない。


 都立校教諭請求に東京地裁が棄却判決 君が代起立訴訟 /東京都

  卒業式の「君が代」斉唱時に起立しなかったことなどを理由に懲戒処分されたのは、思想・良心の自由を保障した憲法に反するとして都立学校の教諭や元教諭ら66人が都に処分取り消しなどを求めた訴訟で、東京地裁(青野洋士裁判長)は、25日、原告の請求を棄却する判決を言い渡した。
  同様の懲戒処分をめぐる訴訟では、5月以降、「起立を命じる職務命令は合憲」とする最高裁判決が相次いでいる。この日の判決は一連の最高裁判決に沿った形で「職務命令は思想・良心の自由の間接的制約になる面はあるが、必要性と合理性が認められる」と述べた。
 そのうえで、懲戒処分については「原告らは命令に従わなければならず、不起立は軽微な行為ではない。処分前に事情聴取を受けており、手続がずさんともいえない」と結論づけた

(朝日新聞2011年7月26日)

 

 

東京都立学校・不起立減給処分事件(第2次訴訟)

東京高裁2012年10月31日判決 
平成23年(行コ)第279号 懲戒処分取消等請求控訴事件 原判決変更・一部棄却

 

裁判要旨:
 卒業式又は入学式に、国旗に向かって起立して国歌斉唱し又は国歌斉唱時にピアノ伴奏するよう求めた校長の職務命令に反したとして、教育委員会から各懲戒処分を受けた教職員である控訴人らが、本件各処分の違法性を主張して、同処分の取消し及び損害賠償を求めたところ、原審で各請求を棄却されたため、控訴した事案において、国歌斉唱時の起立斉唱等を求める通達及び職務命令や本件各処分は、憲法及び条約に違反するとはいえず、また、本件各処分中、戒告処分については、懲戒権者の裁量権を逸脱、濫用した違法なものとはいえないとする一方、減給処分及び停職処分は裁量権の範囲を超えるものとして違法といえるとして、原判決を一部変更して、同処分を取り消したものの、本件各処分をしたことが、処分当時、懲戒権者に課された職務上通常尽くすべき注意義務に違反するものとは評価できず、その判断に過失もないとして、賠償請求を理由がないとした事例

(裁判所ウェブサイト)


減給・停職を取り消し=君が代不起立訴訟―東京高裁

  卒業式などで国旗に向かって起立し、君が代を斉唱するよう義務付けた東京都教育委員会の通達に基づく職務命令に違反し、懲戒処分を受けた都立高校の教職員ら64人が、都に処分取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決が31日、東京高裁であった。井上繁規裁判長は、請求を棄却した一審東京地裁判決を変更し、21人について減給・停職の処分を取り消した。
  君が代不起立訴訟では最高裁が1月、「戒告処分までは懲戒権者の裁量の範囲内」とし、減給や停職など戒告を超える処分については、過去に重い処分歴がある場合などを除いて原則認められないとの判断を示している。

(時事通信2012年10月31日)

 

 

 

 

東京都立学校・不起立減給処分事件(第2次訴訟)

最高裁二小2013年9月6日判決
平成25年(行ツ)第140号 懲戒処分取消等請求事件 上告棄却

(裁判官 鬼丸かおるの補足意見)

  原審の適法に確定した事実関係の下においては,本件職務命令が,憲法19条に違反するものでないことは,法廷意見の述べるとおりと考えるものであるが,以下のとおり私見を付加しておきたい。
  法廷意見の引用する最高裁平成23年5月30日第二小法廷判決,最高裁平成23年6月6日第一小法廷判決,最高裁平成23年6月14日第三小法廷判決及び最高裁平成23年6月21日第三小法廷判決の各判例が指摘するように,卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱すること等を命じた職務命令は,「日の丸」「君が代」に関する当該教諭の歴史観ないし世界観に由来する行動と異なる外部的行為を求められることとなる面があり,個人の思想及び良心の自由についての間接的な制約となり得る面の存在することは否定し難いものである。個人の思想及び良心の自由は憲法19条の保障するところであるから,その命令の不服従が国旗国歌に関する個人の歴史観や世界観に基づき真摯になされている場合には,命令不服従に対する不利益処分は,慎重な衡量的な配慮が求められるというべきである。求められる配慮としては,@当該教諭の国旗国歌に関する思想についての従前からの表明の有無,A不服従の態様,程度,B不服従による式典や生徒への影響の内容,程度,C当該職務命令の必要性と代替措置配慮の有無,D不利益処分が当該教諭や生徒に与える影響度,E当該職務命令や不利益処分がされるに至った経緯などの事情があり得るところ,これらの事情を総合的た勘案した結果,当該不利益処分を課することが裁量権の濫用あるいは逸脱となることもあり得るところであり,これらの事情に配慮した謙抑的な対応が教育現場における状況の改善に資するものというべきである。しかし,本件の事実関係及び訴訟経過等の下においては,これらの視点から結論が左右されるような事情はうかがわれないので,付言にとどめる。

 

 

 

 


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門真市立中学校・不起立訓告処分事件

大阪地裁2012年2月6日判決 平成21年(行ウ)第188号
訓告処分取消等請求事件 一部却下・一部棄却

 

<君が代起立>大阪の元教諭の処分取り消しの訴えを棄却

  卒業式で君が代斉唱時に起立しなかったことで訓告とされたのは違法として、大阪府門真市立中学校の元教諭が市教委などに処分取り消しと200万円の慰謝料を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は6日、請求を退けた。中垣内健治裁判長は「訓告は市教委の裁量権の範囲内で、違憲・違法な点は認められない」と判断した。

  原告は門真市立第三中の元教諭、Aさん(58)。08年3月の卒業式で君が代を斉唱する際、A元教諭は起立せず、その後の市教委の事情聴取にも応じなかったことから、市教委は09年2月、A元教諭を訓告とした。

  中垣内裁判長は「訓告は法令や規則に明文で定められておらず、法的効果も伴わない」として、取り消し請求ができる「処分」に当たらないと判断。処分の取り消しを求めた元教諭側の請求を却下した。

 元教諭側は、君が代斉唱に関する校長からの指導は「学習指導要領にのっとり、適切に対応してください」という抽象的なものであり、訓告の根拠がないと主張した。中垣内裁判長は、校長が起立斉唱を指導していたと認定。「指導に反する着席を不適切として訓告を行ったことに違法はない」と指摘し、慰謝料請求を棄却した。【苅田伸宏】

(毎日新聞web版2012年2月6日 一部仮名)

 

(訓告処分書)

訓告
大阪府門真市立第三中学校
教諭 A

  あなたは、あなたが勤務する門真市立第三中学校で行われた平成19年度卒業式において、校長が所属教職員に対し、学習指導要領に則り起立して国歌を斉唱するという指導を受けていたにも関わらず、これに反して国歌斉唱時に着席した。
  あなたのこの行為は、卒業式において学習指導要領に基づき国歌斉唱を生徒に指導すべき立場にある公立学校教員として不適切であると言わざるを得ない。
  また、あなたは、門真市立第三中学校で行われた平成19年度卒業式において、教職員席に列席した教諭全員と卒業式に出席した1名をのぞく卒業生全員が、国歌斉唱時に一斉に着席した事案に関して、平成20年10月22日に門真市教育委員会において行われる事情聴取に出席するよう、校長から職務命令を受けたにも関わらず、これに違反した。
  このことは、上司の職務上の命令に従わなかったものであり、学校教育に携わる公立学校教員としてその職の信用を著しく失墜させるものである。よって、今後かかることのないよう厳に訓告する。

平成21年2月20日
門真市教育委員会教育長

 

 

門真市立中学校・不起立訓告処分事件

大阪高裁2012年10月18日判決 平成24(行コ)第38号
訓告処分取消等請求控訴事件 棄却

 

国歌斉唱時に不起立、処分の元教諭の控訴棄却

  卒業式の国歌斉唱時に起立しなかったなどとして大阪府門真市教育委員会から文書訓告処分を受けた同市立中の元教諭の男性(退職)が市などに処分取り消しと慰謝料200万円を求めた訴訟の控訴審判決が18日、大阪高裁であり、坂本倫城裁判長は元教諭の請求を退けた1審・大阪地裁判決を支持し、元教諭の控訴を棄却した。
  判決によると、元教諭は2008年3月の卒業式で、国歌斉唱の際に起立せず、同市教委の事情聴取に応じるよう校長から職務命令が出ても従わなかったため処分された。元教諭は、不起立による処分は思想・良心の自由を保障する憲法に違反するなどと主張していた。

(読売新聞2012年10月18日)

 

 

 


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八王子市立中学校・不起立加重処分事件

東京地裁2012年4月19日判決 平成22年(行ウ)第68号、平成22年(行ウ)第570号
戒告処分取消等請求事件、停職処分取消等請求事件 一部認容

 

君が代不起立、停職・減給を取り消し

  国歌の起立斉唱命令に従わず、東京都教育委員会から懲戒処分を受けた元公立中教員の男性(63)が、都に処分の取り消しなどを求めた訴訟で、東京地裁(古久保正人裁判長)は19日、男性に対する停職、減給処分を取り消す判決を言い渡した。
  戒告処分は妥当とした。
  最高裁は1月、「戒告より重い処分には慎重な考慮が必要」との判断を示しており、都教委によると、これに基づく下級審の判決は初めて。
  判決によると、男性は八王子市立の中学校に勤務していた2006〜10年、卒業式の国歌斉唱で起立しなかった。都教委は不起立の積み重ねで処分を加重する運用に従い、戒告(07年)、減給(08、09年)、停職(10年)の処分とした。
  判決は「積極的な式典の進行妨害などはなく、処分歴だけを理由に減給・停職処分とするのは重すぎる」と指摘した。

(読売新聞2012年4月19日)
(労働判例1056号58頁)

 

 

 


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広島県立高校・君が代パワハラ事件

最高裁一小2014年3月6日決定 平成25年(オ)第1663号等
慰謝料等請求上告事件 棄却・不受理

 

広島県立高校の教諭であった上告人兼申立人(一審原告、控訴人)が、3年間にわたり、同高校の校長及び教頭であった被上告人兼相手方(一審被告)らから、嫌がらせや暴行を受け、心因反応・抑うつ状態を発症し、広島県教育委員会も、嫌がらせを防止する措置をとらなかったため、精神疾患が悪化したなどとして、同人らに対し共同不法行為(民法719条、民法709条)に基づき、被上告人兼相手方(一審被告)県に対し国家賠償法1条1項に基づき、損害金等の支払いを求め、第一審が県に対する請求を一部認容したが、第二審が県の敗訴部分を取り消した事案において、上告を棄却し、上告審として受理しないことを決定した事例。(LEX/DB25503308)

(一審広島地裁2012年4月24日判決)
  勤務先の校長らからパワーハラスメントなどの被害を受けたとして、県立高校の女性教師が広島県などに慰謝料を求めた裁判で、広島地裁は原告の主張を一部認め、33万円の支払いを命じた。この裁判は、2004年から2007年にかけ、県立高校に勤務していた女性教師が、当時の校長と教頭から無視されたり腕をつかまれたりすなどの嫌がらせを受けたとして、1100万円の損害賠償を求めていたもの。判決で広島地裁の金村敏彦裁判長は、原告が主張した「嫌がらせ」の多くについて職務上の必要性があったとして、パワハラを認定しなかったが、原告が精神的な病気になったと診断されたあとは対応に配慮する義務があったとして、県に33万円の支払いを命じた。

(二審広島高裁2013年6月20日判決)
<君が代パワハラ訴訟>逆転敗訴 賠償請求を棄却 広島高裁
  卒業式の君が代斉唱時に起立しなかったため校長らから嫌がらせをされ、精神的苦痛を受けたとして、広島県立高校の女性教諭(49)が当時勤めていた高校の校長と教頭、県を相手取り、1100万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が20日、広島高裁であった。宇田川基裁判長は、慰謝料33万円の支払いを命じた1審・広島地裁の判決を取り消し、賠償請求を棄却した。宇田川裁判長は「被告の行為が原告の精神疾患の改善を妨げたとはいえない」と理由を述べた。
  1審判決は、嫌がらせがあったとの主張は認めなかったが、教諭がうつ状態との診断を受けた後、「校長室への呼び出しを繰り返すなどして、症状が悪化しないよう配慮する義務を怠った」として、慰謝料33万円の支払いを県に命じた。双方が控訴していた。
  訴状によると、女性教諭は2005年3月の卒業式で、君が代斉唱の際、起立を求められたが、起立せず、戒告処分を受けた。校長と教頭から処分の説明を受けた際、腕をつかまれる暴行を受け、休暇申請などでも嫌がらせを受けたなどと主張していた。

(毎日新聞 2013年6月20日)

 

 

 


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北海道浦河町立小学校・不起立訓告処分事件

札幌地裁2013年11月29日判決 平成23年(行ウ)第3号
訓告処分取消等請求事件 一部却下・一部棄却(確定)

 

事案の概要
  本件は、町立小学校の教諭であった原告が、卒業式及び入学式において国歌斉唱の際に起立して斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令に従わず、国歌斉唱の際に起立しなかったことにつき、浦河町教育委員会から訓告を受けたため、上記職務命令及び訓告が違憲、違法であると主張して、その取消を求めるとともに、上記職務命令の根拠となる通知を発した町教委及び北海道教育委員会をそれぞれ設置する被告浦河町及び被告北海道に対し、各々、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として30万円の支払を求める事案である。

(判例地方自治387号)

判決理由の要旨
(1)訓告の処分性について
  訓告は、職員が職務上の義務に違反した場合に、任命権者又は上司が、当該職員に対する指揮監督権に基づいて、注意を喚起し、将来を戒めるための事実上の行為としてされるものであり、地方公務員法29条1項に定められる懲戒処分とは異なり、法令や規則に明文の根拠をもつ行為ではない。
  これに対し、原告は、本件訓告により、経済的不利益を被っていると主張する。そして、証拠及び弁論の全趣旨によれば、「市町村立学校職員の勤勉手当に係る取扱要綱」(以下「取扱要綱」という)は、勤勉手当の支給基準について、「訓告その他の矯正措置の対象となる事実(勤務成績に及ぼす影響の程度が軽微であるもの等を除く)があった場合」について、成績率を「100分の66未満」とする旨定めていることが認められる。しかしながら、取扱要綱は、その文言上、勤勉手当の成績率を決定するに当たり、その成績評価を行う要素の一つとして、訓告の対象となる事実があったことを考慮するにすぎず、法律上訓告それ自体の効果により教職員の法的地位に直接の職務上ないし給与上の不利益を及ぼすこととされているものではない。本件訓告が存在しなくなったとしても、本件訓告の対象となる国歌斉唱の際の不起立という事実が存在しないことになるわけではないし、本件訓告が取り消されたとしても、当然に勤勉手当の支給額が変更されることになるわけでもない。
  また、原告は、本件訓告により精神的自由を侵害され、教職員としての信用評価を低下させられ、教師としての誇り、名誉を傷つけられるなどの不利益を受けたと主張する。しかし、仮にそのような事実があるとしても、これらは、いずれも事実上の不利益にすぎず、これをもって、本件訓告が、直接原告の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することになるとはいえない。したがって、本件訓告は、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」には当たらないから、本件訴えのうち本件訓告の取消請求に係る部分は不適法である。

(2)憲法第19条違反について
  本件各職務命令が憲法19条に違反するものでないことは、最高裁判所大法廷判決(最高裁昭和28年(オ)第1241号同31年7月4日大法廷判決・民集10巻7号785頁、最高裁昭和44年(あ)第1501号同49年11月6日大法廷判決・刑集29巻9号393頁、最高裁昭和43年(あ)第1614号同51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁、最高裁昭和44年(あ)第1275号同51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号1178頁)の趣旨に照らして明らかというべきである。

(教育委員会月報平成27年6月号)


君が代起立の命令は合憲 教諭側請求を退ける 札幌地裁
  小学校の卒業式と入学式で君が代斉唱時に起立しなかったことを理由にした訓告は違憲として、北海道浦河町の男性教諭(59)が訓告取り消しと慰謝料を町や道に求めた訴訟の判決で、札幌地裁は29日、「起立を求めた職務命令は合憲」と指摘して訴えを退けた。
  判決理由で本田晃裁判長は「訓告は上司からの注意喚起にすぎない。地方公務員法が定める懲戒処分とは異なり、法令上の根拠がない」と述べ、取り消し請求を却下。
  さらに「起立命令には原告の思想や良心の自由を制約する面があるが、必要性と合理性は許容できる」と違憲主張と慰謝料の請求を退けた。
  判決によると、教諭は2010年3月の卒業式と4月の入学式で、君が代斉唱時に起立を求めた校長の命令に従わず、町教育委員会が同8月、文書訓告とした。

(sankei web news 2013年11月29日)

 

 

 


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東京都立学校・再発防止研修事件=「授業をしていたのに処分」事件

東京地裁2013年12月19日判決 平成24年(行ウ)第59号
懲戒処分取消等請求事件 認容(確定)

 

事案の概要
  2005年3月卒業式の国歌斉唱の際に、原告が起立しなかったことを理由として減給処分がなされ,それに伴う「服務事故再発防止研修」(基本研修及び防止研修)を受講するよう命じられたところ,同日は勤務校において5時間の授業が予定されていたこと等から、時間割通りに授業を行い,専門研修を受講しなかったところ,研修不受講を理由として減給10分の1・6月の懲戒処分を受けたため、これを不服として処分の取消を求めた事案。不起立による処分については、最高裁平成25年9月6日判決により処分の取消しが確定している。

判決理由の要旨
  本件のような不受講行為についてみるに、再発防止研修(本件研究)は不起立行為に関してなされるものであるところ、一般的にいえば、不受講行為は、起立斉唱に係る職務命令違反に対する否定的評価等に係る個人の歴史観ないし世界観等とは無関係であるとは考え難いこと、不起立行為等による減給処分のほか、不受講行為による減給処分を受けることにより懲戒処分が累積して加重され、短期間で反復継続的に不利益が拡大しでいく場合における不利益の度合いが高いことなどを考慮すると、不起立行為に係る研修の不受講行為に対する懲戒において戒告を超えて減給の処分を選択することには、やはり慎重な考慮が必要というべく、そのような処分量定が許容されるのは、不起立行為における場合と同様、学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべきである。
  そして、本件不受講行為、それ自体の態様等について検討するに、同行為が、被告主張のように、確定的故意による公務員の職務命令遵守義務違反であり、原告の不受講によって、研修の効をあげることができないという実害を生じたと見る余地はあるにしても、原告の本件不受講行為は、原告が、本件研修予定日には出頭できない旨予告した上で研修センターに赴かなかったにすぎず、それ以上に積極的な加害行為を行ったものではない。
  (中略)原告は、本件研修前の基本研修は受講したほか、本件研修についても確定的に不受講の意向を示していたわけではなく、同研修予定日に既に授業が予定されていたことから、具体的に参加可能な候補日を複数揚げ、これらの日であれば本件研修に参加できるように調整を図りたい旨を示して、その期日の変更を求めていたという事情も認められる。
  そうすると、本件不受講行為の態様に加えて、本件不起立行為が戒告処分相当の行為と評価できるとしても、減給以上の処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であるとはいえず、本件処分量定は重きに過ぎるというべきである。本件処分は、社会観念上著しく妥当を欠き、懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして、違法の評価を免れない。

(教育委員会月報2015年6月号)

 

 

 


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東京都公立学校・不起立停職処分事件

東京地裁2014年3月24日判決 平成19年(行ウ)第552号,第610号
懲戒処分取消等請求事件 一部認容・一部棄却

 

事案の概要:
本件は,都教委が,都立養護学校の教員であった原告a及び東京都内の市立中学校の教員であった原告bについて,平成19年3月19日に原告らの各所属校で行われた卒業式において,各所属校の校長(以下,各校長を合わせて「本件各校長」という。)から,事前に,国旗に向かって起立し,国歌を斉唱することを命ずる職務命令(以下,各原告に対する各職務命令を合わせて「本件各職務命令」という。)を受けていたのに国歌斉唱時に起立しなかった(以下,各原告の不起立を合わせて「本件各不起立」という。)のは地方公務員法(以下「地公法」という。)32条,33条に違反するとして,地公法29条1項1号ないし3号に基づき,原告aに対し停職3月,原告bに対し停職6月の懲戒処分(以下,各原告に対する懲戒処分を合わせて「本件各処分」という。)をしたことから,原告らが,本件各処分は憲法19条,23条,26条,教育基本法16条1項に違反するなどと主張して,本件各処分の取消しを求めるとともに,本件各処分により精神的苦痛を被ったと主張して,都教委の設置者である被告に対し,国家賠償法(以下「国賠法」という。)に基づき,損害賠償(慰謝料)を求める事案である。

(裁判所ウェブサイト)

 

 

東京都公立学校・不起立停職処分事件

東京高裁2015年5月28日判決 平成26年(行コ)第177号
懲戒処分取消等請求控訴事件 原判決取消・認容

 

判決理由の抜粋
(控訴人Nに対する停職処分について)
「控訴人Nにおいて過去に懲戒処分や文書訓告の対象となったいくつかの行為は、既に前回N停職処分において考慮されている上、本件N不起立は、以前に行われた掲揚された国旗を下ろすなどの積極的な式典の妨害行為ではなく、国歌斉唱の際に着席したという消極的な行為であって、気分を害した参加者がいることは否定できないものの、その限度にとどまるもので、特に式典が混乱したこともないから、停職期間3月という前回N停職処分を更に加重しなければならない個別具体的な事情は見当たらないというべきであって、控訴人Nがこれまでにも同種の行為を繰り返していることを考慮したとしても、前回N停職処分の3月の停職期間を超える処分を科すことを正当なものとすることはできないというべきである。」

(機械的な累積加重処分と思想信条の自由)
「学校における入学式、卒業式などの行事は毎年恒常的に行われる性質のものであって、しかも、通常であれば、各年に2回ずつ実施されるものであるから、仮に不起立に対して、上記のように戒告から減給、減給から停職へと機械的に一律にその処分を加重していくとすると、教職員は、2、3年間不起立を繰り返すだけで停職処分を受けることになってしまい、仮にその後にも不起立を繰り返すと、より長期間の停職処分を受け、ついには免職処分を受けることにならざるを得ない事態に至って、自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、自らの思想や信条を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることとなり、そのような事態は、もともとその者が地方公務員としての教職員という地位を自ら選択したものであることを考慮しても、日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながるものであり、相当ではないというべきである。」

(損害賠償請求について)
「停職処分は、減給とは異なって、単に経済的な不利益があるだけではなく、一定の期間、その職務が停止されるという職務上の不利益を伴い、しかも、戒告や減給と比較すると、処分を受けたことが外部からも認識することができるものであることや、教員の場合は、停職期間中は教室等で授業をすることができず、教壇に立てないことによって、児童生徒との継続的な人格的触れ合いをすることもできなくなり、ひいては教育活動に欠かすことができない児童生徒との信頼関係の維持にも悪影響を及ぼすおそれがあり、長くなればなるほど影響も大きくなることを考えると、本件各処分を受けたことにより控訴人らは精神的な苦痛も受けているものというべきである。しかも、控訴人らは、本件各処分による停職期間経過後に復職しても、児童生徒との間で当然に信頼関係が回復されるわけではなく、控訴人らにおいて児童生徒との信頼関係を再構築して、再び円滑に人格的な接触を図ることができるようになるまでには、やはり精神的な苦痛を受け、相応の努力を要するものと考えられることなどの事情を総合的に考慮するならば、本件各処分によって控訴人らが被った上記のような精神的苦痛は、本件各処分が取り消されたことによって図られる財産的な損害の回復によって当然に慰謝されて回復することになるものではないというべきである。」

(裁判所ウェブサイト)

 

君が代不起立で都に賠償命令=停職処分は違法、元教諭ら勝訴―東京高裁

  卒業式などの君が代斉唱で不起立を繰り返し、停職処分を受けた元都立学校教諭ら2人が、都に処分取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決が28日、東京高裁であった。須藤典明裁判長は、1人の訴えのみ認めた一審東京地裁判決を取り消し、2人に対する処分を違法と認定、都に計20万円の損害賠償も支払うよう命じた。
  君が代不起立訴訟では最高裁が2012年、「戒告までは懲戒権者の裁量の範囲内」とする一方、停職など減給以上の処分は原則的に認められないとの判断を示し、同裁判長もこれを踏襲した。
  さらに、都教育委員会は不起立を繰り返す教職員への処分を機械的に重くすることで、「自らの思想信条を捨てるか、教職員の身分を捨てるか、二者択一を迫っている」と指摘。憲法が保障する思想、良心の自由の実質的な侵害につながると述べた。
  判決によると、2人は2007年3月の卒業式で起立を拒否し、停職3〜6月の処分を受けた。

(時事通信 2015年5月28日)

 

 

東京都公立学校・不起立停職処分事件

最高裁三小2016年5月31日決定 
懲戒処分取消等請求上告事件 棄却・不受理

 

君が代不起立、都の敗訴確定=停職取り消しと賠償命令−最高裁

  卒業式での君が代斉唱時に起立しなかったことを理由に停職処分を受けた東京都の公立学校の元教員2人が、都に処分取り消しなどを求めた訴訟で、2人の処分を取り消し、都に計20万円を支払うよう命じた二審東京高裁判決が確定した。最高裁第3小法廷(大橋正春裁判長)が、5月31日付で都側の上告を退ける決定をした。
  訴えていたのは、元養護学校教員の女性(66)と、元中学校教員の女性(65)。2人は2007年3月、それぞれ停職3カ月と6カ月の懲戒処分を受けた。
  二審は、不起立を繰り返した教員に対し、処分を機械的に重くする都教育委員会の運用は「自らの思想信条か教職員の身分かの二者択一を迫るもので、憲法が保障する思想・良心の自由の侵害につながる」と批判。停職3カ月の処分だけを取り消した一審東京地裁判決を変更した。

(時事ドットコム 2016年6月1日)

 

 

 


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東京都立学校・不起立処分事件(第3次訴訟)

東京地裁2015年1月16日判決 平成22年(行ウ)第94号
懲戒処分取消等請求事件 一部認容・一部棄却

 

事案の概要:
 本件は,東京都立学校の教職員又は同教職員であった原告ら(すでに退職した者も含む。)が,平成19年3月から平成21年3月までの間に,所属校校長の職務命令に違反して,卒業式等の式典における国歌斉唱時に起立や在席をせず,あるいはピアノ伴奏をしなかったことを理由として,東京都教育委員会(以下「都教委」という。)から受けた地方公務員法(以下「地公法」という。)29条1項に基づく各懲戒処分の違憲・違法を主張して,これらの取消しを求めるとともに,被告に対し,国家賠償法1粂1項に基づく損害賠償(1個の懲戒処分ごとに慰謝料50万円及び弁護士費用5万円)及びこれに対する平成22年4月16日(本訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

(裁判所ウェブサイト)

 

東京都「君が代」訴訟で教職員が一部勝訴 「減給・停職の懲戒処分は違法」

  学校での「君が代」斉唱にかんして処分を受けた東京都立高校・特別支援学校の現・元教職員50人が、東京都教育委員会による懲戒処分の取り消しや国家賠償を求めた裁判。東京地裁の佐々木宗啓裁判長は1月16日、一部の処分を取り消す、原告一部勝訴の判決を言い渡した。
  教職員らは卒業式や入学式で君が代を歌わなかったり、起立しなかったり、ピアノ伴奏を行わなかったなどとして、懲戒処分を受けた。裁判の争点となった懲戒処分は、2007年3月から09年5月までの式典等に係わるもので、その内訳は戒告25件、減給29件、停職2件だった(1人で複数の処分を受けたケースがある)。
  今回の判決では、君が代斉唱などの命令に従わなかった教職員に、東京都教育委員会(都教委)が懲戒処分を加えたこと自体は適法としつつ、その処分の「重さ」に問題があるとした。戒告を超える「減給・停職」の処分については、裁量権を逸脱していて違法だとして、取り消した。

(弁護士ドットコム 2015年1月16日)

 

 

東京都立学校・不起立処分事件(第3次訴訟)

東京高裁2015年12月4日判決 平成27年(行コ)第77号
懲戒処分取消等請求控訴事件 棄却

 

処分取り消し判決支持 君が代不起立訴訟 高裁、双方の控訴棄却

 卒業式で君が代を斉唱する際に起立しなかったことなどを理由に、都教育委員会から懲戒処分を受けた都立高校教員らが、都に処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が四日、東京高裁であった。中西茂裁判長は、教員ら五十人中二十六人の停職と減給処分を取り消した一審判決を支持し、教員と都教委の双方の控訴を棄却した。教員側は判決を不服として上告する方針。   判決は一審同様、「減給以上の処分は重すぎて違法だ」と指摘。その上で、都教委が一回目の不起立は戒告、二回目以降は減給、停職へと機械的に処分を重くしている点について「懲戒処分を受けたにもかかわらず、再び同じ行為をした場合、定型的に処分を加重する方針自体は不合理とはいえない」と判断した。
  判決後に記者会見した特別支援学校元教員の渡辺厚子さん(65)は「起立しなかったのは、子どもに対する人権侵害に加担したくないという教員としての責務からだった。機械的に処分を重くすることを認めた今回の判決には怒りを感じる」と話した。
  控訴審で教員側は、一審が取り消しを認めなかった二十四人の戒告処分の取り消しなどを求めていた。

(東京新聞 2015年12月5日)

 

 

 

東京都立学校・不起立処分事件(第3次訴訟)

最高裁三小2016年7月12日決定 平成28年(行ツ)第103号、平成28年(行ヒ)第108号
懲戒処分取消等請求事件 棄却・不受理

 

 

 


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東京都立高校・不起立再雇用拒否事件(第2次訴訟)

東京地裁2015年5月25日判決 平成21年(ワ)第34395号
損害賠償請求事件 一部認容・一部棄却

 

事案の概要
東京都立高等学校の教職員であった原告らが、東京都教育委員会が平成18年度,平成19年度及び平成20年度に実施した東京都公立学校再雇用職員採用選考又は非常勤職員採用選考等において、卒業式又は入学式の式典会場で国旗に向かって起立して国歌を斉唱することを命ずる旨の職務命令に違反したことを理由として、原告らを不合格とし、又は合格を取り消したのは、違憲、違法な措置であるなどとして、都教委の設置者である被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償金の支払を求めた事案。

理由の骨子
(1)再雇用制度等の意義やその運用実態等からすると,再雇用職員等の採用候補者選考に申込みをした原告らが,再雇用職員等として採用されることを期待するのは合理性があるというべきであって,当該期待は一定の法的保護に値すると認めるのが相当であり,採用候補者選考の合否等の判断に当たっての都教委の裁量権は広範なものではあっても一定の制限を受け,不合格等の判断が客観的合理性や社会的相当性を著しく欠く場合には,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として違法と評価され,原告らが有する期待権を侵害するものとしてその損害を賠償すべき責任を生じさせる。

(2)原告らに対する不合格等は,他の具体的な事情を考慮することなく,本件職務命令に違反したとの事実のみをもって重大な非違行為に当たり勤務成績が良好であるとの要件を欠くとの判断により行われたものであるが,このような判断は,本件職務命令に違反する行為の非違性を不当に重く扱う一方で,原告らの従前の勤務成績を判定する際に考慮されるべき多種多様な要素,原告らが教職員として長年培った知識や技能,経験,学校教育に対する意欲等を全く考慮しないものであるから,定年退職者の生活保障並びに教職を長く経験してきた者の知識及び経験等の活用という再雇用制度,非常勤教員制度等の趣旨にも反し,また,平成15年10月に教育長から国旗掲揚・国歌斉唱に関する通達が発出される以前の再雇用制度等の運用実態とも大きく異なるものであり,法的保護の対象となる原告らの合理的な期待を,大きく侵害するものと評価するのが相当である。
  したがって,本件不合格等に係る都教委の判断は,客観的合理性及び社会的相当性を欠くものであり,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たる。
  よって,都教委は,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用して,再雇用職員等として採用されることに対する原告らの合理的な期待を違法に侵害したと認めるのが相当であるから,他の争点について検討するまでもなく,都教委の設置者である被告は,国家賠償法に基づき,期待権を侵害したことによる損害を賠償すべき法的責任がある。

(3)再雇用職員等の運用実態,雇用期間等を考慮すると,原告らが再雇用職員等に採用されて1年間稼働した場合に得られる報酬額の範囲内に限り,都教委の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用による原告らの期待権侵害と相当因果関係にある損害と認めるのが相当である。

(裁判所ウェブサイト)

 

君が代不起立で再雇用拒否は違法、都に賠償命令 地裁

  卒業式などで「君が代」斉唱時に起立しなかったことを理由に定年後などの再雇用を拒否されたのは違法だとして、東京都立高校の元教職員22人が、都に計約2億7400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、東京地裁であった。吉田徹裁判長は「裁量権の乱用で違法」と認め、都に総額約5370万円(1人あたり約210万〜260万円)の支払いを命じた。
  訴えたのは、斉唱時の起立を命じた職務命令に違反し、2007〜09年に再雇用を拒否された元教職員。
  判決は、元教職員らは「卒業式などを大きく阻害しておらず、違反の程度は重くない」と指摘。都教委の判断は「不起立を不当に重く見ており、裁量権の乱用だ」と結論づけた。「ベテランの知識や経験を活用する再雇用制度の趣旨にも反する」と指摘した。

(朝日新聞 2015年5月25日)


 

 

東京都立高校・不起立再雇用拒否事件(第2次訴訟)

東京高裁2015年12月10日判決 平成27年(ネ)第3401号
損害賠償請求控訴事件 棄却

 

君が代不起立の都立高元教職員 二審も再雇用拒否は「違法」

  卒業式や入学式で君が代斉唱時に起立しなかったことを理由に、定年後などの再雇用を拒否したのは違法だとして、都立高校の元教職員二十二人が都に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(柴田寛之裁判長)は十日、「不起立を理由に再雇用を拒否したのは裁量権の乱用で違法」と判断し、都の控訴を棄却した。一審に続き、元教職員側が勝訴した。
  今年五月の一審東京地裁判決は、元教職員二十二人に計約五千三百万円(一人当たり約二百十万円〜約二百六十万円)を支払うよう都に命じた。
  柴田裁判長は「満額年金の支給開始年齢が引き上げられ、定年後、原告らは再雇用の機会を与えられると期待できた」と指摘。
  「ほとんどは不起立による戒告処分を一、二回受けただけで、重大な違反とはいえない」として、都の再雇用拒否は違法と判断した。
  判決後の記者会見で原告の水野彰さん(67)は「控訴棄却と聞いた瞬間、当時、悩んだ末に自分が取った行動は間違いなかったんだなと思えた」と話した。
  中井敬三・東京都教育長は「判決は法令解釈の適用を誤っており、上告の準備を進める」とのコメントを出した。

(東京新聞 2015年12月11日)

 

 


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豊島区立小学校・ピアノ伴奏拒否減給処分事件

東京地裁2015年10月8日判決 平成25年(行ウ)第504号
懲戒処分取消等請求事件 一部認容・一部棄却

 

減給処分「重過ぎる」 君が代伴奏拒否、東京地裁

  東京都豊島区立小学校に勤務していた元音楽教員岸田静枝さん(65)が、卒業式で君が代のピアノ伴奏を拒否し、都教育委員会から減給処分を受けたことを不服として起こした訴訟の判決で、東京地裁は8日、「減給は重過ぎる」として処分を取り消した。
  判決によると、岸田さんは2010年3月、豊島区立小で校長の君が代伴奏命令を拒否し、停職1カ月の懲戒処分を受けた。不服として都人事委員会に審査請求を申し立て、減給10分の1(1カ月)に修正された。
  清水響裁判長は、同様のケースに関する最高裁判例に基づき「減給処分は裁量を逸脱している」と指摘。キリスト教を信仰しており、信教の自由が侵害されたとする岸田さんの主張は「信教の自由を制約する面はあるが許される範囲で、憲法違反ではない」と退けた。
  岸田さんは判決後の記者会見で「処分取り消しはうれしいが、違憲ではない判断は不満だ」と話した。都教委の中井敬三教育長は「誠に遺憾だ。判決内容を確認し対応する」とコメントした。

(共同通信 2015年10月9日)

 

 

豊島区立小学校・ピアノ伴奏拒否減給処分事件

東京高裁2016年7月19日判決 平成27年(行コ)第395号
懲戒処分取消等請求控訴事件 棄却

 

君が代伴奏拒否減給処分取消等控訴審 1審支持・双方の控訴棄却
東京高裁  2016年7月19日
東京都豊島区立小学校に勤務していた元音楽教員の女性(66)が,卒業式で「君が代」の伴奏を拒否したことに対する東京都人事委員会の減給処分は不当であるとして起こした懲戒処分取消請求等訴訟の控審判決言渡しがあり,菊池洋一裁判長は,式の進行を妨げようという悪意はなく,混乱も生じなかったとし,処分は裁量権を逸脱しており違法であるとした上で,裁決取消請求と国家賠償請求を棄却したが懲役秋処分を取消した1審東京地裁判決(15年10月8日)を支持し,双方の控訴を棄却した。

(http://www.hanreihisho.com)

 

 

 


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大阪府立支援学校・不起立減給処分事件

大阪地裁2015年12月21日判決 平成25年(行ウ)第196号
給与等減額処分取消等請求事件 棄却

 

事案の概要:
  本件は,大阪府立支援学校の教員である原告が,平成24年度の同校高等部の卒業式において,同校准校長から式場外での受付業務を命じられていたにもかかわらず,これを無断で放棄した上,式場内に勝手に立ち入って国歌斉唱時に起立して斉唱しなかったことを理由にA教育委員会から減給1か月の懲戒処分を受けたことについて,同処分が違法であると主張して,その取消しを求めるとともに,被告に対し,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,原告が被った精神的苦痛に相当する慰謝料として200万円及び不法行為の後の日である平成25年10月10日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

(裁判所ウェブサイト)


君が代起立条例「合憲」 大阪地裁判決「式典進行で必要性」

  全国で初めて公立校の教職員に国歌斉唱時の起立を義務付けた大阪府の「君が代起立条例」を巡り、起立せずに減給処分を受けた府立支援学校の男性教諭が、府に処分の取り消しと慰謝料200万円の支払いを求めた訴訟の判決が21日、大阪地裁であった。内藤裕之裁判長は条例を「合憲」と判断、教諭の請求を棄却した。
  条例については、大阪地裁で同様の訴訟が計5件争われており、判決は初めて。
  判決理由で内藤裁判長は、斉唱の際に教職員に起立を求める職務命令は「思想・良心の自由を間接的に制約する面はあるが、式典の円滑な進行を図るために許容できる程度の必要性はある」と指摘。職務命令の根拠となる条例も、学校教育法や国旗国歌法の趣旨に沿っていると判断し、「思想の自由などを保障した憲法に違反する」との原告側の主張を退けた。
  減給処分に関しては、2013年3月の卒業式で、受付業務を担当していた原告が無断で式場内に入り、退場の指示に従わずに起立しなかった経緯から「積極的に卒業式の秩序や雰囲気を損なわせようとした」と認定、処分を妥当とした。
  判決などによると、条例は橋下徹氏が府知事だった11年6月に成立。勤務先の校長は条例に基づき13年2月、卒業式で起立するよう教職員に職務命令を出した。しかし、原告は翌3月の卒業式で起立せず、減給10分の1(1カ月)の懲戒処分を受けた。12年3月の卒業式でも、信仰上の理由から起立しなかった。

(日経新聞2015年12月22日)

 

 

大阪府立支援学校・不起立減給処分事件

大阪高裁2016年10月24日判決 
給与等減額処分取消等請求控訴事件 棄却

 

君が代訴訟、起立拒否で減給の教諭敗訴 大阪高裁

  卒業式で君が代の起立斉唱を拒んだことを理由に減給処分にされたのは憲法が保障する思想・良心の自由の侵害だとして、大阪府立支援学校教諭が、府に処分取り消しと200万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(中村哲裁判長)は24日、処分を適法とした一審判決を支持し、教諭側の控訴を退けた。
  府が教職員に起立斉唱を義務付けた全国初の条例を2011年6月に施行して以降、処分を受けた教諭ら計11人が提訴。高裁の司法判断は初めてだった。
  教諭(59)は13年3月の卒業式で、割り当てられた受け付け業務が終わった後、式場の出入り口近くの教員席に着席。君が代を起立斉唱せず、「式典の秩序や雰囲気を損なった」として減給1カ月(10分の1)の処分を受けた。
  訴訟で、教諭は「君が代が国民を戦争に駆り立てた歴史を考えると歌えない」と主張。高裁判決は、卒業式での起立斉唱は単なる「慣例上の儀礼的な所作」とし、式の円滑な進行などの目的があるなら思想・良心の間接的な制約も許されると判断。処分は府の裁量の範囲内だとした。
  判決後、教諭は会見し、「非常に残念。色んな考えの人がいることを示すのが教育だと思い、子どもたちには『立つ立たないは自分で考えるんだよ』と教えてきた。府条例は違憲と判断してほしかった」と話した。
 府教育庁は「今後とも教職員の厳正な服務規律の確保に努めてまいります」とコメントした。(原文本名)

(朝日新聞2016年10月24日)

 

 

大阪府立支援学校・不起立減給処分事件

最高裁一小2017年3月30日決定
給与等減額処分取消等請求上告事件 棄却・不受理

 

「君が代条例は合憲」大阪高裁判決が確定 上告退ける

  大阪府が全国で初めて、君が代の起立斉唱を教職員に義務付けた条例が、思想・良心の自由を保障した憲法に違反するかが争われた訴訟で、条例を合憲とした昨年10月の二審・大阪高裁判決が確定した。最高裁第一小法廷(池上政幸裁判長)が3月30日付の決定で、起立斉唱を拒否して府の処分を受けた男性教諭の上告を退けた。
  府は、教職員に君が代の起立斉唱を義務付ける条例を2011年に施行。教諭は13年3月、勤務していた府立支援学校の卒業式で、職務命令に反して起立斉唱せず、減給1カ月の処分を受けた。このため教諭は、処分の取り消しと200万円の賠償を府に求め、大阪地裁に提訴していた。
  二審判決は、起立斉唱は「慣例上の儀礼的な所作で、ただちに人の内心に踏み込むものではない」と指摘。一審判決に続き、職務命令の根拠となった府条例は合憲とした上で、減給処分も府の裁量の範囲内だとした。

(朝日新聞2017年4月3日)

 

 

 


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東京都立学校・不起立再雇用拒否事件(第3次訴訟)

東京地裁2016年4月18日判決 平成26年(ワ)第687号
損害賠償請求事件 棄却

 

「君が代」不起立、元教員側が敗訴 再雇用拒否を容認

  卒業式で「君が代」斉唱時に起立しなかったことを理由に定年後の再雇用を拒否されたのは違法だとして、東京都立学校の元教員3人が計約1760万円の損害賠償を都に求めた訴訟で、東京地裁は18日、元教員の請求を棄却する判決を言い渡した。清水響裁判長は「職務命令より自己の見解を優先させたことが、選考で不利に評価されてもやむを得ない」と述べた。
  判決によると、3人は斉唱時の起立を命じた職務命令に違反したとして停職などの懲戒処分を受けた。これを理由に2011年、定年後の非常勤職員の選考で不合格になった。
  判決は、選考について都教委に「広い裁量権がある」と認めた上で、「儀礼的所作を命じた職務命令に公然と違反した者を再雇用しないことが、著しく合理性、相当性を欠くとはいえない」と判断した。
  再雇用をめぐっては、東京地裁が昨年5月、元教員22人が起こした別の訴訟の判決で約5370万円を支払うよう都に命じた。東京高裁は都の控訴を棄却し、上告審で争っている。

(朝日新聞2016年4月18日)

 

 

 

東京都立学校・不起立再雇用拒否事件(第3次訴訟)

東京高裁2017年4月26日判決 損害賠償請求控訴事件 棄却

 

「君が代不起立」で再雇用拒否めぐる訴訟、2審も元教諭側敗訴 分かれる判断
  都立高校と都立特別支援学校の元教諭3人が、卒業式などで国歌「君が代」の斉唱時に起立せず懲戒処分を受けたことを理由に、都教育委員会が定年後に非常勤教員として再雇用しなかったのは不当だとして、東京都に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が26日、東京高裁であった。永野厚郎裁判長は「式典の円滑な運営に協力せずに懲戒処分を受けた元教諭を再雇用しないとした都教委の判断に裁量権の逸脱はなかった」として、元教諭側の訴えを退けた1審東京地裁の判断を支持し、請求を棄却した。
  再雇用を拒否された元教諭22人が都に損害賠償を求めた同種訴訟では平成27年、(1)再雇用は通例化している(2)積極的に式を妨害したわけではなく、戒告処分を1、2回受けただけ−などを理由に、「再雇用拒否は都教委の裁量権の逸脱だった」として、1審東京地裁、2審東京高裁とも元教諭側を勝訴とした。都側が上告し、最高裁で継続中。判断が分かれたことで、最高裁の判断が注目される。
  訴訟の争点は、(1)都が平成15年に各都立校の校長に出した「教員が国歌斉唱時に起立するよう徹底せよ」とした通達と、各校長が教員に起立・斉唱を命じた職務命令は、思想・良心・信仰の自由などに反して無効か(2)元教諭側の再雇用を拒否した都教委の判断は裁量権の逸脱か−などだった。
  永野裁判長は通達・職務命令について、「国歌を起立して斉唱するのは儀礼的な行為であり、個人の内心の自由を直接的に侵害するものではない」と指摘。「保護者らも参加し、全校を挙げて行う式典は円滑に運営される必要がある」として違法性はないとした。
  さらに再雇用拒否の妥当性についても「再雇用が通例化しているとしても、無条件に再雇用されるわけではなく、選考を経る必要がある」と指摘。その上で、「不起立は式典の出席者に違和感を与え、式典の厳粛さを害す行為で、通達と職務命令は式典の厳粛さを守るためのものだ。公務員は各組織で法令などに基づく決定に従うべきだが、元教諭らは公然と反する行動を取った」と判断。「教諭や非常勤教諭には校長など上司の命令に従う義務がある。職場の秩序や公務の円滑さを守るために、(過去に命令に反する行為をした)元教諭らを再雇用しなかった都教委の判断に、裁量権の逸脱はない」と結論付けた。
  判決後、元教諭側は「不当判決だ」として、上告する意向を示した。

(産経新聞2017年4月27日)

 

 

 


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高槻市立小学校・国旗掲揚抗議事件

大阪地裁2016年5月23日判決 平成27年(行ウ)第174号
停職処分無効確認等請求事件 棄却

 

事案の概要:
本件は、大阪府高槻市公立学校教員であった原告の任命権者である大阪府教育委員会(府教委)が原告に対し平成9年8月27日付けでした停職2月の懲戒処分(本件処分)が無効であることの確認を求めるとともに、原告が、大阪府人事委員会に対し本件処分について不服申立てをしたところ、同処分を承認する旨の裁決(本件裁決)を受け、さらに同委員会に対し本件裁決について再審を請求したところ、平成27年1月22日付けで同請求を却下する旨の決定(本件決定)を受けたことから、同決定の取消しを求める事案である。

○懲戒処分の対象となる事実
  X1は、校長の校務分掌命令により、平成8年4月から6年1組の学級担任となっていたが、平成9年2月6日(木)に開催された職員会議において、X1教諭を含む6年生担当教員からの提案どおり、校長が各児童に卒業証書を授与する際、当該児童の学級担任教諭が証書台から卒業証書を取って校長に手渡すなどの卒業式の進め方が決定されたにもかかわらず、同年3月19日(水)午前9時45分頃、同校の卒業式において、職務として卒業証書授与の補助を行うべきところ、校舎屋上に国旗が掲揚されているとの理由からこれを拒否した。さらに、校長の度重なる指導にもかかわらず、卒業証書授与の補助に応じなかったため、卒業式が約8分間中断し、この間、保護者から卒業式の続行を求める声が繰り返し出るなど、円滑な卒業式の実施が妨げられた。
  また、校長の校務分掌命令により、平成6年4月から4年2組の学級担任になり、指導要録の作成を分担させられていたにもかかわらず、当該学級の児童29名全員について、指導要録の評定欄を記入しなかった。同様に、平成7年4月から5年1組の学級担任になり、指導要録の作成を分担させられていたにもかかわらず、当該学級の児童27名全員について、指導要録の評定欄を記入しなかった。また、同様に、平成8年4月から6年1組の学級担任になり、指導要録及び指導要録の抄本の作成を分担させられていたにもかかわらず、当該学級の児童28名全員について、指導要録の観点別学習状況の欄及び評定欄並びに指導要録の抄本の観点別学習状況の欄及び評定欄を記入しなかった。さらに、校長の度重なる指導にもかかわらず、指導要録等の記入または関係資料の提出にも応じなかったため、校長は各年度の当該学級の児童に係る指導要録を適正に作成できず、また、平成8年度6年1組の児童に係る指導要録の抄本を適正に進学先の中学校長に送付できなかった。

(Lexis Nexis As One)

 

 

 


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大阪府立高校・不起立減給処分事件

大阪地裁2016年7月6日判決 平成26年(行ウ)第7号
給与減額処分取消等請求事件 棄却

 

事案の概要:
  本件は、大阪府立枚方なぎさ高校の教員であった原告が、平成24年度同校卒業式において、同校校長から正門での警備業務を命じられていたにもかかわらず、この職務を無断で放棄した上、式場内に勝手に立ち入り、持参した丸椅子に座り、国歌斉唱時に起立して斉唱しなかったことを理由に大阪府教育委員会から減給1か月の懲戒処分を受けたことについて、同処分が違法であると主張して、その取消しを求めるとともに、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、原告が被った精神的苦痛に相当する慰謝料として100万円及びこれに対する平成26年3月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

 

大阪府“君が代起立”条例は「合憲」、減給処分の元教員の訴え棄却 大阪地裁判決

  大阪府立高校の卒業式で国歌斉唱時に起立しなかったとして減給処分を受けた元教員の女性(63)が、起立斉唱を求める府の「国旗国歌条例」や教育長の通達は違憲だとして、府に処分取り消しと100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は6日、請求を棄却した。
  内藤裕之裁判長は、通達や職務命令に関し「思想、良心の自由の間接的な制約となることは否定できないが、式の円滑な進行のため、許容できる程度の合理性がある」と同種訴訟の最高裁判例を踏襲。職務命令の根拠となる起立条例も「違憲とはいえない」と判断した。
  また、卒業式の当日は校門での警備に従事する職務命令を受けたにもかかわらず、式に参加したと認定。「規律や秩序を害する程度が相当に大きい」と指摘し、府の減給処分は裁量権の乱用には当たらないと判断した。
  起立条例は橋下徹氏が府知事だった平成23年6月に成立。翌24年には、3回の職務命令違反で分限免職とする職員基本条例も成立した。
  判決によると、原告の元教員は24年4月の入学式で起立斉唱せずに戒告処分を受け、25年3月の卒業式でも繰り返したとして減給処分を受けた。同月末に定年退職した。
  大阪の起立条例をめぐっては、昨年12月にも別訴訟で内藤裁判長が合憲と判断した。

(産経新聞2016年7月6日)

 

 

大阪府立高校・不起立減給処分事件

大阪高裁2017年8月31日判決
給与減額処分取消等請求控訴事件 棄却

 

君が代起立条例、再び合憲…減給の元大阪府立高教諭、2審も敗訴

  大阪府立高の卒業式で国歌斉唱時に起立しなかったとして、減給処分を受けた元教諭の女性(64)が、起立斉唱を求める府の「君が代起立条例」は思想、良心の自由を侵害し違憲だとして、府に処分の取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は31日、1審・大阪地裁に続き原告側の請求を退けた。
  田中敦裁判長は判決理由で、条例について「思想、良心の自由を間接的に制約する面はあるが、式典の円滑な進行などのために許容できる程度の合理性がある」と違憲性を否定。「式場外の職務を放棄して入場するなど意図的に不起立行為に及んだ」として処分の内容も妥当と判断した。
  条例は橋下徹氏が知事在職中の平成23年6月に成立。学校行事での国歌は「起立により斉唱する」と規定している。
 判決によると、元教諭の女性は24年4月の入学式で起立斉唱せずに戒告処分を受け、25年3月の卒業式でも繰り返したとして減給処分となった。

(産経ニュース 2017年8月31日)

 

 

 


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大阪府豊中市立小学校・不起立再任用拒否事件

大阪地裁2016年12月12日判決 平成26年(ワ)第8127号
損害賠償請求事件 棄却(控訴)

 

事案の概要

豊中市立小学校教諭として勤務していた原告は、平成25年3月の定年退職を前に、豊中市教育委員会に対し、再任用教職員採用選考の申込みをしたが、市教委は、原告について、不合格とし、教員として採用しなかった。本件は、原告が被告に対し、上記不合格ないし不採用は、被告の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて行った違法な行為であるとして、国家賠償法1条1項に基づいて損害賠償等を請求する事案である。

(判例時報2332号29頁)

 

君が代不起立、再任用拒否は「妥当」 元教諭の請求棄却

  卒業式で君が代を起立斉唱しなかったことで定年退職後の再任用を不合格としたのは、思想・良心の自由を保障する憲法に反するとして、大阪府豊中市立小学校の元教諭の女性(64)が豊中市に330万円の国家賠償を求めた訴訟で、大阪地裁(内藤裕之裁判長)は12日、請求を退ける判決を言い渡した。
  判決によると、女性は2012年の卒業式で「日の丸、君が代に反対します」と発言して座り、翌年の再任用の選考で「勤務実績が良好でない」と判断され、不合格とされた。
  訴訟で女性は「軍国教育の反省から良心に従った。勤務実績に考慮される非行ではない」と訴えたが、判決は式進行や厳粛な雰囲気を保つためならば思想・良心の自由が一定の制約を受けても許されると判断。一連の行動は「教育公務員の信用を著しく失墜させた」とし、不合格を妥当とした。
 女性は13年3月末で定年退職した。市教委によると、11年度からの5年間に再任用を希望した小中学校教諭計148人のうち、不合格になったのは1人だけという。(原文本名)

(朝日新聞2016年12月12日)

 

 

 


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大阪府立高校・高槻市立小学校・不起立再任用拒否事件

大阪地裁2017年5月10日判決 平成26年(行ウ)第173号
損害賠償請求事件 一部却下・一部棄却

 

判示事項の要旨

公立学校を定年退職若しくは定年退職後1年間再任用されていた原告らが,公立学校職員への再任用あるいは再任用の任期更新の申込みをし,合格の通知・内示を受けていたにもかかわらず,合格が取り消されたことから,(1)再任用合格決定の取消処分の取消し等,(2)再任用あるいは再任用任期更新の義務付け,(3)教員の地位にあることの確認を求めるとともに,(4)戒告処分を受けた原告らについて同処分の取消し,(5)戒告処分や再任用任期更新合格決定の取消し等により損害を被ったとして,国家賠償法に基づく損害賠償を求めたが,(1)及び(2)については不適法であるとして却下され,(3)については任用権者による任用行為が存在しないなどとして棄却され,(4)及び(5)については裁量権の逸脱濫用があると認めることができず国家賠償法上違法とはいえないとして棄却された事例である。

(裁判所ウェブサイト)

 

君が代不起立 元教諭ら敗訴 再任用拒否訴訟 大阪地裁

 学校行事での君が代の起立斉唱を定めた大阪府の条例に基づく職務命令違反を理由とする定年後の再任用拒否は違法として、府内の公立学校の元男性教諭3人が府などに対し、処分の取り消しや損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は10日、訴えを全面的に退けた。
 内藤裕之裁判長は判決理由で、再任用教員としての地位確認などを求めた原告側の主張に対し、定年後の再任用は府教育委員会に裁量権があると指摘。拒否は行政処分にも当たらず、取り消しを求めるのは不適法として却下。賃金や慰謝料の請求も棄却した。
 原告は府立高の元教諭2人と、同府高槻市立小の元教諭1人。判決によると、2012〜13年、卒業式の国歌斉唱で起立せずに戒告処分を受け、既に決まっていた再任用の合格や更新を取り消された。
 原告側は閉廷後に記者会見し、元小学校教諭の山田肇さん(65)は「勤務実績が良好とされ、一度は再任用に合格したのに(国歌斉唱で)座ったことで評価が変わるのはおかしい」と憤った。(共同)

(毎日新聞2017年5月10日)

 

 

 


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東京都公立学校・不起立(2008年)停職処分事件

東京地裁2017年5月22日判決 懲戒処分取消等請求事件 一部認容・一部棄却

 

国歌不起立、元教諭の停職処分「重い」と取り消し 
「強制反対」トレーナー着用の元教諭は請求退ける 東京地裁

  東京都立養護学校の元教員の女性2人が、国歌斉唱時に起立しなかったことを理由に受けた懲戒処分は不当に重いとして、都に懲戒処分の取り消しと、1人300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、東京地裁であった。清水響裁判長は1人について「停職6カ月の処分は不当に重い」とし、処分を取り消した。もう1人については不起立のほか勤務中に「強制反対 日の丸 君が代」などと書かれた服を着ていたことなどを考慮し、「処分は妥当だった」として訴えを退けた。賠償はともに認めなかった。
  判決によると、原告の1人(67)は過去に卒業式などで国歌斉唱時に起立しなかったことを理由に5回の懲戒処分を受けていた。平成20年3月、勤務先の養護学校の卒業式でも起立しなかったため、東京都教育委員会から停職6カ月の懲戒処分を受けた。
  清水裁判長は「不起立を理由に懲戒処分を下すのは妥当だが、不起立は卒業式などを積極的に妨害する行為ではない。停職6カ月の処分は、(最高裁が判示した)『処分の重さの適切性を裏付ける具体的な事情』がないまま、懲戒処分の回数が重ねられたことを理由に形式的に加重したものと推認でき、裁量権の逸脱だ」として、都の懲戒処分を取り消した。
  一方、もう一人の原告(66)は、掲揚された国旗を引き下ろしたり、国旗掲揚に反対するビラをまいたり、研修中に「日の丸 君が代強制反対」と書かれたゼッケンを身につけたりし、過去に7回の懲戒処分を受けていた。20年3月に勤務先の養護学校の卒業式で国歌斉唱時に起立しなかったほか、19年10月以降、「強制反対 日の丸 君が代」や「OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO」と印刷されたトレーナーを校長の命令を無視して着用し続けたとして、停職6カ月の懲戒処分を受けた。
  清水裁判長は「校長の命令を無視して職務中にトレーナーを着続けた上、過去の懲戒処分には式典を積極的に妨害する行為が含まれている。あえて学校の秩序や規律を乱す行為を行っており、懲戒の頻度も高い」などとして、「処分の適切性を裏付ける具体的事情があり、懲戒権の乱用があったとはいえない」として、訴えを棄却した。
  損害賠償請求については、「処分の重さは不当だったが、不起立は処分対象行為であることに変わりはない」などとして、賠償は認められないとした。
  判決を受け、都は「(原告1人に関して都の主張が認められなかったことについて)判決内容を確認し、対応を検討する」とした。
  処分取り消しが認められなかった原告の元教諭は「納得できない不当な判決で控訴する」と述べた。

(産経新聞2017年5月22日)

 

 

 


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東京都立学校・不起立処分事件(第4次訴訟)

東京地裁2017年9月15日判決 懲戒処分取消等請求事件 一部認容・一部棄却

 

教員の君が代不起立、減給認めず 戒告処分超え「重過ぎる」

  東京都立学校の卒業式や入学式で君が代斉唱時に起立せず、懲戒処分を受けた教員ら14人が処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は15日、「裁量権を逸脱している」として6人に対する停職と減給を取り消した。ほか8人への戒告は適法とし、損害賠償請求はいずれも退けた。
  最高裁は同種訴訟で2012年に「減給以上の処分には慎重な考慮が必要だ」と指摘。佐々木宗啓裁判長はこの判断を基に、停職と減給は重過ぎると認定した。
  判決などによると、14人は都立高や特別支援学校の教員と元教員。10〜13年、起立して君が代を斉唱する職務命令に従わなかったとして処分された。

(共同通信 47news 2017年9月15日)

 

 

 


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